エルデンエムブレム   作:yononaka

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トライアングル★バンディッツ

「レウス、敵です」

 

 レナが声と指で場所を知らせる。

 シーダがファイアの書片手に暴れている場所とは違う方角から一団が走って来ていた。

 

「オレ様はガザック様一の子分!!」

「おいどんはハイマンの義理の兄!!」

「ワイはベンソン様の弟子!!」

 

「「「覚悟!!!」」」

 

「いやなトライアングルアタックだな……

 レナはシーダに目を向けてやってくれ、危険そうならシーダと一緒に相手から距離を取ってライブを」

「レウスは?」

「アホな名乗り上げだが、

 連中の言うことが事実かはさておいても近い能力を持ってるってなら

 そいつは十分すぎるほど脅威だ

 試したいこともあるし、オレが戦う」

 

 そういって二手に分かれる。

 

「オレ様たちとたった一人で戦うってのか?」

「おいどんたちも舐められたもんだす」

「ワイらの怖さを教えてやろうではないか!」

 

 ベンソンの弟子が指笛を高らかに鳴らすと、連中の後ろからぞろぞろと手下が現れた。

 単騎性能は知れているだろうが数というのはそれだけで厄介だ。

 

「だが、性能を試すにはそれくらいの数がいたほうが助かるってもんだ」

 

 『霊呼びの鈴』を構え、鳴らす。

 

 りぃりぃん。

 瀟洒な音が響く。

 

 濃密な霧が人の姿を取る。

 

 靭やかな体付き。

 長い髪。

 力みを感じさせない立ち姿。

 

「な、な」

 

 ハイマンの義理の兄が口をあけ、言葉を吐こうとするも絶句が先に来てしまっているようだ。

 ならば、代わりに言ってやろう。

 

「ナバール、行けッ!」

 

 その声に反応するように、電撃のような速さで敵陣へと切り込んでいった。

 

 紅の剣士(ナバール)の傀儡。

 殺した相手を傀儡にするオレの研究成果。

 二例目でわかったのは以下のことだ。

 

 オレが殺した相手しか傀儡の鉱石は手に入らない。

 殺した相手は誰でもいいわけではない。

 オレが殺した相手に多少なりとも感情を向けている。

 殺し方は関係がない。

 

 勿論、これから更に実例が増えていけば変わるかもしれない。

 

 ナバールの傀儡は踊るように敵を切り裂いていく。

 すんでの所で回避し、相手の首を刎ねる。

 相手の攻撃を受け流(パリィ)して致命を取る。

 戦闘能力はオレが上だった。

 しかし決闘めいた殺し合いであればナバールが上。

 オレがナバールと戦う際に思っていたことは正しかった。

 よく勝てたとも思う。

 

「調子に乗るなよ、紅の剣士さんよお!

 オレ様たちの数はこんなもんじゃねえぜ!!」

 

 ガザックの子分が指笛を鳴らす。

 どこかに隠れていたのか、海賊たちが走ってくる。

 

 試したいことはまだある。

 増えてくれる分には文句はない。

 

 もう一度、『霊呼びの鈴』を鳴らす。

 ナバールが消えることはなく、さりとて別のものが現れる様子もない。

 

 複数を呼び出すことはできないわけだ。

 戦力の拡充を鈴に頼り切るのは難しい。

 サイン溜まりでもあればいいのだが、あいにくアカネイア大陸に着いてからは一つも見ていない。

 もっとも、サイン溜まりがあるということは赤霊(プレイヤーキラー)もいるってことになるので無いことに安堵するべきなのかもしれないが。

 

 ナバールの傀儡は圧倒的だ。

 それでも徐々に傷が増えている。

 

 そろそろ参戦するとしよう。

 オレは利き手にキルソードを、逆の手にはダガーを持つ。

 

 敵へと歩きながら戦灰の力をイメージし、それを喚起させる。

 ふわりと現れたのは『輝剣の円陣』、つまりはダガーの力だ。

 無防備に歩くオレに対して、ナバールよりはマシかもしれないと的を変えた海賊たちが走ってくるが、その途中で射出された輝剣によって撃ち殺される。

 

 キルソードには戦灰がないってことだ。

 となると、手持ちにある『狭間の地』産の武器は大切にしないとならない。

 

 元の世界で戦っていた頃は武器が壊れるなんて考えてもいなかったが、あれも『黄金律』のご加護(機能)だったのだろうか。

 流石に『黄金律』はそういうものではないか。

 であれば無闇やたらに頑丈だったと考えていいのか、つまりは耐久値の事は考える必要はないのか。

 

 オレはキルソードとダガーをしまい込んで、神肌縫いを取り出す。

 殺してきた数を考えれば神肌縫いは壊れてもおかしくないが、損傷一つ見当たらない。

 判断に困る。

 安心を得るために暫くは拾った武器で戦うことにしよう。

 

 別の奴が指笛を鳴らすと同時に、三馬鹿は手下とともにこちらへと突き進んでくる。

 ナバールが武器を構え直した。

 オレもそれに習い、再びキルソードを取り出し、構えた。

 


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