幼少期からゲーム漬けだった。
登校前にゲームをやり、登校中に攻略を考え、授業中に眠り、
下校で攻略法を脳内で確立し、夜を徹してゲームをやる。
両親の遊んだゲームをお下がりされているわけで、やっていたゲームに最新作はそう多くはない。
勿論、最新作は自分の金で買うわけだから徹底的に吟味して買う。
バイトもしない学生が買える数は知れた数だからだ、ハズレを引くわけにはいかなかった。
だから普段やるゲームはその「お下がり」が殆ど。
ゲームでオレがやる事といえば感覚に従った結果の縛りプレイだ。
戦国・三国系のシミュレーションなら捕らえた武将は片っ端から斬首だとか、そういう奴だ。
今、自分を俯瞰して見ると実にシミュレーション向きの人間ではない。
自分の趣味に寄りすぎて難易度を上げている。
そうして詰んだことなど数え切れない。
ただ、一般的に想定されるルートを進んだとて、オレは途中で飽きてしまう。
そういう意味では自分の腕前そのものが縛りになっていた狭間の地は「居心地のいい場所」であった。
一方で、この『新・暗黒竜と光の剣』の世界はどうであろうか。
チュートリアルマップの雑魚を蹴散らしただけで大きなことを言うべきではないが、
狭間の地に比べればよほど良心的である。
そもそもとして、今のオレは強くてニューゲーム状態なのだ。
縛りもなく、立場の上の人間から命じられるままに動くことになったら……確実に飽きる。
それを自覚している。
「タリス王」
であれば、不利になることを進めよう。
詰まない程度で、しかしこの先を見通せない程度の不利を。
「オレの求めるものは一つ」
かしずいている態勢を崩す。
「ご、御前であるぞ。その口と態度を改めよ!」
家臣の一人が烈火の如くに怒り、非難する。
それに留まらずオレの腕を掴み──
癖ってのは抜けないもので、
敵意があるものに近づかれて、接触されそうになったらやってしまうことがある。
「貴さ」
言葉が終わるか終わらないかのところで拳が家臣へと向かいそうになり──
「レウス様、お止めください!」
シーダの声。
ギリギリのところで止まる拳。
家臣はもはや意識を手放している。
「危ねえ危ねえ
だけど、不用意に近づくほうが悪いよな」
「れ、レウス殿……」
タリス王もまた、絶句している。
「改めてになるが、オレの求めるものは一つ」
神肌縫いを抜き払う。
周囲の緊張感が高まる。
兵士たちも構えを取ろうとするも、ガザックに良いようにやられた連中だ。
こちらの抜刀に応じることはない。
銀色の突剣をシーダに向け、その後にタリス王に向ける。
「そこのシーダ王女か、この国の王としての地位だ」
抜群の不敬っぷりに一同は固まっている。
「冗談では、済まされぬぞ
例えあなたがこの国を救った方であっても」
タリス王はギリギリの所で王たる意思を見せつける。
ただ、オレが見てきた王だったなら、ここでバリバリに激怒してガザックの死体を腕に縫い付けて襲ってくることだろう。
「記憶はないが、やりたいことはある
この辺境からどこまで行けるのか試したい
ドルーアや、グラやら諸国を相手にしてどこまでやれるかを」
国の名前が出た時点で、一同の表情が曇る。
それはマルス亡き今、反帝国の旗印がない以上、支配されるのは時間の問題であることを理解しているからだ。
「勿論、オレが一人で戦い続けてもいいんだが……そんなのはつまらない
オレに必要なものはモチベーションだ
そしてモチベーションを維持するのはいつだって
「わ、我が娘を
「アンタの玉座でもいいって言ってるだろう」
不敬度の天井を叩いたのか、流石に周りの兵士たちも武器を抜く。
「ま、それでもいいか」
オレは神肌縫いで空を斬る。
威嚇するような音が部屋を叩く。
そうしてからゆっくりと、オレも構えを取った。