フェイトオブエクシリア   作:シュキヨ

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――プロローグ――
始まりの気配


「……また、精霊が死んだか」

 

 黄昏の帳が降りたかのように、室内は静寂に包まれていた。

 

 天井から降り注ぐ光の帯が、円形の舞台の中央にその姿を刻み込むと、その床にはまるでステンドグラスのような色鮮やかな模様が浮かび上がっており、その光は温かくもあり、どこか神聖な気配を孕んでいた。

 

 一方で、左右の天窓から漏れる仄かな光もまた、部屋全体をほの暗く照らし出しており、その光は外の世界がまだどこかで生きていることをそっと知らせてくるが――それでもこの部屋の空気は別格だった。

 

 時間の流れさえもどこか曖昧になり、ただ静けさと威厳だけが満ちているように。

 

 そんな円形のステージの奥には、一つの椅子が置かれており、椅子には小柄な人影が腰掛け、腕を組み、まるで深く思索にふけるように身じろぎもせずにいる。背後の壁には神秘的な絵が掲げられ、まるでその人物の存在を後押しするかのように荘厳な雰囲気を醸し出していた。

 

「しかも、この数――どうやら、奴らはまだ私の言葉を理解してくれてはいないようだ」

 

 その声は冷ややかでありながら、奥底には怒りの炎が潜んでいるようだった。

 

 金糸のように輝く長い髪が、静かな風に揺れ、淡い光を纏っている。紫と黒を基調とした装束は、神秘さと威厳を象徴するように彼女の美しさを引き立たせ、戦士のようでありながら、同時に女神のような気品を漂わせていた。

 

 迷いのないまっすぐに相手を射抜く視線は、何者にも揺るがぬ決意を語っていたと、彼女は立ち上がりゆっくりと歩きだす。

 

「……大丈夫か、だと? 確かに、これほどの精霊を殺すような◆◆。下手をすれば、私も制されるかもな」

 

 わずかな靴音だけが室内に響きながら、なぜか彼女は、視線を宙に向けたまま小さく笑う。

 そこには誰もいない。それでも、確かに誰かと対話しているような間があった。

 

「だが、そうだとしても、私が出向かない訳にはいかないだろう? 誰の手も借りれない以上は」

 

 静かに歩みを進めながら、女性は見えない存在へ言葉を投げかける。

 

「……それに心配は無用だ。コレは所詮、仮初の物。いくら壊れようとも、私自身に影響はない。そんなことより――これ以上、同胞の死をむざむざ見過ごすことの方が問題だ。精霊の◆として。あのお方に、この世界を託された者として。決して見逃す訳には……」

 

 そこで言葉を切ると、彼女はぐっと拳を握りしめた。

 

「……では、行くとしよう! イル・ファンへ!」

 

 重く閉ざされた扉が、静かに開かれた。

 

 まばゆい光が外から差し込み、室内を黄金色に染め上げる。逆光の中、ひとりの女性のシルエットが、浮かび上がると、その背には、まるで世界の理を象徴するかのように、四体の何かが静かに浮かんでいた。

 

 青は水のように静かに揺れ、緑は風のように優しく舞い、赤は炎のごとく情熱を放ち、茶色の何かは悠然とした奥深さを抱いていた。彼らは言葉なく、ただ彼女の意志に応じるように、その後ろをついてくる。

 

 ――彼女は進む。

 精霊の◆として、そしてこの世界の運命に挑む者として。

 

 その背に、迷いはない。

 

 

 

 人は願いを胸に抱き、叶えばと空を見上げる。

 精霊と人が暮らすこのリーゼ・マクシアでは、みながそうして暮らす。

 

 人の願いは精霊によって現実のものとなり、精霊の命は人の願いに寄って守られる。

 

 故に、精霊の主マクスウェルは、全ての存在を守る者となりえる。

 世に、それを脅かす悪など存在しない。

 

 あるとすれば……

 

 

 

 それは人の心か。

 

 

 

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