ポケモンで如何しろと?   作:らむだぜろ

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VS羽々場

 

 

 

 

 

 

 

 

 コトリバコが受肉した。

 想定内では最悪の事態になった。

 ねこは得物であるナタを構えて久遠に聞く。

「……先輩、意識ありますよね?」

 一応の確認。じゃないと、ねこはこの手で久遠を……。

「はい、大丈夫ですよ。ご心配なく」

 どう見ても大丈夫じゃないのに大丈夫と言い切る。

 だが、ぎゃあぎゃあとコトリバコが騒いでいる。

「落ち着いて。羽々場は呪詛師じゃありません。呪術師ですよ」

 コトリバコにそう言い聞かせる彼女に薄ら寒いモノを感じるねこ。

 此奴、何故正気を保っていられる。

 事の詳細を久遠は説明した。すると。

「……先輩、すいません。呪術師として、今の先輩は無視できません。人のこと言えた事じゃないですが、先輩を連れ帰るワケにも行かないんですよ」

 ナタを構えて、ねこは言った。

「一級呪物、コトリバコを自分から受肉したというのはハッキリ言えば正気の沙汰じゃありません。先輩は自分から、呪術師を止めるような真似をしたんです。恨むなら自分を恨んでください」

 どうやら久遠には、高専に帰るワケにも行かないらしい。

 敵意はないのに、ねこが呪術師として、久遠を処理すると言い出した。

「……私は呪詛師を殺すと決めました。コトリバコのような悲劇を生み出す呪詛師は、あなたの言うとおり、始末しないといけません」

「……なら、何で先走ったんですか!? 私と協力していれば、先輩は受肉せずに回収できたのに!!」

 責めるねこの言うとおりだ。

 協力していれば、受肉せずに回収できた。

 でも。

「……ですが、私は呪術師としての自覚が、足りなかったんですよ。何時までも素人気分で、殺し合いの世界にいる、その自覚が。だから、羽々場の言うことに反発したんです」

 結局、半端者の久遠にはいつか、対立する事は予想できていた。

 その何時かが、ねことの対立だった。 

 一般市民上がりの久遠は、人殺しに抵抗がある。

 少なくとも、過去三輪が呪術師に向いていないと感じたように、実際向いていない。

 けれど、今は違う。

「ご迷惑おかけしてすみません。でも、分かったんです。コトリバコが教えてくれました。呪詛師はクズです。生きていてはいけない奴等だと。惨たらしい悲劇を生み出す元凶は、殺す必要があります。違いますか、羽々場」

 要は、覚悟の問題だった。

 久遠には覚悟がなかった。

 人殺しに抵抗がある、呪術師不向きの久遠には。

 でも、受肉して理解できた。文字通り、身に染みた。

 呪詛師は生かせておいては誰かを殺す害悪だ。

 呪術師として、呪詛師は殺さないといけない。

 これが、覚悟。人を殺すという、確信した意識。

「……その為に受肉して、自分から止めるような真似を……」

「……受肉がマズいことは理解してます。でも、放置よりはマシでしょう。少なくとも私は正気ですよ?」

 コトリバコの情報が今回そもそも違っていた。

 コトリバコはシッポウという七つ目のコトリバコで、随分と前からここにあった。

 その都度封印が解けかけていたせいで、何度も村は死人を出してきた。

 それを呪詛師が転売目的で、再封印して持ち出そうとしていたのをねこと久遠がやって来た。

 そして、事は久遠の先走りによる受肉によって悪化した。

「……先輩、それは悪いんですが聞けません。二級術士として、先輩を殺します。受肉してしまったコトリバコは、もう人間じゃないんです。受肉体、という別物になるんですよ。それは呪術師として、基本的に認められません」

「……虎杖は?」

 受肉体、と言うのは初めて聞いた単語。

 でも虎杖のように受肉しても平然としている奴も居るだろう。

 前例があるのだ。久遠だけが駆除される謂れはない。

「アレは……主人公、じゃない。五条先生のゴリ押しです。本来は即時の死刑判決が下っているんですよ」

「あー……やっぱり」

 五条が権力の無駄遣いで庇っているようだ。

 なら久遠も五条に頼ろう。この際使えるモノは何でも使おう。

 それがコトリバコとの約束、縛りだから。

「ごめんなさい、殺されるワケにもいかないので、とりあえず羽々場。上に報告頼めます?」

「……先輩を処理した、で良ければ」

「それは無理な相談です」

 ねことは交渉決裂か。

 どうしても殺さないといけないとねこは繰り返し言った。

 となれば、戦うしかあるまい。

 受肉体として、何所まで出来るか分からないが今回はねこは本気だ。

 本気で殺そうとしている。

「……はぁ、仕方ない。これも自分のまいた種ですから」

 久遠の先走りによるモノだ。因果応報、と言えばいいか。

 外に出ろと久遠は言った。

「屋内であの術式は使いにくいでしょう。野外で相手になります」

 そもそもこんな惨劇の現場で二度目の死をコトリバコに与えるわけにもいかない。

 ねこは警戒して外に出て行く。

 そのあとをついていく久遠であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廃村の中心の広場に来た。

 広い空間で、ナタを構えてねこは睨みつけてくる。

「……容赦は、しませんよ」

 ねこは距離を離して、構えている。

「久遠様、彼奴は呪術師じゃないんですか?」

「そうですよ、呪術師だったら何で戦うんですか?」

 口々に聞いてくるコトリバコ。

 どうも受肉してから、久遠の知識を共有してるようで、知識が一気に現代にまで成長していた。

 理由があるのだ、と言い聞かせてる間に。

 

「――ほのぼのにゃんにゃん!!」

 

 走り出すねこの術式が起動する。

 対になる白黒猫が二匹、左右に分かれて逃げていく。

「……」

 以前はあの猫に意識を持っていかれたが……。

 今回は違った。

「猫、邪魔!!」

「そうだ、猫は消えちゃえ!!」

 ……コトリバコの中の、ごく一部の意識のみが猫に向いている。

 久遠の意識はねこにしっかり向いていた。

 つまり、ねこの術式が効果が無い。

 それにくわえて。もう、呪術師としての覚悟が出来ている久遠には、躊躇いもなかった。

「おいで、ガチグマ」

 先程も使った、ガチグマの赫月。

 深紅の満月を額に浮かべる、巨体でねこの前に立ち塞がる。

「くっ……!?」

 ねこは避けるように走るが、赫月のブラッドムーンがそれを阻止する。

 満月から出てくる呪力によるビーム攻撃。

 咄嗟に躱して事無きを得たが、着弾点が大爆発。

 爆風で吹っ飛ぶねこに、ガチグマの真空波が襲いかかる。

 追撃に真空波がぶち当たり、更に転がるねこ。

 彼女の術式は相変わらず逃げていく猫二匹。だがそれによって持っていかれている意識は二つだけ。

 コトリバコは言うなれば子供達の意識の集合体。

 無数に存在している子供達が一斉に受肉して久遠の中にはいる。

 一つや二つ、意識が向いていても久遠には最早関係ない。

「……止めますか?」

 ぎゃあぎゃあと騒ぐ子供達が猫二匹に意識を持っていかれているが、久遠は今はねこに向かって問う。

「……私の猫が通じない……!? じゃない、意識の数が多すぎる……!」

「ええ。恐らくは、個々のコトリバコの意識はそっちに向いているので、効果があるのが間違いないかと。でも、私には猫二匹じゃ足りませんよ」

 暗にもう止めようと言ってるのに、ねこは諦めない。

「なんの、これしき……!」

「…………羽々場。死にたいんですか?」

 もう良いだろう。ねこの術式は受肉体の久遠には通じない。

 だから止めようと言うのに、ねこは立ち上がる。

 これ以上は無益だ。そう言うと、

「先輩……受肉体ってのは、本当に辛いんです。いっそここで死んだ方が楽だったと思うぐらい。それでもその子達のことが大事ですか?」

「……何を言うかと思えば。大事じゃないんです。約束をしたと言ったでしょう。それを遵守する。それがコトリバコとの縛りだから」

 何かを知っているのか、彼女は今ここで死ねば楽になれると言い出した。

 そんなの、久遠には関係ない。

 ただ、久遠は約束という明確な縛りがあるのだ。

 それを遵守するためにも、死ぬワケにもいかない。

 これ以上やるなら、コトリバコの力を解放する。

 それが、久遠の覚悟だ。

「猫、消えろ!」

「そうだ、消えろ!」

 口々に叫ぶコトリバコ。

 勝手に喋るのは良いが、不毛な争いはする気は無い。

「…………こっちも、切り札使わないとダメか……」

 軈て、諦めたようにねこはぼやく。

 切り札を隠し持っていたらしい。

 得物を投げ捨てて、俯いてこう言った。

「先輩、楽に死ねると良いですね」

「それは此方も同じ事でしょう」

 互いに、持っている最後の手段を講じる。

 久遠はコトリバコの解放、ねこも似たようなものらしい。

 

「――術式解放! いえね……」

 

「――術式解放。皆、行きますよ」

 

 その時だった。

 

「はいはい、お邪魔しますよー?」

 

 ……久遠の背後に、誰か立っていた。

 陽気に声をかけてくる、男性の声。

 振り返る久遠、驚いたように絶句するねこ。

 そこに居たのは……。

 

「――五条先生!?」

 

 現代最強の呪術師、五条悟その人だった……。


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