フェイトオブエクシリア   作:シュキヨ

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不穏な影

 ニ・アケリアを後にするジュードたちの背中を、遠くからじっと見つめる影があった。

 

 風が丘の上を駆け抜け、足元でざわめく草原の波を感じるように、四人は並んで立ち、遠くへ向かって歩くジュードたちを見下ろしている。

 

 一人は黒い外套の裾に赤い炎が揺れる者。黙して腕を組み、視線の先に潜むジュードたちの行く末を測っているようだ。隣には、漆黒のマントを翻す影のような人物。その背筋は弓の弦のように張り詰めており、黒い外套の男にかしずいているように見える。同様に淡い髪を風に遊ばせる青を基調とした装束の者と大きな黄色のコートに毛皮をあしらった人物もまた、まるで配下のように後ろに立ち尽くす。

 

「……あの女がマクスウェルか。プレザ。確かに力を失っていたのだな?」

 

 前髪が深く顔を覆う、漆黒のマントを翻す男が静かに問いかける。

 

「はい」

 

 答えたのはプレザと呼ばれた青を基調とした装束の者――かつて、キジル海瀑でミラを襲撃した女だ。

 

「精霊の主と言っても、万能ではないということか」居丈高な態度を崩さぬ黒い外套の男が鼻で笑う。「……いや、精霊の主だからこそ、人の世では万全ではいられないといったところか」

 

「かも知れません」

 

 漆黒のマントの男は淡々と返した。

 

「しかし、既に『カギ』がどこかに隠された可能性があるとなると、少し面倒だな」

 

「ごめんなさい。侮ったわ」

 

 プレザが悔しげに眉をひそめる。

 

 そのやり取りを聞きながら、大きな影が低い声を漏らした。

 

「あの娘がマクスウェルと知っておれば、ワシも『カギ』のありかを吐かせたのじゃがのう」

 

 最後に口を開いたのは大きな黄色のコートを纏う男。こちらもかつて出会ったことのある者――ハ・ミルでジュードたちと顔を合わせた大男だった。

 

「まぁいい。今となっては、泳がせた方が都合がよかろう」

 

 黒い外套の男が決断を下すように言い放つ。

 

「ええ。ラ・シュガルの目を奴らに向けさせ、我らは静かにことを進めるのが得策かと」

 

 漆黒のマントの男も同意する。

 

「アグリアから何か連絡は?」

 

「失われた『カギ』を新たに作成するという動きがあるとか」

 

「……捨て置けんな」

 

 その一言に場が張り詰めた。

 

「ジャオ、例の娘の管理はもういい。お前は『カギ』の件を探れ」

 

「ぬ? いや、しかし……」

 

 大男――ジャオは不満げに顔をしかめる。

 

「ラ・シュガル兵どもが去ったというのなら、もうお前が直々につく必要はない」

 

「データが無事なんだから、優先事項が変化するのは当然ね」

 

 プレザが淡々と告げると、ジャオはしぶしぶ頷いた。

 

「う、うむ……」

 

 納得しきれない表情を浮かべるジャオをよそに、漆黒のマントの男はプレザへ視線を向ける。

 

「プレザ。お前はアグリアと連携をとり、イル・ファンに潜れ」

 

「あら、マクスウェルはいいのかしら?」

 

「ああ。奴らがア・ジュールに居る限りは情報はこちらにも入ってくるし、クルスニクの槍が使えない状況なら、今最優先なのは新たな『カギ』の製造方法を探ること。それを手中に収められれば、もはやマクスウェルすら必要あるまい」

 

「なるほどね。了解、任せて」

 

 プレザは唇に笑みを浮かべ、頷いた。

 

「では、各々の働きに期待する」

 

「ハッ!」

「ハッ!」

 

 プレザと漆黒のマントの男が恭しく頭を垂れる。その横で、ジャオは依然として不服そうに口を閉ざしていた。

 

 やがて黒い外套の男が歩き出すと、三人もそれに続く。

 謎めいた四人組は、ニ・アケリアのミラの社とはまた別の方角へと姿を消していった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「……ん?」

 

 突然立ち止まるミラ。

 その視線の先は、先程まで謎めいた四人組がさっきまで立っていた場所を見つめている。

 

「ミラ様?」

 

「どうかした?」

 

「……いや、何でもない。気のせいだったようだ」

 

 その鋭い感性はマクスウェルであるが故か、はたまたたまたまか。

 

 理由の分からない感覚に、誰も居なかったその場所に、ミラはこれ以上付き合う義理は無いと、二人のキョトン顔を受けつつ、再び歩き始める。

 

 それにはお付きの二人もまた顔を見合わせつつ、遅れる訳にはいかないとその疑念を胸にしまい込むと、ミラの後を追うのであった。

 

お聞きしたいのですが、1話何文字ぐらいが読みやすいでしょうか?

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