ブラック・ブレット Monsters:Rulers of Earth   作:アマナットー
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祝、ゴジラ復活。


序章 『神々の復活』
 少女は『神』と邂逅したようです


 

 それは、異様な光景だった。

 

 

 これはいったい、なんなのであろうか…………?

 

 

 少女はすでに廃墟と化した建造物の上で立ち尽くしたまま、眼前に広がる光景を凝視していた。

 降り始めた雨で湿った風が埃と血、そして肉が焼けたような臭いが混じった空気を運び、少女の衣服や髪を揺らす。

 少しだけ見下ろし、目を凝らして見渡せば、憎き異形の群体がさらに異形な肉塊と成り果てている。もともとここには千を超える群れがいたのだろうが、そのすべてが「ナニモノカ」によって斃されていた。その規模は少女一人だけではとても把握できるものではない。

 時々、その赤目にわずかに光をともしたままの個体がいたが、中途半端につぶされたそれは自身の血とぐちゃぐちゃの内臓にまみれており、その光を失うのは時間の問題だろう。

 

 下手な英雄談でも出てこないような死屍累々の光景が、少女の眼前に広がっている。おそらく、いや、絶対に、「ガストレア戦争」初めての、ガストレアの圧倒的“劣勢”である。地球上においてガストレアが劣勢となったことは何度でもあっただろう。しかし、それは所詮局地的なものに過ぎず、少なくともガストレアの親玉といえるゾディアック、その中でも『無敵』と称されている金牛宮――タウルス――とその群れが劣勢になった事などなかっただろう。少なくとも、今日までは。

 

 

 

 少女の耳に、鳴き声が響く。視線を追うと、おおよそ一キロ前方。そこに少女が狩るべき目標だった金牛宮が、自身に降りかかる『暴力』を少しでも遠ざけようと、その生存本能に従い鳴くことによって、目の前に存在する巨大な黒い「影」に威嚇している。

 

 金牛宮も「影」も、両者の戦闘によって生じたものであろう砂埃と雨雲の薄暗さに隠れていた。どちらも山のように巨大だったが、金牛宮と対峙する影のほうがわずかに大きい。一方は鳴き叫び、もう一方は微動だにせず、一定の間隔で距離を取り合って、睨み合っていた。

 

 そして、影が動いた。巨大な鉄槌を下したかのような轟音を何度も響かせ、大地にヒビを入れてながら金牛宮に突進していく。信じられないことに、足音のようだ。対する金牛宮も、生理的嫌悪感を抱かせる鳴き声を発し続け、同じぐらいの速度でこれにを迎え撃ち、激突し、押し合う。

 取っ組み合いで圧倒的なパワーを見せたのは「影」だった。いくら金牛宮より少し体格が大きくても、同じぐらいの大きさの敵を圧倒するのは難しい。だが、影は平然と金牛宮を前へ前へと押し込んでいく。いくら踏ん張っても結果は同じで、最後に突き飛ばされた金牛宮は廃ビル群へと叩き付けられ、瓦礫に埋まってしまった。

 

 とどめを刺そうと近づいてくる影に、金牛宮はあわてて起き上がり、存在する体中の触手を用いてこれに応戦するが、影はそれを意に介さずその大顎で金牛宮の首に噛みついた。悲鳴を上げて金牛宮はその断頭台から振り切ろうとして頭部をめちゃくちゃに振り回すが、その顎はまるで離すそぶりすら見せず、逆に牙が食い込んで金牛宮の骨がメキメキときしむ嫌な音が響く。影があと少しで首の骨を噛み砕こうとしたそのとき、金牛宮の剛腕が、人間でいう鳩尾の部分にめり込み、そのまま影を突き飛ばした。苦悶の鳴き声を響かせ、影が金牛宮から数歩後ずさった。金牛宮は一声鳴くと、お返しとばかり鉤爪を振りかぶり影の皮膚を掻き切る。掻き切るたびに影の表面に火花らしき光が飛び散った。敵に攻撃できるのがうれしいのか、金牛宮はほこったような声を上げる。血と唾の混じった液体が口と喉の傷から飛び散った。

 

 だが影は金牛宮の攻撃に驚いてよろめきはしたが、倒れなかった。影にとって金牛宮の攻撃など、ほとんど効いていなかった。かなり強く攻撃すれば表皮を肉までえぐることは可能だったかもしれないが、金牛宮にそれほどの威力は存在していなかったようだ。

 

 影は金牛宮を睨みつけると大きく口をあけた。すると、大気中に強烈なイオン臭が漂い始める。それと同時に山の如き巨体の背中が青白く発光する。そのまま大量に空気を吸い込むと、胸から顎にかけて強大な筋肉が盛り上がっていくのが見える。人間であれば頬にあたる部分が盛大に歪んでいる。歯茎をむき出しにし視線だけで国が滅びそうな瞳を見開いている。

 

 金牛宮はその状態に危険を察知したのか、攻撃をやめて向きを変えようとしたが、時すでに遅し。

 

 影の喉の奥で火花がはじけた瞬間、二頭の間に目がくらむような真っ白な閃光が上がり、つづけて、少女がいる場所からでも余裕で確認できる巨大な火の玉が上がった。少女はその閃光に思わず目をそらし、顔に腕をかざした。

 

 舞い上げられた砂や瓦礫が音速を上回る速度で放射状に広がり、下っ端のガストレアの亡骸をさらに切り刻み、形をとどめていた廃墟をたちまち破壊していく。少女も例外ではなく、その衝撃で宙に浮き、爆風で遠くに吹き飛ばされていく。

 

 その数秒後、天候が変わりそうなほどの轟音が大気中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆風が過ぎ去ったあと、少女が意識を取り戻した時には、「無」が眼前に広がっていた。

 

 廃墟は軒並み崩壊し、どこかの建築物の土台だったのだろう鉄骨があらぬ方向を向き、被害の甚大さを無言で伝えてくる。雑魚なガストレアの亡骸はもはや液状化して混ざり合っており、元がどんなステージだったのかも見出すことができない。

 

 視線のかなたに金牛宮はいた。金牛宮は動かなかった。悲鳴すら上げなかった。それもそうだろう。影によって放たれた『暴力の嵐』は、金牛宮の弱点の胸部と頭部をまとめて粉砕したのだから。よく見れば、少女の周りにも爆散した金牛宮の肉片が焦げ臭い煙を上げてそこらじゅうに転がっている。

 数万トンはあるだろう金牛宮の亡骸が背中からゆっくりと地面に倒れこむや、激震が走り地面が大きく揺れる。わずかに残っていた廃墟も今の振動ですべて倒壊したようだ。

 

 少女は驚愕した。金牛宮は破壊された頭部や胸部以外にも大きな深手を負っていた。

 触腕はすべて根こそぎ引きちぎられ、その剛腕は片方損失しており、ほとんどの傷口から血液が今でも大量に流れ出している。その身体に多数存在するあの赤目もかなり潰れている。どうやら自慢の再生能力すら追いつかなかったらしい。

 

 

 うなり声が耳に轟く。金牛宮よりはるかに凄味のあるそれは、万人の心をひきつける何かがあった。少女は金牛宮から、その亡骸の前に存在する「それ」に意識を移した。

 

 「それ」はそれほど目立った傷はなく、むしろその傷さえも歴戦の勇士の古傷のようにさえ見える。彼が呼吸するたびに、ゴロゴロと低いうなり声が聞こえ鼻腔から蒸気のような息が吹き出す。目を凝らすと、薄暗い風景に金牛宮よりわずかに上回る巨体が見えた。少女は見詰める。その双眼に映る、ガストレアと全く違う次元にいる巨大な姿を。

 

 二本足でそびえたつその姿は一昔前の肉食恐竜の復元画に酷似しているが、少女が知っている最大の恐竜であるティラノサウルスよりも何十倍も大きいだろう。がっしりとした体躯は黒岩の如き皮膚で覆われ、太いしっぽは万里の長城のようにどこまでも続き、その巨大かつ、筋肉と脂肪で覆われた四肢は鬼を連想させ、山のような背中にはのこぎりの歯のようなギザギザした背びれが三列に並び、巨大なプレス機のような顎に連なる大人の身の丈もありそうな巨歯。そして目に写る全てを灰燼に帰さんとする凄惨で鋭き瞳。

 

 

 

 その口が大きく開き、勝利の雄たけびをあたり一帯に響かせた。

 

 怒り、憎しみ、殺気………負の感情のすべてが混ざり合い、煮詰まれ、抽出されたかのような高純度の大咆哮。全ての感情が意味を無さなくなるほどの圧倒的な轟音。

 

 それはまさに『咆哮』。先ほどの金牛宮の鳴き声など、小鳥のさえずりに過ぎなかった。

 

 

 

 

 

 少女は、力なく“笑った”。膝が震え、涙が零れ落ちても、笑うしかなかった。

 

 少女は「強かった」。実際に金牛宮を倒せるぐらい「強かった」。周囲からはそう認められており、自分もそれを自負していた。

 

 己の力を過信し、油断しないように、周囲から褒められるたびに自らを戒めながら少女は金牛宮の討伐にあたっていた。だが、やはりどこか己の力に酔いしれていたのだろう。金牛宮の討伐など、時間をかければできると思っていた。だが、先ほどの『咆哮』をうけて、そのすべてが無意味で愚かで、ちっぽけなことだったと思い知らされた。

 

 そして悟った。

 

 

 おそらく自分が、いや、たとえ「世界」が仮にガストレアを地球上から駆逐したとしても、どんなに手を尽くそうが「アレ」には絶対に勝てない。

 

 

 後退した感情の代わりに、莫大な無力感が襲ってくる。「アレ」……もはや「アレ」と呼ぶことすら不敬だろう。むしろ「神」と呼称したほうがいい。その「神」と自分を比べると、まるで自分が知らずに踏みつけているだろう、ちっぽけな虫けらになったような気分だった。

 

 少女は笑う。「強かった」自分が、絶対的な「神」の御前でそう思ったことがひどく滑稽だと。

 

 笑って笑って、笑い続け、少女は力なくその場に座りこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西暦二〇二〇年代後半、某月某日。人類を絶滅寸前まで追い詰めた「ガストレア」のなかで極限まで進化したステージVガストレアのうちの一体、金牛宮――タウルス――が撃破された。

 

 「撃破」を確認した序列第一位のイニシエーターは金牛宮が「死んだ」ことを伝えたのち、行方不明となったが、世界は称賛した。そのイニシエーターが、金牛宮を倒したと勘違いしたまま。







金牛宮を倒したゴジラの姿はGODZILLA2014のゴジラです。が、あらすじにやタグもあるように、設定がいろいろ変わっています。最もたる例が放射熱線で、べつに熱線吐いても疲れないうえに、威力も高めですが、平成VSシリーズのようにバカスカ撃ちません。使用頻度はミレニアムシリーズぐらいと思ってください。







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