フェイトオブエクシリア   作:シュキヨ

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四大無きミラの初実戦

 港町を抜け、彼らはイラート間道へと足を踏み入れた。大地を覆う緑の草原は広々と開け、遠くに見える丘陵地帯には森が点在している。海風の残り香を背に受けながら、彼らは依頼を果たすべく進み出す。

 

 道中、茂みがガサリと揺れ、鋭い牙を覗かせた魔物が現れた。群れを成して襲いかかってくるその姿に、ミラが自然と前に出る。

 

「さて、ヤバくなったら援護するから、今は俺の動きを真似て動いてみてくれ」

 

 アルヴィンが長剣を構え、軽口のように声をかける。

 

「了解した」

 

 ミラは頷き、剣を握り直した。

 

 彼女の視線はアルヴィンの足捌き、腕の振り、間合いの取り方に集中する。魔物の突進を受け流し、剣を振り下ろす。その動きはぎこちないながらも、鋭い意志が宿っていた。最初は重く鈍かった刃が、数合も経つ頃には確かな軌道を描き、魔物の体を切り裂く。

 

 やがて最後の一体が地に崩れ落ちると、アルヴィンは肩を竦めて笑った。

 

「ま、こんなもんだろ」

 

「感謝する」

 

 剣を収めながらミラが短く礼を述べる。

 

「しかし、基礎が全然できてねぇのに、覚えたら一気に才能が開花したって感じだな」

 

 アルヴィンが感心したように呟くと、マシュが横から静かに補足を入れた。

 

「はい。感覚的に、ですが、今までは誰かの支えがあって戦っていたように感じます」

 

「ああ。四大のおかげだな」

 

 ミラは当然のように頷く。

 

「また『しだい』か……まぁ話が長くなりそうだから今はいいや」アルヴィンは頭を掻きながら肩をすくめた。「それより、これなら大丈夫そうだし、さっさと依頼をこなしちまおうぜ」

 

「ああ」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「依頼終了っと。とりあえず、こんなもんだろ」

 

 歩みを進め、湖に住み着いてしまったという見慣れぬ魔物を討伐するジュードたち。

 

「依頼が終わったら、また依頼所に戻るの?」ジュードが首を傾げた。

 

「はい。他に伝達手段が無ければそのようになります。その際、証拠となる品をお忘れなく。それがありませんと、いくら目標を完遂しようとも無効扱いとなりますので」

 

 マシュの解説に、「なるほど」とジュードは納得したように頷いた。

 

「他の伝達手段と言ったが、直接出向く以外に手段があるのか?」

 

 ミラが興味深げに問うと、アルヴィンが不敵な笑みを浮かべる。

 

「ああ。折角だし、やってみるか」

 

 そう言うと、彼は指笛を鳴らした。甲高い音が空気を裂き、ほどなくして小さな影が舞い降りる。翼を広げた鳥が、彼の腕に器用にとまった。

 

「そいつは?」

 

「もしかして、シルフモドキ?」

 

 ジュードがすぐに反応する。

 

「流石、医学校に通っていたジュード君。物知りだこと。そう、こいつはシルフモドキ。主に連絡用に使ってる鳥さ」

 

「ほう、シルフの名が付いているのか」

 

「うん。この鳥は霊力野(ゲート)が発達した鳥でね、風の精霊術を使って長距離を移動することからその名前が付いたんだ。しかも、人間の霊力野を識別して、記憶した人の位置を感知する力をもってるから、軍とかでも秘密のやり取りをする際には使われてるんだよ」

 

 ジュードが学者らしい口調で説明すると、ミラは感心したように鳥を見つめた。

 

「なるほど。確かにシルフ並みに賢い。いや、少々我儘なあいつよりも勤勉と言えるな」

 

「なんで大精霊を知り合いみたいに語るかね、おたくは」

 

 そんな彼女の言葉には、事情を知らないアルヴィンが呆れ気味にぼやき、事情を知るジュードは乾いた笑いを浮かべた。

 

「あははは……そ、それよりシルフモドキで連絡するの?」

 

「ああ。やり方は依頼書を持っていかせるだけだけどな。勿論、俺たちの名前と依頼完了の旨を添えてな」

 

 アルヴィンは依頼書にさらさらと自分の名を記し、鳥の足へ括りつけた。

 

「んでもって、報酬は近くの依頼所に寄った時に証拠を渡しつつまとめて受け取れば、いちいち戻る手間もないってな」

 

「依頼を受けた場所でなくていいのか?」

 

「はい。依頼は利便性を鑑み、各依頼所がそれぞれ情報共有しておりますので、依頼を受けた場所以外でも報酬は受け取れます」

 

「一つの場所でした依頼が複数の場所で掲示されれば、解決する速度が速まるからな」

 

 マシュの補足にアルヴィンが言葉を継ぐと、ジュードが「なるほど」と感心したように呟いた。

 

「とはいえ、結局報酬を貰うために依頼所には行かなきゃだから、忘れないためにも直接報告しに行くってのもありだけど……」

 

「いや、できるなら早くニ・アケリアに向かいたいのでな。今は先へ進もう」

 

 ミラの即答に「だと思った。って訳で、行って来い」とアルヴィンが放ったシルフモドキは、軽やかな羽音を響かせながら空へ舞い上がり、遥か彼方へと消えていった。

 

「ちなみに、依頼が終わってねぇのに終わったって嘘の報告をすれば、俺たちの信用問題になって、依頼を受けられなくなったりするから気を付けろよな。自分たちじゃ無理でした~って正直に報告すんのはありだけど、今度は受けられる依頼のランクみたいなのが下がっちまうし」

 

「わかった。しかし、いつの間にシルフモドキに受付の人間を認識させていたんだ? そんな素振り見なかったぞ?」

 

「受付っていうか、依頼所に設置されてるシルフモドキが場所を認識できる装置だけど……言ったろ? 俺たちは傭兵。ここは既に一度来たことがあるからな。前に記憶は済ませてたのさ」

 

「そっか」

 

 ジュードが納得すると、アルヴィンは振り返って歩き出す。

 

「それじゃあ、適当に魔物を倒してリリアルオーブの機能を拡張しつつ、ハ・ミルって所へ行こうぜ」

 

「ああ」

 

 ミラが頷き、一行は再び進路を西へと向ける。

 

 こうして、彼らの初めての依頼は幕を下ろし、次なる目的地――ハ・ミルへと歩みを進めるのだった。

お聞きしたいのですが、1話何文字ぐらいが読みやすいでしょうか?

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