真剣で猟犬に恋しなさい!!   作:勿忘草

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1ヶ月ぶりの投稿です。
次回はようやくあのキャラを出せると思います。


『秘密兵器と巨人の戦い』

二人の尼子との戦いが終わり、井上がマルギッテ達の方向へ駆けている頃、一番の激戦がそこでは行われていた。

 

「この程度か、マルギッテ!!!」

 

その叫びとともに男は再び技を繰り出す、技のキレや速度、動き全てをとってみても私が今まで戦ってきた男よりも強い。

ましてや年下ともなれば初めての体験だ、キョーヤもかなりのものだったがそのレベルを凌駕している。

 

お嬢様を傷つけさせないように後ろへと下がらせている、始めたときはお嬢様と私のコンビネーションを駆使したがそれでもこの男が技を繰り出していくにつれて少しずつ均衡は崩れていき、いまや二人がかりでも押されている状態である。

 

「せめてキョーヤが居たならば隙を作ってもらい、そのまま大技を繰り出せるのだが……」

 

お嬢様を守りながら戦うというのであれば、この状況は変わらない。

一番信頼できる副官か、耐久力に自信がある猛者が協力してくれないと覆せずにこのままやられていく一方だろう。

 

「『ライトハンドスラッシュ』!!」

 

雷を帯びた右の手刀で鋭い一撃を繰り出してくる。

後ろに避けたが掠っていたのか、一撃は袖を僅かに切り裂いていた。

仮にあれが直撃していたらあの鋭さから考えても出血が多くなってしまい、戦いを続行するのも難しくなっていただろう。

 

「トンファーキック!!」

 

私はこの劣勢な状況を打開するために勢いをつけて一番の技を放ちにいく、速度と威力の両立がされている技ならば相手へ通るだろう。

しかし次の瞬間相手はきわめて冷静な眼差しで手を前に出して言葉を放っていた。

 

「格上の相手に隙もないのにそのような一撃が通用すると思ったか、焦りすぎたな」

 

そう言うとトンファーキックを平然といなして距離をとられていた、滑らかな動きのために反応がわずかに遅れる。

当然そのような状況を見逃す相手ではない、その僅かな隙はもはや修正できるようなものではなかった。

 

「これで終わりだ『ガトリング・クロウ』!!」

 

技の後に生まれてしまう僅かな硬直の瞬間を狙った攻撃、千手観音を思わせる連打を避ける手立てはない。

私の戦いはここで終わるのだろうか?

それならばせめてお嬢様だけでも逃がさなければいけない、そう思って耐えるために歯を食いしばる。

 

だが次の瞬間視界に入ってきたのは影に包まれた大木であった。

凄まじい打撃音がその大木に叩き込まれる、一瞬の間を空けてのそりとその大木は動いていく。

その光景を見てようやく間に入ったのが人間である事を感知させる。

 

「ふう、やっと追いついた」

 

私と相手の間に入り込んで全ての攻撃を受けた逢間雁侍の姿がそこにはあった。

頑丈な肉体が阻んだのだろう、けろりとしている。

いきなりの出現で尚且つ攻撃を防ぎきった存在に興味を抱いたのか、男は構えて口を開いていた。

 

「貴様、何者だ?」

 

目の前に立ちはだかる相手に、警戒心を持った男が質問をする。

その問いに対して逢間雁侍は腕を組み堂々とその目的を言い放っていた。

 

.

.

 

「マルギッテさんとクリスさんを助けに来た助っ人だ!!」

 

俺は素性や武術経験について聞いてみたかったはずなのに、あまりにも堂々とここに来た目的と『助っ人』という存在を言われて一瞬頭が硬直する。

ある意味何者であるかを知る事はできたのだが聞いてみたかった事ではない。

 

「異様なまでの頑丈さが気になったゆえの質問だったんだがな

仕方あるまい、こうなった以上お前も同様に相手をしよう」

 

拳を合わせていけば経験者かどうかはわかる、素性は鉢屋にでも言えば解決するだろう。

構えた拳から『ガトリング・クロウ』を放って攻撃していく、逃げ場を塞ぐように避ければマルギッテに当たる事も考えた一撃だ。

 

「があっ!!」

 

男は腕全体ををいないいないばあをするようにして顔を守りながら前進してきた。

回避ではなく受ける事を選択したのはマルギッテを慮った結果だろう、ただそのような考えを抱く以上の驚きがそこにはあった。

 

「まるで移動している戦車か城砦を相手にしているようだな」

 

あまりにも堅すぎる、いくらか手ごたえこそあるがそれ以上の数の攻撃が弾かれて大きく相手にダメージを与えられない。

この男の武術こそまだ見えないがもしかすれば壁越えクラスの相手だ。

よもや自分と同格の相手に出会えるとは思わなかった、このような出会いに心から感謝する。

 

「ふっ!!」

 

脇を閉めて腰の回転を伝えた素晴らしい拳だ、だがそう簡単には喰らわない。

軌道があまりにも素直すぎて避ける事にかんしては気をつけるような代物でもない。

 

「『ライトハンドスラッシュ!!』」

 

避けてすぐに攻撃へと転じて雷を纏った手刀での一撃を繰り出す、手数から攻撃の重さを重要視する方向性に変える。

手数でせめてもまず攻撃が通らないというのはかなりこの戦いにおいては問題だ。

一撃KOも望めそうには無いので長期戦を意識していくのもいいだろう。

 

「ぬんっ!!」

 

空いていた手で叩き落そうとするのが見える、振り切った腕が邪魔にならないようにずらしているのが見えたがそれでもなお、こっちの一撃

 

の勢いは弱まる事はない。

 

「はあっ!!!」

 

脇腹を切り裂くように腕が通過していく、わずかに指先に血が付いているのが確認できる。

だがそれ以上に恐ろしさを感じたのは喰らいながらも体を捻っていることだった。

腕を大きく振り回して攻撃をしてきた、ただひたすらに当ててしまえばいいというような大雑把な攻撃にいささか呆れて回避行動をとる。

 

「はっ!!」

 

力任せな一撃は大気を切り裂いて眼前に迫ってくる、しかしこの程度の圧力ならばまだ恐れることはない。

頭を屈めれば平然とその一撃を回避する事はできるし、後ろへ飛んでも容易いものだ。

冷静に呼吸を整えて腕の軌道を目で追って対応していく、相手の攻撃を避けて次にどのように相手に動揺を与えるか、傷を与えるかという事を考える。

 

「らあっ!」

 

しかし、勢いのある攻撃を避けた事で安堵してしまったのか、さらに大きく踏み込んで強引に振り回して来る攻撃への対処はさっきよりも速さが上がっていたためわずかに遅れてしまい、軌道を読んだ上で最小限にとどめるよう後ろに飛んだものの僅かに掠っていた。

 

「僅か一撃でこちらに有った流れを大きく引き寄せるか……」

 

後ろに下がっていながらも威力を完全に受け流せなかったのだろう、掠っていた腕がぶるぶると痺れたように震えている。

もし、あの威力が体に当たって振りぬかれたらどれほどのダメージを与えられるのだろうか。

ぞくりと背筋に冷たいものが通り抜ける。

 

「だがまだまだ俺には技がある」

 

しかし同様をしてはいけない。

まだ見せた技は三つほどで全てではないのだ、奴の弱点が露見すればその箇所のみを狙うといった方法もある。

まずは蹴り技で機動力を削っていく、この頑丈な奴が相手なら真綿で首を絞めるようにじわりじわりと戦っていくのが得策だ。

 

「『デスサイズシュート!!』」

 

相手に対して足を切り落とす錯覚をさせるほどの鋭い下段蹴りを放つ、当然単発で終わらせるつもりはない。

すぐさま足の筋肉を再稼動させて追撃の体勢をとる。

 

「くっ!?」

 

速度についてこれなかったのか足でそのまま受けて視線を下に向ける。

いくらなんでもそれは失敗だ、次に来る箇所を常に考えて動く。

 

「もう一発だ!!」

 

頭を切り裂くように二撃目の鋭い蹴りを放つ。

当たる寸前に腕で防いだようだがどうやら腕がそびれているようだ、顔をしかめている。

 

「がっ!!」

 

今の一撃のやり取りでこいつの動きに違和感を感じていた。

下段の蹴りは脛で受けるのが常套、そしてこのように下方向に来た場合は上に気をつける。

そのようなイロハも知らないとはこいつ、もしや……

 

「無垢なまでに何の武にも染まってない強者か、厄介なものだ」

 

素人は素人でもこの体躯と頑丈さはすでにその範疇をはるかに凌駕している。

この男が武に染まり更なる力を身に付けたならば俺を超えるだろう、素晴らしいと純粋に思えた。

 

「だが、まだ俺を超えてはいない」

 

だが今の俺には届いてはいない。

それならば負けるわけにはいかない、それがプライドというものだ。

全ての技と力を駆使してお前を倒そう、強きものよ。

 

「『サイクロンスマッシュ』!!」

 

高く飛び上がって体ごと大きく回転をすることで一撃の威力を底上げさせる。

さらに勢いをつけて相手へダイブをする技だ、体重の何倍もの衝撃を相手に与える。

 

「ハッ!!」

 

両腕を交差して受け止めようとする、本能的なものがよぎったのだろうか、棒立ちで今まで受け止めていたというのに。

ただ、いまさらその一つの動作で攻撃を完全に防げるわけもない。

 

「無駄だ!!」

 

俺の言葉通り、男は衝撃を完璧に受け止められずに衝撃で片膝をついて僅かに吹き飛ばされる。

高々自分の半分ほどの大きさの男が放てる威力など、こんなものだとでも予測していたのだろう、つくづく素人だな。

 

「やあっ!!!!」

 

しかしあの威力を受けても気骨は影響がなかったのか、大きな声とともに勢い良く風を切り裂き見るからに重い蹴りを出してくる。

避けても掠ればそのまま持っていかれそうだ、受け止めるのも得策ではないだろう。

そうなれば答えは逸らすのが一番だ。

 

「はっ!!」

 

集中していき防御を貫く蹴りをいなして懐に潜り、気合を込めて喉に突きを放つ。

声帯や気管支を痛めつけて呼吸器へダメージを与える一撃だ。

 

「ふんっ!!」

 

奴はその一撃に対して素早い反応を見せてきた、頭を下げてこっちの指を砕くように頭突きを繰り出してくる。

まるで事前にその箇所へ入ってくるのを計算したかのような動きだ、これは想像以上にまずい。

このまま衝突してしまえば指が折れてこちらの攻撃力が落ちてしまい、この男に有利な状況へ天秤が傾く。

 

しかし奴の頭と俺の突きが衝突する寸前、目をくらませるような閃光が空高くに炸裂した。

 

「むっ……」

 

十勇士達が大将首を取っているという情報も来ないのに花火が上がった、こちらの大将である石田が負けたのだろう。

こちらに有用な情報が流れず、敵にここまで攻められていてはそう考えるのが普通だ。

 

構えを解いてこの戦いを自分からやめる姿勢を見せる、これがこういうイベントでなければこのまま続けていたのだが今回はそうもいかない。

全くもって残念というほかないな。

 

「この戦いの結果は次に預ける事にする、今度は決着が付くまでやるぞ……」

 

そう決意を示すように男に向かって言った後、俺は髪を束ねてマスクを装着しながら自陣へと戻っていくのだった。




思ったより淡々とさせてしまいました。
何か誤字や脱字等の指摘などありましたらお願いいたします。

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