実は最強の探索者、嘘ばかりつく鑑定スキルにまんまと騙されて、自分を最弱だと思い込む〜SSS級モンスターをF級だと言い張るな!   作:鑑定スキル

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―40― 嘘つきは誰?

「しかし、なんでこんなにも弱いんだ?」

 

 だって、オレは適正ランクFの弱い探索者だ。そのオレがランキング1位に勝てるのっておかしくねぇか?

 

『小学生があの男を特殊な能力で弱体化させているはずです。彼が異様に弱かったのはそのせいかと』

 

 鑑定スキルが疑問に答えてくれる。

 小学生って誰のことだ……? と考えて、彩雲堂詩音のことだとわかる。

 そういえばそうだった。

 見た目小学生もとい彩雲堂詩音の弱体化させる魔術が強力なのはこの身で知っているからな。

 まさかランキング1位よりオレのほうが強いわけがないもんな。

 納得である。

 

「おい……どうなってんだ……?」

 

 ふと、武藤健吾が口を開いた。

 もう戦う気力はないようで立ち上がろうとさえしない。

 

「なんでFランクのお前がこんなにも強いんだよ!?」

 

 オレが強い? おいおい、なにを言ってんだ、このおっさんは。

 

「どうやら勘違いしているみたいだが、オレは誰よりも弱いぞ。ただ、おっさんがそれよりも弱かっただけだ」

 

「そ、そんなわけあるか!? あと、俺はおっさんじゃねぇ」

 

 武藤健吾につっこまれる。

 いや、信じられない気持ちはわかるが。それほど彩雲堂詩音の魔術が強力だったというわけだ。

 

「あのなぁ、現実を見ろよオレはFランクだぞ。Fランクが強いわけがないだろ!」

 

「いや、実際オレよりも強いじゃねぇか……っ!」

 

 よく、そんなボロボロの状態で大声を出すことができるな。

 ……む、もしかして、このおっさん彩雲堂詩音の魔術で自分が弱体化されていることに気がついてないのではないか?

 仕方がない。ならばオレが教えてやろう。

 

「今のおっさんは弱体化される魔術をかけられている状態なわけ。だから、オレよりも弱いんだよ。わかったか?」

 

「……な、なんだと!? いや、確かにオレがFランクに負けるわけがない。そうか、俺は弱くなっていたのか」

 

 どうやら納得してもらえたようだ。

 

「ともかくオレに負けたんだから、華山ハナと結婚するのあきらめろよ」

 

「な、なんでそうなるんだよ……っ!?」

 

「いや、だってどんな形にせよFランクに負けたらメンツ丸つぶれだろ。いくらおっさんがランキング1位で権力を持っていたとしても、これからはアイドルと婚約だなんて勝手許されないだろ」

 

「……もとから俺に権力なんてねぇよ。俺はただの操り人形だ」

 

 ん? どういうことだ? 俺が聞いていた話と違うぞ。

 

「なにを言ってんだ? おっさんが華山ハナと無理矢理結婚しようとして、こんな騒動になったんだろ」

 

「確かに俺は元から華山ハナの推しだったが、いくら俺が第一位だとしてもそんな勝手できねぇよ。ただあいつらと利害が一致しただけだ」

 

 あいつらだと? なにを言ってんだこの人は?

 

「ある日、あいつらが俺の目の前に現れたんだ。『お前の望みを叶えてやる。だから協力しろ』と。あいつらが華山ハナを欲しがっていた。理由なんてわからねぇ。けど、強力すれば、望みを叶えてやると言ったんだ。だから、華山ハナと結婚させろ、と俺は言ったんだ。そしたら、あいつらは『それぐらいなら簡単だ』って」

 

「えっと、あいつらってのはいったい誰のことなんだ?」

 

「魔王の残滓」

 

 確かそう名乗っていたはずだ、と武藤健吾は言葉を続ける。

 魔王の残滓? どこかで聞いたことがあるな。そうだ、彩雲堂姉妹が魔王がどうことと言っていたな。

 ……いっきにこいつの話がうさんくさくなったな。

 

「なぁ、鑑定スキル。こいつは本当のことを言っているのか?」

 

 ふと、小声で問いかける。

 あれ? なにも答えが返ってないな。まぁ、今までもこんなことは何度かあったけど。

 

「そういえば、華山ハナはどこに行ったんだ?」

 

 え? ふと、そう言われて気がつく。

 周囲の見回すが彼女の姿がどこにもいなかった。戦闘に夢中で気がつかなかった。

 

 瞬間、悪寒がした。

『華山ハナは大嘘つきです』と、鑑定スキルが言ったことを思い出したのだ。

 

 

「そういえば、あの男に弱体化の魔術をかけるの忘れていたな」

 

 ふと、彩雲堂詩音はそんなことを思い出す。すでに襲いかかってきた探索者全員を無力化させていた。

 弱体化させる魔術は対象が離れすぎるとかけることが難しいので、例え忘れていなくても無理だったが。

 

「まぁ、我が主なら問題ないだろう」

 

 それほど彩雲堂詩音はカナタのことを信用していた。

 と、そんなときだ。

 ポケットに入れておいたスマートフォンが震えた。

 

『あ、お姉ちゃん』

 

 電話に出ると妹の由紀が話しかけてきた。由紀は結社の任務中だったはず。

 

「どうかしたのか?」

 

『やっぱりお姉ちゃんの言う通りでした。例の政府高官を拷問したら吐いてくれたんですよ』

 

 拷問という不吉な単語がでても詩音は眉ひとつ動かさない。秘密結社を創設した以上、その程度の汚れ仕事は当たり前にあるものだ。

 

『わたしたちが元いた世界を滅ぼした魔王はやっぱりこっちの世界に逃れているみたいです。しかも、それなりに大きい組織を作っているようで、政府の中枢にも潜り込んでいるみたいです』

 

「……そうか」

 

 由紀の話は大方予想通りだったため、大きな驚きはない。

 

『とある人物が自分を魔王の残滓だと名乗っていたようです』

 

「どういうことだ?」

 

 そんなこと言葉、元いた世界でも聞いたことがない。

 

『そこまではわかりませんでした』

 

 すみません、と由紀が続けて謝るので、詩音は気にするな、と口にする。

 

『ただ、他にも気になることを言っていて』

 

「……なんだ?」

 

『お姉ちゃん、以前とある仮説を口にしていましたよね。私たちが元いた異世界はこの現実世界と衝突したって』

 

 確かにそんなことを口にしたことがある。けれど、その考えは詩音特有のもはなく、ネット上に転がっていた説を詩音が拾っただけだ。もちろん、ただの仮説なので真実とは限らないが。

 

「あぁ、そのせいで、この世界に異世界のモノが持ち込まれた。我々転生体とかダンジョンとかな」

 

 今では当たり前のダンジョンは、古くから存在したものではない。ある日を境に、突然現れるようになったのだ。

 そして、さきほどの仮説と照らし合わせると、ダンジョンの現れた日に異世界と現実世界が衝突したのだ。

 

『それで中には上位存在もこちら側に来てしまっているようでして、それで魔王の残滓は上位存在をどうにかしたいようです』

 

「上位存在……?」

 

『えっと、精霊とか天使とか、あとは神ですかね』

 

 そういえば、それらを含めて上位存在と呼ぶことがあった。長らく聞いたことがなかったので、すぐに思い出すことができなかった。上位というは自分たちより上の次元に存在するから、という意味があったはずだ。

 

『はい、特に重要視しているのは神のようなんですが、魔王の残滓は神をどうにか懐柔したいみたいです』

 

 終末世界ディスペリオンにおいて、神は何体か存在する。そのため神といっても様々で善い神もいれば悪い神もいる。総じて厄介な存在ではあるが。

 

『そして、魔王の残滓はとある神と接触をはかったみたいです。具体的にどんなことがあったのかまではわからなかったのですが、ただ現実世界でその神は人間に擬態しているようなのです』

 

『想像以上に厄介だな』

 

 詩音は頭を抱えていた。

 下手に神が暴れたら人間が何人死ぬことになるのか。想像するだけで頭が痛くなる。

 

「そうでした。具体的な名前も聞いたんでした」

 

 ふと、由紀がなにかを思い出したとばかりにそう口にした。

 

「華山ハナ。アイドルの名前らしいですが、お姉ちゃんは知っていますか?」

 

 知っているもなにもさっきまで顔をあわせていた人物だった。

 

 

 

 

 

 

 


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