(実は)AFOは2人いる   作:オールインシャンプー

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2話 勢い

 

 天下のAFO邸に空き巣が入るという前代未聞の事件から1ヶ月後。

 異能者用の火葬場をえんじ色の髪をした男が一人歩いていた。

 その男の名は志賀崎善。左半分が焼け爛れ、猛禽類を思わせる目をした軍人のような容姿に仮装している。

 超常黎明期の大混乱により、ハロウィンのような仮装イベントは軒並み中止しているのにも関わらず、何故仮装しているのかと言うと志賀崎の趣味である。

 志賀崎はコスプレに目覚めてしまっていた。

 

(ふふん。今日の俺は改心前の轟炎司だぜ)

 

 使う異能も炎系で固め、トレースは完璧。

 火葬場という場所柄、荼毘でも良かったのだが残念ながらまだまだ異能が未発達なこの時代、《蒼炎》に近しいものが出てきていないのだ。

 

 さて、何故異能者用の火葬場に来ているのかというと、異能とは身体能力の延長であり将来知られる事実。

 コミックキャラの特殊能力のように死んだら失われるものではなく、肉体に残り続けるのだ。

 つまり、異能者の遺体が多く並んでいるこの場所は《AFO》を持つ志賀崎にとって、──言い方は悪いが──バイキングのようなものなのである。

 

(まぁ一般人に殺されるような異能者ばかりだからそこまで期待はしてないけど……お《拡声》)

 

 カードショップのストレージを漁るようにして遺体に触れ、因子を片端から取り込んでいく。

 死体漁りだと怒られそうな光景だが、何度も言うが今は超常黎明期。他人に構う余裕など無い。

 あらかた異能因子を回収し終えた時だった。

 

 収骨が終わったのだろうか、礼服を着た20人程の人集りを見かけた。彼らの表情が全てを物語っており、恐らくは復讐相手の事だろう、憎悪を貼り付けた顔で会話する者すらいた。そんな連中と通りすがった時である。

 

「あれ、駆藤じゃん」

「……俺の名前を知っているのか?」

 

 志賀崎はオレンジレッドの髪に、顔に斜め傷のある青年と遭遇した。彼の名は駆藤敏次。二代目《ワン・フォー・オール》の継承者であり、AFO対抗勢力組織のリーダーである。

 彼も礼服を着込んでおり、仲間を亡くしたショックからだろうか表情が暗かったが、いきなり本名を呼ばれてきょとんとした顔をしていた。

 そんな駆藤とは裏腹に志賀崎のテンションは最高潮に達していた。

 

(うぉぉぉ、マジか。駆藤じゃん!! あのAFOに蛇蝎の如く嫌われていた二代目! 子孫全滅させられた二代目! 初代である与一を連れ出した二代目!)

 

 彼は眉間に皺を寄せて再度言った。

 

「何故俺の名を? 仲間にしか言ってないはずだが」

「(やべ、ついうっかり)……死んだ戦友が教えてくれた。あの怪物に対抗する組織の事を」

 

 轟炎司の鋭い目つきを一層見開き、涙を一筋垂らす。

 明らかに歴戦の猛者であろう男が怒りに震えている。

 目の前の男は自分達のようにAFOに対抗している数少ない同胞だと駆藤達は理解した。

 

「そうか……。もしや今日は弔いに?」

 

 自分達も仲間を喪ったというのに、初対面の志賀崎を気遣う様子。流石はOFA後継者、と感心する志賀崎。

 

「あぁ……。俺なんかに沢山遺してくれた良い奴らだった(異能くれたし、これは嘘じゃない)」

 

 しんみりとした空気が漂う。

 志賀崎としてはこれ以上ボロを出したくないので引き下がりたいが、いきなり言い出しても違和感だろう。何とか逃げだせる理由を考えていた時、背後にいた未来の三代目から提案される。

 

「もし……もし、あんたが良ければ仲間にならないか? 人が増えたら撃破の確率も上がるし、何よりこの世の中だ。信頼できる仲間が欲しい」

 

 数秒の沈黙。

 志賀崎が口を小さく開け閉めする様子は、駆藤達には仲間が亡くなる様子を見たくないのだろうと好意的に映ったが、勿論違う。

 

(えぇ……スカウトってマジ? あんまりこの姿で動くと未来に響いちゃう! AFOも将来「アイツ前に見た事あるよね?」ってなるし。でも、ちょっと入ってみたいんだよね……)

 

 えーい、ままよ! と志賀崎は決断し、謝り祈る。

 すまない轟炎司。ヴィランに襲われやすくなるかもしれないけど頑張ってくれと。出来るだけ顔バレしないように努力はすると。

 

「あぁ、これからよろしく頼む」

 

 握手が交わされ、志賀崎は無事にレジスタンスの一員となった。

 

 

 その一時間後。

 

 志賀崎は空になったグラスを勢いよくテーブルに置くと、背負っていたリュックから高価な酒を取り出した。駆藤達は呂律の回らない口調で褒め称える。

 

「すげぇよ()()()()ォ! まさかあのAFOから奪った酒が飲めるなんて考えもしなかったぁ」

 

 ■

 

 ここはレジスタンスのアジト。

 仲間が増えたお祝いと、逝った仲間の追悼ということで始まった酒盛りだったが、レジスタンスは追われる身。何とか入手した酒だが、安酒過ぎて悪酔いした志賀崎は怒った。

 

「1番美味い酒を持ってきてやる。あのクソッタレなAFOから奪ってきた酒だァ!!」

「おぅ、見せてみろよ!!」

 

 売り言葉に買い言葉。流石に幾ら酔ったとしても最大の秘密は漏らさないが、それ以外は口が軽くなる。

 移動するフリをして隠れ、収集系異能から美酒を取り出す。奪ったのはいいが、一人で飲むのは寂しいと考えていたので丁度良いタイミングで消費できそうだったからだ。

 

 酔って気が大きくなったまま、財宝に手を出す。

 一番大きなリュックにパンパンに詰め込み、新しい仲間の元へ歩き出した。

 

「酒……と、何とかAFOの目を掻い潜り奪えた金品だ! これからの俺らの活動に役立ててほしい!!!」

 

 馬鹿デカイリュックを逆さまにすると、【ドンッ!】と効果音が背後に出てきそうな金銀財宝がザクザク溢れ出した。

 武力・財力・人材・情報・ツテを兼ね備えた巨悪、AFOに対抗するにはやはり費用は嵩む。質素倹約な生活を送っていたレジスタンスの面々は志賀崎に感謝し、この気持ちを共有出来なかった仲間達を想い、少し胸が苦しくなった。

 

 






志賀崎善
轟炎司が生きているとバレたらAFOに命を狙われ、周りの人間にも被害が及ぶ。
三代目に名前を聞かれ、咄嗟に炎司の息子「ショート」と名乗った。
苗字は流石に言ってない。レジスタンス入りに伴い、色々と割り切った。

駆藤敏次(二代目)
悩んでいた金欠が解消された上、仲間達のやる気が上がり、炎系異能を持つ仲間が増えてニコニコ。与一の事を話そうか迷ったがやめておいた。
志賀崎に異能を少し見せてもらったが練度が凄すぎて、とりあえず様子見しているが将来幹部に推薦しようか悩んでいる
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