闘技場を後にし、通路を抜けたミラたちを待っていたのは、慌ただしく駆け寄ってくるユルゲンスだった。
「おお! 君たち、よくぞ無事で」
安堵の吐息を漏らすその声に、ミラは鋭く問いを差し挟んだ。
「それはいい。それより、エリーゼたちはどこへ行った?」
ユルゲンスは一瞬言葉を詰まらせ、重く頷いた。
「あ、ああ。仲間が追っているが、まだ連絡がない」
「わたしたちも捜そう!」とレイアがすぐさま叫ぶ。
悔恨と焦燥が入り混じったその瞳には、迷いが一切なかった。
だがユルゲンスは腕を広げて制す。
「待て。二人は街の外に出た。土地勘のない君たちが捜しても無駄足になるだけだ。足取りは我々が必ずつかむ。それまで留まってくれないか」
ミラは唇を結び、短く考え込む。
「……道理だな」
ジュードは歯を食いしばりながらも頷いた。
「……わかりました」
◇ ◇ ◇
そうして一行は宿へ戻ることを余儀なくされた。しかし、静かな部屋に戻っても心は騒ぎをやめなかった。
ローエンは窓辺に立ち、外の気配を観察する。
「ずいぶん経ちますね……」
その低い声が部屋の空気をさらに重くした。
ジュードは椅子に腰掛け、握った拳を見つめながら呟く。
「ひょっとして、アルヴィン……」
言葉の先は喉に詰まり、出てこない。信じたい気持ちと疑念が心を引き裂いていた。
ミラは無言で壁にもたれ、瞳を閉じていた。その表情からは感情を読み取れない。ただ静かに、しかし鋭い刃のような気配を漂わせている。
レイアは膝を抱え、苦しげに顔を伏せる。
「わたし……どうしてエリーゼが傍にいないのに気付かなかったんだろう。そうしたらエリーゼだって――」
ジュードはすぐに顔を上げ、彼女の言葉を遮った。
「レイアのせいじゃないよ」
「でも……」と彼女は弱く抗弁する。その瞳は涙に滲み、震えていた。
その時、重々しい足音とともにユルゲンスが部屋へ飛び込んできた。
「二人の足取りがわかったぞ!」
ミラが弾かれたように立ち上がる。
「どこへ行った!?」
問いかけは鋭い刃のようで、ユルゲンスの答えを急かした。
「王の狩り場だ」
ジュードが首をかしげる。
「王の狩り場……?」
ユルゲンスは息を整え、真剣な眼差しで説明を続ける。
「キタル族が管理する土地だ。街のそばに広がる原生林帯で、代々ア・ジュール王が狩猟を行う場所なんだが、そこに入ったとは思わず時間がかかってしまった。すまない」
「いえ、十分です! ありがとう、ユルゲンスさん!」
ジュードは勢い込んで首を振り、感謝の言葉を重ねた。
「だが注意してくれ」
ユルゲンスの声はさらに低くなる。
「危険な魔物も多い場所だし、もしかしたらその奥にあるリーベリー岩孔に行った可能性もある。十分、気をつけてくれ」
ミラは真っ直ぐに答えた。
「わかった。では行くとしよう!」
ジュードも力強く頷く。
「うん!」
こうして、一行は不安と決意を胸に「王の狩り場」へと向かうのだった。
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