響けユーフォニアムの最終楽章に出てくる、黒江真由の誕生日を記念して書いた短編SSです。

久々の投稿、初めての2次創作で緊張しています。
どうか楽しんで頂ければ幸いです。

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黒江真由さん。お誕生日おめでとうございます。

初めての2次創作です。久々の投稿で緊張していますが、よろしくお願い致します。


産まれて、出会って、そして

『生きていて一番幸せな事は、ずっと一緒にいたいと思える人とどれだけ多く出会える事だと思うんです』

 

 

 

休日のテレビのワイドショーの中で流れるそんなキレイな言葉を、私は黙って聞いていた。

心から信じあえる友人に出会える事、そんな人に多く出会えたらそれは幸せな事なんだろう。私もそれ位は分かる。

 

けれど、私はその言葉を心の底から共感する事は出来なかった。

何故ならそれを受け入れてしまえば、自分はとても無価値な人間だということになってしまうからだ。

 

 

 

私、黒江真由は今年の3月京都の北宇治高校を卒業した。

部活では吹奏楽部に所属し、レギュラーメンバーとして全国の舞台も踏み、最高の名誉である金賞を手にする事が出来た。

そう言えば「良い仲間に恵まれたじゃないか」と思う人は数多くいると思う。確かにみんな良い子で親しみやすい子だった。けれどみんなと濃密な時間を過ごせたのかと言われると自信がない。なぜなら私は一年しか北宇治吹部には居なかったから。

 

 

私は父親の仕事の関係上、転勤が多かった。福岡県、北海道、群馬県…西から東へ東から西へと、小学校から始まったそれは、今や数えるのも億劫なほどであった(大体土地を8つ位は跨いだのは覚えている)

 

学生の頃からそんな感じだったから、私には故郷とよべる場所がない。引っ越しても1、2年で転校する事が多いから『せっかく仲良くなったのに』というタイミングで別れてしまう。だから私には竹馬の友や長年通じ合ってきた友人と言う者はいない。

 

 

「全国に友達がいるんだもん。楽しい事も多いよ」

部内の仲間にそう語った事もある。それは事実だ。多くの場所を訪れる事で色んな価値観を知れたし、そこにいた仲間とも皆仲良くなれた。それは事実だ。

 

しかしそれはあくまで『友達』止まりであって、心の底から分かり合える理解者と言った物に出会えたわけではない、それはもっと長い時間をかけて培っていく物だと思うから。

 

例えば、同じ吹部の部長を務めていた久美子ちゃん。彼女はドラムメジャーの職を勤めていた高坂さんと通じ合っている、

例え何か言っていなくても二人が見つめ合っている目を見るだけでわかる。あれはもうお互いが無くてはならない、決して今後の人生で切り離す事が出来ない関係であるという証拠だ。

そして、そういった関係になるのは長い時間、少なくとも1年生の頃から卒業するまで共に過ごした時間がないとダメだろう。

 

そう考えると、私にはそう言った関係になれる人はこれまでの学生生活で決して現れる事は無い物だ。

 

 

だから私は心のどこかで冷めていた「友達と言ったって何時かは別れるんだ。私に本当の親友何てできる訳がないんだ」と。

 

 

私は写真が趣味だ。これまでの部活生活や学校行事で多くの友達の姿をフィルムの中に収めてきた。皆でわいわい笑顔で楽しむこの空間が、嬉しかった。

部活でも同じだ。皆で楽しめる事が第一で結果は後からついてくるものだと思っていた。だからこそ強豪を目指している北宇治の在り方には馴染めなかったし、レギュラー決めでギスギスする位なら辞退した方がいいとさえ思っていた。(最もそれは却下されたけど)

 

私はそれに対して積極的にやってきた。色んな人と積極的に話しかけて仲良くなろうとした。

その自分の在り方を疑った事なんて無かった。だって私は積極的にそういうことをしなければ、それが心地良いと認めなければ「自分はとても嫌な人間になってしまう」からだ。

 

 

……だけれど、部長の久美子ちゃんには私の心の闇や私の本音を見せたいと思っていた。彼女も私と同じでひねくれてるし。

けど彼女には高坂さんがいる。あの二人の、聖域と言っていい程の関係性は誰にも立ち入る事は出来ない。勿論私も同じなのだ。

 

 

だから私の心には、ずっと一緒にいたいと思える人はいない。

それが黒江真由と言う人間であり、それはずっと変わる事はないのだろう。私はそう思っている。

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

「真由、なにをボヤっとしているの。手が動いてないわよ」

ママのその言葉を切っ掛けに、私はふと気が付いた。どうやら考え事にふけっていて朝ごはんを食べていなかったらしい。

 

「ゴメン、ママ。ちゃんと食べるから」

「いったいどうしたのよ?何か悩み事でもあるの?」

「別に何もないよ。ただ大学生活はどうなるのかなって思っていただけ」

 

私はそう答えた。別に大学生活に不安を感じていたわけではないが、かといって嫌がらせに悩んでいるとかそう言った訳ではなかったから、いたずらにママを不安がらせたくない。

 

「なら良かったわ。ここの所受験やらでずっとバタバタしてたからねぇ。まだ受験の熱が抜け切れて無いのかもね」

「別に体調も悪くないし大丈夫だよ。何なら今日は出かけてくるし」

そう言いながら、私は目の前のトーストにかじりついた。こんがり焼けたトーストのパサパサした触感が、舌と歯を刺激する。

 

私は普段、パンの場合は焼かない状態で牛乳と一緒に食べるのが好きなんだけど、今日はトーストだった。

別にトーストも嫌いでは無いけど、その渇いた触感は、先ほど物思いにふけっていた私の心の内を現わしている様でどうにも居心地が悪く感じた。

 

その口当たりの悪さをごまかすために、私はテーブルに置いてあるレトルトのコーンクリームスープを口に運んだ。クリーミーが売りだと言っていたそのスープはやけに塩辛かった。ママめ、お湯の量を間違えたな。私は内心毒づくいた。

 

 

「出かけるのは良いけど、夕食の時には帰ってきてね。誕生日の時は一緒に食べたいから」

「分かってるよ。映画見て、大学に着ていく服を見てくるだけだから。そんなに遅くならないよ」

「お願いね。今日はお父さんも早く帰ってくるよう頑張るって言っていたから」

 

今日は3月24日、私の誕生日だ。

最も学校は春休みの真っただ中だから、友達と一緒に誕生日パーティ何てしたことは無かった。

その分パパとママは気合を入れて御馳走を作ってくれる。嬉しいような恥ずかしいようなそんな気分だ。

 

 

「ごちそうさま。それじゃあ私は着替えて行くね。映画は朝一の回で見ておきたいから」

「いってらっしゃい」

 

母のその言葉を尻目に、私は着替えようと部屋に上がった。

着ていく服装は決まっていた。控えめなフリルが付いている白のワンピースに、焦げ茶色のカーディガンだ。

いかにもフェニミン&ガーリーな服装だが、別に男の子に会いに行くわけじゃない。

ただ、大学に入ったら私服を着て学校に行く事になる。人に見られるという事は常に意識していかなきゃならない。

 

 

私はそう言う所がしたたかなのだ。だから私はひねくれているんだ。

そう考えながら、私は目的の服を探す為、クローゼットの中を漁っていた。

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

とは言え、そんな誕生日の休日であったが充実したとは言い難かった。

 

朝一で見た映画は、私と同じ年頃の男性アイドルと女優が出演している学園恋愛映画であった。

朝の芸能ニュースで何でも宣伝していたし、部活でコントラバスを担当している友人が「絶対面白いです!泣けますよ!タオル必須です!」と必死で熱弁してきたものだから、何となく興味があって見に来たんだけど、どうにも私の琴線には触れなかった。

 

主役の男性カッコいいな、女の子は可愛いな、いい物語だな。それ位の感想は思ったけど自分の心が揺さぶられるまではいかなかった。どうにも私はこういった「泣ける」を押し出した話は苦手なのかもしれない。それでもチケット代分の元は取れたと思うけど。

 

その後服を見に行ったが、めぼしい物は無かった。と言うより値段が高い。今の予算で買えるのはシーズンオフになりつつある冬物の服くらいだ。

「やっぱりシーズン中の服は高いなぁ」

服を選んでいる最中にそう呟かざるを得なかった。

 

 

そんな事で時間が過ぎてしまい。今は午後の4時。

陽が長くなってきたとはいえ、あんまり遅くなると暗くなる。何よりこれ以上街を歩き回るのも疲れた。

 

「しかたない。服は暫く高校の時の物を着回して、後はバイトのお金で買うしかないか」

 

私は諦めて、家路に着こうと足を早めた。とその時ーー-

 

 

「あれ?もしかして真由ちゃん?」

後ろから聞こえてきた声に、私は振り向く。

 

「久美子ちゃん」

後ろを振り向いた先にいたのは、ボリュームが豊かな髪が外側に大きく広がっている、まるでタコさんのような髪型が特徴的な女の子、北宇治吹部の部長、黄前久美子ちゃんだった。

 

「久美子ちゃんも外に出てたんだね」

「まあね~。大学も始まるから色々と物入りでさ~。ちょっと買い物をしに来たんだ」

「わかる。私も新生活に向けての服を買いに来たから」

「何かいいの買えた?」

「良いのは合ったけど高かったから。結局買えなかったな」

「私たちバイトもしてないからそんなに高いの買えないよね……」

 

軽く始まった世間話。休日に知り合いに会うのは少々恥ずかしい所もあるけれど、いざ会話が始まってしまえばそれもまた楽しい。私はそう思った。

 

 

「けどよかった~。ここで真由ちゃんにあえて、ちょうど家まで行こうと思っていたから電車に乗ろうと思っていたんだよ」

「私の家に?私に何か用事でもあったの?」

 

私は久美子ちゃんの言葉に首をかしげる。久美子ちゃんは以前私の家に来たことがある。けれども彼女の家からは少し遠いからそう気軽に来ようとできる距離じゃない。一体どうしたんだろ?

 

「うん、ちょっと待ってて。えーと、あれはどこにあったかな……」

久美子ちゃんはハンドバッグの中身を空けて、中身を漁っている。何か探しているのかな?

 

「あぁ。あったあった。良かった~袋はグシャグシャになってないや」

久美子ちゃんはハンドバッグから紙袋を取り出した。薄いクリーム色の紙袋に赤い細線が交差してチェック柄になっている。何とも可愛らしいデザインだ。

 

 

「はい、お誕生日おめでとう!真由ちゃん!」

久美子ちゃんはそう言って私に紙袋を渡してきた。

 

「私にくれるの?」

「だって今日真由ちゃん誕生日でしょ?この時期じゃ学校で渡せないから家まで行こうと思ってたんだ」

まさに一仕事を終えたかのように、久美子ちゃんは満足げに言った。

 

「開けてもいい?」

「勿論」

私は紙袋が皺にならないように丁寧に口を広げ、中身を取り出した。

入っていたのは、人差し指程度の大きさの円筒の容器。底にはひねる部分があってそれを回すと、石鹸状の固形物が飛び出てきた。所謂リップクリームと言う物だ。

匂いもきつくなく、色も落ち着いた感じだ。これならいつ、どんな場所に使っても大丈夫だろう。

 

 

「リップクリーム何てありきたりかなと思ったんだけど、私たち楽器やってるからどうしても唇が荒れちゃうでしょ?これなら貰っても困らないかなって。真由ちゃんの好みが良く分からなかったから……ごめんね」

どうも久美子ちゃんは、ベタベタなアイテムを渡したことを申し訳なく思っているらしい。

 

「ありがとう、とても嬉しい」

私は微笑みながら言った。これは自然な笑顔だ。誕生日当日に親以外からプレゼントをもらった事なんか殆ど無かったから当然な事だ。

 

 

けれどもその嬉しさと同時に、私はある考えが頭に浮かんでしまった。

 

 

「久美子ちゃんは、他の友達にもプレゼントあげるタイプなの?」

私は久美子ちゃんに質問をした。

 

「えーと。同じパートの同学年や麗奈にはあげるかな。葉月ちゃんは髪の毛が鬱陶しいっていってたからヘアピンを渡していたし、麗奈はトランペットの練習するからメンテナンスのオイルを上げたり、緑ちゃんにはチューバ君のストラップだったかな。流石にガチャガチャを最後まで回す羽目になるとは思わなかったよ……最後方は小学生のギャラリーが出来てたし……」

 

久美子ちゃんは空を仰ぎ見て、過去の思い出を振り返っていた。

 

「その三人って全員進路は同じだったっけ?」

「ちがうよ。私は私大に行くけど葉月ちゃんは保育の短大で緑ちゃんは服飾系の専門学校。麗奈はアメリカの音大に留学するから。全員別々だよ」

 

 

そう、全員離れ離れになるんだ。久美子ちゃんと彼女たちはとても仲が良かったけど、進路が違う以上これまでの様に合う事はできない。もしかしたら二度と会う事も無いかもしれないのだ。

そんな思いからなのか、私の口から出てきたのは次の言葉だった。

 

 

「いつか別れちゃう人に、こういうプレゼントを贈るのって意味があるのかな?」

「え?」

私の言葉に、久美子ちゃんは面を喰らったかのようだった。続けて私は話す。

 

 

「誤解しないで。久美子ちゃんの気持ちはとても嬉しいの。けどさ、夫婦とか子供とかならまだしも、いつまで仲良くできるのか分からない関係の相手に、こうしてお金を使って物をプレゼントするのっていつかは後悔しないのかなって」

 

何を言っているのだろう。明らかにプレゼントをくれた相手に言う言葉ではない。

けれども私は話し続けた。

 

「そんな思いをするくらいなら、いっそのこと表面上だけのドライな付き合いをした方がいいのかなって、私は時々そう思うんだ」

うつむきながら話していた私は、顔を上げて久美子ちゃんに問い掛けた。

 

 

「久美子ちゃんはどう思う?」

 

 

久美子ちゃんは予想外の言葉に、返す口も無いようだ。腕を組みながらうーんと言って迷っている。

どうやら困らせてしまったようだ。けれどもこれから先彼女とも会う事は無いだろう。なら自分の疑問をぶつけてもいいよね。私はそんなことを考えていた。

 

 

「そんな事考えた事もないや」

 

 

悩んだ久美子ちゃんが出した答えは、答えにもなっていない物だった。

 

「だってさ。友達って今いるだけで楽しくなれる存在だと思っているし。そりゃいつかは離れ離れになっちゃうのも分かってるよ?けどそんな先の事考えてもしょうがないと思うよ」

 

先のことを考えてもしょうがない……

 

「私もさ、結構余計な事しゃべっちゃうタイプだから、あまり友達は多くない方だし……その分仲良くしてもらっている人には私も色々応えたいって思うんだ」

 

上手くいかない事も多いけどね、特に麗奈には。そう恥ずかしそうに彼女は答えた。

 

 

「先のことを考えてもしょうがない……」

「別に単純な話でさ、今この場で仲良くしたい人にはそうして、そうでない人にはそれなりにしてとか、それ位でいいんじゃない?」

 

それにさ。そういって彼女は言葉を付け足した。

 

「一度は別れても、本当に通じ合っている人とはいつかまた会えると思うよ。だから私、全国に色んな友達がいる真由ちゃんが羨ましいな」

「羨ましい?私が?」

そんな事考えた事も無かった。

 

「そうだよ、転校した分色んな友達と巡り合ったんでしょ?だったら再開できる友達とも絶対に多いはずだよ」

「いつか巡り合える……」

「私もさ、真由ちゃんとは色々あったけど、中々濃い時間を過ごしてきたから凄い思い入れあるし、離れ離れになってもまたどこかで再開したいな」

 

その言葉は私の心に、ゆっくりと染み込んでいった。

 

 

「というかさ。真由ちゃんは大学は一人暮らしするんでしょ?」

「え?うんそうだよ。東京の大学に進学するから」

 

だから春からは親元から離れて独身生活だ。

 

 

「じゃあもう親の転勤とか関係ないじゃん。大学で絶対離れられない友達ができるって!」

 

彼女の言葉に私はハッとさせられた。

そうだ、もう親の転勤についていく必要はない。もしかしたらこれからは長い時間を重ねる事が出来る友達ができるかもしれない。そう思ったからだ。

 

 

「うん……そうだね。ごめんね。変なこと聞いちゃって」

「まぁあんまり思いつめない方がいいよ、ただでさえ真由ちゃんは老けて見えるんだし、悩んだらさらに皺が増えちゃうよ」

 

「老け……」

「あ゛」

 

久美子ちゃんはどうやら失言をしてしまったようだ。

 

「ち、ちがうの。老けて見えるっていうのは大人っぽく見えるって意味で!そ、そう!真由ちゃんスタイルいいし、胸だって大きいし!私なんかと比べて全然……。あぁ~!何言ってるんだろう私!」

 

久美子ちゃんは髪の毛をわしゃわしゃして慌てていた。

そんな姿に思わず私は笑ってしまった。そんなにしたらさらにクセ毛になっちゃうよ。

 

「大丈夫。気にしてないから。それに胸だって秀一君は久美子ちゃんの胸、好きだと思うよ。小さいけど」

 

私のカウンターに久美子ちゃんはジト目で見つめてきた。

「やっぱり真由ちゃん性格悪いよね……」

「お互い様だよ」

 

 

だからこそ私は彼女と通じ合いたいと思っていたし、さっきの言葉がとても嬉しかったんだよ。

 

 

 

~~~~~~~~~

 

 

「ただいま」

久美子ちゃんと別れた私は一直線に家に帰った。時間はまだ5時半、夕飯時には十分間に合うだろ。

 

「お帰りー。夕ご飯、7時くらいになると思うからもう少し待ってて」

「わかったよ。ママ」

 

そう言って私は靴を脱いで玄関を上がり。台所に入った。

 

「あ、そうだ。あなた宛てにお友達から荷物が届いたわよテーブルに置いてある」

荷物?私はテーブルを見た。

 

 

そこに置いてある複数の荷物に書かれていた宛名は、私が昔通っていた学校の友達の連名だった。

小中校と移り変わってきた学校がある、あらゆる地名が書かれている。

 

私は荷物をまとめて抱えて、2階にある自室に勢いよく上がっていった。

「ママ!私がいいって言うまで部屋に入っちゃダメだよ!」

そう、この一時は誰にも邪魔されたくない。

 

 

 

部屋に戻った私は、一つずつ荷物を確認する。

まず最初に開けたのは福岡県の住所の物、清良女子の友人から送られたものだ。

 

まず目についたのは、彼女たちの集合写真。今年の全国大会の時に取ったものだろう。清良女子も同じく金賞を取っていた。あの時はみんなと話し合う事はできなかったが、数年経った今でも全然変わっていない。

 

そして入っていたのは寄せ書きだ。

 

『真由!誕生日&北宇治金賞おめでとう!』

『真由が向こうでも吹部続けてくれて嬉しい!』

『北宇治の演奏、めっちゃ感動した!』

『我等友情永久不滅!』

 

そんな言葉が書かれていた、最後の言葉には思わず笑ってしまった。いくら何でもノリが古すぎやしないだろうか。

 

そして色紙の中央に大きく書かれていたのはこの言葉だ。

 

『東京に行ったら、皆で会いに行くから!そしたら一緒に飲もう!』

 

私は久美子ちゃんの言葉を思い出した。

(一度は別れても、本当に通じ合っている人とはいつかまた会えると思うよ)

あぁ。あの言葉は本当だったんだなと。

 

 

続いて手に取ったのはDVD、「私たちから真由へのメッセージ!」という付箋が貼ってある。ビデオレターだ。

 

 

画面の中のみんなに会いたい。

私は逸る気持ちを抑えながら、DVDデッキのトレイを開けて再生ボタンを押した。

 

 

デッキのスイッチは電気の熱を帯びたのか、温かかった。けどその温かさはそれだけが原因ではないだろう。

 

 

私、黒江真由はそう思っている。




黒江真由と言うキャラクターを初めて見た時に抱いた印象は「和を尊ぶと言っても、この子絶対人間関係に淡泊だよな」という物でした。
それでも彼女が柔らかな雰囲気を保っているのは「人の繋がりを信じていたい」と心のどこかで願っているのではないかと思ったからです。

好きな物に友達とある真由ですが、私たちは彼女の本心をまだ計り知れていないのではないか、そんな気もします。

そんな私が抱いた印象を少しでも出せるように、彼女の本質に迫れるように頑張りました。
解釈違いでしたら大変申し訳ありません。


お読みいただき大変ありがとうございます。
忌憚なき意見と、ダメ出しを頂ければ嬉しいです。


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