真剣で猟犬に恋しなさい!!   作:勿忘草

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今回も原作キャラが出ます。


『九鬼からの依頼 不死川との出会い』

川神運動会から二週間も経ったある日の事、株の儲けが増えてきたせいで通帳を見るのが面倒になってきた。

なんせ学費を一括で三年分払えるのだから見れば見るほど学生が持つ金額ではないと思える。

 

このままいけば将来的にはプライベート・バンクが必要だろう、調べた所によれば九鬼財閥がスイスに銀行を持っているから英雄に頼めば何とかなるだろうか?。

そんな事を考えて家のポストの中を見るといつも見る光熱費の請求とは違う物を見つけた。

 

「んっ……何だ、これ」

 

俺はその自分のポストの中にあった物を取り出す、すると現れたのはお洒落な装飾の手紙だった、そして宛名を見るとそこには『九鬼紋白』と描いて有った。

一体何時に俺の住所がばれたのだろうか、俺は疑問に思うがこれって英雄に関係ある人だよな?

 

「えっと、『○月△日土曜日の午前九時にこの場所でお待ちします』?」

 

この手紙を見て俺は首をかしげる、一体どんな用事なのだろう、まさか英雄に重大な事でも起こったのだろうか?

 

そして土曜日となる。

指定された場所は喫茶店、と言っても九鬼の系列だから非常に綺麗でおしゃれな所だ。

待ち合わせの一時間前に来るのはマナー違反だろうが、遅れるよりかはましだろう。

それから三十分後、白髪の老紳士が姿を現した、どうやらこちらに向かって歩いてきている所を見ると今回手紙を出した人に関係があるのだろう。

 

「この度九鬼財閥より来させていただきました、九鬼従者部隊参番のクラウディオ・ネエロと申します」

「どうも、手紙の方を読ませていただきました、澄漉香耶と申します」

 

俺は席から立ち上がり頭を下げて挨拶をする、どうやら相当上の人を用意したようだな、強さは俺より上……ただあくまで『総合力』だからもしかしたら付け入る隙があるかもしれないが。

 

「今回、紋様は少しご用事がありまして代理としてこさせていただきました、申し訳ありません」

「いえいえ、別に構いませんよ、忙しいのは承知ですから」

 

俺は頭を下げようとしたクラウディオさんを手で制して、その前に言葉を言う、だって忙しいのに無理にこられてもこちらが気を遣う羽目になりそうだしね。

 

「用というのはもしかして俺に『株』の事でお話ですか?、勉学など知識的なものなら頼れる人がいるでしょうし、武術に困るにせよ貴方が付き人になったりするか、揚羽さんならば問題はない」

 

「はい、察しが良いですね、紋様に調査を言われて一週間かかりましたがようやく知りましたよ、『ノットメルト』と言われた株での負け無しの人を」

 

「負け無しと言うより落ちないのが不思議なんですよ、ギャンブルはその時その時のリズムが有る物です、天井知らずにあがるなんてのは普通に考えれば無茶なんですよ」

 

俺はクラウディオさんの言葉にちゃんとした言葉を投げかける、上がり続けるなんておかしなものだ。

そのくせ自分が売れば下がり始める、はっきりいって不正を疑われても仕方が無いだろう。

 

「仕方ない事です、そういったものに魅入られたのでしょう、それを跳ね除ける事は己に逆らうと言う事です、度を過ぎてしまえばそれはもはや一種の呪いともいえるでしょうね」

「そうですか、話を脱線させてすみませんが今回の本題の方をお聞かせいただけますか?」

 

本題と聞いた瞬間、俺は姿勢を正してクラウディオさんの話しを聞く事にした。

 

「そうでしたね、本題の方は『株』である企業の筆頭株主になり経営権を奪取して頂きたいのです」

「筆頭株主って……まずその筆頭株主の保有量によって変わりますよね?」

 

クラウディオさんからの依頼は正直言えば驚きだ。

相手の保有量を超えればいいのだが相手が七十とかだったらかなり難しくなる、確かに今まで買っているところはこちらが上手くやっていてほとんどが筆頭株主になったが相手次第で難易度が上がるだろう。

 

「えぇ、その通りです。ちなみに相手の保有率は現在六十八パーセントですがどうでしょうか?」

「流石にこれは……骨が折れそうですね、考えさせて貰ってから決断しても良いですか?」

 

今までが六十パーセント前半が最高値だったのに対してこの依頼の難しさは少し面倒だろう。

 

「そうですか、残念です。 これは独自に調べたのですが貴方は英雄様と仲が良い方で先ほどおっしゃっていたように揚羽様もご存知ですので事情も省みずすぐに引き受けてくださると思ったのですが」

「えっ、英雄って、なんでそこに英雄が関係するんですか?」

 

そのため思案させてもらった上で決定しようとしていた時クラウディオさんから英雄の名前が出る。

一体どういうことだろうか、俺は気になって理由を聞いてみる。

 

「実は英雄様がその組織を買収する為に交渉しにいきましたが、相手側は英雄様の話を聞かずにあらゆる罵詈雑言を投げかけて門前払いしたようです」

「ほほう…英雄にそんな言葉を」

 

俺はそれを聞いた時きっと凄い顔になっていただろう。

青筋が立ちそうなほどこめかみに力が入り、奥歯をギリギリと音が立つほど噛み締め、握ったグラスは壊れそうにピキピキと音を出していた。

 

「今一度聞きますが…引き受けていただけますかな?」

「えぇ、喜んで引き受けさせていただきますよ、クラウディオさんも人が悪い、もしその言葉を先に言ってくださったなら二つ返事でしたのに」

「すみません、名前を出さなくても引き受けてもらえるかと」

「ただ一つ、問題が……」

「なんですかな?」

「時間が掛かるかもしれません、それと……相手から度を過ぎた量の株を奪い取ってもいいですか?」

「それは構いません、どうかよろしくお願いしますよ」

 

その返答を聞き、俺は気合を入れてその依頼を引き受ける、さて……どこぞの誰かは知らないが英雄を馬鹿にした分吠え面かかせてやるぜ。

家に帰ってパソコンの前へと向き起動する、俺はクラウディオさんから教えてもらった企業を見つけ、全力で叩き潰す事に決めてキーボードに手を添えたのだった。

 

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.

.

 

 

「有難うございました、これであの企業は滞りなく買収できるでしょう」

「こちらこそ待たせてすみませんでした、本当に申し訳ない」

「フフッ、英雄様との再交渉の際、泣きついてきた相手を見た時は痛快でした」

「そりゃあ、嵌められて暴落した後に七割近くも取られれば速く買収してもらわないと会社が完全崩壊を起こしますからね」

 

あの相談から一ヶ月後、俺はクラウディオさんと夏休みに入った川神学園の茶道部の部室で話をしていた。

 

何故川神学園かと言えば、どうやら手紙で話があるらしく俺はその返信で場所を指定して、川神学園にしてもらったのだ。

別にクラスでは特別授業はないがS組の教材を宇佐美先生から受け取って家でやっている、今日はそれもあって場所に川神学園を選んだのだ。

ちなみにバイトは続けている、依頼の数を多くこなしたり危険な事優先のため結構な額は稼げている。

 

あの後どうしたかと言えば、まず相手側へは先制パンチとして、人種差別の言葉を投げかけたというスキャンダルを公開して相手へダメージを与えた。

そして世論としては、大企業の人間がそんな事をいったと言うので株価の変動が発生した。

『そんな常識のない人の会社の株なんて』と言う固い人が売り、また同じく大企業の人は飛び火する事を恐れて売りに走る。

そこで俺がそれらをハイエナのように回収する事で株の占有率を上げて相手へプレッシャーを与える。

 

今まで築き上げた『人脈』の中には一流のハッカーがいたのでその人達に儲けの少しを報酬に渡すと言う契約をした。

それだけで赤子の手をひねるようにスキャンダルの公開を大々的にやってくれたのは確実に儲けが出ると信じてくれたからだろう。

 

そこで追い討ちをかけるように相手の創業者一族の戸籍などを洗い、遠い親戚に日本人の血が入っている人を探し出し、その事実を突きつけて更に精神的に追い込む。

ただでさえ人種差別の発言をしたのにその対象が遠い親戚と言えど居れば大きな火種となるはずだ。

 

そしてその予想通り更に売りに走られ、自分たちの首を絞められ、一族の間でも少しずつ売られていき、最終的に相手に残ったのは社長とその息子が持っていたごく僅かなパーセンテージ。

 

そうなったらこちらが経営権を手に入れられる、しかしこれ以上落とされても仕方ないほど俺は経営をうまくは出来ない、今まではどうにか着眼点をしっかりと持った上で現状維持をしていたが大企業だったら無理だろう、そうなると相手が泣きつくのは『買収』の案。

 

そこで俺が九鬼財閥との相談を持ちかけて買収させる、もちろん俺とクラウディオさんの結託はばれない方向で、これによってクラウディオさんからの依頼が終わって今このようにして話し合っている。

 

「とりあえずこれで貴方からの依頼は終わった、英雄の方はどうしてます?」

「えぇ、貴方が筆頭株主ではあることを伏せておりますが順調ですよ、いつ頃売りに出す予定ですか?」

「それは一応+になってからですよ、ただ大半はそちらに売って九鬼財閥を筆頭株主としておきますがね」

「それは有り難い……それと紋様から感謝の言葉を承っております、『兄上を罵倒した仇をとってくれてありがとな』と」

「友人を罵倒されて黙ってられなかっただけですよ」

 

俺は笑顔でそう答える、感謝されるいわれはない、誰だって友人を馬鹿にされて黙ってはいられないだろうからな。

 

「それでは私の方はこれで……紋様を待たせる事になりますので」

 

そう言って出て行くクラウディオさん、俺も別に教材受け取った後に先生から茶道部の鍵借りただけだし帰るか。

チャイムが丁度鳴った、という事はS組の特別授業も終わったようだな、タイミングとしては良い感じだ、そう思って階段を下りて職員室へ鍵を返し、校門から出た俺は学校の向こう側に大きな黒い車を見つけた。

 

「んっ、アレはリムジンか?」

 

黒い車があんな所になぜあるのか疑問に思うが俺は歩いていく、前の方になんだか着物を着た綺麗な女性が居るが……確かあの人は体育祭でS組の第一走者を努めていた人だ。

 

とにかく俺は後ろに歩いていく事にする、S組の人達はプライドが高いから並んだり追い越すのはあまりいいことではない、これは俺が『人脈』の構成で気づいた事だ、うっかりして大きい存在を敵に回すのはよろしくない。

 

「にょわ!?」

 

そんな事を考えて歩いていると、着物の女性が何かおかしな声で驚いているが一体何が有ったのだろうか?

そう思った次の瞬間、俺の視界には車がちらりと見えた、エンジン音から察して相当な速度だろう、そうでなければわざわざ車が来たぐらいで驚くこともない。

 

「危ない!!!」

 

俺はすぐに駆けつけてその女性を抱きかかえるようにして走って、その場所からすばやく離脱する。

それから一瞬の間をはさんで車が通り過ぎた、あのまま見過ごしていたらとんでもない事件が発生していたな。

 

「ふう、大丈夫そうでよかった……」

「はっ、離さんか、痴れ者が!!」

「あ、ああっ、悪い」

「全くこんな抱え方を此方にしおって……恥ずかしいわ」

 

車が通り過ぎていくのを見届けていたがそういえば女性を抱えていたんだったな、しかも俗に言う『お姫様抱っこ』と言う奴だ。

相手が恥ずかしがるのも無理はないが、でもそうでもしないと助けられなかったし仕方ない、俺はそう思って静かにその人を下ろした。

 

「!!、いてて……」

 

下ろす際に屈んだ瞬間、足に痛みが走る。

どうやら抱えて逃げる際に僅かに車輪が足に掠っていたようだ、どうにかこの女性を落とさずに済んだから良いが……暴走車は怖いもんだな、本当に。

 

「おっ、おい、お前大丈夫か?」

「ああ、問題ない」

 

別に骨がイかれたわけでもないしさほど血が出るといったものでもない、もし治療したほうがいいならばトーマの所に行けばいい、だから本当に問題はないのである。

 

「そういえば名前を聞いておらんの」

「そういえばそうだが……」

「それでお前の名前はなんじゃ?、せっかく助けてくれたのじゃから名前ぐらい覚えさせよ」

「いや、そんな大した事はしてないから……」

 

決して名前を名乗るのが億劫だからこんなことを言っているのではなく、『大した事ではない』というのは本心からの言葉である。

目の前で事故が起こればいい気はしないし助けないわけにはいかない、そして助けたからと言っても別に恩を着せるつもりなど微塵もない。

 

「謙遜せずに名乗らんか、此方がお前の名前を覚えておいてやると言っておるのじゃぞ、先刻の行動の礼を返せんであろう?」

 

こちらが断っているが相手がこう押しを決めて聞こうとしているのを見たら苦笑いがもれそうになる、こういう人は頑固って言うかちゃんと名乗らないとてこでも動きそうにないしな。

 

「分かった、名乗るよ、流石に二回目を断れば失礼だしな。 香耶、澄漉香耶」

「ほう、なかなか良き名前じゃの。 此方の名前は不死川心じゃ、澄漉香耶じゃな、確かに覚えたぞ!!」

 

名乗ったら気を良くしたのか、自分の名前をこっちにも言って軽やかに黒い大きな車が止まっている方向へ歩みだす、その所作には優雅さが溢れていた。

……これが俺と不死川心との出会いだった。

 

家に帰り不死川とは一体どのような存在なのかを調べて三大名家の一つと知り驚いた。

なんせ三大名家って言えば、綾小路という平安時代から長く続いている所もあるし、そしてその名家は、政治や法の番人である警察などに対して絶大な権力を誇ると言われている。

俺が今まで出会った中で、権力が凄いのは九鬼しか心当たりなかったから驚きは隠せなかった、とは言えど別に助けたから不死川を利用しようなどは考えていない。

ただこれから先の事で何かしらの行動を、不死川に起こして貰った時は素直に礼を言おう、それは不死川が今日の俺の行動に、恩を感じた上でしてくれているお返しなのだから。




英雄単体ではなく九鬼財閥が凄いと言うので最後に九鬼とさせていただきました。
今回はSでめでたくヒロインとなった不死川心を出しました。
何かご指摘ありましたらお願いします。

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