白狐の行く開拓の旅 作:わんだーらいだー
「ああもうっ!どうしたらいいのよぉ!」
耳障りな叫び声が部屋に木霊する。丸いサングラスをかけた男──ゲームマスターであるチラミが地面に転がってじたばたと暴れるのを私は冷たい目で見つめていた。
ジャマト・グランプリを制し、ジャマ神となったバッファによって数多の仮面ライダーが失格となった。対抗出来そうな浮世英寿は前回のゲームで消滅したまま。IDコアがあっても、本人がいなければどうしようもない。挙句、ヴィジョンドライバーをベロバたちジャマト陣営に奪われているため英寿を復活させることも出来ない。
「このままでは犠牲者が増える一方…」
今のところバッファが仮面ライダーたちを完全に消滅させている訳では無いため死人は出ていないが、いつ彼が本気で仮面ライダーたちを完全に消滅させようと思い直すか分からない。
「ギーツ、貴方なら一体…」
手に握った狐のコアを見詰め、空を空に翳す。──瞬間、赤い影がコアを掠めとる。慌ててそちらを見ると、赤い髪の女がギーツのIDコアをその手の中で弄びながらこちらを見ていた。
「貴女は…?それを返しなさい!」
「ふふっ…ごめんなさい。それは出来ないの」
優雅に微笑む女は、悠然とカウンターに座りあるものを取りだして見せる。黒い液晶が特徴的な"ソレ"の名は──。
「ヴィジョンドライバー!?」
「その通り。創世の女神とやらに興味は無いけれど──"創世"の運命を歩む彼には興味があるの。私も、エリオもね?」
そう訳の分からないことを告げた女性がヴィジョンドライバーを腰に巻き付ける。瞬間、背後の空間が割れるようにして引き裂かれる。止めようと駆け出した私を尻目にゆっくりとその空間の裂け目に近づいていく女の行先を青色の光弾が阻む。
「待ちなよ」
「あら、貴方は…」
「オレはジーン。…ギーツのスポンサーだよ。キミにギーツのコアを持ってかれるのは困る」
「そうよぉ!私にヴィジョンドライバーを返しなさい!」
オーディエンスルームから駆けつけたらしいジーンと、突然のことに固まっていたゲームマスターが再起動してヴィジョンドライバーを取り返そうとする。──しかし。
「残念。それは出来ないわ」
「なら、力ずくで取り返す!」
【レーザーレイズライザー!】
スポンサー専用バックルであるレーザーレイズライザーを構えたジーンを見てもなお、女は余裕の笑みを崩さない。
「忘れたのかしら?今の私にはこれがあるのよ?」
ヴィジョンドライバーに手を添えただけで、その場にいた全員が吹き飛ばされた。その隙に女は空間の裂け目に消えていく。
「そうそう。私はカフカ──女、なんて酷い呼び名は辞めてちょうだいね」
くすくす笑って女──カフカは消えていった。カフカが消えると共に、空間の裂け目は少しづつ元に戻り始める。
「待てっ!」
閉まりゆく裂け目にジーンが滑り込むと、それが引き金となって空間の裂け目が完全に締まりきる。残された私とゲームマスターは顔を顰めてカフカのいた場所を睨みつけた。
「英寿…」
こうして、世界はまた少し作り替えられた。これから始まるのは、星と星を移動する開拓者たちの乗る列車と世界を作りかえ続けてきた無敗の英雄の物語。
崩壊シリーズはニワカです。ここ間違えとるでとかあったら教えて頂けると幸いです。
カフカ実装はよ