(実は)AFOは2人いる   作:オールインシャンプー

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1話 AFO宅、空き巣に入られる

 

 2XXX年。

 世界は「異能」という新しい力によって、かつてない程の混乱に飲み込まれていた。

 都市は荒れ果て、無秩序に暴走する異能者が街を焼き、殺し、物資や命を奪い合う。

 秩序を口にする者は笑い飛ばされ、武力でしか語れぬ時代───後に『超常黎明期』と名付けられる。

 

 そんな時代の真っ只中に、異能を奪い、与える事を可能とする唯一の存在、AFOはいた。

 既に大量の異能を収集し、その一部を配下に分け与えたかいがあり、実に安定した生活を送れていた。

 

 そんな彼の本拠地である、周囲よりも二回りは大きなビルの前に一人の青年が佇んでいた。

 

 その青年は、灰色の髪をしており、瞳はまるで薄い膜が張られたかのように艶がなかった。

 服装は整った仕立てのスーツで、その上から大柄な体格によく映える黒のコートを羽織っている。

 

 青年は中折れハットを被ると周囲を見渡した。

 この時代、混乱に次ぐ混乱によって浮浪者が全国各地でよく見られたものの、この一帯には一人として居ない。全てAFOの配下が排除した結果だろう。

 本拠地であるビルに近寄ると、守衛室から三人程出てくる。三人とも攻撃型異能を複数与えられた下僕であり、全員が緊張した表情を浮かべている。

 その内、一人が進み出てくる。特に強力な異能を与えられたリーダー格だ。

 

「お疲れ様です、A()F()O()様。御帰宅でしょうか?」

「なに、忘れ物を取りに来ただけだ。下がってよし」

 

 青年は鷹揚に手をあげ、守衛達を下げさせる。

 つい1時間程前に出て行った時と若干違う声にぴくりと反応したリーダーだが、不興を買う前に慌てて引き下がる。

 青年はそのままビルの中へと消えていった。残された守衛達は、守衛室へ戻った後で雑談を始めた。

 

「AFO様、何か機嫌良かったよな?」

「レジスタンスの連中が見つからずに不機嫌そうに帰宅される事が多かったが、ようやく殲滅されたんだろうか」

「もしかすると異能配布されるかもな」

 

 異能の強さがステータスなこの時代、絶対者であるAFOの機嫌次第で時折ボーナスとして配られる異能はとても有難いものだった。

 守衛達がそんな会話をしているとは露知らず、青年はちょいちょいのちょいと内部のセキュリティを解除していた。

 

(指紋認証や色彩認証は異能でオールクリア。まだ技術が異能に対応できてないからか、天下のAFOの家だってのにセキュリティガバガバですな)

 

 青年の名は志賀崎(しがさき)(ぜん)

 彼は異世界の前世の知識を持つ転生者であり、ヒロアカに登場するNo.1ヒーロー、オールマイトのファンであった。

 

(ヒロアカ世界、しかも超常黎明期に転生して早20年。原作開始まで後100年以上って長すぎる!)

 

 一般人の寿命では到底不可能な年月。

 さらに、普通に生活を送るのも大変な超常黎明期となると目標を達成するのは相当に難しいだろう。

 が、志賀崎にはアテがあったのでそこの心配はしていない。

 

(知ってる人がAFOとOFAの初代、二代目くらいだからまだまだ始まったばかりだよね。でも何とか《発光》取れたし、結構幸先良いかも)

 

『発光する赤子』はもう居ない。

 どうせAFOが盗るなら僕が貰っても変わんないよね、の精神で先回りして強奪済みである。

 狙っていた獲物を何者かに先取りされた事を知ったAFOがブチギレて与一に八つ当たりしたのは言うまでもない。

 

(とりあえずは延命系の異能を掻き集めるとして、100年以上暇だし、何か暇潰し考えるかな)

 

 志賀崎が今世を生きようと思う理由は、今よりも100年以上先に繰り広げられるオールマイトvsAFO、そして緑谷VS覚醒死柄木の決戦を自分の目で観戦することであった。

 

 両者とも瀕死となる戦いはともかく、緑谷VS覚醒死柄木の結末はまだ知らない。

 少年誌的にというメタ視点から考えると緑谷が仲間と何とかして倒す。というのだろうとは予想しているも、自分という異物が混入したのでどうなるかは未知数。

 それ込みでワクワクしているのだ。

 

 幾重にも施された施錠を片端から解除していき、AFOの部屋に入った志賀崎は金目のものを片っ端から回収していく。

 カーペットの下にも隠し金庫があるかもしれない。引き裂き、壊し、荒らしまくる。

 その後、堂々と正面から脱出する事に成功する。

 志賀崎は異能を使い、浮かび上がるとそのまま上空へ消えていった。

 

(守衛に呼び止められた時は終わったかと思ったけど案外バレないもんだな。AFOの真似事もかなり楽しいね。次は異能でもプレゼントしてみようかな)

 

 志賀崎はAFOのコスプレを、金品ネコババの為の今日限りで終わらせるつもりでいた。

 だが、完璧に騙せたという事実がコスプレ以上の快楽を与えてしまったのである。

 

 ■

 

 2時間後、本物のAFOが帰宅した。

 与一を連れ出した忌々しい駆動一味。

 その本拠地らしき情報が入ったので自ら調査に乗り出したものの、既に逃げ出した後だったのだ。

 

「……チッ。鼠のようにコソコソと」

 

 考えれば考えるほど苛立ちは増していく。

 と、ここで自室の違和感によって動きが止まる。

 否。違和感では片付けられない。

 家宅捜査でも入ったのかと思うくらいに、しっちゃかめっちゃかで荒れ放題だ。

 ただでさえ逃げられて溜まっていたイライラがこれで噴火した。

 

「守衛共ォォ!!」

 

 ドタバタとAFOの前に跪く三人。

 顔を上げるのも恐ろしい。脂汗が床に滴るのを見つめる。

 今迄に見た事が無いほどの怒り。数時間前のご機嫌はどこへ飛んで行ったのやら。

 

「僕が、出かけた後で、何か、なかったか?」

「(再度出かけた後で何かあったか……? いや無いはずだ)何もございませんでした」

「んな訳がないだろ!! 見張る事も出来ない愚図共め!」

 

 AFOが振るった腕から骨のような槍が突き出て、守衛三人の頭部を貫いた。

 与えておいた異能を全て回収し、そこでようやくAFOは冷静さを取り戻した。

 

(待て。部屋の施錠は何も壊されていなかった。コイツらの証言からも何もなかった。……まさか、空間転移系の異能か!?)

 

 新しい可能性が浮上した。何よりも現実的な可能性だ。

 

(しくじった。また異能に適正がある者を探さなければ)

 

 AFOは今後100年以上に渡り、自分の偽物に悩まされることになる。

 

 






志賀崎善
容姿や体格を異能で無理やり誤魔化している。髪色と声質はどうしようもなかった為に帽子と演技力でカバー。
最悪疑われたら、複数の異能を同時発動してみせてゴリ押ししようと考えていた。AFOの家を狙った理由はすぐ見つける事ができた上に警備が薄そうだったから。

異能名は《AFO》
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