フェイトオブエクシリア   作:シュキヨ

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腕試し

 いくつもの松明が灯され、揺らめく炎が壁に影を踊らせていた空中闘技場の石造りの広間。重厚な柱が等間隔に並び、その間を縫うように階段が奥へと続いている。階段の上からは仄かに暖かい光が漏れ、奥に広がる空間の存在を示唆していた。床には緻密な模様が刻まれた絨毯が敷かれ、そこをユルゲンスの先導を受けながら歩くジュードたち。

 

「――さっそくだが、君たちには我が部族の魔物と戦ってもらう。あくまで試合だが、不慮の事故が起きないとは限らない。そのつもりでいてくれ」

 

「食べられちゃうのー?」

 ティポが不安げに呟くと、ジャンヌがくすりと微笑んだ。

「ふふっ。そうならないように頑張りましょう、ということです」

 

 こうして一行は長い階段を上り、魔物と戦う舞台へとたどり着く。

 

 円形に設計された闘技場の内部は、赤茶けた石材で丁寧に築かれ、太古の栄光を今に伝えるかのような荘厳さを湛えている。壁面には半円状のアーチが連なり、そのひとつひとつがまるで過去の戦いを静かに見守る観客席のように口を開けている。床には重厚な模様が刻まれ、円の中心を囲むように外周が区切られており、そこに立つ者の存在を際立たせる舞台として機能している。

 

 闘技場の天井は存在せず、視線の先には澄み渡る青空が広がっている。その背景には、崖の上に建てられた巨大な石像が姿を見せ、まるでこの地を見守る守護者のように静かに佇んでいた。緑の草原と岩肌が交錯する丘陵地帯がその背後に広がり、自然と人工の壮麗さが一体となって、観る者に圧倒的な景観を提示している。

 

 そして、そびえ立つ塔のひとつには精緻な彫刻が施されており、そこに刻まれた意匠が、この場所が単なる戦いの場ではなく、信仰や伝統と深く結びついた神聖な舞台であることを物語っていた。

 

「うわー。立派な舞台だね」レイアがきらきらと目を輝かせる。

 

「確かに。ここであれば私の聖剣も十全に機能できそうですね。……聖剣持ってませんけど」

 Xが妙に誇らしげに言い放つと、アルヴィンは呆れたようにため息をついた。

「だから、何で言うんだよ……」

 

「お約束かな~? と思いまして」

「お約束って……」ジュードは額を押さえた。

 

「そろそろ始めようと思うが、いいか?」

 ユルゲンスの声が響く。

 

「ああ、始めてくれ」ミラが短く答えた。

「それじゃ、私たちは客席で見させてもらうよ」

 

 客席に向かったユルゲンスが合図すると、彼と部族の戦士たちは観客席へと移動し、やがて奥の扉が重々しく開いた。

 暗がりから現れたのは、牙をむき出しにした魔物――その足音だけで砂が震え、ジュードたちの戦いの機運が高まる。

 

「目標捕捉。敵との戦力差……こちらが上と推定」

 マシュが淡々と分析する。

 

「うむ。であれば、さっさと仕留めよう!」ミラが声を張り上げた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 ジュードたちの連携は淀みなく、ミラの鋭い一閃が風を裂き、アルヴィンの銃声が魔物の足を止める。レイアの力強い一撃が隙を作れば、マシュとXが一気に追撃を加える。

 恐ろしい咆哮はすぐさま悲鳴に変わり、魔物は抵抗むなしく砂上に崩れ落ちた。

 

 場内に、しばしの沈黙。

 そして次の瞬間、観客席のユルゲンスたちが大きく沸き立った。

「……いざとなったら出て行こうと思っていたが、必要なかったか」

 

 それにはティポが自慢げに胸を張る。

「あったり前だよー! えっへん!」

 

「すまなかった。君を見くびっていたようだ」

 

 そうしてティポに対して言ったユルゲンスの言葉には、「ぼくだけー!?」とティポが抗議の声を上げる。

 

「ははは。誰が見たってそうだよな」アルヴィンが肩をすくめる。

 

「むー……わたしの友達、バカにしないでください」

 エリーゼが勇気を振り絞って言い返すと、アルヴィンは慌てて両手を上げた。

「悪かったって」

 

「だが、それだけ厳しい戦いなんだ。かつては部族間の優劣を決めるために、相手を殺すまで戦っていた大会だ」

 

「え~っ」

 思わず声を上げるレイアに、ユルゲンスは柔らかく微笑む。

「今は大丈夫。現ア・ジュール王がその制度を禁止にしたからね」

 

「ア・ジュール王いい人―!」ティポが胸を張る。

 

「それじゃ、本戦は明日だ。宿を用意したから、ゆっくり休んでくれ」

 

 ユルゲンスの宣言に、ジュードたちは頷いた。

 砂に散った魔物の血の匂いがまだ漂う闘技場を後にしながら、ジュードたちはそれぞれに胸を高鳴らせていた。

 

 ――本戦は、明日。

 新たな試練の幕が上がろうとしていた。

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