異界渡りの財宝王 ~異世界と地球を往来し、マジックアイテムを持ち帰る~   作:水色の山葵

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「なぁ、紘一(こういち)

 

「なんだよ(あたる)

 

「これ、何か分かるか?」

 

 その日、俺はいつもより少し早く登校していた。早朝バイトを休んだからだ。

 

 同じ様に日直で早く来ていた紘一に、スマホの画面を見せる。

 

 開いていたのはメモ帳。

 そこには、昨日俺の視界に浮き上がった文字を写してある。

 俺の名前と年齢部分は隠し、それ以外を紘一に見せた。

 

 正直、俺には意味がさっぱり分からない。

 攻撃とか防御とか。その隣の数字とか。

 スキルってのは、技能……だよな?

 ギフトってなんだよ。プレゼント?

 

 かと言って聞ける相手は多くない。

 ダメ元で、紘一に聞いてみた。

 

 すると。

 

「なんかのゲーム画面?

 お前もついにそういうのやる様になったんだな」

 

「ゲーム……画面……」

 

 飲み込む様に俺は呟く。

 生まれてこの方、ゲームなんて一度もやった事が無い。

 

 ていうか、あれ高すぎるだろ。

 一本5千円とか、買える訳無い。

 スマホのアプリとかも、正直時間が無い。

 

「キャラのステータスじゃねぇの?

 ホラ、こんな感じだろ?」

 

 紘一は、自分のスマホを見せて来る。

 スマホゲームが起動していた。

 イケメンの二頭身キャラクター。

 画面の隅には俺が見せたのと似た様な文字が書かれている。

 

「これ紘一か?

 全然似てねぇな」

 

 短髪黒髪で、ガタイも良く、強そうな顔つきと言われる紘一。

 対して、ゲーム内に映るのは童顔で小柄な金髪イケメンだった。

 

「別にいいだろ、ゲームなんだし」

 

「そうだよ。装備とかと組み合わせて見た目も変える物なんだから。

 魔法の杖なら黒髪眼鏡とか、剣と盾なら短めの金髪とかね」

 

 紘一と話してると、委員長が横からスマホの画面を覗き込んで来て話に混ざった。

 今日の日直は、紘一と委員長だったか。

 

「私、結構ゲームするんだ」

 

 なんか、眼鏡の奥の瞳が輝いてる気がする。

 

「見る感じRPGのステータスだね。

 バイトマスターって何……

 絶対ネタクラス……まぁ望月君らしくはあるけど」

 

「委員長もこういうの詳しいの?」

 

「自慢じゃ無いけど、有名MMOの対人戦ランキングで42位まで行った事とかあるよ!」

 

 腰に手を当てて、そう宣言する委員長に俺と紘一は同時に言う。

 

「完璧自慢じゃね?」

 

「それ、凄いのか?」

 

 俺を見て、委員長はガッカリする様に溜息を吐いた。

 

「……それで、望月君はどんなゲームやってる訳?」

 

 さて、なんて答えよう。

 あの世界に、友人を巻き込む訳にも行かないし。

 

「ゲームのバグを見つけるバイトやっててな」

 

「あー、デバッカーか」

 

「望月君電子機器触れるんだ。

 入学したばかりの時は、アプリのID交換にも手間取ってたのに」

 

「まぁ一応……

 けど、意味がさっぱり分からなくて。

 こういうゲーム? ってどう進めればいいんだ?」

 

「まぁ、普通はモンスター倒してレベル上げだよな」

 

「そうだね。後はダンジョン行ったり、装備集めたり。

 色んな能力を獲得したりとか」

 

「能力……」

 

「そ、このスキルって奴かな多分。

 ギフトは何だろ。何かの固有能力なのかな」

 

 モンスターを倒してレベル上げ。

 装備の入手。

 能力を増やす。

 メモっとこ。

 

「でも、普通だったらプルダウンで詳細見れるよね」

 

「まぁ、ヘルプ機能くらいあるよな」

 

「ぷるだうん……?

 ヘルプ機能……?」

 

「おま、どんだけ機械音痴だよ」

 

「学校の授業でも使うよ、プルダウンって単語」

 

「例えば、俺のアプリならステータスの一部分をタップすると、その言葉の意味を詳しく教えてくれる。

 能力とかも、どういう効果があるのか分かるぞ」

 

 そう言って、実際に操作しながら見せてくれる。

 スキル:美男子の魅了。確率で女性モンスターを3ターン仲間にする。

 どんな能力だよ。

 

「ライダーキックの方が似合ってるぞ」

 

「うっせ」

 

「あはは、ちょっとキモイかも」

 

「なっ、委員長まで……」

 

 肩を落とす紘一を眺めながら、俺は思い出す。

 確かに、あの世界にはモンスターと呼べる存在が居た。

 豚面の巨漢と緑の小人。

 あれを倒せばいいのか?

 

「まぁ、何かクエストとか依頼された事がある訳じゃないなら、レベル上げが無難なんじゃない?」

 

 別に、誰にも何も頼まれてはない。

 そもそも、あの世界にもう一度行くのか。

 行く理由は何かあるのだろうか。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 そう、思ってんのに。

 なんでまた来ちまったかな。

 

 鏡の向こうの世界。

 昨日と同じ様に屋上の姿鏡を通れば、そこは草原だった。

 

「森じゃないんだな……」

 

 昨日死んだのは、森の中だった。

 飛ばされる位置は毎回同じって訳だ。

 

 

 望月充(もちづきあたる) 男 16才10カ月。

 職業 【バイトマスター】

 称号 【貧乏異世界人】

 LV 1

 攻撃 10

 防御 10

 速力 10

 器用 10

 信仰 10

 魔力 10

 ギフト 【複製(デュプリ)

 スキル 【自己分析(マイステータス)lv1】

 

 

 視界にはやはり昨日と同じ文字が浮かぶ。

 やっぱ、夢じゃない訳だ。

 

「死ぬ以外に帰る方法も分からないのに。

 馬鹿だな俺」

 

 そう思いながら、俺は視界に映る文字に触れる様に手を動かす。

 

 

 バイトマスター:100種以上のアルバイトを経験した者だけが就ける職業。バイトで経験した事がある行動を行う場合、全能力が向上する。

 

 貧乏異世界人:異世界からやって来た者の証明であり、異世界でも貧乏である証明。帰還と唱える事で、元の世界に帰る事ができる。金運に関するスキルを習得できない代わりに、1日1度女神の哀れみによって銅貨5枚を貰える。

 

 

「2人の言った通りだ。

 本当に見れた。あいつ等異世界人なのか?」

 

 って、帰還って唱えれば帰れたのか。

 死に損じゃないか。

 

「帰還」

 

 そう唱えると、身体が硬直した。

 1分程時間が経つ。

 俺は学校の屋上で仰向けに倒れていた。

 

「なるほど」

 

 そう呟いて、俺はもう一度鏡の中へ入った。

 帰還は1分程時間がかかる。

 しかも、身体が一切動かなくなる。

 死にそうな時、逃げる方法として使える訳じゃ無さそうだ。

 

 

 次はギフトとスキルだな。

 

 

 ギフト:世界を渡った存在に与えらる力。世界の法則を無視し、異世界でも使用できる。

 

 スキル:技能の上位能力。極めた技能が、肉体能力以上の特殊な効果を帯びた物。LVが上がるほど、多くのスキルを獲得できる。

 

 複製(デュプリ):登録された物品を、精神力を消費する事で創造する事ができる。

 創造された品は任意に消す事もできるが、30分で自動消滅する。

 同じ品は複数登録されていない限り、同時に一つまでしか創造できず、新たに創造する場合は前の品が自動消滅する。

 

登録品条件・視認した事がある。片手に持てるサイズの物品。触れられない物や、生物は登録できない。

登録数条件・【閲覧権限無し(?????)】に付き一つ。

 

 自己分析(マイステータス):自分の能力を文字情報として確認する事ができる。全ての知的存在が保有する基本スキル。スキルLVが上昇する程、多くの情報を閲覧できる。

 

 

 少し分からない単語もあるが、概要は何となく分かる。

 恐らく、拳銃を出したのは複製(デュプリ)というギフトの力なのだろう。

 

 てか、これで宝石でも複製すれば……

 いや、30分で消失するなら売れないか。

 詐欺で逮捕は御免だ。

 

 ――登録数条件を満たしていません。

 

 は?

 登録数条件教えろよ。

 

 ――登録数条件を満たしていません。

 

 なんだこいつ。

 じゃあそこの草とか複製できんのか?

 

 

 ――登録番号002『草』で完了しますか?

 

 

 ……しません。

 

 じゃあ、隣の石は。

 

 

 ――登録番号002『石』で完了しますか?

 

 

 しません。

 

 なんだこれ。

 こっちの世界の物なら登録できるって事か?

 でもまた、登録した後でもう駄目って言われるかもだし。

 慎重に選んだ方がいいよな。

 

 銃が可能って事は、武器や防具も見るだけで複製できるって事だ。

 手に持てるサイズだし、防具は無理かな。

 

 待てよ……

 

 複製は現実世界でも使える。

 拳銃は出せた。

 

 だから例えば。

 魔法の杖とか、そういうのを複製すれば。

 

 それを使ってビジネスに繋げられるんじゃないのか?

 マジシャンでもなんでもやればいい。

 

 そうすれば大学に。

 いや、大学に行く以上の金を生めるかもしれない。

 母さんの老後もどうにかなる。

 放課後、紘一とカラオケに行ける。

 委員長にスイーツくらい奢ってやれる。

 

「ははっ、どうせ死んでも生き返るんだ」

 

 いや、一度そうなったからって、二度目も同じとは限らない。

 

 でも、こんな状態で。

 

 何の希望も無く生きていくのは。

 

 

 ――生きてないのと同じだろ。

 

 

「まずはレベル上げ……だよな。

 やってやる!」

 

 そう呟いて、俺は奥に見える山を睨みつけた。


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