ナリタトップロードと新人トレーナーがすごくすごいイチャイチャしながら頂点を目指す物語+α   作:YMS.bot

133 / 142
125 変わり始めたトレセン学園

「ありがとう、参考になったよ」

「いえいえ。力になれたのなら良かったです」

 

 ゆっくりとトレーナー室の扉が閉まり、俺は大きな溜息を吐く。

 一体、何が起きてるんだ?

 俺は思わず頭を抱え、机の上に広げたノートに名前を記入し、その長い羅列を並べる。

 

「何が一体、どうなってんだ……」

 

 ノートに書かれているのはこれまでここに尋ねてきたトレーナー。

 俺は自他共に認める嫌われトレーナーだ。

 周りからは奇人変人扱いをされていて、あまり人が寄り付かない事を自覚している。

 だから、このトレーナー室に来る人なんて殆ど居ないはずなんだ。

 なのに、今日だけで既に15人。

 頭を抱えざるを得ない。しかも、まるで狙い済ましたかのように全員が同じ質問をぶつけてくる。

 

『聖蹄祭、担当からデートに誘われたんだけど、どうしたら良い?』

 

 綺麗に全員が同じなんだ。

 そんなの知る訳ないじゃないか。それぞれの好みがあって、やりようもあって、一番大事なのはその信頼関係を築いてきた君たちだと。

 俺はたまらず頭を抱えていると、ひょこっとジェイソンが机の上に乗る。

 それから不思議そうに首をかしげ、俺の頭の上に右前足を置く。

 

「ジェイソン……何が起きてるんだと思う? まるで全員が示し合わせたようにデートの相談をしてくるなんて。しかもさ、トレーナーってデートは御法度で教えられるんだぜ? 明らかにおかしいよな」

「にゃ~」

 

 俺はジェイソンを抱きかかえ、お腹をコチョコチョと撫で回す。

 ゴロゴロと喉なりをし、されるがままになるジェイソン。

 明らかな異常事態だ。今までこんなこと無かったのに。

 

「……何か起きてるのか?」

 

 ジェイソンを撫でながらそう呟くと、スマホが震える。

 それはメッセージを受信した合図。俺はスマホを手に取り、画面を見る。

 あて先は……トプロちゃん?

 画面を操作し、メッセージ画面を開く。すると、そこには――。

 

『ごめんなさい!! 今日はトレーニング前にお昼御飯を食べます!! 恋愛相談が立て続けに来ていて……本当にごめんなさい!!』

 

 れ、恋愛相談?

 いや、待て。これ、トプロちゃんも同じ状況か?

 俺は思わずエルトレーナーに連絡をする。

 

『エルトレーナー、応答して下さい』

『どうしたんだい?』

『エルトレーナーって今日、恋愛相談とか受けましたか?』

『そういえば、何だか急激に増えたよ。特に今日から。君も?』

『ええ……』

『なるほど。何かあったのかもしれないね。あ、でも、君もご存知の通り、URAが色々根回しした可能性とかあったりしないかな?』

 

 エルトレーナーのメッセージを見つめ、俺は顎に手を当てる。

 URA?

 そういえば、あの一件以来、何一つ事は動いていなかった。

 当人であるエルトレーナーだって何か処分があるかと思っていたが、特に無く、今まで通りに過ごせているという話だ。

 彼らがまた何か余計な事をしたのか?

 俺が考えていると、エルトレーナーからメッセージが飛んでくる。

 

『いや、その可能性は薄そうだね。今、URAに確認を取ったら、何もしていないそうだ。会長自身からの連絡だから間違いないだろうね』

『ありがとうございます』

 

 エルトレーナーは会長とつながりを持っているのか。

 エルトレーナーの言を信じるのならば、URAに何か問題があったという訳ではない。

 つまり、このトレセン学園内で何かが起きている、という事になる。

 これは何かちょっと気になるな。俺は文字入力をする。

 

『俺、ちょっと調べてみます。仕事にならないので』

『そうだね。分かったよ。こっちもエルにそれとなく探りを入れてみる。何か分かったら教えてくれ。先駆者として責任は取らないといけないからね』

『分かりました。では』

 

 俺はスマホをポケットにねじ込み、立ち上がる。

 ジェイソンを机の上に置き、頭を撫でながら目を見る。

 

「ジェイソン。今から外に出てくるから。お留守番、宜しくな」

 

 ふりふりと尻尾を振りながらジェイソンは俺の言葉を聴いたのか聴いていないのか分からない顔をしたまま、皐月賞トロフィーの中へと戻っていく。

 定位置に戻ったという事は分かってくれたと判断してもいいだろう。

 俺はトレーナー室を後にして、学園棟を目指して歩き出す。

 ちょうどお昼時。トレセン学生たちの会話も聞こえてくる。

 

『ねぇ、噂聞いた?』

『聞いた聞いた。ヤバいよね。今、担当を持ってる子たちに滅茶苦茶チャンスがあるんでしょ? あーあ、私も担当を見つけるとき、そんな運命的な出会いとかしたいな~』

『ねー。スパダリトレーナーとかいいよね~』

 

 ウマ娘たちが未来予想図を語りながらトリップしている。それはまさしく夢見る女の子。

 俺は彼女たちに近づき、声を掛ける。

 

「ごめん。少し良いかな?」

「え? あ、ヴィーナスのトレーナーさんだっけ?」

「え? G1ウマ娘のトレーナーさんが何? 何か聞きたい事?」

「噂って何かな?」

 

 俺が尋ねると、二人は顔を見合わせ、意外そうな顔をする。

 

「え、知らないんですか!? ナリタトップロードさんとお付き合いをしているのに!?」

「いや、逆じゃない? ナリタトップロードさんとお付き合いしているから知らないのかも」

「あ、それはある!! えっとね、噂っていうのは、トレーナーとウマ娘の恋愛がもしかしたら認められるかもしれないって噂が滅茶苦茶広まってるんだよね」

「……え?」

 

 は? はい?

 いや、一日二日で一体なんでそんな事になってるんだ?

 

「な、何で!? それ、全然認められるものじゃないし……ていうか、一体全体どうしてそんな事に……そんな噂の出所って分かる?」

「いや~、それは分かんない。でも、もうトレセン学園中に広まってて、トレーナーがついている子は結構躍起になってるって噂だよ。最初から付き合ってる人達に恋愛相談とかしてるって、カフェテリアで凄い人だかりになってるんだから」

「……なるほど」

 

 なるほど。状況は理解できた。

 俺は二人に礼を言ってから、少し離れ、考える。

 一旦、状況を整理しよう。

 まず、ウマ娘とトレーナーの恋愛っていうのは認められていない。

 世間体とかあるし、何より教え子に手を出す教員というのは法律で認められていない。

 そうした理由や大人の事情、トレーナーの人材不足だったり、過去の一件からウマ娘とトレーナーの恋愛っていうのは認められていない。

 これが通説で、俺とトプロちゃんはこの通説の中、自分たちの関係性は認めてもらおうと頑張っている。

 

 しかし、ウマ娘とトレーナーというのは惹かれ易い関係という点がある。

 これはウマ娘側が一生に一度のトゥインクルシリーズを一緒に戦ってくれて、人生を背負ってくれるという劇薬、そんなのを多感な思春期女子たちには刺激が強すぎる。

 それ故にウマ娘たちが担当トレーナーを好きになるというのは割りとある話なのだ。

 

 それを大人としてストッパーを掛けているのがトレーナーだ。

 

 『トレセン学園は婚活会場ではない』

 

 この一言で恋愛を禁止し、そう教育されている。だから、俺が変人として見られる訳で。

 この根底が今、ぶち壊されかけているということか。

 現にトレーナー側も俺に恋愛相談なんて来ている以上、何かが起きているのは事実。

 火の無い所には煙が立たない。

 誰かがこの噂を流した奴が居る。しかも、トレーナーすらも巻き込んで。

 

「URAじゃない……か……」

 

 一番可能性があるのはURAだ。

 だって、こういう形にしたいのはURA会長の意志。

 ただ、この施策を急激に進めると間違いなくトレーナー側から反感を買う形になりかねない。

 だから一度、ためしに噂を流して、トレセン学園がどうなるのか見たいと考えるのは自然な話……。理事長もそっち側であるし、その可能性が一番高い気がする。

 

 それに近い内に『聖蹄祭』だってある。

 

 学業では文化祭にあたる訳だし、デートにはうってつけだ。

 それと同時にファン感謝祭の側面も持っていて、ファンの反応をダイレクトに感じる事だって出来る。考えたな……これはいわば、試金石。

 この方針で進んだ場合に、トレセン学園自体がどうなるのか。

 上手くいけばそれで良し。ダメならば元に戻せば良い。

 何より、恋するウマ娘たちにとっては有難い話。何せストッパーが無くなるんだから。

 挑戦権が与えられた事と同じ事。

 

「……一旦、カフェテリアに行ってみるか」

 

 状況を見てみよう。話はそれからだ。

 俺はカフェテリアへと足を進めていく。それから数分もしない内にカフェテリアに到着した。

 お昼時という事もあり、学生たちで賑わうカフェテリア。

 その一角を見つける。そこでは――。

 

「ケッ!? ちょ、ちょっと待ってくださいデース!! じゅ、順番、順番ですから!!」

「ほら、並んで下さいね~」

 

 困惑した様子のエルコンドルパサーと集まるウマ娘たちを笑顔で威圧するグラスワンダー。

 

「えっと……そうですね。そういう場合は……」

 

 恋愛相談に来るウマ娘たちに朗らかな笑顔で答えていくメジロアルダン。

 そして、もう一人。

 

「え!? と、トレーナーさんと上手くいくひ、秘訣ですか!? す、素直になる事とか?」

「素直になっても大人はスルーしちゃうんです!! 委員長、何か無いですか!? こう、一発で落とせる方法とか!?」

「い、一発ですか!? こ、コスプレ?」

「……委員長?」

「い、今のは無しです!! や、やっぱり素直にぶつけるしかないと思います!! 当たって砕けろ!! そのくらい押すのが良いと思います!! はい!!」

 

 ワタワタと慌てた様子で恋愛相談を受けるトプロちゃんの姿があった。

 こりゃ大変な訳だ。ていうか、ウマ娘たち我慢してたんだな、列が結構出来てるし……。

 俺がそんな列を眺めていると、聞き慣れた声が聞こえた。

 

「……珍しいわね、ここに来るなんて」

「あ、アヤベさん。これ、どういう事?」

「見てそのままよ。恋愛相談」

「いや、それは見て分かるんだけど……何でこんな事になったの? 俺もトレーナー側から滅茶苦茶恋愛相談されたんだけど……」

 

 俺がそう言うと、アヤベさんは当然と言わんばかりに頷く。

 

「そうでしょうね。恋愛相談をした子はすぐにトレーナーを捕まえに行くだろうから。……なんでこんな事になったのか。それは私にも良く分からないのよ」

「分からない?」

「ええ、朝、ほら、いつも通り、トレーナー室で過ごしてから教室に戻った時には既にトップロードさんが詰め寄られていたから。恋愛相談をして欲しいって」

「じゃあ、朝からこんな感じ?」

「ええ。ウマ娘たちもチャンスと言わんばかりに距離を縮めようとしてるみたい。……貴方、何かした?」

「今回は流石に俺じゃあないな。……理事長は知ってるのか?」

 

 アヤベさんは小さく頷く。

 

「ええ、状況を理解した上で放置したわ。まぁ、ウマ娘側に悪い事って特に無いでしょう? だから、理事長も放置したんじゃない?」

「言われてみればそうなんだけど……」

 

 実際そうなんだよな。

 ウマ娘側に悪い事って特に無い。ただ、フラれる可能性、恋が破れる可能性があるってだけ。

 それはウマ娘側もトレーナーの人となりが分かっていれば問題ないだろうし。

 

「聖蹄祭もあるし……チャンスっちゃチャンスか……」

「そうね。それも拍車を掛けてるんだと思うわ。トレーナー、どうする?」

「どうするって止める訳にはいかないだろ。それにトプロちゃんだって力になりたくてやってる訳だし。俺が介入する要素無し。あんまり酷いなら止めるべきだけど、そうじゃないなら、仕事に戻るよ」

「そう。トレーニング時間前には連れて行くから、安心してちょうだい」

「おう、任せた」

 

 そう言い残して、俺はカフェテリアを後にする。

 まぁ、うん。 

 

 これから先、もしかしたらトレセン学園は婚活会場とか言われるようになるのかもしれない。

 

「ま、待て、カレン!! なっ!?」

「お兄ちゃん、あっちでカレンとお話しよ?」

 

 ……そっとしておこう。

 

 今日もトレセン学園は平和である。




 今週は月水金更新でーす。

 今、書いてる部分を第一部としました。
 第一部はRTTTの菊花賞まで。そこまでで一旦、一区切りになりまする。
 なので、話がかな~りキリ良く終わるつもりで書いてます。

 『予定は未定ですが、150話くらいで終わりたい!!』

 簡単に言うと、トレーナー、トプロちゃん、アヤベさん。この三人の過去とかに全部区切りをつけるみたいな感じ。
 オペラオーはね、ほら、翌年、覚醒するから……。
 
 ただ、それで終わりではありません。
 知ってます?
 ナリタトップロードって2002まで走ってるんですよ?
 つまり、まだ3年あるって事……。
 デジたんもカフェもあるんだからね、まだまだ続きますよ?

 これからもゆったりと頑張っていきます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。