P.I.T(パイナップル・インザ・チューカスブタ) (完結)   作:コンバット越前

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最後かもしれないだろ。
だから……全部話しておきたいんだ。


ヒロイン達のごちゃまぜチューカ定食 ~超飲茶~

「SU・BU・TA?」

ラウラは一語一語噛み締めるようにその単語を吐き出した。それは酢豚、正に鈴を表すもの。

 

「ええ。SUBUTAですわ」

自信満々に答えるセシリアに、軽く頭痛を覚えるシャルロット。何言ってんだこのメシマズは?

 

セシリアは自分を凝視する二人の友人の視線を受け、何故か満足げに鼻息を出す。お嬢様は注目されるのがお好きなのである。

 

「では語りましょうか」

彼女の一人舞台は未だ終わる気配は無かった……。

 

 

 

 

 

「ラウラさん、貴女と鈴さんは立ち位置的に似ていますわね」

「は?」

 

急な話の振りに呆けるラウラに、セシリアはヤレヤレと軽く頭を振った。その仕草が一々シャルロットのイライラ感を加速させる。つーかSUBUTAとの関連はどうしたんだ?

 

「貴女と鈴さんは言わばロリータ枠。小さい子にハァハァする駄目人間へのご褒美」

「おい」

 

ヤベーよ、また危険な事言うなよ。

シャルロットは外部団体からの批判を恐れ、セシリアを睨み付ける。

 

「本来なら私のような真のレディこそ、全ての殿方の心を掴んでしかるべきなのですが……本当に世の中には理解に苦しむ人たちがいるものですわ……」

 

駄目だこのケツ、早く何とかしないと……。

シャルロットは軽蔑の眼差しと共にそんなことを思った。

 

一方当事者のラウラは難しい顔をして一人考え込んでいた。

自分はペド野郎御用達の為の存在だったのか?

 

「セシリアほんと何なのさ。ラウラを侮辱するつもりなら僕も容赦しないよ」

「そんなつもりは微塵もありませんわ。しかし繰り返しますが、これはヒロインの座をかけた戦争なのです」

「それと今の話がどう関係あるって言うの?」

「シャルロットさん。私は先程立ち位置と言いましたが、ラウラさんと鈴さんに共通するもの、貴女は分かりませんの?」

「ラウラと鈴……?」

 

そこでシャルロットは思考する。

百歩譲ってラウラがセシリアの言うロリコン枠としても、鈴はそれに当てはまるかは疑わしい。鈴は見た目こそ少し幼いが、ラウラのように幼子のような純真な所はない。むしろ世の中を冷静に見ているところも垣間見えるからだ。

 

「分かりませんか?シャルロットさん」

「うーん」

 

二人の共通……。シャルロットは必死に頭を働かせる。横に居る当人のラウラを差し置いて、お嬢様同士の問答がなされる。

 

「ラウラさんをその曇りなき眼でご覧になりなさい。そうすれば答えが見えますわ」

「ラウラを?」

 

シャルロットはその言葉に倣い親友を見る。その視線に少し困惑するように半歩下がるラウラは、特にいつもと変わることなく相変わらず可愛い。整った顔に、小さな身体、全てがパーフェクト。ハァハァするダメ人間の気持ちも分かる気がする。思わず胸の中に抱きしめたくなる可愛さである。

 

……いや待て胸の中……?シャルロットは目線を親友のその慎ましい胸へ向ける。……むね、MUNE、胸。……つまりはおっぱい。

ま、まさか!シャルロットの顔が驚愕に歪む。

 

「気付きましたか、シャルロットさん」

「セシリア、君は……!」

「そう。それが答え。彼女達二人に共通するもの……それはスレンダーな身体!またの名を貧乳ですわ!」

 

しーん。

お嬢様の超絶アホ発言に、親友コンビは唖然とする以外の選択は無かった……。

 

 

 

「いやいやいやいや、ちょっと待て!待って!君、頭大丈夫?」

珍しくテンパりまくりのシャルロット。親友の為、反論を試みようとする。

 

「なんですのシャルロットさん。貴女もお気づきになったのではなくて?」

「いや、その……。とにかく!いい加減にしてよ!」

「私はふざけてなどいませんわ」

「尻……!」

「ん?尻?……とにかく、お二方に共通するのはその貧乳という事実。それが一つの分岐点なのです」

 

つーか淑女が貧乳発言連発するなよ。

頭を抱えるシャルロットをよそに、セッ尻は止まらない。

 

「人は自分には無いものを持つ相手に憧れを持ちます。殿方が女性に求めるものは何だと思いますか?」

「それは……母性とか、優しさとか、それから……えーと」

「まぁ精神的な面で言えばそうでしょうね。でもここでは肉体的な面についてです」

「肉体的?」

 

オウム返ししながらも、シャルロットの中に疑問が膨らんでいく。このメシマズは何が目的なのだろう?

 

「どの時代でも、男性というのは救いの無い方が多いですわ。粗野でお下品であったり、対照的に女々しかったり……。勿論私の一夏さんは違いますが。一夏さんのように素敵な男らしさを持つ殿方に出会えたことは、正に定められた二人の運命としか……」

「分かったから、もうそれはいいから。話続けてよ」

「もう、いい所でしたのに……。オホン、とにかく男性というのはこの女尊男卑の世にあっても本質は変わりません。女性の容姿やスタイルに邪な目を向ける人がどんなに多いか、貴女ならお分かりになるでしょう?」

「……まぁ」

 

夏、道を歩いているだけで、イヤラシイ視線を受けたことは一度や二度ではない。シャルロットは小さく肯定する。

 

「そんな男性の方が最も意識するセックスアピールポイントは当然女性の胸なのです。そうでしょう?これは当然女性のみが持つものですから」

「はぁ、そっすね」

「女性の価値を胸の大きさで決めるなぞ言語道断ですが、そう見られるのも事実。やりきれませんわ」

「はぁ、そっすね」

「時折『乳比べ』などといって女性を裸に一列に並べた画が出ますが、あれはあんまりですわ。男性が面白半分でやっていることと思いますが、ならご自分もそのやられる立場になってみればいいのに」

「……えー?」

 

無気力に返事していたシャルロットであったが、ここで正気を取り戻した。想像してしまったからだ、男性が一列で自身のマイ・サンを比べられている地獄のような画を。

 

 

 

とはいえ、女性からすれば納得できないことでもある。女性に「貧乳」「デカ乳」呼ばわりは少年誌でもデフォだというのに、男性には「短小」「ビッグ・マグナム」など踏み込むのは少ない、というより皆無である。それは一気にエロゲーの域まで飛び越えなければならない。

しかしである、女性が「貧乳」と呼ばれて嬉しい人はいないように、男性も「短小」呼ばわりされて喜ぶヤツなぞいない。むしろ死にたくなる。本気で止めてくださいお願いします。

 

……そういうわけで人様の身体の特徴でネタにするのは、よく考えて下さい。間違ってもリアルで友人に「オレ(の息子)はビッグ!お前ら(短小)とは違う」などと勝ち誇った顔で言わないように。その瞬間、貴方は友情という円環の輪から永遠に外れることになるでしょう。

 

 

 

シャルロットは大きく頭を振って、その地獄のような光景を頭から追い出そうとした。

どうして自分がこんな目に……。

 

「やりきれませんわねシャルロットさん。男性の醜い欲望というのは……」

いや、どう考えてもオマエのせいだろ。シャルロットは扇風機のように動かしていた頭を止めると、目の前のお嬢を睨み付ける。そろそろ気分的にクーデターを起こしそうだ。

 

「もう僕限界だよ!セシリア!今度という今度は……!」

「落ち着いて下さい」

「落ち着けだって?ああもぅ!君は一体何が言いたいのさ、そもそものテーマは『リストラ』についてでしょ?ひんにゅ……胸と一体何の関係があるのさ!」

 

少しの間「フー、フー」とシャルロットの荒い息だけが響く。

彼女の息が落ち着くのを見計らい、セシリアはゆっくりと立ち上がった。

 

「……それですわ」

「はぁ?」

「ロンゾの教えにこんな格言が残っています。『巨乳は通す、並乳も通す、貧乳は通さない』と……」

「え?それって、あのツノなしキマリさんのことじゃ……」

「つまり、貧乳とはそれだけ狭き門だと言うことです。考えても見て下さい、女性の胸が大きいのと、小さいの、普通の男性はどちらを選びますか?シャルロットさん」

 

「それは……えぇっと、うう……。前者、かな?」

チラリとラウラを横目に伺い、申し訳なさそうにシャルロットは答える。

 

「その通りですわ。下品ですが、それが男性の持つ生来の欲望。当然私たちが出演しているような美少女モノでは、抜群のスタイルを持つ方が真っ先にチョイスされます」

「まぁ、うん」

 

アイドル並の美少女が集まるだけでも不可思議なのに、どうして更にスタイル抜群のおまけまで付くのだろうか?わが身のことながらシャルロットは少し疑問に思った。顔が良いからってスタイルもいいとは限らないだろうに、バスト90近くの美少女がそうそう身近に居てたまるかっての。

 

「美少女モノはその名の通り、出てくる人は皆不自然にも全員美少女。……まぁ、これについてはもはや何も言いませんが、とにかくそうなると、この『胸の大きさ』が一つの区別になるのです」

「それで?」

「人は無きものに憧れる、男性は女性の胸にロマンを見る。この悲しくも醜き絶対の事実」

「で?」

 

ばぁ~かじゃねぇの。という思いを頭の片隅で感じながらも、シャルロットは先を急かす。

 

「『貧乳はステータス』『ロリ最高』などという理解できない言葉がありますが、実際はあくまで少数意見。小さい子にしかハァハァできない愚か者と、自分の今を認識したくないお馬鹿さんの逃避ですわ。違うと言うならその言葉を自信を持って口に出せますか?実際は口にしたら最後、犯罪者に一直線じゃありませんか」

 

コイツは本当に何なんだ……?

シャルロットは本当に分からなくなってきた。このお嬢様は何を言っているのか?何をどうしたいのか。

何を、企んでいるのか?

 

一気に喋ったセシリアはここで「ふぅー」と大きく深呼吸すると、視線をもう一人の少女に向ける。ここ暫くずっと沈黙を貫いていたラウラ・ボーデヴィッヒへと。

その視線を受けた少女は、一瞬硬直した後少しずつ後ずさる。

 

「ラウラさん。聡明な貴女なら、これまでで私が何を言わんとしているか、想像出来ているのでは?」

「し、知らない。私は知らない分からない」

「ラウラさん……」

 

セシリアは辛そうに、申し訳なさそうに眉をひそめる。

しかしそれでも『キッ!』と視線を強くすると、怯える少女にゆっくりと近づく。

 

「ラウラさん」

「来るなぁ……!」

 

その姿はいつもの優秀な軍人である、ラウラ・ボーデヴィッヒという少女ではなかった。そこに居るのはただ自らの存在証明に怯える哀れな黒ウサギちゃんの姿だった。

 

「鈴さんと貴女に共通する悲しき事実……」

「や、やめろ」

「鈴さんにあって、貴女に無いもの。そしてSUBUTAの恩恵。これについては後ほど詳しく述べるとして、結論だけ先に述べましょう。……遠まわしな言い方がお嫌いな貴女にとっても、その方が良いでしょうから……」

 

ラウラはいやいやをするように頭を振って、シャルロットに助けを求めて視線を送る。

だが、頼みの親友は自分の哀願の視線に気付くことなく、俯いて「何が目的?」などとブツブツ呟くのみ。それを見てラウラの目が絶望に変わっていく。

 

セシリアはもう一度痛ましそうに少女を見ると、右手を大きく掲げた。そしてそのまま芝居がかった動作で、その指先を震える黒ウサギに向けていく。

 

 

「そう、此度のヒロイン増加によるリストラ対象。……それは」

 

その指先をあたかも銃のように突きつけ、そして宣言する。

 

「それは……貴女ですわ!ラウラさん!」

 

ズキュウウゥン!

 

今、ここにセッシーお嬢様による勝手な断罪が、哀れなウサギちゃんに下された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




全く関係ない人物紹介・用語説明


『キマリ』……FFⅩにおけるメインキャラクターの一人。勇敢で屈強な種族ロンゾ族の青年。
……のはずなのだが、実際は通称『ツノなし』『通さない』『キースフィア窃盗請負人』どうしてこうなった。
『キマリ』で検索すると「弱い」「使えない」などが高確率で表示される可哀想なお方。必殺技は敵の技を覚えて使う青魔法。『サンシャイン』『マイティガード』はまだ許せるが、『自爆』『くさい息』何より『タネ大砲』がキマリという男のやるせなさ加減を表している。何だよタネ大砲って。
高確率で二軍行き待った無しのお方。おそらくプレイした9割の人はキマリさんに非情な戦力外通告を出すであろう。彼をまともに戦闘に立たせないまま終わらせる人もいるのではないだろうか?戦闘に参加しないから経験値が貰えない、敵と戦わないから青魔法も覚えない。負のスパイラルである。
その使いづらさや、時折話す発言の香ばしさから、FFでも屈指のネタキャラとして未来永劫祭り上げられることとなった。キマリも本望だろう、ヤツは生きながらにして究極召還並みの伝説となったのだ……。

ちなみに最も笑ったキマリ関連のネタは。
キマリ「オレ、この青さは、なくさない」
……せめて流行の萌えキャラのような外見なら、こうはならなかったのかな。……キマリ。



『ズキュウウゥン』……ジョジョにおける擬音の一つ。主にショッキングな場面で用いられる。
初出は、作中で主人公と想いあっている女性が、ライバルキャラに無理やり唇を奪われた場面で使われた。大コマで描かれた憎き相手からのいきなりのキス、そして背後に描かれた「ズキュウウゥン」というあたかも鉄砲に打ち抜かれるがごとくの擬音によって、読者に強烈なインパクトを与えることとなった。
あれからどんなに時代が変わろうと、男と女にはこのような「ズキュウウゥン」な出来事は日々起こっている。そこで当社調べによる独断と偏見で選んだ「恋人、妻に言われて最も『ズキュウウゥン』とくる」であろう言葉を発表したい。



第五位 「あなた臭いのよ」

第四位 「顔だけじゃなく頭も悪いのね」

第三位 「あなた下手なのよ」

第二位 「もっと稼いできてよ」

第一位 「死ねばいいのに」

……世の男性諸君、強く生きてください……。

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