一から作る盾の勇者の物語   作:おせっちぇまん

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物語の始まりは唐突に

「ふぁーねみぃ~。早く朝食作らないとなぁ。」

 

俺、岩谷尚文の朝は早い。朝は5時半には起きて朝食の準備。6時頃には両親が起きてくるので、それまでに作り終えなければならない。

 

ドタドタドタドタドタッ!!!

 

階段を思いっきり降りる音が聞こえる。

 

「おお!今日も美味そうだなぁ?尚文のご飯はよ!もう母さんの腕を越えたんじゃないか?ガハハハハ!」

 

この朝からうるさい人が俺の父親、岩谷啓介。

「騒音」を擬人化したような人。とにかくうるさい。喜ぶ時は体全てでそれを表し、悲しい時は赤ん坊のように大声で水溜まりが出来る程に泣きわめく。夜中にも関わらずドンチャン騒ぎを起こすような厄介者で、母さん以外じゃ誰もコントロール出来やしない、暴走ロボットのような人だ。

しかし、他人の悲しみを、喜びを、本気でわかちあう事ができるからか、学生時代は老若男女関係なく人気があった。

 

 

「あらやだお父さん。一度たりとも自分で料理を作った事もない癖に、よくもまぁそんなこと言えたわね?耳を引きちぎるぞハゲ?」

 

この少し口が悪いのが母親の岩谷真美子。

学生時代はクラスのマドンナ的存在だったと父さんから聞いたことがあるが、真偽は不明。年相応のシワを持ち、漫画やアニメでよくある年齢詐欺を疑う程の美貌を持つ女性というわけでもなく、しっかり中年のおばちゃんだ。ちなみに家庭内における権力は母さんの方が上で、父さんは尻に敷かれているというわけだ。「男なんて女の尻に敷かれてるぐらいがちょうどいいんだよ」母さんに叱られたあと虚ろな目をしながら父さんが言いはなった言葉を俺は生涯、忘れることはないだろう。

 

「ハ、ハゲェェェェエエエエエエ?!、まだ俺はふ さ

ふ さ だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「知ってた?ハゲって遺伝するらしいわよ?お義父さんもハゲてたし、貴方もどうせハゲるわ。」

 

「らしい?!らしい程度の知識でお前は人を傷ずつけるのか?俺の事を弄って楽しいのか?!!!」

 

「楽しい♥️」

 

「うぎゃああああああああ!!!」

 

ホントに朝からうるさい。しかし、これが岩谷家での日常。前は弟がいたのだが俺と違い優秀で、海外の大学に通っている。

 

そんな俺も大学にこそ通っているがそこまで頭が良いところというわけでもない。選んだ理由なんて家から近いからだったし。それでも高校までじゃ教えてもらえなかった専門的な授業を受ける事ができ、ちょっぴり勉強が楽しくなった。

 

「よくもまぁ朝から元気だねぇ父さん。もう少しおとなしく出来ないの?」

 

「大人しく?出来るわけないだろ!今日は吉代が帰ってくるんだぞ!テンションあがるだろ!!」

 

「そうよ尚くん、お兄さんとして吉くんをいっぱい抱き締めてあげるのよ?」

 

「あいつそれ嫌だと思うぞ」

 

「よし!それじゃあみんなで空港に行くぞ。いざ、吉代の元へ!!」

 

父さんのテンションボルテージが最高潮だ。それに反して天気は曇り、少しぱらついている。

少し不安に思いながらも、俺たちは車に乗り込み、空港に向かうのだった。

 

 

 

「ん?なんだこの本?」

 

 

今、俺は父さんの車の後部座席に座っているのだが、隣の空いてる席に一冊の分厚い本が置いてあった。

見た目は古臭いのに、ぱっと見たとき傷ひとつ見つからず、変な不気味さを感じる。

 

「四聖武器書?なんだこれ。ねぇ、これ父さんの本?」

 

「ん?どうした尚文!本を持ってるパントマイムか?お前は芸が多いな!!」

 

「久しぶりに吉くんに会えるからはしゃぐ気持ちはわかるけど、落ち着きなさい?それにしても上手ね。」

 

「え、いや別にはしゃいでるわけじゃ…」

 

どういうことだ?母さん達には見えてない?いやいやそんな訳がない…訳ないよな?

 

....

 

「せい!」

 

ヒュ

 

「?!」

 

通り抜けた?確実に父さんの頭部に当てた筈なのに!

まさか…俺以外には見えも触れもしないのか?

そんなことありえるのか?・・・・・・・・

 

「ふふ・・・なんかワクワクしてきたな」

 

まるで小学生のとき、歩いていたら見たことないきれいな石を見つけたときと同じ興奮を感じる。

本当にいつぶりだろか、知らないものを見つけたときのあの高揚感を味わったのは。

 

そんなことを考えていたら車の上を飛行機が通るけたたましい音が聞こえる。

とうとう空港についたのだ。

 

「さぁ、吉代に会いに行くぞ!!!」

「本当に楽しみねぇ、それにしてもうるさすぎないかしら?」

「金髪とか派手な髪になってないといいけどなぁ」

 

そんなことを話しながら、俺たちは車から降り、空港の中へと入ろうとしていた。

 

 

だが、俺たちの体が空港の中へ入ることは無かった。

 

 

車から降りた瞬間、空港が大きな音とともに炎に包まれたのだ。当然すぎる出来事に、俺の体は動くことができなかった。俺の視界は一気に赤と黄色に染まった。炎が押し寄せてくる。

 

最初に俺たちよりも前にいた子連れの家族が燃えた。咄嗟に男が前にでて家族を守ろうとしたがそれよりも先に炎が燃やした。

 

 

次に両親が燃えた。俺に手を伸ばして何かを叫ぼうとしていたようだが、それよりも炎の方が早かった。

 

 

最後に俺が燃えた。体中が焼け、全身に激痛が走る。喉は焼けただれ、うめき声すら出せなかった。

だが、それも長くは続かなかった。一瞬の内に体から痛みは消え、体が浮くような感覚を味わう。

ああ、これが死ぬということなのか。そう考えているとき、無理やり意識がを呼び出される。

 

「ああ、なんだここは?!父さん!母さん!どこにいるんだ!!!」

 

気づいたら俺は光の中にいた。比喩表現ではな、文字通りの意味でだ。

そして目の前にはあの本があった。宙に浮き、ページがめくられ、開かれた状態でだ。

 

「ここはなんなんだ!お前の仕業なのか!俺は死んだのか?!」

 

もちろん、本が答えることはなかった。だが、本から文字が浮かんできた。

 

 

 

これから始まるのは盾の勇者の物語。

 

貴方にはこれから、多くの苦難が待ち受けていることでしょう。

 

だけど諦めないでほしい。この世界を救えるのはあなただけなんだから。

 

 

 

そんな文字が浮かびあがった後、本は消え、俺は床へと叩きつけられた。

 

「おお、勇者様だ!勇者様の召喚に成功したぞ!!」

 

それが初めて、俺がこのクソッタレな世界にきて聞いた言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の14時頃、○○空港にて、飛行機が墜落するという事件が発生しました。

 

原因は飛行機をハイジャックしたテロリストによるものと考えられており、

 

被害者は10万人以上にも上るそうです。

 

 

 

 




本来2話で導入をやる予定でしたが流石にめんどくさいので、1話にまとめました。

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