ブラック・ブレット Monsters:Rulers of Earth   作:アマナットー
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 ゴジラ要素皆無です。それでもよろしければどうぞ。


 依頼はとんでもないシロモノだったようです。

 東京エリア統治者、聖天子。いきなりあらわれた最高権威者の存在に、多くの民警の社長格が同時に不安を覚え始めた。自分たちは、何かとんでもないことに巻き込まれているのかもしれない、と。

 

『楽にしてくださいみなさん、私から説明します』

 

 落ち着いた声音で聖天子は着席を促すが、はいそうですかと素直に着席するものは一人もいなかった。

 

『依頼自体はとてもシンプルなものです。先日、東京エリアに侵入した感染源ガストレア・ステージIの討伐、そしてそのガストレアに取り込まれていると思われるケースを無傷で回収してほしいのです。ケースは感染源ガストレアが飲み込んだか、所持していた者が形象崩壊する際に体内に取り込まれたものと推測されます』

 

 聖天子のアイコンが小さくなり、代わりにジュラルミンシルバーのスーツケースの写真がホップアップされる。そこに表示された膨大な報酬額を見て会議室にどよめきがはしった。民警が普段受け取っているそれを大幅に上回っている。

 ステージIの討伐でこれほどの賞金がかかるとは思えない。報酬額のほとんどはあのケース、そしてその中身にかかっているのだろう。

 すっ、と木更が手を挙げた。

 

「回収するのケースの中身を、お聞きしてもよろしいでしょうか」

 

 木更の質問は図らずもその場にいる民警たちの疑問を代弁したようで、その答えを聞こうとざわめきがぴたりとやんだ。

 

『貴方は?』

「天童木更と申します」

 

 名前を聞いた聖天子は少し驚いたような表情をした。

 その様子を見た友幸は、聖天子が天童木更という個人を知っていることに、表情には出さずとも内心で驚いた。

 ふと視点を変える。聖天子の後ろには大柄な老人が控えていた。自分の記憶が正しければ、その年齢はすでに七十に達しているはずだが、背筋は真っ直ぐで衰えは全く感じさせない。

 天童家。

 従来より財政界へ数多の重鎮を輩出した名家中の名家。

 その中で、聖天子付の補佐官で実質最高権力的ポストについている天童菊之丞は、天童家の現当主だ。

 再び木更をみて何となく合点がいった。苗字からして、彼女もまた天童家に連なる人物なのだろう。

 

『……御噂はかねがね聞いております。ですが天童社長、それは依頼人のプライバシーに当たるのでお答えできません』

「納得できません。感染源ガストレアが感染者と同じ遺伝子を持っているという常識に照らすなら、恐らくそれはモデル・スパイダーのガストレアで間違いないでしょう。それぐらいであればうちの民警でも普通に対処できます。問題はこの簡単な依頼に破格の成功報酬、そしてここに集められた民警の数と、その質。ケースの中に値段に見合った危険が入っていると邪推してもおかしくはないのではないでしょうか?」

『それは知る必要のないことでは?』

 

 全身純白の聖天子と全身漆黒の木更。対照的な二人が画面越しながらもお互いをじっと見据える。

 その様子に、他の民警は何も言うことができず、ただピリピリとした空気が会議室に充満していくその時だった。

 

 不意に『警告』の二文字が友幸の脳内に映し出される。それと同時に、友幸の脳髄に眼球をえぐりだされるような痛みが走った。

 友幸はそこを抑える。動作が自然に見えるように押さえ、表情にも出していないからばれることはないだろうが、脳内が疑問と困惑で埋め尽くされていく。なぜこんな時に反応したんだ、と。

 

 ――室内空気、およびダストの対流に異常を探知。これより自動確認に入ります。

 

 ぐりんぐりん。友幸の意思とは裏腹に、視線は勝手に自分の左側に移動していく。いまだに聖天子と質疑応答を続ける木更の、さらにその先に。

 

 ――硝煙、および血液反応を探知。目標は戦闘直後の模様。敵か不明。光学迷彩の使用が確認されるため、完全な捕捉は困難。第一種警戒態勢。目標の早急なる捕縛を推奨します。

 

 視線をたどれば、空席だった『大瀬フューチャーコーポレーション』の席に、誰かの「影」が座っていた。

 空気の流れなどから自動的に割り出されたその姿は、霞がかかったようにぼやけていたが、それは長身で卓に両足を乗せた体勢だということがわかる。

 

「リン、耳ふさいどけ」

「え?」

 

 瞬間、ホルスターから抜き出されたシグSP2022が火を噴いた。目標は空席の椅子。あまりに突然なことに、その場にいた全員が友幸のことを見るが、当の本人はそれを気にせず、いましがた射撃した場所をじっと見つめる。

 青白い壁に、先ほど撃ちだした弾丸が電光をまき散らせながら停滞していた。数秒後、乾いた音を立てて銃弾が床に落ちる。その先端はハンマーで殴られたかのようにひしゃげており、その異様な様子に会議室全体が凍りつく。

 次の瞬間、会議室全体に響き渡りそうなほどのけたたましい笑い声が聞こえた。

 

『誰かいるのですか』

「ヒヒヒ、あーあ見つかっちゃった♪」

 

 妙に聞き覚えがある声だった。というか、つい昨日聞いたばかりだった。

 その場にいた全員が、壁の内側に現れたシルクハットと燕尾服の怪人を見てぎょっとする。

 中でも友幸と蓮太郎の驚きは大きかった。

 なにせ、昨日会ったばかりの人物だったのだから。それも、かなりヤバめな。

 

「あいつは……昨日の……!?」

「昨日? 蓮太郎君はあいつと会ったのか?」

「依頼の途中でな……そういうあんたもか?」

「あぁ、夕食の材料を買って帰るときにな」

「だからゆーこー、あんなに帰りが遅かったのか……」

 

 キキキキキ、と影胤はシルクハットを抑えながら気味の悪い笑い声を漏らすと、勢いよく跳ね上がり卓の上に立つ。そして、ステージに上がった喜劇役者のように深々と周囲に頭を下げた。

 

『……名乗りなさい』

「おっと、これは失礼」

 

 男は聖天子に真正面から相対すると、シルクハットを取ってこれまた深々とお辞儀をした。

 

「私の名は蛭子。蛭子影胤だ。お初にお目にかかるよ、無能な国家元首殿に民警の諸君。端的に言えば、私は君たちの『敵』だ」

 

 影胤の首が猛烈な勢いで回り、友幸と蓮太郎に向けられる。友幸はジャマダハルを抜き取り、リンダもガントレットを装着しファイティングポーズをとる。蓮太郎も、木更を護るように前に出てXD拳銃を構え、銃口を影胤に向けた。

 

「また会ったね、里見君に芹沢君。元気してたかい?」

「もともとなかったし、テメェにあった時点でさらにマイナスぶっちぎったよ」

「おおぅ、これはまた手厳しいねぇ」

 

 蓮太郎の嫌味にもまるで動じず、影胤は落ち着いていた。

 

「どこから入ってきたんだ」

「堂々と正面からだよ。もっとも、うるさいハエが何匹かいたから、ある程度叩き落としてやったがね。この際だからイニシエーターも紹介してあげようか。芹沢君は知っているだろうけど、一応ね」

 

 ――上方にバラニウム金属、血液反応を探知。目標は戦闘態勢の模様。よって敵と判断。第三種警戒態勢。目標の早急なる迎撃および撃破、または緊急回避を推奨します。

 

 タン、と壁を蹴る音がした。

 

「トモユキ、久しぶり!」

 

 天井から聞こえた声に、二人は反射的に飛び退く。先ほどまで立っていた箇所に、風切り音と共にすさまじい斬撃が繰り出され、床がザックリとえぐられた。同時に、二刀の小太刀を構えた少女がそこに着地する。

 くそったれ、と友幸は内心悪態をついた。

 

「わぁ、やっぱりトモユキってすごい! いいな、もっと斬りたいな」

 

 満面の笑みで刀を軽く一振りする小比奈。大きく開いた目には、真紅の瞳が輝いていた。

 

「そこまでだ小比奈。こっちにきなさい」

「はぁいパパ」

 

 小太刀を鞘にしまい、小比奈はトテトテと卓に向かう。そこで友幸は、彼女の鞘口から血が滴っているのを見た。自分や蓮太郎に斬られた後は存在しないので、おそらく別人のものだ。斬られた人物はもうこの世にはいないだろう。

 苦労して卓に上った小比奈は、影胤の隣に来てスカートの縁をつまんでお辞儀をした。

 

「蛭子小比奈。十歳」

「私の娘にしてイニシエーターだ」

 

 イニシエーター。やはり彼女も『呪われた子供たち』だったか。

 そんなことを考えていると、再び影胤の顔が友幸に向いた。

 

「それにしても……なあ芹沢君? 他の民警は誰一人として気づかなかったのに、どうして君だけは私を把握できたんだい? 私としては完璧な筈だったんだけどねぇ」

「さあ、なんででしょうね。しいて言うなら直感……とでも言いましょうか?」

「直感、ねぇ……」

 

 影胤は何か含むような視線で友幸を睨みつける。その間にも、体勢を立て直した民警たちがそれぞれの得物を手に取り、影胤を包囲していた。だが、当の本人はそれに全く動じない。

 

「銃弾を弾いた今の壁は斥力フィールドといってね。私は『イマジナリー・ギミック』と呼んでいる」

「バリアだと? お前は本当に人間なのか」

 

 蓮太郎が口をはさんだ。

 

「人間さ。もっとも、このフィールドを発生させるために、臓器の殆どをバラニウムの機械に詰め替えているがね」

 

 ――機械?

 

「では諸君、改めて名乗ろう。私は元陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊『新人類創造計画』に所属していた機械化兵士、蛭子影胤だ」

 

 その名を聞いた友幸と蓮太郎の眉間に、しわが寄った。

 三ヶ島が驚きに目を見開く。

 

「……対ガストレア用特殊部隊の……?! あれは単なるウワサでは……」

「信じるか信じないかは君らの勝手さ。ずいぶんと話が脱線したけど、今日は私もこのレースに参加する旨を伝えるため挨拶に来たのだよ」

『挨拶?』

「そう、『七星の遺産』は我らがいただくのさ」

 

 聞きなれぬ名前に皆が困惑で顔をしかめる中、先ほどまで無表情だった聖天子の顔が一瞬ゆがんだ。

 

「おやあ? その様子だと何も聞かされていないみたいだね、可哀想に。君らが狙うケースの中身のことさ。私もそれを狙って感染源ガストレアを探していたんだが、見失ってしまったよ」

 

 影胤は両手を広げ、卓の上でゆっくりと回転する。

 

「ルールの確認だ諸君。私と君たちのどちらかが先に感染源ガストレアを倒し、七星の遺産を手に入れるか!! 先に手にした人物がいたら、それと殺し合いして無理やり奪うのもよし。むしろ大歓迎だ!! どうだい、簡単であろう?? 賽はたった今投げられた!! 勝負は、もう始まっている!!!!」

「そうかよ、だったら――」

 

 イラついた声は、机の向こうから聞こえた。自分の体格とほぼ同じ大きさの大剣を振りかざす、伊熊将監だ。

 

「――てめえがいまここで死んでも文句言えねぇよなあ!!!!」

 

 荒々しい外観からは想像できないような緻密な動きで、瞬く間に影胤の懐へともぐりこんでいく。

 そして、大剣がギロチンのごとくふりおろされる。角度、速度ともに申し分ない。次の瞬間には影胤の首と胴体が血の涙を流して泣き別れとなるだろう。誰もがそう思ったに違いない。

 

「いい斬りこみだ、感動的だな。だが無意味だ」

 

 バチンと雷鳴のような音が鳴り響いたと思うと、大剣はまるで壁にぶち当たったかのように空中で静止した。自分の一撃が入らなかったことに将監が呻く。

 

「今度は私の番といこうか」

 

影胤がパチンと指を弾いた。突如青白いドーム上の光が現れると、それがどんどん広がって周囲の民警に殺到する。あまりに唐突なことにとっさに動けず、全身を襲う衝撃になすすべもないまま全員が壁に叩きつけられるが、圧力はなおも彼らを壁に押し付けた。

 肺から空気が強制的に押し出され、全身の骨が軋む陰惨なくぐもった音が聞こえる。まるで全身が巨大なプレス機に押しつぶされているようだ。

 呼吸困難で意識がぼんやりとし始めたとき、全身を覆う圧力が消えた。全員その場に膝をつき、大きく咳き込む。

 

「別にここで全員を殺すことは容易いけど、それじゃ面白くないからね。この辺で失礼させてもらうよ。さらばだ諸君。絶望したまえ、滅亡の日は近い」

 

 影胤はそのままごく自然な動きで窓の外へと飛び出した。小比奈もまた彼に続き室内から消える。

 全員、その場を動けなかった。

 影胤の謎の攻撃で傷ついていたのもあるが、それ以上に彼らの脳内を『恐怖』の二文字が支配していた。

 ――強い。

 それが影胤に対する評価だった。

 不意打ちとはいえ、ここにいた上位序列者のほとんどを単体で無力化したその実力は、彼らの中にたしかに刻み込まれていた。

 

『皆さん、大丈夫ですか』

 

 室内には異様な静けさが残るが、そこで聖天子の声が聞こえた。先ほどの戦闘で画面が割れていたが、スピーカーは正常に作動していたようだ。

 

『事態は尋常ならざる方向に向かっています。みなさん、私から新たにこの依頼の達成条件を付け加えさせていただきます。ケースの奪取を企むあの男より先に、ケースを回収してください。でなければ大変な事が起こります』

 

 いまだ咳き込むリンダの背中をさすりながら、友幸はその淡々とした口調に強い怒りを覚える。彼女が大丈夫なのは彼女が実際にこの場にいないからだ。殺される心配など、今の彼女にはない。だからこちらの苦悩も知らない。

 

「聖天子様、ケースの……『七星の遺産』とは……いったい何なんですか。これでも白を切るというのなら、我々はこの要件から手をひかせてもらいます」

 

 自分でも驚くぐらいの、低く押し殺された声が出てきた。

 スピーカー越しに聖居にいた聖天子は、その気迫にわずかに身震いすると、一度背後にいる菊之丞に振り返る。菊之丞が小さく頷くと、彼女は決意した表情で言った。

 

『……わかりました。ケースの中に入っているのは七星の遺産。使いようによってはモノリスの結界を破壊し東京エリアに”大絶滅”を引き起こす封印指定物です』






~~ふと浮かんだネタ~~



影胤「私の斥力フィールドは工事用の鉄球でも砕けん!!!!」

ゴジラ「おうらぁ!!!!(アンギラスボールを蹴り飛ばす)」

影胤&アンギラス「ぎゃあああ……(星になる)」


小比奈「接近戦では、私は無敵!!」

ゴジラ「えい(デコピン)」

小比奈「あれえええ……(星になる)」


ティナ「一キロ先も狙撃できます」

ゴジラ「宇宙の隕石ピンポイント射撃余裕でした」

ティナ「………………」


聖天子「敏腕とカリスマ性で東京エリアを……」

ゴジラ「お話(物理)と慕いやすさで怪獣軍団編成しましたが何か?」

聖天子「アーキコエナイキコエナイ」


木更「復讐するは我にあり」

モスラ「ゴジラさんの恨み見せましょうか?」

木更「…………自分のがどうでもよくなっちゃった(鬱になる)」







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