ブラック・ブレット Monsters:Rulers of Earth   作:アマナットー
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 今回は前後編に分けようかなと思っています。


 【追記】一月十二日

 ちょっと追加しました。





 青年は目標物を見つけ、ある二人は森にて双剣の死神と相対したようです

 

 

「一体どういうことなんだ……?」

 

 東京エリア内にある勾田病院にて、室戸菫は趣味であり本業である解剖を行っていた。

 彼女を知るものが見たら、その様子に驚愕することだろう。死体がたとえどんな未確認生物であっても嬉々として解剖にいそしむはずなのに、当の彼女が困惑の表情で目の前の手術台に乗せている死骸を見つめているのだ。

 菫が解剖していたそれは、博多エリアの外で阿蘇山近くで運営されているバラニウム鉱山から運び込まれたものだ。

 なんでもその鉱山は、数日前に原因不明の大規模な出水事故が発生したらしく、十数名の死傷者を出したらしい。それまでなら普通に事故として処理されるが、その後排水作業に参加した鉱山夫らが作業中に水中に引き込まれ、死体となって発見される殺人事件が相次いだのだ。

 死体は血液をはじめとした体液がすべて吸い取られており、傷口はまるで日本刀で斬られたかのようで警察も頭を悩ますばかりだったが、つい先日、突如現れた民警らしき人物の活躍で犯人を捕獲することに成功したそうだ。

 

「いくら虫みたいな水生生物でも、ウイルスなしでここまで大きくなるもんなのかねぇ」

 

 行き詰まりを覚えたのか、菫は体液まみれの執刀服のまま椅子に座ると、改めて目の前で横たわる物体を奇異の目で見る。

 堅そうな外骨格で覆われた鋭角な流線型で、その外見をたとえるならヤゴが一番わかりやすいだろう。ただし、それは数メートルはある、一対のハサミと三対の脚を備えた巨大なヤゴなのだが。

 鉱山夫を殺害した犯人は人ではなく、このヤゴのような生物だった。

 生物は直ちに博多エリアの研究所へ回され、解剖されたのだが、あまりにも理解不能な点が多すぎたため、菫のところへ送られたのだ。

 

「向こうでわからないから私に任せるったって、私はそこまで都合のいい人物じゃないっての……」

 

 しかし、博多エリアの研究者たちが頭を抱えるのも無理はないかもしれない。

 これまでの常識に当てはめると、昆虫などに代表される、外骨格を持った節足動物はここまで大きくならない。自重でつぶれ、呼吸困難となり死んでしまうからだ。

 現生節足動物で最大のタカアシガニは数メートルにもなるが、その身体は水の浮力によって支えられているため、陸上に上がると身動きが全く取れない。

 それでも、過去の地球には七十センチの巨体を誇ったトンボ、メガネウラや、二メートルを超す大ムカデ、アースロプレウラといった巨大な節足動物が生息していたが、その理由としてシダ植物群の大繁殖によって当時の大気中の酸素濃度が約三十五パーセントと高かったためとする説や、これらの節足動物を餌とする活発な捕食性脊椎動物がまだ少なかったからとする説、また現在と違って地球全体の平均気温がはるかに高かったためとする説などが唱えられている。事実、これらの巨大節足動物は酸素濃度が低下し、多くの脊椎動物が進出したペルム紀初期にはほとんど絶滅していた。

 

 閑話休題。

 

 それらの点を克服してここまで巨大化するには、ガストレアウイルスに感染していなければおかしいため、当初はモデル・ドラゴンフライ――トンボの英名――のガストレアと判断されたが、その体組織からウイルスは全く検出されなかったのだ。

 これはガストレアではない。菫はそう結論付けた。

 おそらく、鉱山で掘削された地層がペルム紀以前のもので、そこに太古から自然保存されていた卵か何かが孵化したものなのだろう。カブトエビやアルテミアなど、乾燥に耐え長期にわたって休眠することができる耐久卵を産む生物が存在するため、信憑性は高いと確信している。もっとも、別個体がいる可能性が高いそのバラニウム鉱山は、二次被害を防ぐために閉鎖されてしまい確かめることができないのだが。

 

「それにしても、推定体高が百メートルのゴジラといい、放射線を食うへんてこなフナムシといい、古代の地球はどれだけ化け物ぞろいだったんだ?」

 

 そのうち火を噴いて空を飛ぶカメや、河童みたいな怪獣が現れるんじゃねーのか? もしかしたら、泥が意識を持って活動するかもしれないな。

 いろいろテンションがおかしくなった菫は手袋を外し、ガシガシと頭を乱暴にかいたところでふと手を止める。これは自分が後見人となっている友幸が困った時に行う癖だ。

 菫は舌打ちした。嫌な癖が移った。今日は早く寝ることにしよう。

 

「ん? 天童の嬢ちゃんか……」

 

 不意に鳴った電話の着信主の木更とは、蓮太郎の関係者ということもあり自身も交流がある人物だが、一体自分に何の用だろうか。

 

怪訝に思いながらも、通話状態にして電話を耳にあてたが――

 

「はぁ!?」

 

 彼女の涙声交じりで告げられたその内容に、思わず間抜けな声を上げてしまった。

 

 

***

 

 

 

 時はさかのぼる。

 数時間前のことだった。

 

「そう、ならもう大丈夫だね。しっかり考えてやりなよ……」

 

 友幸は電話で一言二言言葉を交わした後、通話を切った。同時に、ソファに寝そべってマンガを読んでいたリンダが身を乗り出して聞いてくる。

 

「いまの電話はなんだったの?」

「蓮太郎君から。延珠ちゃんが昨日戻ってきたんだって」

「そっか。そりゃよかったな」

 

 それっきり、リンダは黙り込んだ。

 友幸も特に話すことはないため、自らの作業に没頭する。今日は雲がやけに目立っており、そのうち雨が降りそうな空模様だった。

 藍原延珠が家出したという連絡を受け取ったのは、一昨日アカネを松崎のところへ送り届け、帰宅してから数時間後のことだった。

 なんでも、延珠が通っている小学校で彼女が『呪われた子供たち』であることが露呈してしまったらしく、嫌がらせを受けた彼女はその日のうちに早退。保護者である蓮太郎も同じく早退し帰宅したが、自宅には帰っていなかったため、延珠を見なかったかと電話口で焦った様子で尋ねられた。

 当然、友幸たちは一家全員でアカネを送り届けに外周区へ行っていたため、延珠の姿を見ていない。

 友幸は彼をなるべく落ち着かせ、こちらもできる限り探しておくと彼には言って、その日は終わった。

 だが、その次の日に延珠はひょっこりと帰ってきたらしい。彼女は帰ってくるなり蓮太郎にしがみついてわんわんと泣き、理由を聞いても何も言わないため、慰めることしかできなかったという。その日、友幸に連絡できなかった理由だ。そして彼女は疲れてそのまま眠ったそうで、その日は終わった。

 そして今日。延珠はすっかり元気を取り戻したそうで、蓮太郎は彼女と今後のことについて話し合うらしい。

 

「おい、ゆーこー。また電話か?」

 

 リンダの言うとおり、通話を切った電話が再び鳴った。

 表示されている名前を見てわずかに目を見開く。画面には『波川』と表示されていた。作業を中断し、電話に出る。

 

『芹沢君かしら?』

 

 スピーカーから、透き通るような若い女性の声が聞こえてきた。

 

「はいどうも、電話をかけてきたってことは?」

『ええ、探してるやつが見つかったわ。場所は三十二区。空を飛んで移動しているらしいの』

 

 空を? 感染源はモデル・スパイダーじゃなかったのか?

 疑問がわいてくるが、それらを喉の奥へひとまず押し込む。

 

『それほど速くないからまだ三十二区上空を飛んでいるわ。既にほかの民警たちも向かっているから、早く行ったほうがいいわよ』

「わかりました。情報の提供、感謝します」

 

 次もまたご利用くださいね~。と言う波川の言葉を軽く聞き流すと電話を切る。

 友幸はリンダに振り向いた。 

 

「リン。行くぞ」

「おう!」

 

 

 

 それからの行動は早かった。

 装備を整え、二人バイクにまたがるとエンジンをかけて走り出す。すでにヒオとマナにはメッセージを残しておいたから心配されることはないだろう。今日の炊事当番は自分だったのが心残りだったのだが。

 友幸は先ほどからヘルメットのバイザーに打ち付ける雨粒にいら立ちを覚える。

 もともと朝から雲行きは怪しかったものの、確認した天気予報は見事に当たってしまい、家を出てから十分もしないうちに降り始めたと思ったら徐々に雨足を強め、すぐに豪雨となっている。

 しかも間が悪いことに、分厚い雨雲によって衛星による確認が不可能となってしまった。その間にもガストレアが移動している確率は高いので、目視で確認するしかない。友幸はバイクの運転、リンダが索敵の役割を担っていた。

 

「リン! 空に何か見えたか!?」

「ダメだ、雲の分厚さと雨の濃さで見えづらくなってる!」

 

 ヘルメットには無線機能が取り付けられているため、別に大声で話さなくてもいいのだが、自然と声が大きくなってしまう。

 

「なあゆーこー、ひょっとしたらもう逃げてどっかに降りたか、撃ち落とされてるんじゃねーの!?」

「かもな! 今のところ都市内部で落とされたって情報はないし、森の中かもしれん! 三十二区の近くに外周区に隣接する森があるからそこに行くぞ!」

「おし、一応アタシは見張りを続け――」

 

 突然、息巻いていたリンダの声が途切れた。

 どうした、と友幸がいぶかしげに聞いても、何も言わない。代わりに、荒い息遣いが聞こえる。

 

「……Oh My GOD……」

 

 母国語を使った彼女の声が、かろうじて耳に入ってきた。それは先ほどの勇ましいものではなく、何かに怯えて、焦っているような、かすれたものだった。

 心配になった友幸はやむなくバイクの速度を落とす。

 だが、速度計を見て違和感を覚えた。

 自宅からここまで猛スピードで走っていたため、エンジンが奏でる爆音はすさまじいものだったが、出力を落とせばその音も小さくなるはずだ。しかし、今はそれに反比例するように、だんだん音が大きくなっているではないか。

 どういうことだろうか、エンジンの暴走か? だがこのバイクは数日前、行きつけのオートバイ用品店で点検してもらったばかりだ。そこの店主の腕は確かなもので、友幸もそれを高く買っている。異常はないはずなのに。

 

 それが勘違いだと気が付いたのは、その音が遠くから聞こえること、リンダが急かすように背中を引っ張っていること、薄暗い場所が、さらに薄暗くなりはじめたこと。

 

 そして――低空で自分たちに接近してくる『ナニモノカ』が、不意に見たバックミラーに映っていたのを確認したときだった。

 

 気が付けば、友幸はリンダを腕に抱え、バイクから跳んでいた。

 運転主を失ったバイクは当然横転し、火花をあげて擦過痕を残しながら電柱にぶつかって止まる。

 着地した瞬間、猛烈な突風が吹き荒れ、粉塵や紙くずが大きく舞い上がった。

 友幸はそれに飛ばされそうになるが、ガードレールにつかまり何とか踏ん張る。うっすらと目を開けて確認したが、何かの『影』はそのまま飛び去っていた。どうやら自分たちを狙ったものではないようだ。

 

「なんだ、いまのは……」

 

 ヘルメットを外し、飛び去った方向を凝視する。

 信じられない飛行速度だった。乗っていたバイクも時速八十キロメートルとそれなりに高速だったが、『影』はそれをはるかに上回っていた。物体が音速に近い速度で飛行すると発生する、衝撃波に似たような圧力波を巻き起こしていたのだ。それも、降り続いている雨を一瞬だけ吹き飛ばしたほどの。

 友幸はヘルメットをかぶりなおした。

 

「……リン、アレを追うぞ」

「ケースはどうする?」

「今更もう間に合わないさ。悔しいけど他の民警に任せよう」

「……だな」

 

 リンダもそれに同意する。

 『影』の全長は目測二十メートルほど。ガストレアのステージに当てはめればIIからIII、最悪ステージIVのものとほぼ同じ大きさだった。ここまでいくと、何らかの大型兵器を使用しなければいくら高い戦闘力を持ちうるイニシエーターでも太刀打ちできない。それがこの東京エリアに侵入しているのだ。

 友幸は耐衝撃ケースに入れていた携帯を取り出し、政府に連絡すると、再び『影』が飛び去った方向を見る。

 『影』すでに遠く離れ、点のようになっていたが、着陸するためなのか上空で旋回しているのが見えた。自分たちが行こうとしていた、遥か彼方の森だ。

 倒れていたバイクを起こし、それにまたがると、エンジンをかけてアクセルを回す。

 友幸は振り払うようにかぶりを振った。

 

 『影』が発していた、暴走したエンジンのような爆音を放つ『羽音』が、耳鳴りとして頭に残っていた。

 

 

 

 

 

 

 豪雨が、雨具を着用していない自分の身に容赦なく降り注ぐ。

 お気に入りのコートはすっかりくたびれて生地の色を濃く変えてしまい、吸収された雨水と汗が、微妙なおもりとなって自分の身体に張り付いている。

 だが、そんなことはまるで気にしていないと言わんばかりに、少女――延珠は黙って眼前の存在を睨みつけた。

 目の前に『異形』なクモがいる。自分たちが追っていたモデル・スパイダーのガストレアだ。

 ガストレアは威嚇のつもりなのか、口にあたる部位は大きく開かれ、人の頭ほどありそうな太さの、大きな牙がのぞいていた。そこからシューシューと熱がこもった息が抜ける音と同時に、粘着質なよだれがどろりと糸を引いて地面に滴り落ちる。一般人が見ればさぞ恐怖と嫌悪感を覚える光景だろう。だがよく見れば、ガストレアは威嚇しながらもその巨体をじりじりと後退させている。身体を支えるには華奢に見える細い脚の一歩一歩の挙動も、赤子のようにどこか拙い。

 弱っているのが目に見えて分かった。どうやら事前に一発お見舞いしていた蹴りが効いていたようだ。

 

 ――ならばその傷が再生しないうちに倒さねば。

 

 そう決意した延珠は足を一歩下がらせ、構えた。ガストレアも、眼前の小さな脅威に対応すべく姿勢を低くし臨戦態勢を整える。

 相手の隙を狙い、決して自分の隙を見せない狩る者同士の決闘。

 数分のにらみ合いが続いた後、先に動いたのはガストレアだ。その細く長い脚を槍のように延珠へ突き出し、跳びかかってきた。

 速度、威力ともに申し分ない。切っ先は寸分の狂いもなく、延珠をとらえている。ガストレアは、己の勝利を確信した。数秒後に、この生物は自分の『ごちそう』となるだろう。

 だが、そう確信をもって突き出された脚はむなしく空をついてしまった。

 獲物を見失い困惑するのもつかの間、ガストレアは迫りくる気配を感じて反射的に飛び退く。さきほどまで自分がいた地面が轟音と共に、泥水と土塊となってはじけ飛んだ。

 割れた地面の中心に立つのは、延珠だ。

 金切り声をあげ、ガストレアは脚の刺突を繰り返す。そのどれもが素早く思い一撃なのだが、延珠はそれを余裕でかわし、時折その足でいなしていく。

 延珠のモデルはラビット、スピード特化型のイニシエーターだ。そのスピードに見合う動体視力は、一つ一つの攻撃を見切るのに十分なものだ。高速戦闘に慣れきっていた少女は、回避に苦心することもなかった。

 ガストレアは知らずに、自ら目の前の敵の得意領域に入り込んでいたのだ。

 

「――そこだ!!」

 

 やがて勝負はあっけなくついた。

 延珠は攻撃するときにできた大きな隙をついて、素早く弱点の胴部へ潜り込み、上向きに蹴り飛ばす。それだけで、ガストレアはゴムまりのように跳ね上がった。二、三度地面をバウンドし、グチャリと不快な音を立てて泥水の中へ身を沈める。腐った卵のようなにおいが湿った空気に交じって広がる。

 自分たちが狙っていたガストレアはしばし痙攣すると、やがて動かなくなった。

 

 

***

 

 

「延珠!!」

 

 遅れてやってきた蓮太郎の声に気が付いて、延珠は駆け寄る。

 元気そうな彼女の様子に、蓮太郎は安堵のため息をついた。

 無理もない。現場に向かう途中でガストレアを見つけたと思ったら突然、乗っていたドクターヘリが飛行中なのにもかかわらず、そこから飛び出してしまったのだ。

 

「この、あほ。余計な心配をさせんじゃねえよ」

 

 蓮太郎は苦笑して延珠の額に軽くデコピンすると、銃を手に持ってガストレアの死骸に注意深く歩み寄る。

 胴体上部に、銀色に光るものが埋まっている。すぐに例のジュラルミンケースだとわかった。

 よく見ると、肉の隙間から輪のようなものがはみ出ている。手錠だった。おそらく、このジュラルミンケースの保持者が手放すまいと持ち手に括り付けたのだろう。

 さっさと仕事を終わらせたい。蓮太郎は肩の力を抜き、ガストレアの体に足をかける。無理やり引き抜こうと手錠に触れた、その時だった。

 

「――蓮太郎!!」

 

 反応する間もなく、投げ出される。

 受身を取る間もなく、水たまりに落ちて泥水を頭からかぶった。

――まさか。

 嫌な予感がして、あわてて起き上がる。

 そこには、脚を広げる巨大グモがいた。あれだけの延珠の蹴りを受けていてなお、生きていたのだ。

 ただしその様子は満身創痍そのもので、脚の一部はあらぬ方向へと曲がり、口器からは血がしどとに流れ出てている。

 無機質さを覚える、深紅に光る複眼は自分をハッキリと捉えており、本来は無感情であるはずのそこが激しい怒りで満たされているように感じた。

 だがそんなことはどうでもいい。どこにそんな体力があるのか、スパイダーが蓮太郎に跳びかかってきた。

 延珠もとっさの事態に対応できず、茫然とこちらを見つめている。

 完全な不意打ちに対応できない。目の前に、人の頭など容易く噛み砕きそうな歯がずらりと並んだ大口が迫ってくる。

 

 ギュッと、目をつぶる。

 

 やられる、と蓮太郎は体をこわばらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 その時、“それ”は起こった。

 濃い影が、森を覆った。

 ヒュオン、と空気を切り裂く音が聞こえたかと思うと、直後に響く轟音。

 その衝撃だけでぬかるんだ大地が割れ、土砂が舞い上がり、泥水と赤黒い『何かの肉片』が飛び散り、木の葉がビリビリと震えた。

 錆びた鉄と硫黄が混じったような濃密な血の臭いが、泥水が入って痛くなった鼻を突く。

 ――生きている。

 うっすらと、蓮太郎は目を開けた。

 

「――え?」

 

 目の前、それこそ手が届きそうなほどの位置に、“ナニカ”が突き刺さっていた。

 振り下ろされたのは、巨大なカマのようなもの。

 信じられないくらい大きく、ざっと見ただけでも五メートルほどはあるだろうか。片面に、のこぎりの歯のようなギザギザが走った刃は明らかに人工物ではなく、生物的かつ薄気味の悪い造形は生命力で溢れている。

 毒々しいオレンジ色のそれは、穂先が気分が悪くなりそうなほどの赤で彩られており、蓮太郎は、つい今しがた自分に跳びかかろうとしていたガストレアが、弱点である頭と胸ごと串刺しにされていたのに気が付いた。

 カマは裂けた大地から、ゆっくりと引き抜かれる。同時に、仕留められたガストレアが、力の抜けた脚の先から、血を滴らせながら上がっていった。蓮太郎はそれを目で追う。

 

 そして蓮太郎は、目の前の『それ』に戦慄した。そのあまりの大きさにめまいさえ覚えた。

 

「な、なんなのだ……こやつは……」

 

 延珠も、知らずにつぶやいていた。

 蓮太郎と共に、これまで多くのガストレアと対峙してきた。そのどれもが、常識に当てはまらない存在だ。非常識な存在のことはよくわかっているはず。

 だが、そんな彼女でも、『それ』は己の常識と、理解の範疇を超えていた。

 

 それは、一度見たら誰もが忘れられないほど、強烈な印象を持っている生物を、そのまま巨大化させたような外見だった。

 

 色鮮やかなオレンジに、ディープグリーンの大小さまざまな斑点が混じった外骨格が、全身をくまなく覆っている。さながら中世騎士の鎧のようだ。山のような巨体を支えているのは、かぎづめのついた、苗木のように細長くみえて、その実、森のどの木よりも太く、がっしりとした脚。それが一本、またもう一本。合計で四本確認できる。

 続いてそれらの根元、脚が生えている巨大なアーモンド形の腹部。それに連なるように、細長く太い体躯が天を高くついている。

 胸元からは、細長い前脚が伸びていて、獲物をとらえ、切り刻むように発達した特徴的なカマの形に変化していた。その大きさは五メートル以上はある。

 逆三角形の頭部から張り出した目が、ギラギラと妖しく黄色く光っている。

 

 二人の目の前に現れたのは、全長が二十メートルもあろうかという、巨大なカマキリだった。






 両刀怪獣 カマキラス

 全長:20.6メートル
 体重:不明

 石炭紀からペルム紀後期まで生息していた巨大生物。設定では本編開始の十数年前、ガストレア大戦時からすでに復活していた。もともとは牛ほどの大きさの生物だったが、環境が当時の地球と異なるうえに、ガストレアウイルスに感染し、制御することに成功した個体たちが交配を重ねたため、遺伝子レベルで生態構造に変化をきたし、巨大化した。本編に登場した個体はその子孫。そのため興奮すると目が赤くなる。
 ウイルスの能力を遺伝子レベルで受け継いでおり、超自然的な治癒力や運動能力を手に入れている。ただしあくまで全体の能力向上だけなので、他の生物の機能を取り込む能力はない。そして、体内浸食率の上昇によるガストレア化の心配もない。翅を広げての、猛烈な羽音を伴う高速飛行が可能で、最高速度はマッハ0.5。
 武器は両腕のカマ。関節の可動域が人間並みに広いので、敵や獲物を切り裂いたり、槍のように突き刺したりして戦闘を行うことが可能。ごくまれに、片腕が槍状になった個体が生まれるらしい。
 強化された外骨格は非常に硬く、バズーカなどの軽火器程度ではまともに傷付きさえしない。

 警戒しなければならないのは、カマキリは不完全変態のため、本編に登場した個体がまだ幼体で、今後も巨大化する可能性があるということである。







読者「ゴジラはいつ出てくるの」

――しゅ、終盤あたりに……。

読者「マジか。つまんね。お気に入り解除するわ」

 ポチッ、スタコラサッサー

――…………(泣)。


 さっき確認したらお気に入りが少し減ってたんです。
 たぶんゴジラどころかほかの怪獣も出ていないから痺れを切らしたんでしょうね。ショッキラスしか出てないし。特撮ネタは出してるんですが※、満足しなかったのか……。

※(『薬は注射より飲むのに限るぜ!!』『卑怯もラッキョウもあるか!!』『ドクター・フー』など。特にドクター・フーが誰にも突っ込まれなくてションボリ)

 えぇい!! こうなったら無理やりほかのゴジラ怪獣をねじ込んでやるゥ!!
 ってなわけで二匹登場させました。前半の一匹はフライング登場。『超翔竜』だけに。後半にはゴジラシリーズ屈指の地味キャラクター、カマキラスを採用。書いているうちに、カマキラスに関するいいアイデアが浮かんだので、今後も活躍させようと思います。

 Z(`Д´Z)カマキラス<俺は噛ませじゃねえ!!!!







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