天才少女に恋をする   作:かもめ。

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今回は特に何かある訳でもなければ、ただただ主人公と有栖が雑談するだけです。
正直会話の中身もほぼ無いです。

ですがなんとなくこういうの書きたかったので書きました。


二人のとある日常

中間テスト前の最後の休日。

時刻は午前11時。俺は有栖と一緒に部屋で勉強をしていた。

 

「なあ有栖」

「どうされましたか?」

「俺は今なんの勉強をしてるんだ?」

「数学では無いのですか?」

「いや......それはそうだけれど......」

 

俺は今自分が解いている数学の問題に目を落とす。

それは中間テストとは全く関係ない範囲である内容。しかも恐らくこれは大学レベルの難易度の数学の問題だ。

 

「なんで俺はこんな問題を解いてるんだ」

「高校で習うべき範囲は既に終わらせているはずです。中間テストに向けての勉強も、私も春也くんも必要ないレベルだと判断したので、先に進んでいるだけです」

 

しかし、そんな事を言っている当の本人は俺のベッドに腰を掛けて本を読んでいる。

 

「じゃあ有栖は何をやってるんだ?」

「おかしな質問ばかりですね。見ての通り私は本を読んでいるだけですよ」

「それもそうなんだが......」

 

当然かのような振る舞いをしているので、俺が本当におかしい可能性まで考えてしまう。

 

「今は中間テストの時期だ。俺も有栖も何もしないってのはどうなんだ」

「必要であればやりますよ。ですが、先程も言いましたように必要ないと判断したまでです」

「小テストみたいなあの難しい問題ばかり出される可能性も考えたら、流石に危機感を持たないか?」

「それはありえません。過去問という裏道があるとしても、暗記するしか道がない生徒からすればあの手の問題が中心に出されれば解くのは不可能でしょう」

 

つまり、退学者が上級生で多くないのを見るにそのような事はありえないという事だろう。

確かに数学は答えだけを覚えても意味が無い。英語も記述問題が多く出題されていれば過去問を見ても赤点を回避出来るとは限らない。

だから、過去問を用意するだけでどうにかなる程度の問題しか出題されないのを有栖はわかっているからこの余裕を見せているわけだろう。

 

有栖は「それに」と言い、話し続ける。

 

「仮にもあの手のレベルの内容が出されたとしても、どの道問題ありません」

「問題ないのは有栖だけだ」

 

有栖の憶測が外れることはまず無いだろう。

しかし、仮に外れたとしても、問題なく乗り越えられる有栖の実力は流石の一言につきる。

 

「はぁ......」

 

元からテスト範囲の勉強をしていなかったとはいえ、有栖の余裕な姿を見ていると、なんだか俺もモチベーションが下がってきてしまった。

 

俺はペンを置き、ベッドに向かい有栖の横で腰を下ろす。

 

「集中力が続かないのは悪い癖ですね」

「有栖も一緒に勉強に付き合ってくれればいいんだけどな」

「勉強という定義だけであれば、本を読む事も勉強の一つですよ」

「そういうのじゃなくてだよ」

 

事実として、有栖からすれば本を読んでいる方が多くの知識を身につけるはずだろう。少し前にも言っていたように見聞を広げるには多くの場所から情報を拾うのが望ましい。

中間テストとは別に大きな知識を得る事は間違いない。

 

俺は諦めて別の話題を振る事にした。

 

「そういえば、中間テストが終わったらしばらくはまたいつもの学校生活が戻るだろ?その時にまたカフェに行かないか?」

「ええ、良いですよ。しかし、春也くんから誘って頂けるとは珍しい事もあるのですね」

「前話してただろ。忘れる前に行きたいと思ってな」

「そうでしたね。ですがこれから先二人で出かけたり共に過ごす時間は沢山あります。そんな約束なくとも何度もカフェには足を運ぶはずです。もちろん、それ以外の場所にだって」

「そうだとしても、約束っていう物には何か特別感があるんだよ」

 

そんな事を言いながら俺はそのまま身体を後ろに倒す。

かれこれ有栖が部屋に来てから2時間。ほとんど会話しかしていなかったとはいえ、勉強をして疲れが溜まった身体を休ませる。

 

「おやすみになられるのであれば、私が本を読んであげますよ?」

「子供扱いしてるな?」

「そんな事はありません。私が春也くんにお読みする本は童話や絵本ではなく、今私が持っているヘルマン・ヘッセの本かルイス・キャロルの本のどちらかです」

「そういう問題じゃない。そもそも俺は寝ないよ」

 

ここは俺の部屋である以上有栖が寝る分には構わないが、俺が寝てしまっては問題であろう。

招待している身でありながら放置して一人で寝る事はない。

 

「と言うより、最初から勉強しに来て無かっただろ」

「元より一番の目的は昔のように春也くんとの時間を過ごす事ですよ。それさえ達成出来ていれば、あとはなんでも良いんです」

「......」

 

寝転がる俺を見下げるようにそんな事を言う有栖。

何となく、その顔は微笑んでいるようにも見えた。寝転がっていたせいで上手く認識できなかった。

 

有栖は開いていた本をパタンと閉じる。

 

「本はもういいのか?」

 

俺はそんな事を言いながら横になっていた身体を起こす。

 

「時間はいくらでもありますからね。いつかは本を読むだけの時間を作ってもいいですが、今はいいでしょう」

 

有栖は読んでいた本を片付ける。

 

「先程のお話に戻るのですが、カフェへ行くためにモールに足を運んだ際、そこで購入したいものがあるので、お付き合い頂けますか?」

「構わないけど、何か欲しいものがあるのか?」

「私服をいくつか新調したいと思いましたので」

 

私服か。

有栖の私服はよく見ていたとはいえ、どれも華麗な印象を受ける見た目をしているので、よく心をうたれていた。

こうして今、すぐ隣にいる有栖に視線を向けてもそれは変わらずとても華麗な見た目をしていて、少し照れてしまう。

 

「どうかされましたか?」

 

無意識に有栖の事を見つめていたのでそんな事を聞かれてしまう。

 

「いや......なんでもない。大丈夫」

 

俺は咄嗟に目を逸らす。

俺がなんでもなくない事に有栖は気づいていたが、「まぁいいでしょう」と、今回は見逃してくれた。

 

「せっかく春也くんもご同行してくれるのです。春也くんに選んで貰うのもいいかもしれませんね」

「そういうセンス俺にはないんだ。自分が一番良いって思ったものを買うといいよ」

「関係ありません。春也くんが選んでくれたという事に意味がありますから」

 

さっきからずっと有栖の言葉一つ一つに胸が高鳴ってしまう。

無自覚なのか、ただからかっているのかは分からないが、心を落ち着かせるのに苦労する.......

 

「.......頑張らせて頂きます」

「ふふっ。ありがとうございます。とても楽しみにしていますよ」

 

そうして俺に笑顔を向けてくれる有栖。

 

この笑顔に応えられようないい服選べると良いな。

 

「そういえば、中間テスト後に買いに行くとするならもう6月になるだろ?夏服とかも一緒に買ってもいいんじゃないか?」

「では、それも春也くんに選んで貰うとしましょう」

「自分で選ぶ選択肢は無いのか......?」

 

結局どれも俺に選択権を与えられてしまったので、仕方なく受け入れることにした。

でも、有栖がこう言ってくれる事に悪い気はしないから良い。

 

「そうだ。まだモールを全部見ては無いよな?一通り目を通してみてもいいかもな」

「そうですね。情報だけは入ってきますが、自分の目で見れば面白いものが見られるかもしれません」

「情報だけって、何か網でも張ってるのか?」

「以前龍園くんたちの動向を監視させるために人員を割いた際に、モールも一緒に見てきて貰ったのですよ」

 

坂柳派の人らの情報によれば、素行が悪いだけで今の所何か画策している様子はないらしい。

 

「一応みんな同級生だってのになんでもしてくれるんだな」

 

見た目は上下関係が構築されているようにも見えるが、蓋を開けてしまえばただの同級生の集まりみたいなものだ。

にも関わらず有栖の指示に有無言わさず動いている様子を聞くと、Aクラスでも有栖は特別な雰囲気を出しているのは間違いないんだろうな。

 

「有栖はいつもクラスでは何をしてるんだ?」

「特に何もしていません。一般的な学生の生活を送っているだけです」

「派閥の長でありながら多くの人を仕えてるのに一般的なわけあるか」

「あくまでもお友達です。仲良く交流しているだけですよ」

 

前見た時はそんな雰囲気一切見せてなかったけどな......

 

「Aクラスってよく分からないな」

 

そんな事を言いつつ俺はベッドから立ち上がり、棚に置いてある二つのマグカップを持ち、台所へと向かう。

 

「紅茶淹れようか?」

「お言葉に甘えさせて頂きます」

 

俺は軽くマグカップを洗い、紅茶を淹れる。

特に自家製という訳でもなく、売っていた市販の物をそのまま使用しているだけであるため、カフェには劣るがそれでも中々美味しい。

 

紅茶を淹れたマグカップを机に置き、有栖へと差し出す。

 

「ありがとうございます。毎日お部屋に伺っては食事や飲み物を提供していてはポイントが足りないでしょう。私自身の物は私自身でポイントをお支払い致しますよ」

「要らないって。俺には使い道が無いからな。こうして有栖の為にポイントを使えるならそれが一番だ」

 

ポイントをいくら貰っても使い道がなければ意味が無い。

いくらかポイントを使う理由も出来れば、多少クラスポイントをあげるための貢献をしようともなるし一石二鳥だろう。

 

「有栖が毎日こうして一緒にいてくれるだけで俺は充分なんだよ」

 

俺は自身の紅茶を一口飲む。

そんな俺を見る有栖は片手にマグカップを持ちながら話す。

 

「私にとって、春也くんと過ごす時間は既に当たり前になっているのです。その時間は私にとっても有意義な時間です。私があなたと一緒に居たくて居るだけですので、そんな事考えなくてもいいのですよ」

 

そうして有栖も手に持ったマグカップを口につけ、紅茶を一口飲む。

 

「じゃあ、もし必要なら言うよ。でもそれくらいだ」

「春也くんの最大限の譲歩ですかね。ふふっ。わかりました。いつもありがとうございます」

 

有栖はそのままもう一口紅茶を口に含む。どうやら気に入ってくれた様で安心した。

 

「市販の紅茶となると、味の薄いものや香りの感じられないものばかりですが、これは特別美味しいですね」

「まぁ少し高いやつだからな。値段に見合った品って感じだろ」

 

有栖が部屋に毎日来てくれるようになってからは紅茶を常備しておくようにした。

俺も紅茶は好きだが、こうして有栖に美味しいものを飲んで欲しくて少し高めのものを購入している。

 

「まぁそれでも市販の限界って感じはするけどな」

「長期保存が可能なように加工は施されていますからね。ですが、店舗へと出向かなくてもこれ程の味を味わえれば充分でしょう」

「それは同感だな」

 

そんな談笑をしながら有栖と少し高めの紅茶を嗜んだ。

 

テスト前最後の休日だと言うのに、こんなに余裕で居てもいいのか、なんて思いながらも俺の中では既にテストの事など頭になく、有栖との会話を楽しんでいた。

 




こういう日常パートのような回は定期的に書いていきたいと思います。
原作の物語に沿って春也と有栖を絡めるのもいいですが、こういうなんてない日常を描くのはとても楽しかったです。

余談ですが、無事ようマジで坂柳を当てられました。
とてもとても嬉しい気持ちです。

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