フェイトオブエクシリア   作:シュキヨ

79 / 116
大会当日

 朝の柔らかな光が宿の窓から差し込み、昨夜の疲れを癒したジュードたちは静かに目を覚ました。

 心地よい休息の余韻に浸る彼らの前に、扉を叩く音とともにユルゲンスと昨日居た男女が現れる。

 

「よく休めたようだな」

 低く落ち着いた声で告げるユルゲンスに、ジュードは姿勢を正し、丁寧に頭を下げた。

「おはようございます」

 

「ああ、おはよう。さて――今日の予定だが」ユルゲンスの表情は穏やかでありながら、どこか張り詰めた気配を帯びていた。「参加者の関係で、本戦は今日一日ですべて行うことになりそうだ」

 

「今日だけですか……ずいぶんハードなんですね」

 ジュードの声には驚きと緊張が入り混じる。その傍らで腕を組んだ男が肩をすくめた。

「何戦あるかは、今日発表の組み合わせ次第だがな。もっとも、例年通りといえば通りだが」

 

 ユルゲンスは頷き、視線を全員に巡らせる。

「鐘が鳴ったら、闘技場まで来てくれ。それが大会開始の合図だからな」

「わかりました」

「では、私たちは闘技場で待っているよ」

 

 短い言葉を残し、彼らは足早に立ち去っていった。宿の外からは、すでに街のざわめきが広がり、シャン・ドゥ全体が祭りに沸くような熱を帯びているのが伝わってくる。

 

「……さて、時間ができたみたいだけど、どーするよ?」

 緊張の糸が切れたようにアルヴィンが口を開く。その声には、少しでも気を紛らわせようとする軽さが滲んでいた。

 

「私は広場を見てくる。少し気になることがあるのでな」

 ミラは窓の外に視線を向け、真剣な眼差しを見せる。

 

「では、ご一緒いたします」

 ジャンヌは迷いなく応じ、その横顔には騎士らしい忠義の色が宿っていた。

 

「私はその辺をブラブラしてきますね~」

 軽やかに笑うXの声に、アルヴィンが「なら、俺も」と気安く続く。

 

「フォウ!」

 窓辺で落ち着かない様子の小さな獣に、マシュが柔らかく微笑む。

「どうやらフォウさんはシャン・ドゥの熱気にあてられたご様子。であれば、それを落ち着かせるのに時間がかかると思われます」

 

「では、せっかくの他国ですし、観光でも。ご一緒にいかがですかな? エリーゼさん」

 ローエンの紳士的な誘いに、エリーゼは小さく頷く。

「はい、です」

「見て回ろうー!」と、ティポが元気に声をあげた。

 

「ジュードはどうするの?」

 レイアが身を乗り出し、期待を込めた瞳を向ける。

「僕? 僕は……」

 答えを濁すジュードの言葉を遮るように、レイアはにこやかに笑った。

「ジュードも観光ね! 決まり!」

 

「いや、僕まだ何も……」

 

「ま、どうせそんなに色々出来る時間がある訳じゃねぇだろうし、ブラブラすんのがちょうどいいかもな」

 アルヴィンが軽く笑って肩を叩く。

 

 ジュードは観念したように息を吐いた。

「そう……。まぁ、そういうことなら」

 

「それじゃ、鐘が鳴ったら闘技場へ直行ってことで」

 アルヴィンの言葉に、全員が頷く。

 

 外から吹き込む風は、遠くの歓声と何かの音を運んでくる。街全体が熱気を帯び、今にも爆発しそうな高揚感に包まれていた。

 

 彼らの一日は、始まったばかりだった。

 

お聞きしたいのですが、1話何文字ぐらいが読みやすいでしょうか?

  • 1000文字以内
  • 1~2000文字以内
  • 2~3000文字以内
  • 3~4000文字以内
  • 4~5000文字以内
  • 5000文字以上
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。