どのくらいの時間、フィーナの体を抱きしめていたかわからない。
オレの温もりが彼女に移ってまた元気な姿で話しかけてくれるんじゃないのかなどと、思考をしていたのだけは覚えている。
意識が錯乱した状態から正常寄りに浮上したのは馬蹄の音が聞こえたからだ。
「そこの騎士……、聞こえているか」
馬蹄の音は止み、騎手であろうものが降りてから声をかけてきた。
「……ああ」
「その姿とその状態、この街に故あるものと見受ける」
「……」
「この街の倉庫はどこか」
「倉庫?」
「ああ、一通り探したが見当たらない
この街の規模であれば蓄えがあって然るべきだ」
「蓄えなんてないと思うぜ、避難民への炊き出しに使っちまったはずだからな」
「そ……そうか、炊き出しに……」
「なんでそんな事を聞く?」
「ああ、名乗り遅れた
俺はザガロ、オレルアン狼騎士団の騎士だ
この街には戦時であるから徴発のために来た」
戦時の、徴発?
「この死体の山は……どうした?」
「……それは……うむ……徴発に対して街には何もないと言い張って」
「それで?」
「我らに対して、出て行けと、この街を守ることもしないで徴発などふざけるなと衝突寸前になった」
「……」
絞り出すように、続けろ、とだけ発音する。
いや、発音できたと思う。
「その少女は我らと街の者との間に割って入った
剣を抜き、構えて、
何かあれば自分は彼らを守らねばならない、
戦いになってほしくないから帰れ、と」
「それで」
オレはフィーナに刺さったままの矢を引き抜く。
「
「俺が射ったわけではないが、いや……」
含むような、或いは飲み下すように言葉を切る。
「どうあれ、ここでの物資の徴発は我らオレルアンがマケドニアを倒すために絶対に必要だったもの
アカネイア王国救済にも繋がり、この大陸をも平和にするためにも」
「そのために……フィーナは射たれた、のか……?
「いずれハーディン様がそれを成し遂げる、そのためにもここでの犠牲は」
「必要なものだった、のか」
「ああ……そうだ」
眠るような表情のフィーナを見つめる。
死を象徴しているかのようなその表情を。
聞き流したはずの
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……█████は解き放たれた
██は、暗い死の運命に覆われ
だがそれは、███をも焼いていく
お別れだよ、あんた
きっと、█████の王におなり……