大文字伝子が行く   作:クライングフリーマン

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「マスコミは鳥獣保護法違反と発表した、署の発表をそのまま報道したが、正しくは『鳥獣保護管理法』違反だ。この法律は、2014年5月23日、国会で可決成立した法律で、鳥獣保護法を改訂した法律だが、それまで『特定鳥獣』とされてきたシカ、イノシシ、ニホンザルなどの動物だけではなく、日本産の野生鳥獣のすべてが、鳥獣保護管理法の対象になってしまった。それで、拡大解釈による対処が問題視されてきた。一般人だけじゃ無い、所管になった環境庁も警察も細部に亘って明確に処罰を応えられる者は少ない。問題は科料罰金や処罰のことではない。マスコミが運転手を『人間の轢き逃げ事故』扱いしたことだ。つまり、実名報道だ。昨今、動物愛護団体を名乗る過激な思想の活動が盛んだ。副総監も頭を痛められているところに、厄介な問題が増えた。」


201.鳩1羽轢死事件

======== この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 ================

大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

橋爪警部補・・・愛宕の相棒。普段は、丸髷署に勤務。

斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。高木と結婚することになった。

飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

江南(えなみ)美由紀・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。

伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。入院中。

高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

青山たかし・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。

財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。

渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

中津敬一警部・・・元警視庁捜査一課刑事。今は副総監直轄のテロ対策室勤務。

中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。

七尾伶子巡査部長・・・元警視庁ソタイ課。EITO出向。

大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。

藤井泰子・・・伝子のお隣さん。モールで料理教室を経営している。

大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。

須藤桃子医官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。

高坂一郎看護官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。

浅川要巡査長・・・南新宿署刑事。

 

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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

 

午前8時。EITO東京本部。トレーニング場。弓道エリア。

七尾が弓を引いている。見守る、田坂、安藤。そして、天童、なぎさ。

七尾が10本目を的に射たのを見計らって、天童が声をかけた。

「もう、よろしいでしょう。七尾君、弓道はそこで?部活?」

「いえ、部活は一切やったことはありません。弓は小学校の頃、まだ生きていた曾祖父に習いました。」

「なるほど。成長期の経験は、一生ものといいますからね。副隊長。副島さんの替わりにはならなくても、立派に戦力になる素質がある。天分ですね、新町君の時も幼い時の経験が役に立ったのと同じです。隊長、いや、大文字さんは?」

天童の問いに、「仮眠室です.私が急に思いついた『確認』作業だったので。もうすぐ起きてくるでしょう。」と応えると、「もう起きてるよ。一声かければいいのに。で?」と伝子が現れて言った。

なぎさの報告に、「じゃ、今度から七尾は弓矢隊な。私の服、ぶかぶかだったろう。」と、七尾に尋ねると、「おねえさまは胸が大きいから。私は好きだけど。」と、なぎさはシナを造って言った。

伝子はそれを無視して、「じゃ9時から会議な。」と言い捨て出て行った。

午前9時。会議室。

「レッドサマー案件か、そうでないのか、今の所微妙だ。警視。経緯を。」

理事官に変わって、あつこが話し始めた。

「事件は10日前にさかのぼる。南新宿交差点で、タクシー運転手は信号が青になってから発進、異常なハトの群れがいて、急ブレーキをかけると、かえって危険と判断、直進した。逃げ遅れたハトがいて1羽死んだ。それを見ていた女性が110番通報をした。運転手は『鳥獣保護管理法違反』の疑いで逮捕連行、10日間拘留された後、釈放された。」

手を挙げ、小坂が尋ねた。「『鳥獣保護法』違反ではないのですか?」

「マスコミは鳥獣保護法違反と発表した、署の発表をそのまま報道したが、正しくは『鳥獣保護管理法』違反だ。この法律は、2014年5月23日、国会で可決成立した法律で、鳥獣保護法を改訂した法律だが、それまで『特定鳥獣』とされてきたシカ、イノシシ、ニホンザルなどの動物だけではなく、日本産の野生鳥獣のすべてが、鳥獣保護管理法の対象になってしまった。それで、拡大解釈による対処が問題視されてきた。一般人だけじゃ無い、所管になった環境庁も警察も細部に亘って明確に処罰を応えられる者は少ない。問題は科料罰金や処罰のことではない。マスコミが運転手を『人間の轢き逃げ事故』扱いしたことだ。つまり、実名報道だ。昨今、動物愛護団体を名乗る過激な思想の活動が盛んだ。副総監も頭を痛められているところに、厄介な問題が増えた。」

「ここからは、私から話そう。」と夏目警視正が前に出た。

マルチディスプレイにはRedに流れたレッドサマーのメッセージが流れた。

《やあ、EITOの諸君。君たちの優秀さは充分堪能出来たよ。割り込んで来た半グレまで始末、いや、逮捕してくれてありがとう。そのお礼と言っては何だが、今朝マスコミが流した報道には『裏』がある。日本のマスコミには何故か、憲法にも存在しない『報道しない自由』があって、『切り取り報道』をして、ドラマでもないのに『ドラマ仕立て』にする『面白い』習慣があるそうだね。日本民族の為なら『粉骨砕身』、努力を惜しまないEITOの諸君。見せて貰おうか。その実力を。私はこの件に直接関与していないからね。それと、裏切り者は嫌いだ。種を撒かなきゃ収穫は出来ない。餌は撒かなきゃ生き物は寄って来ない。成功を祈る。

「このメッセージは、午前8時に現れました。」と、草薙の声が聞こえた。

「あつこ、タクシー運転手は何と言っている。」「マスコミの報道とは食い違っているわ、おねえさま。悔しいけれど、今回はレッドサマーの意見に同調するわ。マスコミは常に自分たち本位の報道をするわ。マスコミの報道では急発進して故意に鳩の群れに突っ込んだ、とある。他の信号の時はともかく青信号ですぐ発進するのは当たり前、鳩が進路妨害していたなら、『急発進』するのは難しい。信号無視じゃない。運転手は『急ブレーキをかけると、かえって危険と判断、直進した。』と言っている。『ハトが避けるべきとは言っていない。』と言っている。110番通報した女の行動もおかしい。普通、追いかけて確認する?まるで、『私人逮捕』して警察に引き渡したみたいだわ。」

「概ね、私もあつこと同じ違和感を持った。レッドサマーに便乗して調査すべきだと思います。我々の敵は『テロリスト』です。ダークレインボーだけじゃない。」

「私も同感だ。『裏切り者』と言っている限りレッドサマーが知っている人間だ。恐らく通報女が裏切り者だ。そして、悲しい事だが、警察官を逮捕しなければ行けなくなる。起訴に持ち込もうとしたようだが、検察は不起訴にした。当然だ。普通は48時間に拘置所の拘留が解かれる筈だ。」

憤慨している夏目警視正に入ったばかりの大空が言った。

「冤罪であることが明らかになった場合、非常に軽い微罪であった場合、被害者と示談が成立した場合。検察官送致は見送られ、釈放されるんですよね。10日間拘留って異常ですね。」

「よく知ってるな、大空。頼もしいぞ。立件に向けて鳩の解剖までするのも異常だ。」と、理事官は微笑んだ。

「あつこ。あつこの権限でドラレコ、ドライブレコーダーのデータは確認出来ないの?」と、みちるは言った。

「村越警視正に進言してみるわ。」「私からもお願いしよう。それと、中津興信所にも調べさせよう。」夏目警視正は、にっこりした。

午前11時。警視庁テロ対策室。

ノックをする音がして、入って来たのは久保田管理官だった。

「副総監。遠山組から情報が入りました。『大麻グミ』の取引があるそうです。」

「有限会社多々良かね?」「どうして、それを?」「あつこからドラレコを調べてくれ、と言って来た。例の、鳩轢殺事件だ。」

副総監の言葉に、村越警視正が写真を見せた。

「ドラレコに映っていたのが左。右側が動物愛護団体のパーティーに出ている多々良のおんな社長である多々良淳子、とその女。その女は主催の代表である大葉月百合子だ。何かの恨みで、被疑者である名倉寛治を狙ったと思っていたが、職業柄偶然知ってしまったか知られたと思い込まれた秘密があったのかも知れない。これで、繋がったな。」

「大葉月の思想活動は有名です。レッドサマーが言った『裏切り者』の条件はある。」

3人は頷き合った。

午後1時。有限会社多々良に矢文が刺さった。

木造3階建ての旧建築事務所の壁に、その刺さった時の音は鳴り響いた。

社員が社長に届け、社長の多々良淳子は激怒した。

「なんだとお!!」

文面には、こうあった。

[どうも変だと思ったら、お前の舎弟の大葉月が車の中に落した書類のせいで、俺を刑務所送りにしたかったようだな。相手方との取引は午後7時。急場だから500万円でいい、新宿御苑まで持って来い。こっちは午後3時だ。充分間に合うだろう?]

午後3時。新宿御苑。

拳銃で武装した15人の有限会社多々良の社員がやって来た。多々良淳子も大葉月もいる。

「少ないな。張り合いがないな。じゃ、2軍でいいか。」なぎさは笑い、馬越、浜田、稲森、越後が『銀玉鉄砲』の銀玉で社員のおでこを撃ち、隙が出来た所をバトルスティックで倒した。17分だった。皆、晴天を確かめることなく仰向けで寝ていた。

「副隊長。2軍はないですよ。」と馬越が不平を言うと、なぎさは片手で拝んだ。

午後5時。晴海埠頭。

那珂国マフィア同士の闘争があった。

一方が勝ち、もう一方は武器を奪われ、肩を脱臼されていた。

「待っていたよ、浅川要巡査長。レッドサマーのもう1人の『枝』。そこに寝ているのは、本来はお前らの仲間の連中。『正統派』のレッドサマーの配下に簡単にやられたようだな。」

振り返ると、浅川が見覚えのある顔があった。背後には、三角巾を釣った下條がいた。下條の横に小坂、あかり、七尾、結城、みちる、工藤が並んだ。

そして、エマージェンシーガールズ、EITOボーイズが並んだ。

女性警察官の制服のあつこは、一枚の写真を突き出し、言った。「お前みたいなのは、これからの警察に要らない。足かせになる。もう、遅いけどな。ダークレインボーの『パシリ』、楽しかったか?」

写真には、浅川と大葉月のツーショットが写っていた。タイムスタンプは去年だ。

巡査長は、なかなか昇進しない。ノンキャリアのコースだからだ。そして、定年までに到達可能なのは警部補。久保田警部補、橋爪警部補、西部警部補。いずれも出世欲がない。現実をわきまえているからだ。よく混同されがちだが、巡査長は正式な階級ではない。役職だ。警察組織は二重人事管理をしている。階級と役職が存在するからだ。

巡査長は、巡査より上には違いない。巡査はヒラだから、役職がないが、巡査長にはある。巡査を束ねる『班長』的な役割だ。

あつこは、いきなり浅川巡査長を殴ろうとした。

「よせ、警視!!」伝子は止めに入り、代わりに『デコピン』をした。

「ケツの青い者には、それなりの方法があるってもんだ。」「ありがとうございます。エマージェンシーガール。」

あつこは、エマージェンシーガールズ姿の伝子に敬礼をした。

愛宕が久保田警部補、橋爪警部補、中津警部と共にやって来た。そして、愛宕は七尾に手錠を渡した。あつこが命令した。「逮捕しろ。罪状のお知らせはいい。」

七尾は黙って浅川に手錠をかけた。

中津警部が、警官隊に指示して、浅川達を逮捕連行した。中津も敬礼をして、去って行った。

久保田警部補が近づいて、言った。「今日は、思い切りシリアル食べていいからな。」

そして、久保田警部補は、あつこの肩を抱いて、パトカーに向かった。

エマージェンシーガールズが寄って来た。

「七尾、分かったか。隊長、副隊長。七尾の教育係は、私に任せて下さい。」と結城が言った。伝子は黙って頷いた。

大空は、いつの間にか用意したタブレットに何やら書き込んでいる。

「こいつは、勝手に育つタイプか。参謀向きとか言ってな、学は。」と呟いた。

「確かにな。」「何だ、聞いてたのか。異常は?」「なし。途中で見付けたよ。鳩の餌。」

「私は、煎餅でいい。」

なぎさは笑った。皆、釣られて笑った。

空は夕焼けの、赤い空だった。

―完―

 




このエピソードは、実際に起きた事件を参考にしていますが、飽くまでもフィクションです。

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