エルデンエムブレム   作:yononaka

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苦悩するよりきっとマシ

「お前、もう行っていいよ」

「……あんなに怖い顔してたくせに、解放するのか」

「それに安心しろ、カダインはそのうちオレが潰してや……──」

「?」

「そうだ、カダイン

 カダインにエリスはいるか?」

「……エリス?」

「アリティアの王女だよ、いないのか?」

「いるなんて話は聞いた覚えがない

 もしかしたらガーネフが拘禁している可能性もあるけど……だとしても話には出ると思うんだけどな

 あの人はカダインを留守にしがちだし、そうなれば世話係も必要になるだろうけど……

 人の口に戸は立てられないだろ」

「ガーネフが女を匿ってるとしたら、世話役なり何なりから漏れるだろう、か」

 

 エルレーンは頷く。

 

「あのガーネフが女性を、ってなるのは間違いない

 カダインの人間ってのは気になったことは口に出しがちだからね」

「在籍者が言うと重みが違いますなあ」

「ウソつくなって言ったのは貴方だろ?」

 

 それにつられてオレも笑う。

 

「さて、行くとするかな

 カダインに戻るもどこなりと行くもお前の自由だよ、エルレーン」

 

 そう言って外へと向かい、トレントを呼ぼうとした時に待ってくれ、と少年が引き止めてきた。

 

「なんだよ」

「カダインを潰すって本当か?」

「灰のオーブがある以上はな」

 

 これ以上シャロンみたいなのが増えられると心底困る。

 材料が無いにしたって、その少ない材料で量産できるようになられたら最悪だ。

 

「……アリティア聖王国を使って更地にするのか?」

「ははは!しないしない!

 そんな勿体ないことするかよ」

 

 聖王国の評価が透けて見えて笑ってしまった。

 

「戦乱であれば魔道士は有効な兵種だし、平和な時代になれば生活の質を上げる基盤になり得る

 学術的な研究を専門的にできるカダインを壊すなんて勿体ないだろう」

 

 エルレーンはオレの言葉にぽかんとしている。

 

「なんだよ」

「い、いや……先程の貴方がやったこともそうだけど、聞こえてくる話とは違うものだなって」

「聞こえてくるものも大体が事実だと思うけどな、相応以上に悪徳を抱えている自覚はある」

 

 少年はその場に礼をとるようにして、跪く。

 

「聖王レウス、僕も手伝わせてくれ」

「手伝うって……オレはこのままシーダ助けに行くぞ、そんで先みたいなエッグいことをするだろう」

「そ、……それでも」

「やめとけよ、そんな年齢から悪行重ねるようなことしなくたって」

「いやなんだ」

 

 顔を上げ、オレを見つめる。

 

「もう、そうやって待つのがイヤなんだ!

 カダインをガーネフに支配されたときも僕は同じように待とうとした、

 その結果が僕にとっての行き止まりだった!

 ……お願いだ、」

 

 顔を横に小さく振り

 

「お願いです、聖王レウス

 僕を連れて行ってください、いつかカダインを取り戻してくださったときにもお役に立ちますから」

「……お前がいるからってカダイン攻略への優先順位が上がったりしないぞ」

「はい、大丈夫です」

「オレに従うってなら、相応に酷い扱いをされると思った方がいい」

「……覚悟します」

 

 先のを見て、首を締められて、挙げ句にここまで言われても折れないのか。

 アカネイア大陸で育っている少年少女の覚悟の決まりっぷりには参った。

 

「わかった、これからは見習い近習として役に立ってもらう」

 

 オレはぐいっとエルレーンを引っ掴いながら指笛を響かせる。

 霧から現れた霊馬にさっそく彼は「わあ」と目を輝かせるも、

 オレと一緒に乗馬させられた。

 

 リーザにシーマと、トレントに人を乗せるのに慣れてきた。

 トレントには苦労を掛けるね、と心で思うと振り向くようにしてちらりと見る。

「本当は一人乗りなんだからな」と言いたげだ。

 それでも振り落としたりしない優しき我が愛馬に感謝をしつつ、オレはトレントを走らせた。


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