フェイトオブエクシリア   作:シュキヨ

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ミラの決意とジュードの未来

 社を出たミラは、社の前に立ち尽くすジュードの姿を目に留めた。

 

 柔らか光が差し込む中、少年はただ空を仰ぎ、考え込むように佇んでいる。

 

「どうした、ジュード? まだ村に戻ってなかったのか?」

 

 首を傾げながら声をかけると、ジュードはゆっくりと振り向き、小さく笑みを浮かべた。

 

「うん。ちょっと考えることがあって……」

 

「そうか」ミラは歩み寄りながら、真剣な眼差しを向ける。「それはそうと、君に話がある」

 

「話し?」

 

 ジュードが怪訝そうに問い返すと、ミラは一度息を整え、言葉を紡いだ。

 

「こうして君が逃亡犯としてイル・ファンに戻れなくなったのは、元々は君のお節介のせいではあるが、そのお節介に何度も助けられた以上は、私の責任でもある。なので、前にアルヴィンに言われた“気を遣う”ということを、私なりに考えてみてな。……どうだろう? これからこの村で暮らすというのは」

 

「僕が……ニ・アケリアで?」

 

「ああ。それをちょうど村の者に頼みに行こうと思っていたところでな。良ければ、一緒に行かないか?」

 

「……」

 

 突然の提案に、ジュードの瞳が見開かれる。

 

 けれどその驚きはすぐに陰りへと変わり、彼は視線を落とした。

 

「ん? どうした? 村に馴染めるか心配なのか?」ミラは軽く首を傾げ、いつもの調子で励ますように続ける。「安心しろ。皆良い奴だ。イバルは少々口喧しいが悪い奴ではないし、ジャンヌだって……」

 

「ううん。そうじゃなくて」

 

 ジュードは、彼女の言葉を遮るように呟いた。

 ミラは目を細め、目の前で立ち尽くすジュードを見やる。

 

 静寂が二人を包んだ。

 そして――短い間の後、ジュードは重い口を開こうとしていた。

 

「ミラは……これからどうするの? やっぱりクルスニクの槍を壊しに、イル・ファンに?」

 

 少し躊躇いながらも問うジュード。その声は思いのほか真剣で、ミラは小さく頷いた。

 

「ああ。四大のことや、あの場にいたマナを吸い出された人間たちのことを考えるに、クルスニクの槍とはマナを強制的に集めて使用される兵器なのだろう。あれがすぐに使われることはないにせよ、残されていれば奴らのマナの確保のための犠牲は、増え続けるだろうからな」

 

「そう……だよね。放っておけばまた、ハウス教授みたいな犠牲者が出ちゃうもんね」

 

 ジュードの表情が曇り、握る拳に力がこもる。

 ミラは彼を一瞥しながらも、ふと首を傾げた。

 

「ふむ。そうだな。だが、どうして急にそんな話をする?」

 

「……あ、えっと……。でね……それ、ひとりでやるの?」

 

 煮え切らない問いかけに、ミラは溜め息をひとつ。

 

「回りくどいぞ、ジュード。何が言いたい?」

 

 鋭い言葉に、ジュードは一瞬たじろいだ。だが、すぐに決心を固めるように顔を上げる。

 

「ぼ、僕も行っていいかな? その……一緒に……」

 

「私と? 何故だ?」

 

「何故って……その……ミラって、どうしてそんなに強いのかなって、そう思ったらその……」

 

 言葉を探しながら視線を泳がせるジュード。ミラは思わず口元を緩めた。

 

「ふむ……。君は、私に興味があるんだな」

 

「えっ!? いや、それは……」

 

 慌てて言葉を濁すジュードの様子に、ミラはわずかに微笑む。

 

「しかし“強い”か……考えたこともないな。私には為すべきことがある。それを完遂するために行動しているだけだからな」

 

「で、でも今の力で……一人じゃ無理なんじゃない? 死んじゃうかもしれない」

 

「だが、やらねばならない。もう決めたことだ」

 

 その毅然とした眼差しに、ジュードは言葉を詰まらせた。けれど次の瞬間、彼はかすかに笑い、強い声で告げる。

 

「……やっぱり強いよ。ミラは……。でもそんなミラだからこそ、力になりたいって思ったんだ」

 

 その言葉にミラはわずかに目を見張る。

 

「しかし、君は私に関わって普通の生活を失ったろう? 後悔していたのではないか?」

 

「――ホント言うと少し」ジュードは苦笑した。「あの時、港でアルヴィンたちが騎士王(セイバー)アルトリアに攻撃されそうだった僕たちを助けてくれた時、僕、全く動けなかったじゃない?」

 

「そういえば、アルヴィンに抱えられていたな」

 

「うん。あの時の僕は、どうしたらいいのか全くわからなかったんだ。……いや、覚悟が足りてなかったって言うべきかな。ミラを何となく助けたいって思って、勝手に研究所の中にまで入っちゃったってのに、いざS級犯罪者だなのなんだの言われた時に、怖いぐらいに現実感が無くて……おかげで体が動かなくて」

 

 ミラは黙って耳を傾ける。

 

「でも、こんな所まで来て、いくら後悔したって戻れないものは戻れないって、ようやく思えるようになったからさ。……だったら、今の僕の力でもできることを……ミラのお手伝いをしようかなって」」

 

 真っ直ぐに言い切るジュード。その純粋な眼差しに、ミラは思わず唖然とした。

 そして、ふっと笑みを浮かべる。

 

「……ふっ。君は本当にお節介だな」

 

「そ、そうかな?」

 

「そうだとも」

 

 二人の間に、柔らかな笑いが生まれる。

 

「……だが、そういうことなら、暫しの間、随伴を頼むとしよう。実際、今の私には一人であれを打倒する力は無いからな」

 

「うん。よろしくね、ミラ」

 

 再び、互いの手が重なり合った。力強い握手。

 

「では村に戻ろう。このことをイバルたちに言わねばならんからな。知らせておかねばまた勝手に私を追いかけてしまうだろうしな」

 

「うん」

 

 並んで歩き出す二人。その背は、柔らかな光に照らされながら、ニ・アケリアへと向かっていった。

お聞きしたいのですが、1話何文字ぐらいが読みやすいでしょうか?

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