屋敷へと戻ったジュードたちは血相を変えたローエンの言葉を聞いている。
すると――
「嘘っ!? クレインさんが?!」
ジュードの叫びに、ローエンは絞り出すように続けた。
「はい。先刻、クレイン様がお屋敷をお出になったのは、ナハティガル王によってカラハ・シャールの民が強制徴用されてしまい、それに抗議するためだったのです」
「おいおい……強制徴用たぁ、穏やかじゃねぇな」
「ナハティガルって、だれー?」とはティポの疑問。
「ラ・シュガルの王様だよ。そして……」
ジュードの言葉にミラが静かに言葉を引き継ぐ。
「我々を追っている――もしくは、我々が追うべきかも知れない元凶、か」
「強制徴用とは、いったい何をするつもりなのでしょう?」
ジャンヌの疑問にローエンは首を傾げる。
「真意は分かりかねます。しかし、ナハティガルが反乱分子を許すような男ではないのは確かです」
言葉を重ねるたび、場の空気はさらに冷たく沈む。
「それで捕まっちまったと?」
「はい。供をした者が命からがら逃げ果せ、クレイン様が拘束され、バーミア峡谷(きょうこく)へ連行されたと知らせてくれました」
「そんな……! お兄様……助けに行かなきゃ!」
ソファーを蹴って立ち上がるドロッセル。だがローエンがすぐにその前に立ちはだかった。
「お止めください、お嬢様! 申し訳ありませんが、お嬢様のお力では到底叶う相手ではございません」
「でも……」
アルヴィンが腕を組み、低く呟く。
「……そこで、俺たちって訳か」
「はい。聞けば皆様は旅のお方。ここに来るまでに、多くの障害を乗り越えてきたとお見受けします」
ミラが謙遜なのか事実なのかという言葉を口にする。
「そんな大層なものではない」
「しかし、今、頼れるのは皆さんだけ。どうか力を貸していただけませんか? クレイン様をお助けしたいのです」
「ドロッセルのお兄さん……危ないの?」
「そんな……」
ティポとエリーゼの不安に沈む声が重なる中、ミラが冷ややかに口を開いた。
「うむ。しかし、私は他のことに構ってる場合ではないのだが……」
その言葉に、ジュードは小さく首を振る。
「いや、むしろ好都合かもしれないよ」
「どういうことだ?」
ジュードはアルヴィンとマシュに目を向ける。二人が静かに頷くのを見届けると、「実は……」と先ほどの密談を皆へ打ち明けた。
ナハティガルと対立するシャール家、そしてアルトリアとの関係性。話を聞き終えたミラは瞑目し、短く息を吐いた。
「……なるほど。奴を味方につけられれば、こちらも動きやすくなる訳か」
「うん。ここで放っておくよりは、ミラの目的も叶えやすいと思うんだ」
「その目的が何かは分かりませんが、旦那様が騎士王(セイバー)さんと懇意なのは事実ではありますね」
「だとさ」
ジュードたちの推測、そしてローエンからの事実であるという証言、その二つを聞いたミラは短い沈黙ののち、力強く頷いた。
「……いいだろう。これも君の言う『前進』だろうからな」
ミラの答えを聞いたローエンの顔に希望が灯る。
「ありがとうございます! それでは早速、バーミア峡谷(きょうこく)に急ぎましょう。私がご案内致します」
ドロッセルは涙を堪え、深く頭を下げる。
「皆さん……お兄様を、どうかお願いします」
その言葉を背に受けながら、ジュードたちはローエンに従い、バーミア峡谷へと足を踏み出した。
風は冷たく、しかし胸の奥では熱い決意が燃え盛っていた。
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