十種の影は人理を廻る   作:英鈍

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夜だけだと思わせて昼投稿!


決戦の幕開け

 一晩明け、遂に決戦の時がやってきた。

 

 諸々の状況を鑑みてこちらが行う作戦は一つ──正面突破。

 

 道中ワイバーンや海魔の襲撃があったもそれを退け順調に進撃、そして──二人の聖女は再び相対する。

 

 ジャンヌと『竜の魔女』が話しを繰り広げる傍ら、俺は二つのことに注目していた。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 一騎は半裸で二振りの剣を持つ男。

 しかしその内の一つの剣は見覚えがある。

 

 カルデアでエミヤに見せてもらった特殊な矢──他人の所有する己が象徴(宝具)を改造するという恥知らずにして共感できる行為によって作られた物。

 

 その名は、赤原猟犬(フルンディング)

 

 となるとあのサーヴァントの真名はベオウルフ。もう一振りはネイリングと見た。

 

 チッ、竜殺しの逸話があるからアルトリアは無理、クー・フーリンはファヴニールの相手だから必然的に沖田に相手してもらうか。メドゥーサもサポートに回らせよう。あいつなら沖田に合わせることもできる。

 

 あともう一騎、具足を纏っていることから日本系。日本系で槍の名手と言えば本多忠勝や前田利家、真田幸村なんかが有名だがいかんせん槍はメジャーな武器。真名を絞ることは難しいな。いや、鬼の意匠が入ってることは異名に鬼が……いやそれでも多いな。()()()やら鬼柴田やら。

 

 アルトリアに相手……いやそしたらヴラド三世が大分キツくなる。すまんが藤丸に誰かしから召喚、千代女さんはその補佐に当てるか。

 

「それこそが真の百年戦争──邪竜百年戦争だ!」

 

 おっと話しが終わったか。

 俺が考えている最中に話しは終わったらしい。さてと、それじゃあやる──ッ!

 

 話が終わった瞬間、直感が働き、()()()()()()()()()

 

 やばい、何か不味い!!

 

「先手必勝と言うであろう?」

「サクッと死んでくれや」

 

 その影の正体はヴラド三世と謎の具足。

 

 両者その槍を手に、ヴラド三世は俺を、具足は藤丸を狙う。その狙いがそれぞれ心臓、首と殺意が高い。

 

 だが、それは失敗に終わった。

 

「危ねぇなクソッタレ!」

「ほう、やはり躱すか」

「やはりぃ?過大評価にも限度があるぞ」

 

「──!貴方は……!」

「あん?何か見覚えある(ツラ)だな。それに心の臓が疼きやがる……どっかの聖杯戦争()で会ったか、テメェ?」

 

 何故ならヴラド三世は咄嗟に身体を捻ることで避け、具足は沖田によって防がれたからだ。こちとら初手殺しは呪霊のお陰で慣れてんだよ!

 

 とは言っても初っ端プランが崩れたな。しゃーなし切り替えていこう。

 

 追撃してくる槍を必死に回避しながらアルトリアへと念話を繋ぐ。

 

(アルトリア。あの具足じゃないもう一騎を相手にしろ。真名は推定だがベオウルフだ。用心しろ)

(ベオウルフ……そういうことか、了解した。そちらも気をつけろよ、マスター?)

(こんなところで死ぬ気はねぇ)

 

 アルトリアとの念話を切るが、やはりサーヴァント相手に今の状態で直接戦り合うのは厳しいな。一人で、だが。

 

「お館様から、離れろぉ!!」

「ぬぅっ!」

 

 千代女さんが召喚した大蛇がヴラド三世へと襲い掛かり、俺とあいつを引き剥がす。

 

 すぐ様千代女さんがこちらに駆け寄ってくるが、やっぱり格上相手は精神が削り取られるな。

 

「お館様、大事はありませぬか!?」

「あぁ、幸い怪我なんかはない。だが──」

 

 戦力差がやばいな。

 

 見たところそれぞれの相手は

 

 デオンとサンソンはマリーとアマデウス。

 具足は沖田、推定ベオウルフはアルトリア、そしてカーミラはエリザベートで残りの面子は『竜の魔女』とファヴニール。

 

 正直すまんが千代女さんは正面戦闘向きのサーヴァントではない。だって暗殺者(アサシン)だから。クー・フーリンとエミヤ?知らん。

 

 となると必然的に──

 

「またこうなるか……」

「ぬっ?」

 

 やっぱり呪術師はゴリラ道を行く運命になるのか。

 ヴラド三世が目を丸くする。そういやお前は初めてだったか。

 

 丁度いい、少しばかり気になったことも聞こう。

 

「なぁ、お前は自分を怪物だと思ってるか?」

「……当然であろう。余は不死身の吸血鬼としてこの戦場に立っている」

「……そうかい。だが俺はそうとは思わねぇな」

 

 俺の身体に鱗が生えていく。

 身体の形状は変化し、爪が生え、頭部は蛇のように変わっていき瞳孔が縦長く──蛇眼へと変わっていく。

 それと同時に尻尾が生えていくが、幸いこういうのを想定して穴を開けてあるためスーツを突き破ることはない。いつもはちゃんと隠しているけどな。

 

「親、というか曽祖父(ひいじい)ちゃんの関係でな、何回かすごい人形師の人に会ったことがあってな。これはその人からの受け売りなんだが──」

 

 

「『怪物の条件はあくまで主観だが、一つ、怪物は言葉を喋ってはいけない。二つ、怪物は正体不明でなければいけない。三つ、怪物は不死身でなければ意味がない』らしいぜ?それに比べてあんたはどうだ?」

 

 

「こうして話しは通じる、あんたの正体はサーヴァント、そしていくら不死身の宝具を待ってようがサーヴァントである限り霊核を潰せば殺せる」

 

 

「つまりはあんたも人間だ。さぁ、人間の戦を始めようじゃねぇか」

 

 降影式・蛟

 

 所謂蜥蜴人間(リザードマン)の姿になるが、俺も歴とした人間なのだ。

 あぁ感じるぜ……『大蛇』の時よりも遥かにスペックが高くなっていることが……!

 

「余が人間……余が人間か……フフ…ハハハ……フハハハハハハ!!!!」

 

 えっ、何急に、怖っ。

 

 突然笑い出すヴラド三世。これには俺も千代女さんもドン引き。

 何、俺を前に笑い出すのって流行ってるの?

 隠神刑部や藤丸が召喚した()()()()()()()()も笑ってたんだけど。特にギルガメッシュ王の目には何か憐憫が混じってたような気もするけど。

 

 まぁいいや。今の内に……

 

「メドゥーサ」

「何用でしょうか」

「アルトリアのサポートを頼む。相手はベオウルフだ。竜殺しが由来の宝具を持っているとしたらちーっと不味い」

「了解しました」

 

 よし、これで懸念は潰せた。

 アルトリアが()()()()()竜の因子を持っているため竜殺しには弱いことになる。信頼はしているが戦場には()()()がある。できるだけ不安は潰したい。

 

 それにメドゥーサの加勢で早く潰せたらこちらへ加勢させることもできるしな。

 

「ふふ、益々気に入ったぞ、禪院廻羅よ!」

「……もしかしてあれ、めっちゃノってる?」

「めっちゃノっておりまするな」

 

 えぇー……弱者が強者に打ち勝てる理由の一つって慢心なんだけどそれ無くなっちゃったかー。

 

 俺は憂鬱な気分になりながらも、槍を構えてこちらを襲ってくるヴラド三世を見据え、()()()()()()()()()()()()()を飲み込んだのであった。


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