真剣で猟犬に恋しなさい!!   作:勿忘草

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久しぶりに原作キャラが出てきます。
一応エアマスターキャラも出てます。


『竜の棲家は近くに』

川神ランキングでの6試合が終わって以降、それから十日の間全く上位同士の戦いはなかった。

理由としてはやはり12位の茜田先輩が不死川に一瞬でやられたり、本気の結城先輩を見てしまったからだろう。

その為、6位の梨先輩、5位の川次先輩、3位の小平先輩の3名が上位挑戦に躊躇しているから3年の上位は動かない。

そしてそこそこ上の順位の選手も不死川や一子といった一桁に挑む気概を粉々にされてしまったのだろう。

ちなみに戦った赤沢先輩は顔が腫れているものの腕や足へ深刻なダメージはなく、腫れが引けばすぐにでも試合に復帰できるとのことだった、

 

「しかし、ほとんどが顔見知りって面倒だな」

 

俺は頭をかきながら考える、上にいる奴ではいろいろな先輩がいるが、俺はできるだけ港は避けていきたい。

あいつと戦うのは上位での対戦になるだろうし、まだ少し情報を集めておきたい。

そして、キャップやガクトとはあまりやる気を起こさない。

浸透勁をキャップが身に着けている以上、ガクトだって港との戦いから成長して何かしらの技や技術を身につけているはずだ。

しかし時間が強くしたというのならば、こちらにも時間はあったし濃密だった。

力関係はおそらく幼少時のころから変わっていないだろう。

それでも万全を期するのであればガクトの試合を見てからにしておかないといけない。

 

「次は16位の管牧にしておくか、しかし武蔵の奴より上位の1年っていうのも珍しいな」

 

次の相手は思ったより早く決まる。

ただ、相手は今年の新入生という事もあってデータがあまりない。

武術は所属先の梨先輩との同好会の練習で身に着けた中国拳法のようだ。

 

そして決闘ではこのランキングに乗っている上級生のメンバーをほとんど倒している。

たった二ヶ月そこらでかなりの練度にまで引き上げられたとするならば、先輩の教え方がいいのか。

それともこいつの理解力が良くて、すぐに吸収していけるのかだ、いずれにしても興味深い。

これだけのし上がっていながら意外にもS組のメンバーではないようだ。

きっと教えられた武術の技を使うことが楽しいのだろう、もしくは喧嘩大好きな奴だな。

 

その後、俺は管牧を捕まえて決闘を申し込んで、ランキング戦の試合を取り付ける。

条件についてはお互いが公平であれるように、吟味をしたうえで了承を求める。

 

「これで受理するが本当にいいんだな?」

 

宇佐美先生がもう一度、管牧に確認をとる。

その言葉に管牧が頷いて試合が決まった。

場所は明日の放課後グラウンドでやる事になった。

これに勝てば一気に16位となる、その次に狙うのは11位あたりだ。

早く10位に入って足掛かりを手に入れなければいけない、早く公式の場でマルギッテさんと戦いたいのだ。

 

それから授業が終わって放課後、家に帰ろうと道を歩いていると奇妙な人に会う。

 

ガスマスクのようなものとゴーグルを装着していて顔が分からない、服も特殊なものでおよそ一般人が着るものではない。

そんな人が目の前を横切っていくのだ、これは追いかけなければならない。

あのような格好をしているのは忍者ぐらいのものだ、明らかな不審者、もしかしたら犯罪行為を犯すかもしれない。

それを見過ごすことなどできるわけもない、俺は気配を探られないようにその姿を追い始めた。

 

「あんた、何者だ?」

 

公園まで追ってからようやく声をかけた、周りには凶器らしいものもない。

もしかしたら罠が張っているかもしれないが、とりあえず質問をしないと話が進まない。

 

「お前、いつから追っていた?」

 

俺の質問に答えないで、質問で返してくる。

いつからも何も、お前を見かけた時からだ。

音をできるだけ減らして気配を消した甲斐があったというものだ。

 

「あんたが俺の前を横切った時、時間にしておおよそ15分ぐらい前から追いかけていた、流石に見るからに不審者な奴は見過ごせないぜ」

 

質問には答える。

幾らなんでもあの格好はない、警察が見たらたとえ川神とはいえど職務質問は免れないだろう。

 

「随分と直接的な物言いをするな、俺の名前は尾形小路」

 

名前を名乗る忍者みたいな恰好の男。

尾形と言えばどこかで聞いた覚えがあるが、いったい何者だったか思い出せない。

 

「俺の名前は澄漉香耶だ、名前はありがたいが何者かという質問には答え切れていないぜ」

 

名前を名乗られたからこちらも名乗る。

結局最初の質問の答えである何者かという部分は解決されたわけではない。

 

「見ての通り忍者だ」

 

やはりそうだったか。

これで疑問は一つは解決した。

だがまだ疑問はある、なぜこんなところに来る必要があったのか。

ただの散歩にしては怪しまれる格好なんてしていない方がいい、常在戦場の精神と言えば格好はいい。

しかしこれでは変態か不審者真っただ中である。

 

「忍者が一体なぜこういっただだっ広い公園にいるんだ、散歩とは言えない気配が徐々に立ち上っているぜ、あんた」

「やはりこの程度の気配や雰囲気の変化でも気づくとはな、深道も言っていたがあいつが教えていれば当然か」

 

まさかやりあうつもりか?

少々話をしていただけだし、こちらはやる気はなかった。

だがこの男は戦うときの構えをとっている、それならばこちらは逃げるか構えるかの対応しかない。

 

「やらないといけないのなら……」

 

そう言って構えた瞬間、音が耳に響いていく、耳をふさいでも頭に響く。

地面が歪みそうなほど揺れている、平衡感覚を狂わせているのだろう。

その音を吹き飛ばすように俺は大きな声を出して力強く震脚をした、何とかダメージが大きくなる前に音を断つことが出来た。

しかし次の瞬間、俺は恐ろしいものを見ていた。

 

「分身の術だと!?」

 

目の前に何人も同じ姿がある。

気配を探って本物を見抜けばいける。

そう考えていたらあの音が再び鳴り響く、頭の中が揺れる。

これの正体が分かった、耳の三半規管を揺らしていたのだ。

それだけの音をこれだけの至近距離で受けると、平衡感覚以前に脳自体が揺らされたように大きくダメージを受けて倒れるだろう。

舌を強くかんだその痛みで覚醒させて、何とか気絶を免れて膝をつくまでに留まる。

そんな俺を見下ろして尾形は一言こういった。

 

「期待外れだな」

 

期待外れと言われて怒りを覚えたのではない、膝をついただけでまだ決着がついてもいない。

それなのに勝っているような態度をとっているのだ、俺はそれが気に入らない。

試合のルールがない何でもありであればお前の期待に応えることはできるからな。

覚悟しろよ、忍者。

 

「喰らいやがれ!!」

 

ある物を分身共の所に向かって投げつける。

相手は『喰らえ』という言葉でそれを避ける、それはただの砂利だ。

それらが全員に当たるように放ったそれは、からくりを破るのには十分だった。

分身に当たった瞬間、破裂音や人の体に当たった時の音ではないものが聞こえた。

つまりその正体は……

 

「風船で作られただけの存在かよ、随分とコケにしてくれたな!!」

 

俺は本物に向かって飛び蹴りを放つ。

腕で受けて最小限の被害にとどめていこうと考えたようだが、これは本命ではない。

一瞬腕に当たった瞬間、体を後ろに傾けた事で目の前に着地をして間合いに入れる、これで逆襲の準備が整った。

 

「おらぁ!!」

 

踏み込んで『猛虎』を打とうとする、だが次の瞬間目の前が煙に包まれる。

それと同時に気配が遠ざかっていく、どうやら実力を測るためだけにこれほどの行動を起こしたのか。

 

「次に会えばつぶしてやるぜ、こんな煙幕を出す暇もないくらい圧倒的にな」

 

そう言って公園を出て歩き始める。

 

コケにされてあまり本気ではない相手に、平然と逃げられたこと。

その事実から生まれる苛立ちが体を駆け巡る。

それと同時に思い出した、尾形と言えば長枝さんに教えて貰った人の中に入っていた相手。

なかなかトリッキーなタイプであの音波攻撃に気を付けるのが重要と聞いたことがある。

 

そんな事を思い出していたら見覚えのある姿が目の前を通り過ぎようとする、リアカーを引きながらだ。

 

「何やってんだよ、竜兵?」

 

もしかして今日は引っ越しの日だったのか?

月雄さんの新しい入居者のお知らせが抜けたことはまだしも、亜美さんから手伝いに来いと電話が来ると思っていたのに。

 

「おおっ、香耶だったか、引っ越しの荷物だよ」

 

やはりそうだったか、炊飯器や雑貨が積まれていてそれだけでも重そうだな、天ちゃんたちはいったいどうしたんだ?

そんな事を考えていたら辰子さんが冷蔵庫を天ちゃんと運ぶのが見えた。

どう考えても竜兵がそれをもって、天ちゃんたちがこれを交代して引いた方がよくないか?

 

「手伝うからその冷蔵庫渡してくれないか?」

 

そう言って天ちゃんたちから渡される、もともと中身は空っぽのためそれほど重いわけではない。

それを抱えて俺は『月雄荘』へ4人を案内していく。

この場所から歩くと15分、今は荷物を持ったりしているから多く見積もって30分ぐらいだろう。

 

「亜巳姉が仕事だから連絡取れないし、リュウの奴は時間ぎりぎりで帰ってきやがってさ、手伝いを頼む連絡が取れなかったんだよ」

 

俺は天ちゃんからそう聞いて竜兵に向かってため息をつく、お前こういう時は家に居てやれよ。

しかもお前、楽なリヤカー引いてマジでそれで兄貴なのか?

せめて重い方を持つぐらいの気遣いは見せろ。

 

「とりあえずは、問題なく案内はするが亜美さんについてはどうする予定なんだ?」

 

まさかここまで歩いてくるのか?

地図も夜だから見えないし、タクシーは駅前にいって捕まえるなりしないと無理だろう。

 

「お姉ちゃんなら大丈夫だって~」

 

間延びしたようなのんびりしたトーンで辰子さんは言う。

ちょっとみんな危機感なさすぎないか?

これで誰もいかないようなら迎えに行ってやらないと、あの人を誘拐したりする変人が現れないとも限らない。

 

それから何分か歩いて『月雄荘』に到着する。

荷物の荷ほどきやらなんやらがあるのだが、さすがに食器棚や乾燥機の運搬は引っ越し業者に任せたようだ。

とりあえずは2部屋を分けながら、ごはん食べたりするときは共同にして住んでいくらしい。

部屋割りとしては竜兵と辰子さん、亜巳さんと天ちゃんのようだ。

亜巳さん達の部屋は1階にしておくことで、引っ越しの際に入れるものを階段経由で運ばなくていいようにする。

皆さんがこの状況のために出て来ていた、新しい住居人が来るとあって楽しみにしていたんだろう。

 

小西さんと兄のコニオさん、カイさん、芹口さん、麗一さん、シゲオさん、戸叶さん、港の8人。

しかし9人目が出てきた主なkん、目を見開いた。

最後に出てきたのが今さっき戦っていたやつとは思っていなかった。

スイスイと全員の腕力と速度で次々と搬入されていく。

冷蔵庫や食器棚は1階だが布団は両方、電子レンジは2階と分けているものが多く、バケツリレーのように運んでいた。

 

結局1時間もかからない間に引っ越しの搬入は終わった。

俺はそれを見て皆さんにお礼の意味を込めて、缶コーヒーやジュースなどの飲み物を差し入れた。

 

その後一旦落ち着いてから亜巳さんを除いた3人が挨拶で回っていく。

また後日、亜巳さんを連れてもう一度挨拶するという事をきちんと伝えていた。

その時にプロレスラーであるカイさんや小西さん達は、竜兵たちの体つきを見ながら少し微笑んでいた。

まあ、天ちゃんは小柄だけど竜兵と辰子さんはかなり背が高くて体格もいい。

 

月雄さんは、亜巳さんや皆が揃う時に歓迎会をするから伝えておくように、天ちゃんへ言っていた。

きっと辰子さんや竜兵に伝えるよりは確実だと思ったのだろう。

 

そしてその引っ越しの作業や食事で夜になっていた。

まだ深夜とは言わないが今から親不孝通りにいけば十分遅い時間になるだろう。

 

「あいつらは夜道の怖さとか知ってるはずなんだから迎えにいかないといけないだろ」

 

俺はそう言って川神新町、親不孝通りのある店に向かって動き始める。

時間としては電車が残り少なく、あっち方面へのタクシーは業者も若干渋る。

停車場所を間違えれば不良に絡まれるからな、無理もないだろう。

数千円ぐらいの料金と引き換えに大怪我や廃車なんて割に合わない事、この上ない。

 

時間にして1時間かそこらへんでその店の前に立つ。

一応労いの意味での缶コーヒーを買っておいた、

 

店の前に到着してから15分ほど経った時に、ドアが開く。

どうやら待っていた人のようだ、少し疲れが残った顔をしている。

ここ最近、引っ越しの事で神経をすり減らしていたんだろう、相談してくれればよかったのに。

 

「お疲れ様です、亜巳さん」

 

そう言って頭を下げる。

俺を見て亜巳さんは驚く、そして少しの間をあけて口を開いた。

 

「なんで来たんだい?」

 

なんでってそれはこの夜道で今まで工場方向や親不孝通りの近くでは、手を出さなかっただろうけどこれから住む場所の路地では絡まれる可能性がある。

そう考えたら地図も持っていない亜巳さんなんて格好の的だ。

せっかく引っ越しで気持ちを新たに動くというのに、いきなり憂鬱な気持ちというのは俺も嫌だからな。

 

「地図持ってないから案内ですね、あとは頼りないですけどボディガードですよ」

 

そういうと呆れたような、少しうれしそうな顔をしていた。

 

「あいつらはこういった気遣いがあまりできてないからねぇ、私も人の事は言えないけどさ、ちゃんと案内と護衛頼んだよ」

 

そう言って『月雄荘』に向かって歩き出す。

俺が前で時折左右を見たり、気配を感じ取ろうとする。

少しずつ家が近づいてくるが、不穏な空気を感じはしない。

あとはこの角を曲がってしまえば一直線、十字路もないから不良が出てくる余地はない。

 

「よぉ、兄ちゃんいい女連れてんじゃん」

 

とか思っていたら遭遇した。

不良が13人ほどいる、鉄パイプを持っている奴がいたりするがほとんどが素手だ。

 

「あの、帰りたいからどいてくれませんか?」

 

そう言って俺は手荒い真似をしないように声をかける。

そしたら不良たちはますます調子づいてこっちに近づいていた。

 

「あんまなめたこと言ってんじゃねえよ、その女よこせって」

 

そう言いながら亜巳さんへ手を伸ばす不良、いくらなんでも無遠慮すぎるな。

俺はその腕を掴んで睨み付けながら、不良の足がどこにあるか確かめて言葉を言う。

 

「そっちこそこっちがどいてくれって言ってから態度変えて、なめてるのか?」

 

それで不良たちの沸点が一気に高まる。

随分と低い奴らだ、人に同じような事やっておいて仕返しとなったらすぐに逆上とはな。

 

「仕方ない、平和的解決はダメか」

 

そう言って俺は目の前の不良の足の甲をつま先で踏みつける。

その痛みに悶絶した不良の腹に拳を叩き込む、その衝撃でくの字に折れ曲がった体。

それに対して俺は飛び上がり足を後頭部に置いて、そのまま地面に勢いよく叩きつける。

グチャっという音が聞こえたが別に問題なんてない、衝撃で頭が少しバウンドしていたが本当にどうでもいい。

 

「おい、お前らまだやるのか?」

 

一瞬の間に倒されている仲間を見て驚いている、しかしその眼には人数の差で何とかなるだろうと思っている感じがあった。

間違っているな、そこで撤退しておかないと全滅するし大怪我する。

しかし、すでにその選択をした相手にためらいもない。

さらに付け加えるのであれば凶器を持った奴らがいるんだ、手加減無しで拳や蹴りをぶち込める。

首を鳴らして向かってくる不良たちに後悔させてやるか、絡まなければ良かった、逃げておけば良かったって。

そして不良達にとって地獄のような時間が始まった。

 

「あんたらが私の肌に触れるなんて百年速いよ、出直してきな!!」

 

亜巳さんが凄まじい棒さばきで不良の凶器を叩き落して、喉に突きを放っていく。

容赦なく棒で頭を叩かれたり、喉を突かれて気絶していく不良たち。

棒が少し血に染まっている所を見ると力を入れているのが伺える。

無駄のない動きで5人を瞬く間に倒す姿を見て竜兵たちが大丈夫だといった理由がなんとなくわかった。

 

「全然歯ごたえがないぞ、歯向かうならもう少し必死に来いよ!!」

 

俺は不良の顔面に膝蹴りをぶち込んだり、腹に拳をゲロ吐かせたりなどしていた。

アバラが折れたりした奴、鼻血がだらだらと流れているやつ。

ピクピクと痙攣していたりする奴もいるが傷一つつかなかった、不良達は相手を見て喧嘩を売ってほしいもんだ。

 

とりあえず全滅させたら余計面倒なコトになりそうなので、2人ほど残して救急車を呼ばせておく。

これで流石に倒れている奴らが死ぬことはないだろう。

 

「家帰ったら返り血とか流した方がいいですよ」

「そっちこそ手は良く洗っておきなよ、血が結構ついているからね」

 

そう言いあって俺たちは『月雄荘』へとさっきよりも少しだけ急ぎ足で帰っていくのだった。




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