悪の組織の元幹部、釈放されたらダンジョンが出現していた   作:水色の山葵

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第11話 保管

 

 名乗りを上げた俺を見て。

 暗殺者たちは笑った。

 

「フフッ……それは、9年前に滅んだ組織の名前ですよ。

 虎の威を借りるなら、もう少し傘の種類は選ぶべきではないでしょう」

 

「そうだね。

 そもそも、あの組織の幹部は7人だし。

 っていうか、そいつ等全員死んだんでしょ?」

 

「裏の世界でも、その名は終ぞ聞かない。

 貴様の言葉は紛い物だ」

 

 随分、お喋りな連中だ。

 暗殺者として、程度が知れる。

 

 いや、ステータスなんて物が現れたのだ。

 暗殺者も新人が増えたのだろう。

 暗殺者としての適性も探索者の方が高い。

 

 性別不詳のそいつ等に怒気を込めて。

 

「なら、さっさと殺してみろ」

 

 食っ(ちゃべ)るのが仕事かよ。

 違ぇだろ。

 

 テメェ等の仕事は暗殺だ。

 

 気圧されてんのが、丸わかりなんだよ。

 このド三流共が。

 

 

「――来い!」

 

 

 俺の怒声に3人が一気に動き始める。

 俺を囲い、全方位からの波状攻撃。

 

 武器は、三節棍、鞭。

 

 そして。

 

 

 ――スパッ。

 

 

 俺の両手と両足が斬り落ちる。

 

「ヒヒヒヒ!」

 

 小柄な奴が大笑いした。

 

「調子に乗るな。

 お前はただのターゲットなんだよぉ!」

 

 糸か。

 下らねぇ。

 

 達磨になった俺は、うつ伏せに倒れる。

 それを上から見下ろす。

 顔を隠しても、奴等の愉悦は見て取れた。

 

 でもいいのかよ。

 

 そこは『ソイツ』の間合いだぜ。

 

「アゥゥーー」

 

 最初に殺した、女の暗殺者。

 立花吟に見せてやりたい巨乳だから、性別も良く分かる。

 

 それが、小柄な奴の背中から抱き着いた。

 

「なっ、スキュラ?

 生きてたの? 良かっ……!」

 

 女が、奴の首筋を噛み切った。

 

「あぁぁぁぁああああああああああ!

 な、何やってるんだよ……!?

 僕は君の……」

 

 言葉を途切れさせる様に、女はその首を捩じ切った。

 

 それを見ながら、俺は立ち上がる。

 

「何故、立てるのですか。

 いや、足が元に戻ってる?」

 

 再生は既に済んだ。

 

「さて、次はどいつだ?」

 

「貴様ァ!」

 

 昆を持った男が、激情して迫って来る。

 

「三流が」

 

 俺は五流以下だが、お前よりは強いぞ。

 何せ、暗殺者じゃねぇからな。

 

「ア――?」

 

 迫って来ていた男の首が飛ぶ。

 男は絶命した。

 

「糸……

 ユイトの……」

 

 目を細め、残った奴がそう言った。

 声からして女だろう。

 武器は鞭。

 

「さて嬢ちゃん。

 後はお前だけだ」

 

 俺が、そう口にしている間に首の無くなった男が立ち上がる。

 

「爆乳がスキュラ。

 ガキがユイトね。

 それで、コイツの名前も教えてくれよ?」

 

「ヴォー」

 

「アァー」

 

「アゥー」

 

 ゾンビたちが、俺の周りに集まって来る。

 

 俺はそいつ等と肩を組んだ。

 

「ハイ、ハイ! ワンツースリー。

 こ・い・つ・ら・は、俺っちとお友達にぃ?

 なってくれる、そうでぇす!

 ヘイヘイヘイヘイヘイ……♪」

 

 リズムに合わせて、4人で組んだ肩を揺らす。

 勿論、ステップも忘れずに。

 

 さながら合唱団と言った所か。

 いや、ダンス集団かな。

 

 どっちでもいいや。

 

「お前も友達になってくれよぉ……?

 なぁ、いいだろ?」

 

「異常者が……」

 

 怒りを隠す事も忘れて。

 女は、武器を振り上げた。

 

「なぁお前ら、あいつの事も仲間に入れてやろうぜ」

 

 糸と三節棍が、女に絡む。

 

「なっ、皆……!」

 

 そして、スキュラの武器。

 針が4本、身動きの出来ない女へ投擲された。

 

 瞬間。

 

「へぇ……」

 

 針は地面に叩き落とされ。

 鎖も棍も粉々に砕けた。

 

 傍観していた4人目。

 

「隊長……申し訳ありません」

 

「やっと出てきたか。

 雑魚の相手ばっかりさせられる身にもなれってんだよ」

 

 飽き過ぎて踊っちまったじゃねぇか。

 

「私の部下を相手していたのは、殆どお前の死霊だったと思うがな」

 

 前に立つだけで分かる。

 他とは格が違う。

 

「忘れっちまったぜ。

 そんな昔の事はよぉ」

 

「噂通りの狂人振りだな。

 幻の第8席」

 

 ピクリと、自分の眉が動く。

 まるで、俺を知っている様な言い種だ。

 

「俺の噂を聞ける奴なんざ、外部にはヒーロー共しか居ねぇ筈だがな」

 

「私は元々、第2席の秘書をしていた。

 理由はそれだけで十分だろう」

 

 あの姫様の秘書……

 なるほど、そいつは強い訳だ。

 

「シェリアの部下なら、礼儀作法にはもう少し気を使え。

 例えば、相手を見て発言するとかな」

 

「元部下、だ。

 もう、あの魔女は主でもなんでもない」

 

「そうか。

 じゃあテメェを殺しても問題ねぇ訳だ」

 

「圧倒的な強さを持つ幹部たち。

 彼等に、恐れ慄くだけだった昔とは違う。

 及ぶための強さを研鑚し尽くした。

 スキルを修練し続け、レベル5に到達し。

 今の私には、幹部相手でも戦える強さがある」

 

 隊長と呼ばれた男は、ゆっくりと息を吐く。

 

「フゥー」

 

 タイミングを計る様に。

 俺から目を離さぬ様、集中して。

 

 一瞬で手にナイフのような暗器が現れ、それに渦巻く風が纏わりつく。

 

「風塵」

 

 それを見て、俺も息を吐いた。

 

「はぁ……」

 

 溜息を。

 

「幹部と自分が同列だ?」

 

 ギョッと、男の視線が俺を向く。

 

 一瞬で、男の側面まで移動した――俺を。

 

 既に俺は、拳を構え終えている。

 

「なぁお前」

 

「いつの間に――」

 

 戦闘員でもねぇ、秘書如きが。

 

「あんまり調子に乗ってんじゃねぇぞ」

 

 拳を突き出す、その一瞬。

 まるで、俺が未来へワープしたみたいに。

 世界の方が、俺に追いつく様に。

 

 一瞬の虚無の後に、爆発と轟音が空間を埋めた。

 

 男の後ろに有った植林用の森林。

 俺の拳の延長線上に、巨大な丸いトンネルができ上がる。

 

 震えながら、後方を振り返り。

 男は言った。

 

「なんなのだ……これは……」

 

 男のフードは風圧で剥がれ、髪が逆立っている。

 拳は男の手前を振り抜いた。

 その風圧は男を貫通し、森を抉ったのだ。

 

 女は既に言葉を失っている。

 喋れる分、この隊長は優秀だ。

 

「まるで、天変地異ではないか」

 

「お前如きが見れたのは、所詮幹部の遊び。

 最恐の悪の組織、ニーズヘッグ。

 その幹部が最強ってのは、当然(マスト)なんだよ」

 

 爆音が響き、森は掘削されてる間に。

 既にゾンビに、こいつ等を囲わせてる。

 

「……」

 

 チラリと、周りを見て。

 男は動いた。

 

 太腿から取り出した二本の短剣。

 それを、隣の女と自分の首元へ向けて……

 

「ちょっと待てや」

 

 俺の両手が、刃を阻んだ。

 両手から鮮血が落ちる。

 

「心配すんな。

 別にお前等は殺さねぇよ」

 

「何……?」

 

「伝言があるんだ。

 お前の雇い主にな」

 

「何を言っているのか分からんな」

 

「お前等の雇い主が、この島の領主。

 ドルイ・バスケットだって事は分かってる」

 

「……」

 

「俺がここに来た理由は、あの護送車じゃねぇ。

 お前等だよ、狙いは」

 

 玲のハッキング能力は、既にこの島の中枢に到達している。

 

 この島程度、容易に掌握できる。

 そう言った玲の言葉に嘘はない。

 

 こいつ等の指令内容は筒抜け。

 襲う場所も、日時も全て。

 

「最初から、俺たちはお前等の動きを全て読んでいる」

 

 薬の出所も、玲が調べさせた。

 ドルイ・バスケットとその周辺情報。

 及び、この島の警備能力と体制、戦力。

 筒抜けの敵に、全く脅威は感じない。

 

「そんな事が……」

 

「できるんだよなぁ、それが」

 

『貴方の実力じゃないでしょ』

 

 あ。

 イヤホン繋がってた。

 

「って訳で、帰って伝えろ。

 この島は、新生ニーズヘッグの誉ある最初のターゲットに選ばれた。

 よって、この島を統治するお前に未来はない。

 だが、もし献上するのであれば、ある程度の配慮はしよう。

 ニーズヘッグに明け渡す気になった時は、分かる形で宣言してくれ」

 

「幾ら貴様が強かろうが、そんな事ができる訳がない……

 この島にどれだけの探索者が居ると思っているんだ。

 龍騎士団(ドラゴンナイツ)凪船連合(シーユニオン)も、白の教会(ホワイトベル)も、黙ってはいないぞ」

 

「あぁ、だから……楽しみだ」

 

 これで、ここでの仕事は終わりだ。

 

 

「――さっさと消えろ」

 

 

「っ……!」

 

 そう叫ぶと、男は女を抱えて逃走した。

 

 さて、問題が一つ。

 

 この盗撮犯(エサ)、どうすっかな。

 

「ヴォー」

 

 スキュラとか言うゾンビが、盗撮野郎を捕まえて転がしていた。

 

「よぉ、守ってやったんだから感謝しろよ」

 

「あ、ありがとうございますぅうう!

 反省してますからぁ!

 助けて下さいお願いします!」

 

 土下座して、泣いて許しを請う男。

 

 うるせぇな。

 

「取り合えず、ゾンビ共はもういいぞ」

 

 そう3人に指示する。

 すると、爆乳女が近づいて来た。

 

「は?」

 

 ゾンビは、基本俺に絶対服従だ。

 どういう原理か知らねぇけど、逆らわれた事は無い。

 成仏しろと言えばそうする。

 

 その筈だ。

 

 なのに。

 

 スキュラは、俺の胸の辺りに手を入れ始めた。

 

「ヴァー」

 

 取り出されたのは、【ステータスカード】だ。

 

「何してんだ」

 

 それを地面に置き、靴が踏んだ瞬間。

 スキュラの姿が掻き消えた。

 

 同時に、並んでいたユイトとかいう奴と、ガタイの良い暗殺者も、踏みつけて消えていく。

 

 ステータスカードを拾い上げて確認してみると。

 

 

 インベントリ――

 スキュラ(1)

 ユイト(1)

 ゴラウ(1)

 etc.

 

 

 となっていた。

 

 は?


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