悪の組織の元幹部、釈放されたらダンジョンが出現していた   作:水色の山葵

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第5話 ショッピング

 

 

 種族:アンデッド

 レベル:1

 

 スキル――

 超速再生(EX)

 死病原体(EX)

 限界突破(S)

 黄泉骨叩叫(デスボイス)(S)

 

 インベントリ――

 フレアドッグの魔石(10)

 ゴブリンの魔石(32)

 骸賢王の頭蓋骨(1)

 骸賢王の魔石(1)

 

 

 

 ◆

 

 

 

 少し触ってみたが、ステータスカードの効果は主に2つある。

 

 まず、俺の能力を表示する事。

 

 そして、ダンジョン内で手に入れた物を保存する機能。

 

 便利アイテムって訳だ。

 まぁ、あの程度の雑魚を倒した報酬にしては十分か。

 

 立花が去っていた方に進むと、洞窟の出口があった。

 石造りの降り階段と昇り階段。

 

 靴跡を見ると、昇り階段に向いている。

 真新しいから、多分立花の痕跡だ。

 

 上に行くか。

 

 進んでいくと違和感を感じた。

 浮遊感に似た感覚。

 最初に、ここに入って来た時に似ている。

 

 それは錯覚でも何でもなかった。

 塔の入り口に、一瞬で景色が切り替わる。

 

 訳が分かんねぇ。

 なんで、階段を昇ったら出口なんだ?

 

 まぁいい。

 丁度、服を着替えたかった所だ。

 自分の血と魔物の血でべったり汚れた服。

 矢で穴だらけだし、犬に焦がされてる。

 

「Welcome back」

 

 今朝にも挨拶した警備員が、そう声を掛けて来る。

 やべぇ。翻訳用のイヤホンが壊れてる。

 

「せ、センキュー」

 

「Is that outfit okay?」

 

 やべぇ。

 こちとら高校中退だ。

 

 俺の服を指してるし、多分心配してくれてそうだが……

 

「あ、あー」

 

 と、困ってると日本語が聞こえて来た。

 

「何をやっているのかしら、棺君」

 

 黒髪を肩に掛けながら、東雲玲がそう言った。

 

「英語が……分かりません……」

 

「はぁ……」

 

 溜息をついて、玲は警備員と話していた。

 

「Is that person's outfit okay? It looks torn.」

(「その服、破れてますけど大丈夫ですか?」)

 

「Don't worry, he's not hurt. He's just crazy.」

(「怪我はないから心配しないで、彼はただ頭がおかしいだけだから」)

 

「Oh, I see. There's a clothing store on the second floor if you want to check it out.」

(「そうですか。二階に衣服を扱うお店もあるので良ければ利用して下さい……」)

 

「Thanks, I'll go take a look now.」

(「ありがとう、これから行ってみるわ」)

 

 ……訳わかんねぇ。

 

「行くわよ」

 

「何処に?」

 

「洋服屋に決まってるでしょ」

 

 少し、怒っている様子。

 そんな玲の後を俺は追った。

 

 

 ◆

 

 

 洋服を選び終え、着替えた俺を見て。

 ほっとする様に、彼女は呟く。

 

「何があったらこうなるのよ……?」

 

 俺のボロボロになった服を、袋に詰めながら。

 

「モンスター共、思ったより強かった」

 

 最後の奴はまぁまぁだった。

 もっと奥へ行けば、あれより強い奴も居るんだろう。

 

「それより、なんで玲がここに居るんだ?」

 

「部屋に居ても暇だから、迎えに来たの」

 

「そうか」

 

「ねぇ、もう一つ聞いてもいいかしら?」

 

「ん……?」

 

「なんで、この服から女物の香水の匂いがするの……?」

 

 女物の……香水……

 

 いや、そんなの相手は一人しか思い浮かばない。

 立花吟に引っ付かれた時だ。

 

「立花吟、お前も憶えてるだろ?」

 

「えぇ。私達の邪魔をしてたヒーローよね。

 そう言えば、あの人も白の教会っていう組織に所属して、今はこの島に居るらしいわね。

 貴方、まさかとは思うけれど……」

 

「あぁ、ダンジョンで会ったんだよ」

 

「で、なんでその女とこんな近距離に接近する事になるのかしら?

 しかも、匂いが移るって事は一瞬じゃ無いわよね?」

 

 蛇の様な視線が俺を射す。

 袋を持つ手が震え、真っ黒な瞳が俺を見る。

 

「抱き着かれた。

 俺を新人探索者だと勘違いしてたみたいだったな」

 

「勘違いじゃ無いじゃない。

 新人だったら、なんでそんな事になるのよ?」

 

「知らねぇよ」

 

 あいつの思考回路は、俺にも意味不明だ。

 

「クソビッチ……」

 

 爪を噛んで、玲はそう呟いた。

 悪の組織っぽい顔だ。

 

「そんな事より玲、腹減った」

 

「あぁ、何か食べる?」

 

 このダンジョンを囲む中央施設は、巨大なショッピングモールのようになっている。

 基本的な店は揃ってる感じだ。

 

 勿論、それはダンジョンに出入りする探索者用のサービスも含まれている。

 

「まずは買取所に行くぞ。

 これからは、俺が金を出す」

 

「別にそんな事……気にしなくていいのに」

 

 そう言って、玲は俺の腕に自分の腕を絡ませた。

 

 そのまま、買取所に向かう。

 

 

「ささ、最高級の……

 ス、ススス、ステータスカードォォォオオオオオオ!!!????」

 

骸賢王(ハイエストリッチ)のま、魔石とととと、ず、頭蓋ィィィィイイイイイイ!?」

 

「黙れ叫ぶな」

 

 うるせぇ店員に、素材を売りつける。

 

「その遺物なら、5000万DPでお引き取り致しますが……」

 

「売らねぇよコレは。

 他のモンは全部売ってやるから、静かにしてくれ」

 

「も、申し訳ありません。

 今年一番の大物商品でしたので」

 

 モノクルを付けた、紳士服の初老がそう言いながら、魔石を鑑定していく。

 爺さんあんな大声出して大丈夫かよ。

 

 翻訳用のイヤホンは、玲が予備に持っていた物を借りた。

 

「へぇ、迷宮島っつっても大した物はねぇんだな」

 

「いえ、上級探索者はこの店の様な末端の買取所ではなく、契約している大手の会社に卸しますから」

 

「なるほどな。

 てかさっき言ってた、DPってのはなんだ?」

 

 俺がそう聞くと、隣に座る玲が捕捉する。

 

「この人、今日この島に来たばかりなの。

 説明してくれるかしら?」

 

「勿論でございます。

 迷宮島専用通貨――ダンジョンポイント。

 通称DPとは、この島で使用できる通貨の事です。

 全て電子通貨となっており、カードを使用します。

 カードの発行は、うちでも可能ですよ」

 

「市役所とかに行かなくてもいいんだな」

 

「えぇ、こちらで入力した情報がこの島の統括システムにアップロードされますので」

 

「じゃあ頼む。カード持ってねぇし」

 

「かしこまりました。

 それと、鑑定も終了しましたよ」

 

 言いながら、爺さんは電子パネルを操作する。

 

「それでは登録情報をお聞きしますね」

 

 爺さんの質問に答えていく。

 名前、国籍、住所、年齢、電話番号。

 その他諸々。

 

「必要事項の記入は終了です。

 それでは、買い取り額ですが……

 ゴブリンの魔石が1つ1200DP。

 フレアドッグの魔石が1600DP。

 骸賢王の魔石が140万DP。

 そして、骸賢王のユニークドロップ。

 頭蓋骨は、2200万DPでお引き取りさせていただきます」

 

 計23,454,400DP。

 そうモニターに表示される。

 

 そこから、買取手数料が5%。

 カード発行手数料1万DP。

 そして、迷宮税が20%引かれる。

 1760万くらいになった。

 

「ここに入っておりますので」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 金色に光るカードを受け取り、俺は店を後にする。

 

「これって、日本円だとどんくらいだ?」

 

「相場だとあんまり変わらないわ。

 でも元は無人島だから、物資の殆どが輸入頼りで物価はかなり高いのよ。

 だから、3分の1円くらいだと思った方がいいわね」

 

 って事は、600万くらいだな。

 まぁ、初日にしては悪くねぇのか?

 

「なんか食べたいモンあるか?」

 

「なんでもいいわよ」

 

「じゃあ、中華にしよう」

 

「好きなの? 中華」

 

「辛い食べ物は、体温が上がるからな」

 

「……そう」

 

 少し、悲しそうに玲は俯く。

 別に、そういう顔をさせたい訳じゃ無かったんだが。

 

「まぁ、お前とこうして歩いてるだけで、俺の体温は上がってるが」

 

 少し照れくさくて、視線を逸らす。

 玲は、何も言わなかった。

 

 しかし、絡めた腕に籠った力は、少しだけ強くなった。

 


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