真剣で猟犬に恋しなさい!!   作:勿忘草

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用事なり、体調なりで筆が進まなくて遅くなりました。
また、早い段階で投稿できるようにいたします。


『取引』

港との勝負か次の日の朝。

結果としては引き分けのため、順位の変動はなし。

しかし俺の心は憂鬱な状態であった。

 

「一子に矛先を向けないようにしないとな……」

 

港が一子へ挑戦した場合を考える。

実力自体は打撃なら港、武器込みで考えれば一子といったところ。

普通にやりあえばお互い無傷で終わる事はない。

 

「……そういえば川神運動会があるな、この方法ならいけるか?」

 

策とはいえるが、他人を巻き込む形となる取引。

それを拒否されるとやはり実力行使しかない。

 

「決まれば即行動だな、乗ってくれるとうれしいけれど」

 

そう呟いて、俺は昼休みに港に声をかけて話し合いをしていた。

屋上で誰にも聞かれないように警戒をした状態で。

 

「で、用件って何だい?」

 

港が口を開いて質問をする。

いきなり誘われたらそりゃそういう言葉も出るよな。

 

「一子を狙わないと約束してくれたらお前に良い事を起こそう」

 

と言っても、これで応じないのであれば実力行使で港を数か月の間、戦えない状態にする。

腕か足を折ってしまえば一子を相手にして勝てる道理はなくなるだろう。

 

「一体どういった事が起こるんだい?」

 

多少は興味はあるようだ。

良い事だと言って嘘をつくような性分ではないのを分かっているからだろう。

わずかとはいえ信用があるのが救いだ。

 

「今度の川神運動会で不死川にブルマを履かせる」

 

真顔で俺は言い放つ。

一度助けた時に『お礼をする』と言っていたから持ち掛けるきっかけはある。

さらに勝てる可能性を示唆してしまえば、恥ずかしいが履いてくれる可能性はある。

 

「真顔で言われても反応に困るんだけどね……」

 

そう、今俺は真顔でこの交渉を行っている。

真顔でブルマを履かせる、履かせないでの交渉など見る人見たら珍しい光景だ。

 

「で、これと引き換えに一子を狙わないと言ってくれるか?」

 

とりあえずは一子の安全を確保するのが最優先だ。

港が断るようであれば、こちらもそれ相応の対応で、確保する羽目になってしまうから了承してくれた方が助かる。

 

「そう言われても、こっちだって順位を上げていきたいんだよ、それを承認するとクリスか不死川しか順位的に戦えないじゃん」

 

確かに言われればそうだが、こいつはできる限り上限を引き上げるか譲歩させたいのだろう。

なぜならばその二人じゃない俺が倒した奴を狙えばその二人と戦わずに上に行くことは可能になるからだ。

 

「で、どうする?」

 

さぁ、どう出てくるだろうか?

断るならば、もう少し上乗せか、もしくは実力行使。

出来ればこの条件での了承が一番望ましいのだが……

 

「……しょうがない、ここはこっちが折れるよ」

 

こちらの眼を見てここは応じた方がいいと思ったのか、両手を上げてこの交渉に応じると言ってくれた。

もしくは深読みになるが次回、港側の交渉の時に『あの時、僕は譲ったよね?』というカードを用意するためかもしれない。

 

順位について言うがお前の事だ、さっきも思ったが別に一子にこだわるつもりもないだろう。

ただ、俺が一子を出されると弱いから最大限に利用しようという考えだ。

らしいと言えばらしい。

 

「だが後ろは向かないし、距離は保つけどな」

 

隙を見せずに港が階段を下りたり去っていくのを待つ。

こちらから交渉を仕掛けているが本人は納得した内容ではない。

後ろを向いた瞬間、有利に再交渉をするためにチョークスリーパーで絞め落とされる可能性だって存在する。

 

「信じてほしいね、流石にそっちの怒りをこれ以上買うと体がいくつあっても足りないよ」

 

そういうと港は扉の方に向かって歩き出す。

一応交渉は終わったと考えていいのか?

 

「川神を狙うのはやめるけど、そっちもきちんと約束は守ってくれないと困るよ」

 

その一言があれば十分だ。

こっちはそちらが約束をしてくれるのであれば、反故にする気は全くない。

 

「そちらこそ、こっちの約束果たした後に『約束なんてしてません』とかやるなよ」

 

口の約束である以上、『言った』、『言っていない』はあり得る話だ。

しかし、今の会話を録音してある。

当然、気づかれないように細心の注意を払ったうえでだが。

これで、一子を狙った時の糾弾もできる。

あとは、こちらが不死川に交渉して頼み込むだけだ。

 

.

.

 

その交渉から時間がたって川神運動会の日がやってくる。

今年は2-Fと2-Sの対抗戦でもある『川神戦役』を行う。

勝てばその一戦につき一人クラスへ移籍させることが出来る。

もし全勝すれば5人。

拮抗しても1人は確実に移籍させられる。

 

「でもこれだけの面子が揃っているのに勝負を仕掛けてくるのか?」

 

義経や与一も今日は居て、英雄はあずみさんを連れて柔軟に励んでいる。

準は甘粕さんを見ながら移籍についてつぶやいている、ユキだってモロを移籍させる気満々だ。

 

「で、不死川……」

 

入念に柔軟をして、勝つ気満々の不死川に声をかける

普段とは打って変わって闘志がみなぎっているのが肌で感じられるほどだ。

 

「なんじゃ?」

 

振り向いて俺の言葉に反応をする。

いつもとは違う印象に俺は戸惑いながらも謝罪の言葉を述べた。

 

「頼んだ事とはいえ、着慣れていないものを着させてすまないな」

 

交渉の結果として、不死川はブルマを履いてた。

その姿をF組のヨンパチこと福本が連射をしていたが、あれは許していいのだろうか?

場合によってはネガごと壊さないといけなくなるんだけど…

 

「F組に勝てるし、此方の全力を着物以上に出せるのであれば問題ない」

 

そう言って屈伸をしたり臨戦態勢を整える。

 

F組の戦力を分析すると

不死川の相手としては一子が当てられるだろう。

リレーに関しても相手も頭数はそろっている。

力勝負となるとガクトだけではなく雁侍がいる分、こっちが不利ではある。

タッグなら間違いなく俺と英雄か俺とマルギッテさんを投入すればほぼ勝ちを確定させることはできる。

取れる場面をしっかりとったり、勢い付けさせる原因の芽を常に消していかないと少々面倒な事になるだろうな。

 

「それでは川神運動会を始める!!」

 

そんな事を考えていたらいつの間に時間が過ぎていたのか開会式が始まる。

スポーツマンシップの誓いを英雄が言って戦いの火ぶたが切って落とされる。

 

「で……いきなりこの顔合わせかよ」

「よろしくね、キョウちゃん!!」

 

俺と一子は隣り合わせで並んでいる。

100m走での闘いだ。

不死川とあずみさんも候補だったが最初から勢いを無くさせるほどの差を見せつけるという意味で俺になった。

英雄はまさかいきなり一子に俺をぶつける事になるとはと嘆いていた。

 

「こっちもあいつから任されたんだ、勝たせてもらうぜ」

「こっちこそ!!」

 

合図が鳴り響くと同時に駆け出す。

速度自体は速いが、そう簡単に追い抜かされるわけにはいかない。

 

「はぁ!!」

 

息を吐き出すと同時に速度を上げる。

そのまま一気に引き離そうと足に力を込めるが……

 

「ふぅ!!」

 

ペースを上げて俺に一子が追いつく。

だがそれじゃあまだ足りないぞ、なぜならば…

 

「しゃあ!!」

 

何度でも速度を上げるからだ。

お前が追い付けば追いつくたびにさらに速度が上がっていく。

そしてそのままお前を引き離してやる。

 

「くっ!!」

 

僅か50mの中にある攻防はお互いの体力と精神をすり減らす。

一子の気配を振り切るように俺は一気に最大速度に上げてゴールまで駆け抜けていく。

 

「1位は2-Sの澄漉香耶!!、2位は2-Fの川神一子!!」

 

これでまずは先手を奪う。

しかし、一子自身は満面の笑みでこちらに握手を求めてきた。

 

「さすがね、最後はまったく追いつけなかったわ」

「当たり前だ、まだお前に負けてやるわけにはいかん」

 

握手に答えて笑顔で言い放ってやる。

お前の兄貴替わりなんだ、お前より強くないとおまえを守ってはやれないからな。

 

「次は追い越すわよ、こっちだって特訓してるんだから!!」

 

あぁ、余計に練習の熱上げるような言い方になってしまったか……

俺はS組に戻って英雄に対して状況を伝えていた。

 

「向こうの精神的支柱として機能しているわけじゃあないから

あまり削ぐことはできなかった、すまん」

「こちらこそ、いやな気持ちにさせたな」

 

英雄は英雄で俺を一子と戦わせたことに申し訳なさを感じているようだった。

まぁ、あいつと戦うのは乗り気じゃないけどこればかりはな……

 

「野球の予告先発みたいに事前にはわからないんだ、偶然だろ」

「それを言ってしまうとなぁ……」

 

しかも偶然での巡り合わせでいえば

マルギッテさんやクリスお嬢様と関係が深い人はいる。

負けることはないだろうが甘いからなぁ……

 

まだ始まったばかりでこれから戦役もある。

捨て試合としてこちらの体力を削るなんて狙いなら、それは大和の差し金だろう。

手を抜く性分じゃない一子やキャップを説得したりしてしまえば実現できる。

 

「仮にそれで来るなら拍子抜けだな……」

 

そう簡単に体力削るなんてマネをできると思っているのか?

マルギッテさんと俺、あずみさんは言い方は悪いが体力お化けだぞ。

全種目出てなおかつ全力で動いて、ようやく削ったになるような3人を相手に悠長すぎる策だな。

しかも全力を出す相手となればエース級を連続で使う羽目になる。

つまりその時点で痛み分けどころかF組が逆に消耗した状態になるわけだ。

 

「何か企んでるとしたら……」

 

正直勝つために、相手の実力を図ったとしてもかなり捨てることになるし、そもそも全力かどうかの確証はない。

助っ人ありの競技か戦役のカードを引くことでひっくり返そうって腹か?

確かにそれならばあり得るが……

 

「運頼みだったら策ですらないし、何より運はキャップの力であって

軍師は置物と変わらないんじゃないかねぇ」

 

トーマはその言葉を聞いていたのか、肩をたたく。

 

「さすがに大和君を過小評価していませんか?」

「悪いがあいつレベルの兵法や策ならば俺でも思いつく

それにお前のほうが優れた軍師だ

恵まれた戦力と優れた軍師がいて戦場で負けることがあると思うか?」

 

正直言って整いすぎている。

しかし戦力の差そのものは戦役の時に英雄やトーマを奪って、、

精神的支柱を無くす事で統制や作戦を発揮できないようにするとか、

マルギッテさんや港などといった戦力を奪っていくかで補える。

 

「うれしい評価ですが足元をすくわれますよ」

「確かに戦役も競技も弁慶や義経たちの出陣はあり得ない

それに俺やマルギッテさん達は持久戦で良くても、

ユキと不死川や港たちの体力次第ではパフォーマンスが

落ちてしまっているだろうから、そこは注意しておくか」

 

トーマに注意するように言われた以上、警戒レベルを引き上げるか。

俺は次の競技で勝負する相手をにらむようにして出番を待つのだった。




川神戦役に次回は入っていきます。
運動会はいいんですが結局本遍としては戦役だったので…
指摘などありましたらお願いいたします。

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