アイアスinマシュ・オルタ

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n番煎じのマシュ・オルタモノ


2023/6/15〜

加筆修正を始めました


ギリシアの盾

 

「サーヴァント・シールダー。ここに」

 

 マスター、藤丸立香の前に傅いた白髪の少女。巨大な半円形の手甲を両手に着け、全身を黒い鎧で覆っている。そうして上げた顔は確かにマシュ・キリエライトのものだった。

 

◆◆◆

 

 私が『私』として目覚めたのは、一体何千年前のことになるのだろうか。一国の王子として生を受けた私は、弓の名手であった弟と共に数々の戦に加勢した。剣やら弓やらの才能はからきしだったのだが、何故か盾だけはうまく扱うことが出来た。恐らく生来の、臆病な気質に由来するのだと思うと、少し情けなかった。

 

 戦の雰囲気にも慣れてきた頃、私は弟を庇って頭に投石を受けた。幸い命に別状は無かったが、それで蓋が壊れてしまったのか、度々知らない記憶を夢に見るようになった。天を衝くような石造りの建物と、揃いの黒い服を来て歩く男女。人々が争うことはなく粛々と日々が過ぎていく。

 

 その夢では、私は女の体で生きていた。無愛想で内向的な、何の特徴もないただの人間だった。

 

 夢を見るようになってから、私は変わったらしい。信じられないことに、以前は人や獣を殺すことを躊躇わなかったという。……それが普通だということはわかっている。信じられないのは私の方だ。ただ、変わってしまったことを恐ろしいと感じたことはなかった。

 

 『私』が目覚めてから数年経ったある日、私は恋に落ちた。記憶では一目惚れというらしい。相手は男であったが、男同士の恋愛など珍しいものではなかったため、私は諦めることはしなかった。従兄弟であるなど知ったことか。しかし気合が入りすぎて弟に心配されたのは悪いと思っている。

 

 

 

 彼には男がいた。パトロクロスと言った。

 彼の天幕へ向かった時、彼が男の腕に包帯を巻いているのを見た。それだけならまだ自分を誤魔化すことは出来た。しかし彼の笑顔を見て、そんな思いは吹き飛んでしまった。私にはあんな顔を引き出すことは出来ない。男の代わりにはなれない。

 

 私は彼のことを忘れてしまおうと、鍛錬に打ち込んだ。受けて、逸らす。逸らして、返す。……何度繰り返しても、彼を忘れることは出来なかった。

 

 今日、戦場で凄まじい腕の槍使いに出会った。出会ったというか、一方的に攻撃され続けただけなのだが。敵陣の遥か後方から飛んでくる槍は、受けるだけで精一杯だった。弟がいなければ、碌に反撃することも出来ない。私は、なんと無力なのだろうか。

 

 

 

 パトロクロスが死んだ。そう伝令を受けて真っ先に考えたのは彼のことだった。パトロクロスは彼の■■だった。案の定彼は戦場に飛び出して行って、あの槍使いを屠ったのだそうだ。そして死体は馬車に繋いで挽き回したらしい。

 

 それから彼は積極的に戦場へ出るようになった。一度だけ、彼の馬車に乗って、彼を守ったことがあった。元々一人用の馬車だったせいで彼の体温が身近に感じられて、とても心臓に悪い思いをしたのを覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼が死んだ。

 死体は取り戻したけれど、もう二度と動くことはない。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 次の目覚めは無菌室の中だった。流石に紀元前から時代が飛びすぎである。二十一世紀から紀元前に飛んだことを考えると、戻って来たとも言えるが。ともかく、何故私がここにいるのかを突き止めなくてはなるまい。

 

 

 

 なんだデミサーヴァント計画って。デザイナーベビーなんてやるもんじゃないって言ったら、どうやら聞かれていたらしく主治医の人が酷く狼狽えていた。ドクターは張本人という訳では無いので心苦しい気持ちもあったが、所属している組織が悪いということで諦めてほしい。

 

 聞く所によると、というか強引に聞いた結果、この体は英霊の因子を持ちながら、それを発現させられなかった中途半端な成功作ということらしい。宿した英霊の名をそれとなく聞いてみるも、何度かはぐらかされたため資料を漁ってみることにする。

 

 英霊の正体は『私』だった。つまり二度目の転生ではなく、少女の体を乗っ取ったということになる。

 ……私は何故生きてるのだろう。

 

 とか言ってたら手厚いカウンセリングを受けることになった。盗聴器でも仕込んであるのかな。怖。これからは迂闊に発言出来ない。とはいえ黙り込んでいるとそれはそれで心配されるので、適度な独り言を心掛けることにする。

 

 それからは生を諦めるにはまだ早いだろうとたまに来てくれるドクターと話したり、持ってきてもらった本を読んで過ごした。ただ、ギリシャ神話だけは手に取ることもできなかった。どうしても手が震えて、過呼吸に陥ってしまう。たとえ平行世界の存在だとしても、彼の一生に触れてしまうのが怖かった。

 

 

 

 そうこうしている内に人理が燃えた。一体どうなっているのか。

 そして少しの戦闘と喪失を経て、私は英霊として力を取り戻した。いや、嘘だ。盾とか鎧の形状が変わっていて、何より性別が違うから思い通りに体が動かない。しばらく寝たきりだったのもあって体力もない。なんだか盾を使い始めた頃を思い出す。

 

 戦っていく内にマスターとなった女性とも話をしたけれど、一般家庭の出だからか凄くいい人。陽だまりの香りがする、という言葉がよく似合う。近くにいるとほわほわして幸せな気分になれるから、結構好きな部類だ。少しスキンシップが激しいような気もするけれど、前世も前々世も友人が居なかったから比較できない。

 

 しばらくして、私はマスターのことを先輩と呼び始めた。人理を背負わせた組織の一員である分際で何をしているのだろうと自分でも思ったけれど、先輩はそれを受け入れてくれた。

 その代わり、マスターの『先輩らしいことをしてみたい』という要望には応えるようにしている。添い寝とか、食べさせ合いっことか、一緒にお風呂とか。時々ものすごい罪悪感に襲われる。

 

 サーヴァントの方々も本当に優しい。昔の知り合いに会えないのは少し残念(安心)ではあるけれど。

 しかも何故か赤い弓兵が凄まじく甘やかしてくれるので、堕落してしまいそうになる。一度理由を聞いてみたが、宝具の相性がどうこうとしか言わなかった。確かに彼と戦っていると弟を思い出すことがある。それにしたって、絶対相性だけじゃないと思うのだけれども。

 

 ドクターもダ・ヴィンチちゃんも仕事の合間に話しかけてくれるし、先輩も一日一回は挨拶しに来る。そのまま世間話なんかをすると、楽しくてつい時間が経っていて……理想の生活って感じがする。

 

 ここを守るためなら、私は命だって惜しまない。

 今度こそ、最後まで。

 

 

◆◆◆

 

 

「駄目、マシュ──!」

 

 巨大な熱が現れる。ゲーティアの第3宝具が、放たれようとしている。そこへ後輩が、一人で立ち塞がった。人を傷つけるのが苦手で、怖がりで、いつも無理をするように笑う女の子。たった一杯のココアで、手を繋ぐだけで、幸せと言えてしまう子。

 

 柔らかい手のひらの感触を、悪夢にうなされる顔を、それでも立ち上がった背中を、思い出す。

 

 泣いている。震えている。怖いんだ。なのに、立ち向かっている。祈るように手甲が合わさり、ひとつの大きな盾を形成した。見てることしか出来ない自分が不甲斐ない。盾が幾つものパーツに分離し、その間に薄紫の花弁が顕現する。

 

 きれいだね、と言った。

 ありがとうございます、と笑った。

 

 そんな日は、もう来ない。

 

 

「──さよなら」

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 見覚えがあるけれど、細部が違っている管制室に、暫定マスターと小さなダ・ヴィンチちゃん、そして私が立っている。不用心に見えるけど、アサシンクラスがどこかに潜んでいるのだろう。しかし、こうして私が存在するということは、

 

 

 

「さて、君の名前を教えてもらえるかい?」

「……アイアス。ただの、アイアスです」

 

 

 

 私は、先輩を守れなかったんだ。

 

 

 




真名 アイアス/マシュ・キリエライト・オルタ

クラス シールダー

身長/体重 155cm/42kg

地域:カルデア

属性:中立・善   性別:女性

筋力B+ 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運E 宝具?


宝具

人理覆う七つの円環(ロー・アイアス)

ランク:不明 種別:結界宝具

『これは多くの希望、多くの誓いを守る紫苑の盾。 
 起動せよ、人理覆う七つの円環(ロー・アイアス)!』

 味方全体に無敵状態を付与(1回・3ターン)&防御力アップ[Lv.1](3ターン)&被ダメージカット状態を付与[Lv.1](3ターン)+自身にターゲット集中状態を付与(1ターン)

 7枚の光の盾を花弁のように展開する、マシュ・キリエライトの宝具。
 ヘクトールの槍を唯一防いだ逸話から、投擲に関しては無敵とされる。盾は一枚一枚が古の城壁と同等の防御力を誇り、誰かを守る時にその真価を発揮する。


忘れられぬ無力の象徴(トゥレーラ・アイアース)

ランク:不明 種別:対軍宝具

『もう、いやだ』

 自身のBasterカード性能を大アップ[Lv.1](1ターン)+無敵貫通状態を付与(1ターン)&敵全体に超強力なBaster攻撃[Lv.1]&自身に即死効果【デメリット】

 自らの死にまつわる逸話が昇華されたアイアスの宝具。
 発動した瞬間狂乱状態に陥り、敵を殺し尽くした後に自らも死亡する。その狂気が味方に向かないのは、女神アテナの慈悲であろうか。

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