ウマ娘と歩くケータイ   作:ドデカイチキン

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Xmas

今日はクリスマス。

クリスマスということもあって街の中にはイルミネーションが眩しいほどに煌めいている。

二人はそんな中を並んで歩いていた。

 

「見て見て!綺麗!」

 

ファインが目を輝かせながら言う。

するとシャカールが言う。

 

「あぁ、そうだな」

 

そんな何気ない言葉のやり取りだけでも幸せな気持ちになれるような気がした。

 

「わぁ!見てよシャカール!」

 

ファインは街の中でも一際目立つ大きなクリスマスツリーを見て目を輝かせた。

 

「おぉ……すげえな」

 

シャカールも思わず感嘆の声を上げる。

 

「はぁ……尊い……」

 

二人の姿を離れた場所で見ていたデジタルは呟く。

 

『あの二人を見て何か感じるものがあったのか?』

 

デジタルが振り向くとそこにはゼロワンの姿があった。

 

「だ、誰ですか!?」

 

『俺はゼロワン』

 

「な……何故シャカールさんのケータイがここに……?それに歩いている!?」

 

『お前は先ほど【尊い】と言ったな?』

 

「えぇ……あの二人には尊い以外に言葉が見つかりません!」

 

『では、お前が【尊い】と感じるものの正体とはなんだ?』

 

デジタルは答える。

 

「それは萌えです!!」

 

『モエ?それはどういうものだ?』

 

「萌えというのは主に可愛いものを愛でる感情のことです」

 

『‥‥‥‥つまりどういうことだ?』

 

困惑した様子でゼロワンが呟くとデジタルは言った。

 

「う、う~んと……つまりですね、推しの尊い姿や行動を見ると心が満たされたり、キュンとしたりする感じのことです」

 

ゼロワンはしばらく考えると言う。

 

『なるほど……ではお前はそのモエという感情をどうやって手に入れている?』

 

「へ?そんなの妄想したり二次創作を見て自分で補完するからですよ!もちろん公式も大切ですけど!」

 

するとデジタルは少し興奮ぎみに答えた。

 

『そうなのか』

 

一方ファインとシャカールは、二人並んで歩いている。

その途中ファインがふと足を止めた。

 

「どうした?急に立ち止まって」

 

するとファインは少し悲しそうな表情で答える。

 

「私達……ずっと友達でいられるかな?」

 

その表情からは不安の色が窺えた。

 

「いきなり何を言い出すんだよ……」

 

シャカールは一瞬驚いた顔をするもすぐに冷静な表情に戻る。

 

「少なくともオレはお前とは友人でありたいと思っているぜ」

 

そんなことを考えているとファインはシャカールに向かって手を伸ばした。

 

「手……繋ごう!」

 

シャカールはその手を取ると二人は手を繋いで歩いた。

夜空には綺麗な星々が輝いている。

クリスマスのイルミネーションの光と相まって幻想的な景色を作り出していた。

そんな光景を二人並んで眺めているうちに自然と言葉が溢れ出す。

 

「ねぇ、シャカール」

 

「なんだ?」

 

ファインは少し間を置いてから言った。

 

「これからもずっと友達でいてくれる?」

 

シャカールはファインの手を握り直すと優しく答えた。

 

「当たり前だろ、誰がなんと言おうとな」

 

それを聞いたファインは嬉しそうな笑顔を見せると、今度は逆に尋ねた。

 

「じゃあ……私のことが嫌いになったらいつでも言ってね!」

 

するとシャカールは少し意地悪そうな笑みを浮かべると言った。

 

「オレがお前を嫌いになるわけないだろ」

 

ファインとシャカールはクリスマスツリーがある広場に辿り着くと、並んで写真を撮った。

 

「はい!チーズ!」

 

パシャッ!!

 

ファインがピースサインをしながらカメラに向かって笑いかける。

そんなファインを見てシャカールも笑う。

そんな二人の様子を陰から見ていたデジタルとゼロワン。

 

(尊い……)

 

『おい、どうした?』

 

ゼロワンは心配して声をかけるも、デジタルには届いていないようだった。

 

その日の夜、ゼロワンはシャカールに尋ねる。

 

『お前に聞きたいことがある』

 

『何だ』

 

『"尊い"とはどういう意味だ?』

 

するとシャカールは少し考えてから言う。

 

「言葉そのものは簡単だけど、意味を伝えるのは意外と難しいな……」

 

『……』

 

「でもよ、オレはその意味が何となく分かる気がするぜ」

 

シャカールの言葉を聞いてゼロワンは少し驚いた表情を浮かべる。

 

『何?』

 

「お前の求めている"解"に近づけるかもしれないぞ?」

 

夜中、ゼロワンは【尊い】や【萌え】という感情を理解しようと普段よりも演算処理速度を3倍に引き上げた。

そして夜が更ける頃には、ゼロワンを疲れが襲った。

 

『結局、尊い……萌えという感情とはなんだ?』

 

ゼロワンは呟くと机の上に横になった。


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