悪の組織の元幹部、釈放されたらダンジョンが出現していた   作:水色の山葵

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第17話 転覆開始

 

 16:22。

 立花吟に黒木棺からのメッセージが送られる。

 

 17:11。

 立花吟がソーラ・レヴィを発見。

 ユア・オリオンと立花吟の交戦開始。

 

 17:43。

 東雲玲の姿が迷宮島のネットカフェ店内の防犯カメラで確認される。

 

「いらっしゃいませー。

 お姉さん美人っすねー。

 負けるからデートして下さいよー」

 

「ありがとう。

 でもごめんなさい。彼氏がいるから。

 あぁそれと、早く逃げた方がいいわよ」

 

 17:44。

 東雲玲の入ったネットカフェの全ての電子機器がジャックされる。

 

 17:50。

 世界中の弾道ミサイルの発射プログラムが、制御不能となる。

 

 17:53。

 54発の弾道ミサイルが迷宮島を目掛けて発射された。

 発射された弾道ミサイルは、連続的に迷宮島を狙う。

 多くの探索者が、迎撃の為に出撃。

 

 17:54。

 ネットカフェにあったPCが全て爆破。

 ネットカフェが火事になる。

 

 18:22。

 一発目の弾道ミサイルが到来。

 探索者によって撃ち落とされる。

 探索者達は、次のミサイル迎撃の為に、上空への警戒態勢を続ける。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 18:30。

 

 俺はデビルアンデッド用の装いに着替え。

 ドルイ・バスケットの保有する、城の様に巨大な大屋敷の前に居た。

 

「止まれ。

 ここはドルイ・バスケット様の屋敷だ。

 要件を言え」

 

 2人居た門番の片方が、俺にそう問いかけて来る。

 

「あぁ、要件ですよね要件。

 そう、凄く大切な要件なんですよぉ」

 

「白の教会とは連絡付かねぇし、ハッキングされたミサイルが発射されたとかでてんてこ舞いだってのに、重要な要件だと?」

 

「えぇ、そうだな。

 この島を貰いに来たって所かね」

 

 中指を親指で押さえ、力を込めて一気に弾く。

 その先から、風が弾丸となって放たれる。

 命中した額には穴が開き、その男は絶命する。

 

「は……?」

 

 もう一人の男は、唖然と立ち尽くした。

 その男が、銃を抜くまでの間に死体に近づき。

 

 死体に。

 血を一滴。

 垂らす。

 

「アァー」

 

「え、何、どういう事……」

 

 死体の腰にぶら下がっていたサーベルを引き抜き、もう一人の男の懐へ潜る。

 

 奇麗とは呼べない太刀筋。

 それでも、人は割と容易く死ぬ。

 

「グフッ……

 なんで……」

 

 そりゃ、お前がここの門番なんて仕事を引き受けちまったからだよ。

 

 もう一人の門番も立ち上がる。

 

「ウォー」

 

 同時に、ステータスカードからゾンビたちを呼び出して行く。

 

 3匹のゾンビ。

 スキュラ。ユイト。ゴラウ。

 暗殺者共だ。

 

 命令は一つ。

 

「敵意を持ってる奴は全員殺せ。

 それと、お前等、好きなだけスキルを使っていいぜ」

 

 スキュラ達で実験して、分かった事がある。

 こいつ等の、生前の能力は健在だ。

 

 自己思考能力の欠如。

 反射能力の低下。

 それと痛覚を含めた感覚器官の摩耗。

 

 以外は、生前通りだ。

 

 故に、命令さえ与えてやれば割と動ける。

 

「アァー」

 

「ヴォー」

 

「ハァー」

 

 まぁ、聞こえてんのか良く分かんねぇけど。

 

 ゾンビ共に先行させ、俺も後から入っていく。

 

 正面から、堂々と。

 

「止まれ! ここをどこだと思っている!?」

 

 城の中から、ゾロゾロと私兵共が湧いて来る。

 玲のミサイルで、結構な数の探索者を向かわせたはずだが。

 それでもやはり、並みの数じゃねぇか。

 

 まぁだが、俺にとってそれは。

 

 不利な要素に入らない。

 

「初めまして、ボディガード諸君。

 俺はニーズヘッグ総帥、デビルアンデッドだ。

 この島を頂きに参上した」

 

 跳躍し、踵を大きく上げ、地面を穿つ。

 それは地面に亀裂を生み、私兵共を没落させる。

 

 しかし、相手もそれなりの探索者。

 各々が異能を発現し、防ぐ。

 

 空に飛び退く者。

 身体を固めて耐える者。

 ロープの様な物で、付近の樹の上まで逃げる者。

 

 その上、反撃まで放ってきやがる。

 

「フレイムランス!」

 

「サンダーボルト!」

 

「アイシクルレイン」

 

 杖を掲げ、謎の力で浮遊する探索者共。

 後衛から、炎、雷、氷のを飛ばしてくる。

 

 容易く、それは俺に命中し。

 俺の身体を焦がして、感電させて、凍結させた。

 

 

 アァ。

 

 

 思い出す。

 ヒーローたちと戦っていた時の事を。

 7人の幹部に紛れ、ちょっと強い雑魚を気取って、局の奴等と戦っていた時の事を。

 

 

 パキ。

 

 

 そんな音と共に、身体を纏う氷が割れる。

 この程度で、俺は死なねぇ。

 

「無傷だと……?」

 

「今のを受けて、化物か!?」

 

 そんな事言ってていいのかよ。

 そこはもう、俺の間合いだぞ。

 

 指に力を込めて、筋肉の断裂と共に風を弾く。

 俺の指から放たれる風の弾丸の殺傷力は、スナイパーライフルの上を行く。

 

 雷を撃って来た老人の眉間に穴が開いた。

 そして、俺の指は既に再生している。

 

 ゾンビの一匹が、その老人の死体へかぶり付き、ゾンビウイルスが伝染する。

 

 立ち上がった老人が、所構わず放電し始める。

 

 門内、城の庭と呼べるその場所は、一気に滅茶苦茶になった。

 

 その中を翔けるのは3体の暗殺者。

 隙を縫い、敵の死角から命を刈り取っていく。

 鼠算式にゾンビの数が増えて行く。

 

 これが、俺の異能力。

 

 

 ――【ゾンビ】。

 

 

 殺した対象をゾンビに変え、戦力に変換する。

 

 更にゾンビには再生能力が付与され、頭を破壊されない限りは動き続ける。

 

「ケヘヘヘヘヘハハハハハハハハ!!!!!」

 

 集団戦闘に置いて、俺はニーズヘッグの要だった。

 

「篤と見てくれ、ニーズヘッグは復活したぁ!」

 

 俺の声に返事は無い。

 何故か。

 味方は物言わぬゾンビ。

 敵は自分の戦闘に夢中。

 

「待て! 俺は味方だ!」

 

「おい心をしっかり持てよ!」

 

「こんな、人の死を弄ぶような真似が許されるのか……」

 

「やめろ……やめてくれ……!」

 

「死にたくない、死にたくないよぉ!」

 

「家族が居るんだ、可愛い娘が!」

 

 関係ない。

 どうでもいい。

 お前達のミスは生まれて来る時代を間違えた事だ。

 

 俺が、世界征服を成し遂げた後。

 その世界にはきっと、お前たちの様な叫びを上げる人間は居ない。

 

「俺の夢の為に死んでくれ。

 この雑魚共が」

 

「アァァァー」

 

「ウゥゥゥー」

 

「ヴォォォー」

 

 ゾンビの数が増えて行く。

 見渡す限りの探索者が、死んでいく。

 ここでの戦闘は、俺の勝利だ。

 

 それが、決定しかけた。

 

 その瞬間だった。

 

 天から巨大な影が差す。

 大地に沈む夕焼けを遮り、それは揺蕩う。

 巨影の姿は、伝説を形容する存在。

 

 

 ――ドラゴン。

 

 

 白い鱗に包まれたドラゴン。

 二対の翼と四足を持ち、顔は恐竜の様に獰猛だ。

 蜥蜴の瞳が、眼下に居る生物を矮小と蔑む様に睨んでいる。

 

「全員、焼け死ね」

 

 その背から、声がした。

 

 小さな声を、それでも俺の聴覚は聞き取った。

 その龍を従える男。

 

「リドラ様」

 

 生きていた探索者の一人がそう声を上げた。

 

「何故ですか……?」

 

 と。

 

 その瞬間。

 大地は白い炎に包まれた。

 

 ゾンビも探索者も、問答無用。

 俺を含めた全てを燃やし尽くす。

 

 面白れぇ。

 

 そんな思考と共に、俺の身体は燃え尽きた。

 

 

「これで、全滅か?

 あっけねぇモンだな。

 所詮これが、悪の組織クオリティかぁ?」

 

 龍の背の上で、手綱を握り。

 そんな事をボヤく、黒い鎧の男。

 

 その背から、俺は声を掛けた。

 

「よぉ、会うのは二度目だ」

 

 ビクッ、と黒い鎧の男が震える。

 男はゆっくりと振り返り。

 

「俺は、テメェなんざ記憶にねぇよ」

 

 龍の背に乗る俺と目を合わせた。

 

「俺の女がテメェの面が好みとか言いやがってな。

 俺は個人的にお前にムカついてた所だ」

 

「まぁ、テメェよりは俺の方が面構えもいいだろうな。

 ドブネズミみてぇな事しかできねぇテメェよりは」

 

 男の手に、何処からともなく槍が出現する。

 俺のステータスカードと同じ。

 収納系のスキルか遺物か?

 

「ケヘ」

 

「気持ちワリィ……」

 

「だからよぉ。

 お前の顔を不細工にしてやろうと思ってな」

 

「やってみろ」

 

 兜も、虚空より現れて装着される。

 フル装備ってとこか。

 

「あぁ、丁度溜め終わった」

 

 炎が拭きかけられた時、その炎に向けて跳躍した。

 

 龍より更に上空へ行って、龍の背に着地するまでの数秒で身体を再生させた。

 

 そして、今話している間に、拳への力の充填も完了した。

 

 黒騎士が槍を構える。

 俺をジッと見て、間合いを読もうとしている。

 

 そういうのは、格闘家同士でやってくれ。

 

「爬虫類をペットにするとか、気持ちのワリィ趣味だなぁ!」

 

 龍の背に拳を思い切り叩きつける。

 龍の背がくの字に曲がる。

 

 黒騎士の奥で、龍の頭が白目を向いているのが見えた。

 

 龍の背に乗っていた俺たちは、大地を失い落下する。

 龍の巨体が地面に当たり地震を起こした。

 

「ッチ、こいつ一頭育てるのに幾ら掛かると思ってやがる」

 

「無駄使いが趣味なのか?」

 

 龍の背を降り、大地に立って対峙する。

 

 相手は、この島の空域を司る龍騎士団団長。

 リドラ・アーカム・ヴァレンティ。

 

 その形相が、俺を射止める。

 

「こんなにキレたのは久しぶりだ。

 必ずテメェはぶっ殺すぜ、デビルアンデッド」

 

「人の女に手ぇ出したお前は、最初から死刑確定だ」

 

 この島で、立花吟に次いで最強と呼ばれる探索者だ。

 

「出してねぇよ!」


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