真剣で猟犬に恋しなさい!!   作:勿忘草

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原作キャラと前作のキャラが出てきます。


『帰国は一難』

帰国まで後三日ほどとなったある日の事、俺はお土産店をうろついていた。

キョロキョロして他の所があるのか調べる。

全部同じ所で用意をするのはちょっと芸がないかと思ったのが理由だ。

 

「グッ!!」

「あっ!?」

 

そんな理由で次の土産点を探す為に購入したお土産を持ったまま歩いて居たら誰かにぶつかった。

俺は申し訳なく感じてお土産を地面に置いて顔を上げる。

 

「すいません、少し前が見えなくて」

 

俺はぶつかった事を謝罪する。

お土産があるとはいえ悪い事だからな、その人は明らかに外国人のような見た目だったから俺はドイツ語でしゃべっていた。

 

「随分と流暢なドイツ語なようだが日本語でいいよ」

 

白髪で長髪の男性は日本語を喋ってきた。

見た目は外国人なんで意外だった、この経験は二回目だ。

スーツを着ている所を見たらどうやら会社で働いている人のようだ、だからそれで他国語も流暢なのだろうか?

 

「私は日本人だよ、顔に出ているぞ、『外国人みたいな人だ』と思っているのが」

「あっ、すいません、どうしてもそう思うんです」

 

正直な気持ちを言う。

だって悪いけれど、コレで日本人だと言われて、おいそれと信じれそうに無い。

 

「まあ、無理もないがね、土産店に行こうとしていたのか?」

「そうですけど……」

 

質問に対して返事をする。

まあ、両手一杯のお土産を持っている時点で分かられそうな物だが。

 

 

「悪いが時間を割いてもらって少し話をしたいのだが構わないか?、日本人の話し相手は久々でね」

 

そう言われて俺は承諾した。

するとドイツでのカフェまで無駄なく歩いていく、この人ちゃんと道を覚えているんだなと俺は感心して一緒に入っていった。

 

「話というのはなんですか?」

「話の前に君の事を話してもらえないか?」

「ちゃんと言いますが、その前にそちらの方を言ってくださるとありがたい」

 

なんせ誘われたとはいえ得体の知れない雰囲気を纏っている相手にいきなり情報を開示する訳にはいかない。

相手もこんな言い方をされてまともな返し方はしないだろう、だって相手からすればこちらも得体が知れないのだから。

 

「私は会社を経営しているだけだ、日本には見切りをつけてね、君はどういう人かな?」

「こちらは強くなる事やリハビリの為に軍隊へ入っていた中学生ですよ」

 

予想通りの反応だな、こちらとしては情報は多く開示されていない返し方をされたからこちらもその様にして返す。

一体どういう人なのか分からないので聞いてみたが、その答え方では少しこちらも大きく開示は出来ないという事だ。

 

「ほう、ちなみに聞かせてもらうが位の方は?」

「『上級准尉』ですよ、『少尉』の一階級下ですね」

 

単刀直入に聞いてきたので俺もぼかさずに答える。

俺の位を聞いて男の人が驚いた顔をする、そりゃ背は高いものの少年にしか見えない奴がそんな見た目にそぐわない高い階級なんだからな。

 

「これは驚きだ……『上級准尉』ということは部下も沢山居るだろうな、そんな君に一つ教えておこう」

 

真剣な顔をして言ってくるのでこちらも真剣な顔で対応する。

一体どういったことを教えてくれるのだろうか?

 

「何ですか?」

「『人脈』の大切さだよ、人に慕われた事があるならそれの範囲を広げるべきだ」

 

『人脈』か……どういうものかは分からないが英雄は九鬼財閥だ。

トーマは葵紋病院、つまりどれだけいろいろな人とのパイプを作るかって事か?

 

「広げると言っても……手段としてミグシィとかのソーシャル・ネットワーキング・サービス、そして地道に携帯を使用するのが考えれますね」

 

広げるという事に戸惑いを感じるが手段として思いつく限りの方法を言う。

難しいところで言えば『株』を使って株主総会でパーセンテージを大きく占めれば会社とかは抱きこめるだろうけどな。

 

「手段は確かに君の言う方法が一番ポピュラーだろうね、君には息子にはないものがある……それは軍所属で培った『カリスマ性』だ、それを認識して上手く立ち回れば化けるだろうな」

 

カリスマ性か……人脈というのが信頼の上に作られるものならば、そりゃあこれ以上に良い武器はない。

単純に言えば『この人についていきたい』とか思わせる力だからな。

それにしても息子とは一体誰なのだろうか?

 

 

「さて…話はここまでだな、相手の得体知れなさに警戒するのは構わないが、友好的な相手にそれはご法度だぞ、飲み物代は出しておくが妻との待ち合わせがあるから失礼するよ、またいつか会えた時は君の成長を見させてもらおうかな、ちなみに私が好きなものは……『有能な人間』だ」

 

そう言って男の人は出て行った、あの人は一体何者なのか?

しかし、わざわざ飲み物代まで出してくれるとは親切な人だ。

そう思って俺はお土産店へ向かうために店を出た。

 

俺は出来るだけのお土産を買っておいて三日間過ごす。

なま物はないようにしておいた、ドイツならではの土産物というのでピンと来たものはなく、装飾品系統が多いが気にしない。

食べ物以外にとなるとやはり装飾品や服、工芸品となる。

服はサイズが分からないし、工芸品は割れ物であればかさばる、その為安直ではあるが装飾品にしたのだ。

 

そして空港へ行く日、俺は軍の舎の前で頭を下げる。

今までお世話になったこの場所に、俺に大事なものをくれた場所に、ありったけの感謝を込めて深々と頭を下げる。

 

荷物とお土産を持ち空港へ着いた後チケットを買って搭乗する。

ちなみに機体はおなじみの九鬼の奴である、だって安全性が高いからな。

 

「えっと……番号はh-02か」

 

上に荷物を乗せる前にチケットの番号を確認する、間違えていたらその人にも迷惑だからな。

 

「よしっ、合ってるな、荷物を上に積み始めるか」

 

確認して合っているのが分かったから荷物を積み始める、お土産を入れた袋と衣服を詰めたリュックとかだからすぐに終わった。

席を確認すると雑誌や新聞、そしてイヤホンといったものが有った、それなりに娯楽用品はあるんだな、俺は席を一通り見て座る事にした。

 

「あの、隣良いですか?」

 

席に座る為に俺は先に窓際の席に座っていた人に声をかける、サングラスかけて本なんて読めるわけないのに、しかも小説だから余計読めてないんじゃあないの?

 

「別にいいですよ、それにしても随分髪を伸ばした男だな、女かと思った」

 

隣の席の人が俺の顔を見て声をかけてくる、ツンツン頭でサングラスをかけている。

 

そして今気づいた事だがこの人の体に驚いた。

 

小柄でずんぐりとした体型、身長に比べて圧倒的な筋肉の重みがある。

 

その筋肉を蓄えた腕は丸太のように太いと感じた。

上半身については大胸筋がせりあがって苦しそうにしている。

足はそのはいているズボンが限界近くまで張っていて、太股をいっそうと強調している。

首は腕よりもまた一段太く多少の衝撃では揺らぎそうにもない。

 

こちらの視線に気づいたのか笑みをこぼす。

その笑みは獰猛な肉食獣のようで牙のようにとがった白い歯が見えていた。

 

「あの、どういうお仕事をなされているのですか?」

 

俺はその見た目に圧倒されて少しどもったような質問をする、一拍おいてその男の人から意外な職業が聞こえた。

 

「プロ棋士だ、または臨時での武術顧問をしていてそれに伴って時々九鬼財閥で任務を受けたりしている」

「えっ?」

 

プロ棋士って……対局とか大丈夫なのか?

 

「九鬼財閥に頼まれた任務である女性を更正させる為に保護しに行っていた、対局の日はちゃんと考えた上でな、ちなみにそいつは昨日もう日本へと送り届けておいたよ、こちらものんびり帰りたいからな」

 

こちらの考えを見透かしたように言ってくる、こちらが体の作りについて目を見張っていたのに対しては少し笑みを浮かべて胸を叩いてこう言った。

 

「コレでも昔は見た目どおり戦いに生きていたのさ、負けたけどな」

 

遠い目をしてしみじみと言ってくる。

負けたと言っておきながら清清しい顔だ、それだけ相手が強かったのだろう。

この肉体で、この威圧感で弱いなどという事はないのだろうから。

 

「人生でただ一度の黒星だった、今はその男に勝つ事を求めている」

 

そんな人が居たのか?

世界はやはり広いのだろう、それを知るともっと強くなりたいと思ってしまう。

 

「あっ、それはそうとお前の名前聞いていなかったんだが何って言うんだ?」

「澄漉香耶って言います」

「そうか、俺の名前は長枝っていうんだ、宜しくな」

 

さっきの話が気になったからもっと詳しく聞こうと身を乗り出した瞬間、長枝さんは窓の向こうを見て呟いた。

 

「おいおい、機体のあんな所から煙でてるぞ」

「えっ!?」

 

その言葉を聞いて俺は窓の向こうを見る、するとエンジン部分から煙が上がっているのが確認できた。

 

「ヤバイな、どうする?」

「どうするも何も止めないと!!」

「止めるとしても不時着するのは目に見えてるからやらないほうが懸命だな」

 

どうするか聞いておきながら無理だとか言ってくる、しかしこのまま行くと不時着は免れない、もし万が一の事が有ったら全員帰らぬ人となる可能性がある。

 

「でも不時着したら犠牲者めちゃくちゃ出ますよ……」

「そうだな、じゃあ別の方法とるけど協力してくれるか?」

 

そう言って長枝さんがおもむろにシートベルトを外して立ち上がる。

一体どうするつもりなんだろうか、めちゃくちゃ嫌な予感が背筋を駆け抜けたのは間違いない。

 

「それってどういった方法ですか?」

 

しかし、もしかしたらいい方法かもしれないから一応聞き返す。

しかし、次に聞いた言葉はやはりろくでもない提案だった。

 

「俺とお前が前と後ろに別れてありったけの発勁(はっけい)をする、それで爆発を押さえ込むってわけだ」

「あの、何故下に撃たないんですか?」

 

俺の質問に対して服を正して淡々と答えていく、まるでこの状況から救うのが当たり前のように。

 

「下に撃つぐらいならば踏み込んだ際に『気』を放てば良い、複合してもう一つ技術を使って爆風を更に逸らす」

「あの、他の乗客は?」

 

俺達は助かるが他の人のことも重要だ、俺はそう思って質問をする。

帰ってきたのはやはり救うのが当然というような自信に満ちた声だった。

 

「真ん中に集めれば何とかなるさ、ただ……」

「ただ?」

「どこら辺に不時着するか分からないから気をつけろよ」

 

そう言ってコクピットの方へと向かっていく。

俺は呆れながらもその提案に乗る事にした。

 

俺は後ろに向かう途中途中で迅速に乗客へ呼びかけ真ん中に集める。

そして、俺たちは乗客を挟んで構える。

機体が揺れだしたって事はあんまりもうあまり時間がないって事か、ヤバイな。

 

「さて……やるぞ!!」

「ハイッ!!」

 

長枝さんがコクピットから後ろの俺に届くほどの大声で俺に呼びかける。

それを聞いて返事をした瞬間二人同時に構えて腰を落とし大きく呼吸をして集中する。

そして二人とも気合の一声を発して踏み込んだ。

 

『ハァ!!!!!』

 

飛行機が陸地へ不時着する瞬間同時に発勁をした。

 

大きな爆発や爆風を伴ったがさらにそこで化勁(かけい)をする。

 

それによる成果だろうか、爆風などの大部分は逸らされてリュックこそ少し吹き飛んだけで済み、幸いにも誰一人犠牲者にならず助かったようだ。

 

「山のふもとに落ちたか」

 

長枝さんがそう言って辺りを見回す。

 

爆風は逸らしたが煙や爆発は起こった、山の入り口に近い所という事はこれを目撃した人が警察に通報などするだろう。

その際に墜落を防いだ人間として何か言われるかもしれないし事件でテレビに映るとかなったら面倒だ。

そういった注目を浴びる事やこの事故での渦中の人間になるのはゴメンだ。

 

「まあ、山中じゃなかっただけ良かった、見下ろした所によると下山は随分時間が掛かるぞ、五日から一週間は見ておいたほうが良い」

 

長枝さんが言うように見下ろしてみたが確かに下山は一日二日で終わる距離ではなさそうだ。

 

「少し歩けばバスがあって東京までは行けるみたいだけど……」

「俺……今日本円の金を持ってませんよ」

 

そう言って長枝さんを見ると長枝さんもお手上げといった風に手を掲げていた。

 

「俺もお金そんなに持ってないぜ、東京までのバス代を二人分出したらもう空っぽになる、駅にまで歩いていって電車に乗るのが一番確実だろうな」

 

東京まで行けるのだったら俺よりも年上なんだから人伝いに行けば資金繰りする方法はあるはずだ。

 

「あの、一応聞きますけど東京に知り合い居ますか?」

 

そう言うと少し真剣な顔をしてこちらに声をかけてきた。

 

「お前さ、居る事は居るけれど俺はバス停から東京の街歩いた事ないんだよ」

 

つまり迷って結局は面倒な事になるという訳だ、それならやはり下山して道案内を受けたほうが確実なのだろう。

 

「……それに東京の知り合いで一番先に思いついたんだけど、師匠に金借りるにしても対局で居なかった場合の事考えてなかった」

「えっ……」

 

ああ、そういえばプロ棋士は対局場で移動する場合があるんだった。

 

「あの『律儀』な師匠の事だからきっと貸してくれるけど俺が申し訳ない気持ちで一杯になるわ」

「よくよく考えたらそれってかなり恥ずかしいですね……」

 

師弟関係は良好なのだろう。

でも確かにめちゃくちゃ親身に関わってきたら、確かに申し訳なくなるだろうな。

 

「だろ、しかも他の知り合いは東京でも神奈川寄りに居るから今は頼れないんだよ」

 

そう言って下山にむけて屈伸運動を始める長枝さん、俺は少し気になった事が有ったので聞いてみた。

 

「他の同乗していた人達についてはどうするんですか?」

「そこまで面倒見るわけ無いだろう、元々死んでもおかしくなかった状況を打開したんだ」

 

冷たい意見だなと俺は思った、しかし次の一言で確かに面倒は見れそうに無いと思った。

 

「それに方向音痴が付き添った所で面倒だろうが」

 

それじゃあ仕方ない。

方向音痴は確かに面倒だし、帰る方向と逆に動き出すほどの筋金入りならばもってのほかだ。

 

「一応雪が降っている所を見たらここらへんは北陸地方だろうな」

「じゃあ、一応目的地を決めて歩きますか?」

「そうだな、駅を見つけないと帰れないしな、飛行機は暫くの間はこりごりだ」

 

全くもってその通りだ、俺も次に乗るのは一年後ぐらいでいい。

 

「あと…地味に重要な事だ、お前が先頭歩け」

 

確かに先ほど自分で方向音痴だと言っていたのだから俺が前を歩かないと帰られるのが二倍ぐらいに延びそうだ。

 

そう言って俺と長枝さんは駅に行く手がかりもないまま歩き始めたのだった。

ちなみにお土産は爆発によって全て壊れたりしてなくなってしまった。

爆発の後に残っていたのは携帯電話と財布、そして衣服を詰めていたリュックだけだった。




分かる人にはわかりますが原作キャラはあの人です。
前作からのキャラは名前も分かっていると思うので。
あと、更正させる女性はオリキャラです。

訂正

背中合わせでやる→前後に分かれる。
下に打たない理由を追加。
見捨てたのでないという細かい理由付け。
一日二日で民家が見付かる場所に墜落→人里から離れた所での墜落。

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