フェイトオブエクシリア   作:シュキヨ

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依頼所のお話し

 イラート海停の一角にある依頼所は、外観こそ白を基調とした清潔な建物だが、中に入れば熱気とざわめきに包まれていた。冒険者や傭兵、あるいは商人までもが出入りしており、それぞれが掲示板に貼られた紙に視線を走らせ、仲間と思しき人物同士で相談し合っている。

 

 その喧噪の中、アルヴィンが軽い調子で手を掲げ、ジュードたちを掲示板の前へと導いた。

 

「ほら、ここに貼られているのが、全部誰かへの依頼だ」

 

 ずらりと並ぶ羊皮紙の数々に、ジュードは思わず目を見開く。

 

 そこには討伐依頼、護衛依頼、果ては荷物の運搬に至るまで多種多様な案件が書かれており、色褪せた紙が積み重なった分だけ、ここを訪れた者たちの生き様が垣間見えるようだった。

 

「こんなにあるのか」

 

 感嘆の声を漏らしたのはミラだ。

 

「まぁな」アルヴィンは肩をすくめた。「リリアルオーブのおかげで戦えるようになったとはいえ、戦えるようになっただけで確実に勝てる訳じゃねぇからな。体を動かすのが苦手な奴、戦いそのものが嫌いな奴……そういう連中だって当然いる」

 

「だから、それをできる者が引き受けて仕事にする、か」ミラはゆっくりと頷く。「なるほど、適材適所を活かせるというのは良い仕組みだな」

 

 アルヴィンの説明に納得していた彼女を余所に、マシュは冷静に掲示板を眺め、やがて一枚の紙を手に取った。

 

「今の我々の戦力状況を見るに、この程度のものが妥当かと」マシュが差し出した依頼には、西の湖に現れた見知らぬ魔物の退治と記されていた。「これから行くハ・ミルへの寄り道程度にこなせます」

 

「――ほ~、西にある湖に見かけない魔物が棲みついたと。まぁいいんじゃねぇか?」アルヴィンは受け取った紙を一読し、あっさりと頷いた。

 

「決めた後はどうするの?」ジュードが問いかける。

 

「後は受付でこの依頼を受注するって伝えて現場に直行するだけ――って、そういやおたくら、依頼所に傭兵登録したことある?」

 

「ううん」

 

「知らないな」

 

 ジュードとミラが同時に首を振ると、アルヴィンは苦笑した。

 

「だよな。なら、まずは受付で傭兵としての登録をしねぇと」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「ほい、おめでとう。これで晴れてお前たちも傭兵になった訳だ」

 

 受付で一通りの手続きを済ませたジュードたちは、新たに「傭兵」としての身分を手に入れた。

 

「別になりたかった訳じゃないけど……」ジュードは俯きながら呟く。

 

 一方のマシュはそんなジュードの言葉を気にせず話を続ける。

 

「後は先程申し上げた通り、受注すると決めた依頼を受け付けに伝えるだけとなります」

 

「そうか」

 

 そうして、受付で先程の依頼を受注したジュードたち。

 

「申告完了っと。って訳で、早速行こ――」

 

 依頼受注の手続きも終え、さぁ行こうとアルヴィンが歩き出したその時、ミラが「少し待て」と声を上げた。

 

「ん? どうかしたか?」

 

「アルヴィン、傭兵というからには戦いに自信はあるのだろう?」

 

「ああ、そりゃあな」

 

「ならば、私に剣の手ほどきをしてもらえないか?」

 

 唐突な申し出に、アルヴィンは目を瞬いた。

 

「手ほどき?」

 

「ああ。今の私は四大の力を持たない。おかげでマシュの言う通り、剣を扱えないとこの先の道は困難だろうからな」

 

「……さっきも言ってたが、その『しだい』って何なんだ?」

 

 聞きなれないミラの言葉に、アルヴィンが首を傾げると、ミラは真剣に答えようとしたが、あまりに根本的な質問に逆に戸惑ったようだった。

 

「四大が何かとは……所謂哲学的な思考というやつだろうか? 確かに当たり前の存在過ぎて、考えたことは無かったが……」

 

「いや、そんな難しい話はしてねぇんだけど……」アルヴィンは頭を抱え、「う~ん、まさかマシュ以上に話ができねぇとは」とぼやいた。

 

 その言葉にマシュが静かに振り返る。

 

「アルヴィン。何故、この状況で私の名前を出すのでしょう?」

 

「そういうところだよ」

 

「フォウ!」

 

 次の瞬間、マシュへの悪口を許さないとばかりにマシュの肩にいた小さな獣フォウが飛び上がり、アルヴィンの顔面に見事な蹴りを入れた。

 

「あ、痛っ!!」

 

「あ、フォウさん!」

 

「痛たたた……ったく。こいつはこいつで過保護でいけねぇ」

 

 マシュがフォウを慌てて抱き上げるが、フォウはさらに「フォウ……!」と低く唸り、今にももう一撃入れそうな勢いだ。

 

「あ~、もうわかったわかった! 俺が悪ぅございました!」慌てて両手を上げるアルヴィンに、ジュードが苦笑いをこぼす。

 

「えっと……とりあえず、話は後にしよう。もしかしたら、次の船でラ・シュガル軍の人が来ちゃうかもだし」

 

「――そうだな」

 

「それで、私の件はどうだろうか?」

 

 少し間を置いた後、アルヴィンは肩を竦める。

 

「ああ、いいぜ。正直、俺を雇って欲しいところだけど、金がねぇんじゃ仕方ねぇし。おまけにこのままおたくに死なれちゃ、タダ働き確定のままだもんな。しかもラ・シュガル軍に睨まれて、渡航もままならないおまけ付きで」

 

 ため息交じりに語るアルヴィンに、「あはは……」とジュードは苦笑いすることしかできなかった。

 

「助かる」

 

「それじゃあ、まずはイラート間道に向かおうぜ。あの辺りの魔物なら軽く戦えるはずだし、依頼のついでに実戦形式で教えてやるよ」

 

「よろしく頼む」

 

 こうして彼らの次の行き先は決まり、依頼と修練を兼ねた新たな旅路が幕を開けた。

 

 

お聞きしたいのですが、1話何文字ぐらいが読みやすいでしょうか?

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