フェイトオブエクシリア   作:シュキヨ

73 / 116
友達の証

 長い航海の中、到着を待っている間、レイアがミラが首にかけているペンダントを弄っているのを見かけて問いかける。

 

「そういえば、ミラ、何いじってるの?」

 

「これか? ペンダントだよ」

 どこか嬉しそうに語るミラの言葉に、エリーゼはカラハ・シャールでの出来事を思い出す。

 

「それ……ミラが貰ったっていう……」

 

「ああ」

 

「へえ」

 物珍しさを隠しきれないレイアに続き、アルヴィンも興味を抱く。

「マクスウェル様の貴重品って、メチャ価値ありそうだな」

 

 しかし、アルヴィンの言うような価値のある物ではないとミラは微笑む。

「ただのガラス玉だ。だが、少々思い出があってな」

 

 精霊の主の思い出、それは誰しもが興味があると、とうとうローエンまで話に参加する。

「ほう。よろしければ、お聞かせ願えませんか?」

 

 全員の視線を受け、別に減るものでも恥じらうものでもないと、ミラは淡々とその日の出来事を口にする。

「うむ。……十……二、三年ぐらい前になるか。たった一日だったがニ・アケリアを出て、偶然知り合った子どもたちと遊んだことが会ったのだ」

 

「そうなんだ。ミラって、ずっと社に祀られてたんだと思ってたけど」

 

「ああ。人間のように遊んだのは、あれが最初で最後だったよ。あいつらときたら、マクスウェルと名乗ったのに、まったく手加減なしでな。鬼ごっこも、隠れんぼも完敗だった」

 過去に抱いた感傷に微笑むミラ。

 

 それはまさか自分がそんな想いを抱くとは思っていなかったと言わんばかりの所作。

「さすがに四大の力は使わなかったんだ」

 おかげでジュードはそんなミラに微笑ましさを感じつつ、ミラならやりかねないことを口にする。

 

 すると、ミラはどうやらやる気があったようで、「あの時は、四大にある命を与えて別行動させていたのでな」と、「そうでなかったら使う気だったのですか……!?」と、ローエンを驚かせてしまうことを口にする。

 

 一方のアルヴィン。

「十二、三年前、四大を……ね」

 何故かミラの言葉を反芻しつつ、どこかやるせない気持ちを抱いてしまう。

 

「生意気な子どもたちだったが別れ際に、そのガラス玉をくれたのだ。また明日も遊ぼうと言ってな」

 優し気に微笑むミラの言葉にレイア。

「友達の証だね」

 

「友達か……。確かに、あのひとときほど人間を身近に感じたことはなかった。心から人間を守りたいと感じた瞬間だったよ」

 

 そうしてガラス玉を愛おしげに見つめるミラに、周りの人間は心を暖められたという風に笑う。

 

「素敵なお話ですね」

 

 一方、ローエンのそんな言葉を聞きながら、「人間を……か」と、やはり何かを気にしているのがアルヴィンだった。

 

「……」

 

 しかし、全員がミラに集中していたため、そんなアルヴィンの様子に気付いていたのは、マシュだけだった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 長い航海を経て、夕焼けに染まる港に、船はようやく辿り着く。ラコルム海停――石造りの桟橋が海へと伸び、その先に石畳の広場が広がっている。

 

 そんな広場は、橙色の空に照らされて穏やかに輝き、時間の流れが緩やかになったかのようなその空間には、静寂と荘厳さが漂っている。中央には、堂々とした柱が連なる円形の構造物があり、高い柱のアーチは威厳を放ちながらも、どこか優雅な印象を与える。

 

「なぁ、ここってニ・アケリアの近くじゃねーの?」

 最初に口を開いたのはアルヴィンだった。何気ない調子の一言に、皆の視線が彼へ向かう。

 

「そうなのか?」

「あ~、うん。確かにそうかも」

 ミラの疑問に、ジュードは記憶を辿るように頷く。

 

「寄ってかなくていいの?」

 アルヴィンは肩をすくめ、探るように問いかけた。

 

「今、村に用はない。何か行きたい理由でもあるのか?」

 ミラの返答は即座だった。その声は冷静に響くが、ほんのわずかに疑念が入り混じっている。

 

「いーや。みんなおたくを心配して、帰りを待ちわびてるかと思ってさ」

 軽く手を振りながら答えたアルヴィンに、ミラはすぐさま言い放つ。

「村を気にかけてくれるのはありがたいが、今は急ぎたい」

 

 彼女の背筋は揺るがず、仲間たちはその意思を尊重するように口をつぐんだ。

 

「では、ラコルム街道を北へ進むとシャン・ドゥという街がありますので、まずはそこを目指しましょう」

 ローエンが状況を整えるように提案する。その声は落ち着き払っており、一行の心に方角を示す羅針盤のようだった。

 

「待った」アルヴィンが眉をひそめる。「その街道って、ラコルムの主ってやばい魔物が出没するんじゃなかったか?」

 

「おや、よくご存じで」ローエンは感心したように目を細める。「ですがご安心を。ラコルムの主も霊勢の影響を受ける魔物。地場〈ラノーム〉に入ったこの時期は活動を弱めており、街道まで出てくることはないでしょう」

 

「だってさ」ティポが跳ねるように笑った。「アルヴィン君、ビビる必要ないよー」

 

「別にビビってないって」

 アルヴィンは顔をしかめ、言葉を振り払うように返した。

 

「それじゃ、行こっか」

 ジュードが仲間たちに声をかけ、皆は新たな旅路へ足を進める。

 

 石畳の街道へと踏み出す仲間たち。その中でただ一人、ミラだけは立ち止まりながらアルヴィンの背中を見つめていた。

お聞きしたいのですが、1話何文字ぐらいが読みやすいでしょうか?

  • 1000文字以内
  • 1~2000文字以内
  • 2~3000文字以内
  • 3~4000文字以内
  • 4~5000文字以内
  • 5000文字以上
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。