【エーテル病】あなたは未知の虜だ。   作:地雷犬

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第29話

(なんだか騒がしくなってきたな……)

国で国民に顔を見るなり手を振られるようになったアインズは少しずつ王の風格が出ていた。

 

 

先日の王妃懐妊の報せからアインズが妹の体で魔導国を歩いた事で真に再生の神としてみなに認知され愛された。

 

骸骨の体で歩く時もあれば妹の身で歩くこともあった。

 

 

「再生神様!おはようございます!」

 

町を歩けば手を振られる程だ。

 

あれだけ国民を治療したりアンデッドに変化させれば、人ならざるモノだとバレても仕方がない。

 

 

子が出来た事を知ったエルダーリッチが傅く様を見て神殿に控えるシモベたちを束ねる神と認識された。

 

(そんなつもりなかったのに……)

 

神殿に日頃から税や申請にくる人々に

稀に神に会えると神殿が殊更評判になった。

 

肉体のある少女のような姿と死の権化であるオーバーロードの姿を使い分けるアインズは魂の再生を司る神だと認知されるようになった。

 

また、この後の事件によってティリスによく見られた『妹』達が魔導国にも繁栄し神の使徒の縁起物として広く愛された。

 

中立かつ神と同じ姿の愛らしいマスコットは神殿のグッズでも人気になった。

 

 

神殿に仕事を片付けに来たアインズは側に控えるエルダーリッチに尋ねた。

 

「なんで私が神扱いになってるんだ?」

 

「六大神の時代より蘇生がとてつもなく高価であった事からでしょうか。死も蘇生も容易なアインズ様の力があればこそでございます。」

 

エルダーリッチ達も躊躇う事なく跪いている。

 

 

妹姿の支配者に傅くエルダーリッチは珍しい絵面であなたは顔を綻ばせた。

 

免罪符もついでに神殿で売ってはくれないだろうか。

 

 

 

目の前にある祭壇に死体を置いて占領してやろうかとイタズラを考えていたあなたの前にアインズが近づく。

 

 

「一体いつ生まれるのか判らんな。妹って生物はどれくらいで生まれるものなんだ?」

 

通常は一日で生まれる。

 

「そんな一日で生まれる生物のサイズじゃないぞ……。ハエじゃないんだし。妊娠期間とか無いのか」

 

 

楽しみに待っているといい。こちらのサキュバスやホムンクルスの妊娠期間が関係しているのかもしれない。

 

 

 

側仕えのソリュシャンもソワソワしている。

 

「あの……アインズ様が良ければ御子息様の侍従も是非ともプレアデスにお任せください!必ずや守って見せます!母乳も頑張れば出せるようにしますので!」

 

 

(スライムは明らかに哺乳類じゃないだろ……。というかアルベド達が手元から離さないんじゃないかな?割と俺の事大好きな感じだし、親バカになりそう。)

 

後世に最高の父(親馬鹿)として絵本に残されるアインズの子育てがすぐそこに迫っていた。

 

 

「ソリュシャンよ、侍従として働くのは良いが私にはもう仕えてくれないのか?息子の為にこれより一生働くのならば止めはしないが……」

 

 

「そんな!!そんなことは天地が割れようとも有り得ません!!プレアデスの休日を融通して交代勤務するつもりでございます!メイド達に負担を掛けるわけにも参りません。」

 

 

(ブラック過ぎるだろ。休日に上司の生まれたばかりの子供の子守りとか。)

 

「ん?それは嬉しいがメイド達にも働いて貰うつもりだったけどな。何でそんなヤル気なんだ?」

 

「いえ、アインズ様当番をメイドが専有しているのが申し訳無く思っております。防御力もメイドとしての能力も完璧なプレアデスとして片時も離れず至高の御方にお仕えしたいのです。御子息様はどのようなお姿で産まれてくるか分かりません。一般的に生まれて直ぐは脆弱で有ることが多いものです。アインズ様の子であるパンドラズアクターは強力ですが、万全を期してプレアデスがお側で24時間奉仕したく上奏した次第です。」

 

 

(長いし重いよ……。というかご子息様当番って俺のアインズくん係りは子供にも適用するつもりだったの?)

 

 

休日も与えられ、メイド達は奉仕欲を溜め込んで欲求不満だった。

 

 

「まぁ良い。ただ、三人も生まれてくるからな。プレアデスの勤務に無理が出ないようにな?但し休日は絶対に取ってもらうぞ。今の勤務シフトを少し他のホムンクルスメイド達に割り振って通常業務の日に交代でやるように、良いな?」

 

 

「はい!!必ずややり遂げてみせます!」

 

(んふふ。至高の御方に連なる存在が三人も増えるなんて、世界が祝福しているとしか思えませんわ!仕事量も幸福も三倍ですわね。)

 

 

 

ソリュシャンのギラギラとやる気に満ちた顔を初めて見た王は呆然としていた。

 

 

彼女との会話を見てエルダーリッチとシモベ達もどうにか子供達の世話に食い込めないか思索を巡らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宝物殿ではくるくると回る守護者が一人。

「ンンンンンン!!何と!何という幸運でしょうか!よもや兄弟姉妹が三人も増えるとは!」

 

 

アインズの一人息子たるパンドラズアクターは宝物殿で踊っていた。

 

 

その宝物殿の安置されたアイテムは至高の御方が残した遺品だが、置かれたものの一つを手に取りじっと眺めていた。

 

(これを複製してアインズ様やシャルティア様に差し上げるのも……)

 

彼が手に取っていたのはヘロヘロの残したカメラ型のアイテム。

 

ユグドラシルに存在した、外装のデータクリスタルに任意の画像データを取り込む為に使用するものだ。

 

 

この世界ではそのまま風景写真が切り取られ、レンズの下から写真が吐き出されるポラロイドカメラ型のアイテムだ。

 

彼はこれを元に複製しこれからの子供達の写真を撮ってもらおうと願った。

 

新しい至高の存在の足跡を残し、兄弟皆がナザリックを愛してくれるように。

 

 

完成した小さなポラロイドを持って食堂に試写会を行う為移動していた。

 

パンドラズアクターの持つカメラを見て食事を取っていたシズ・デルタとユリ・アルファは不思議そうに見ていた。

 

 

 

 

「それ、何?」

「初めて見ましたが、食堂で使うモノなのですか?」

 

 

「よくぞ聞いてくれました。これはポラビジョンというアイテムです。かなり昔のアイテムだそうですが、私が手を掛けて複製した為今でも使えます。風景を切り取って保存出来るといういわれでございます。先程完成して試し撮りに来たのです。試しに第一号で取って差し上げますよお嬢様。」

 

(やっぱり変な人ですね)

 

「うん。ちょっと気になる。」

 

無表情なシズと少しぎこちなく微笑んだユリが身を寄せあっている様をファインダーに収めシャッターを切る。

 

チャカッ、ジー

 

 

直ぐにカメラの下から写真が出てくる。

 

 

「おお!中々良いでは有りませんか!」

 

やまいこ作の美人メイドとガーネット作の無口メイドの麗しい写真をテーブルに並べる。

 

 

「やはりユリ姉は美人。」

 

 

「すごいアイテムですがこれは何故作ったのですか?」

 

「これから生まれてくる兄弟とアインズ様の写真をたくさん取って残したいのです!このポラビジョンも本来は至高の御方達が写真を取ってたくさん残していたそうなのですが、宝物殿にその写真は残されて居ないのです。きっと御方の手元に持っていたのでしょう。是非とも見てみたかったですな。プレアデスの方々もおひとつどうぞ」

 

そういって小さめのポラロイドカメラ型のアイテムを渡す。

 

 

「いいのですか?守護者様から貰っても。」

 

「良いのです。シモベたちのお写真もある方がにぎやかでしょう?宝物殿をいつか思い出であふれる場所にしたいのです。3つ程渡しておきますから、セバス様や他のプレアデスの方とも使ってください。」

 

そういうと本命の父の元へ向かって軽い足取りで歩いて行った。

 

 

 

 

第9層のアインズの私室の扉を叩く直系の子供がいた。

 

「ンゥゥ父上!兄弟たちが産まれると聞いたもので急ぎ作って参りました!」

 

 

「ん?何を?子供服ならとんでもないスピードでメイドとアルベド達が作ってたから余るくらいあるぞ。まだどんなサイズで産まれてくるかもわからんのにな。」

 

 

やはりサイズ関係なく着れるこの防弾服が良いのではないか?

あなたが編んだ防弾服をテーブルに乗せた。

 

 

 

「産まれてすぐ戦闘服なんて着せられるわけないだろ。服飾小物の類なら有り難いが……。」

 

 

「こちらは宝物殿にあったアイテムのレプリカでございます!」

 

「あーポラビジョンか。懐かしいな。やまいこさんとかタブラさんが良く使ってたな。」

 

原作ではスクリーンショットの機能とPC内のjpeg等の画像を取り込んでカスタムアイテムとして使用する機能があった。

 

神話モチーフのアイテムを作るタブラやメイドのユリを作る参考資料を取り込むやまいこはこのポラビジョンに凝っていた時期があった。

 

他のギルドメンバーもチェキとしてイベントのスクリーンショットを保存し、アインズもアルバムに集めていた。

 

「ここにも有るぞ、昔の奴だけど」

 

アインズがインベントリから取り出したアルバムから零れ出た写真には昔懐かしいメンバーとの狩りのレアドロを記念したスクリーンショット、メンバーが新規加入した時の集合写真などが入っていた。

 

 

アインズの隣のイスに座り紅茶と菓子を食べていたエルフの姉弟は粘体の主人の写真を食い入るように見ていた。

 

「お姉ちゃん!ぶくぶく茶釜さまとペロロンチーノ様の写真があるよ!」

 

そこにはぶくぶく茶釜の構えた重盾の反射スキルにペロロンチーノの渾身の斉射が叩き込まれ、反射を介して敵に跳弾(矢)させる曲芸じみたワンシーンのチェキが有った。

 

 

「あ〜これかぁ。実装当初に盾反射スキルが味方の攻撃にも乗るバグがあった時の写真だな。すぐにアプデで潰されたが。」

 

 

相手の魔法を反射するとは利用価値の高そうな技能だ。

あなたもその盾が欲しいと思った。

 

「シャルティアにも見せてあげたかったねー。ペロロンチーノ様のカッコいいとこ見たら喜ぶだろうしね。」

 

「後で呼んでやるといい。で、なんでまたポラビジョンのレプリカを?」

 

 

兄弟姉妹達が加入してからの写真を残したいとただ一人の息子は父親に伝えた。

 

 

「これからの写真か。確かに良いかもな。マーレ達も大きくなるとこを写真に残しておいても楽しいしな。これ大量に作れるか?少し小さめに。」

 

 

「勿論でございます!」

 

ポラビジョンは大量に生産されナザリックのシモベ達に支給された。

 

後に作られる写真館にシモベたちやアインズと子供たちの写真が纏めて展示されるようになる。

 

彼らの写真は増え続け、国民たちにも目に止まるようになった。

 

この写真のコピーは販売されるようになりその精緻さから宗教画より求め易く一家で買う家庭も多かった。

 

あなたも一つポラビジョンを貰い、密かにペットたちとの写真も取っていた。

 

魔導国と紺碧の鈴の関係は後年になっても明確にならなかったが、写真はいくつか残されていた。

 

 

「パンドラズアクター、少し後で頼みがある。」

 

 

「何なりと。」

 

 

 

アインズはパンドラズアクターにモモンとしての任務を言い渡した。

 

「なるほど。先に手を打っておくのですね。畏まりました。青の薔薇もともに。」

 

 

モモンはナーベとコキュートスを連れてギルドへ向かった。

 

 


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