P.I.T(パイナップル・インザ・チューカスブタ) (完結)   作:コンバット越前

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このお話はフィクションです。
実際の千冬センセーは妙齢の女性通りの知識と、何より『経験』を既に持っ……





このお話は童貞に優しいお話になっております(にっこり)





ぼくらの童貞

「で?どういうことだこれは」

数分後、仲良く正座させられた一夏・楯無の未経験ダメコンビに千冬が問いかける。

 

あんなに騒いでいた二人は今や借りてきた猫のようにおとなしくなった。

一夏の真っ赤に腫れた頬が痛々しい。毎回何かある度に彼が「教育」という名の物理的指導を受ける様は、IS学園が持つ闇の部分を醸し出している、かもしれない。

 

「更識。お前までこんな騒ぎを起こすとは」

「申し訳ありません織斑先生」

「あのさ千冬姉……」

「貴様は黙ってろ」

 

一夏は言葉を呑んで黙り込む。このような扱いはいつものことだ。

 

「何があった?言え」

「え?あ~、えっとぉ……」

 

珍しく楯無が言いよどむ。今更ながらに恥ずかしくなってきたからだ。

 

「どうした。早く言え」

「あの、その、結構ナイーブな話題でありまして」

「いいから早く言えと言っている!もう一度キツイ仕置きを喰らいたいのか?」

「分かりました……」

 

楯無は観念したように小さくため息をつくと、ゆっくりと一部始終を語り始めた。

 

 

 

 

「なんだそれは。馬鹿らしい」

話を聞き終わった千冬はフンと呆れたように鼻を鳴らした。

 

「そんなくだらないことで喧嘩したのか?恥ずかしいと思わないのか?」

「面目ありません……」

「ごめん千冬ね……すみません織斑先生」

 

少し冷静になった一夏と楯無が揃って頭を下げる。

 

「そんなつまらんことに力を使うより、今の貴様らにはもっとやるべき事が他にあるだろ?」

「は、はい」

「すみません」

 

とにかく頭を下げるしかない二人。

 

「高校生の身分でそういうのに興味を持つなど百年早い。学生の本分は勉強と己を鍛えることだ。そういうのは成人して、しっかり自分というものを保てるようになってからだな……」

「はい……」

「ごめん……」

 

千冬先生のお説教は続く。

未経験コンビは頭を垂れた体勢のまま聞き入った。

 

「そもそもお前らみたいなガキが経験が無いなんてのは当然のことだ。全く色気づきおって。別に婚約している関係でもあるまいに……」

「ん?」

「へっ?」

「そういうのは後生大事にするものなのだ。成人した後、将来を約束した結婚相手とするものだ」

「「えー?」」

 

楯無と一夏の声が綺麗に重なる。

この初心な発言。まさか……。

 

「あ、あの……。織斑先生って、もしかして……」

 

おっかなびっくり聞く楯無。

『こんなこと聞いて殺されないかな?』という不安を抱えながらも、彼女は勇気を振り絞ってその真意を尋ねる。これは普段目上の人間相手には、良識ある態度を振舞っている楯無ではとても考えられないことだったが、そのくらい今の彼女は危うい精神状態にあったのだ。

 

「ま、まだ……なんですか?その、男女の、け、経験……」

そして匙は投げられた。

 

歴戦の戦士である楯無でさえ、自分の質問の恐ろしさに額に汗が浮かんでくるのを止められなかった。

そして一夏は口を結んだまま唾を飲み込んだ。その両手は祈るように固く握られている。

 

それは女の尊厳をかけた問い。守り導く対象である己が生徒からぶつけられた時限爆弾。弟の縋るような視線がそれに輪をかける。正に己の存在意義をかけた質問に直面することとなった千冬。

 

真摯に答えるのか、うやむやに誤魔化すのか、暴力に訴えて質問をなかったことにするのか。

この場合何が正しいのか、絶対な正解なんてないのだろう。だからこそ千冬の判断で全て決まる。

 

どうする教師!

どうする姉!

 

 

 

 

 

「ん?何を言っているのだ。当たり前だろう?私には婚約してる相手もいないしな」

そう、全く恥じることのない、威勢堂々としたいつもの態度で千冬は宣言した。

 

一夏と楯無は一瞬顔をお見合いさせると、おりむらせんせー(2X歳)を驚愕の目で見た。

なんてこった。こんなことが……。

 

「童貞が許されるのは小学生まで」

「ユニコーンに乗ることが出来る乙女なぞ只の夢物語」

 

そんな言葉が叫ばれるようになるほど性の低年齢化が進んだ現代日本。そんな中でドキューン!歳にもなって、未経験であることを堂々と胸を張って宣言出来る大人が身近にいるなんて。

 

ああ……自分達はなんてくだらないことで言い争っていたんだろう……。

 

「ありがとうございました織斑先生……」

「千冬姉……俺ら目が覚めたよ……」

 

二人は目に涙を浮かべながら、人生の師に礼を述べる。

いいんだ。別に経験がなくったって。だって身近にこんな手本がいるんだもの。バキューン!歳になっても、バリバリの未経験である大人が。しかも何ら恥じることなく……。

 

特に楯無は目の前を覆っていた霧が晴れていくような爽快感を感じていた。

ドン底だと思っていたがまだ上がいたんだ。こんなに嬉しいことはない……。

 

「……まぁ分かったならいい」

二人の生徒が目をキラキラさせながら感動する様を見て、彼らの師は首を傾げながらも頷いた。

 

「千冬姉。俺は信じてたよ!千冬姉に限ってそんなことは無いって!」

「だから織斑先生と言えと何度言えば分かるのだ!」

「いてっ!……エへへ」

「何を笑っているんだ?お前は」

 

殴られて尚一夏が浮かべる気持ち悪いニヤケ顔に若干引く千冬。

ここまで幸せそうな顔を見るのも久しい。何が弟をここまで喜ばせたのか、姉には分からなかった。

 

「とにかくだ!仲違いしていたのなら、お前らもいい加減……」

「あ、そうだった。ごめんなさい楯無さん。失礼なことばっかり言って」

「いいのよ一夏くん。私のほうこそつい熱くなっちゃって」

「じゃあ」

「うん。仲直り」

 

千冬が締めの言葉を言い切る前に、二人は手を取り合って仲直りの意を示した。そして広がる笑顔。

その光景は微笑ましく良き事だが、どうも千冬的に釈然というかスッキリしなかった。なんだコイツら。

 

「ね、一夏くん。仲直りのお祝いにお茶でも飲みにいかない?」

「いいですね。食堂まだやってましたよね?何かデザートでも食べますか?奢りますよ」

「コラコラ。そういうのは年上の役目」

「一つしか違わないじゃないですか」

「そうね。一つ、たった一つだけだけだったわ。私ったら何を危惧していたんだろ。私はまだ若いんだ、現役の天下の女子高校生なんだ!私には未来がある、これからなのよ!」

 

楯無はそう宣言すると、千冬の方に笑顔を向ける。

千冬は何故かその物言いと笑顔が非常にムカついた。なんでだろう?いい笑顔なのだが、クッソムカツく。

 

あたかも「私は若い!ピー(放送禁止)歳の先生とは違うのよー。おーほっほっほ」……ってな感じで言われているようで。まぁ気のせいに違いないだろうが。

 

「じゃあ一夏くん。食堂行こっか」

「はい」

「私はケーキにしよっかなー」

「食堂の限定ケーキ美味しいですよね」

 

あはは、うふふ……。

そんな和やかな笑い声を上げ、さっきまでいがみ合っていた童貞・処女コンビは部屋を出て行った。

 

「ふっ……。全く困ったやつらだ」

一人残された千冬は苦笑いを浮かべる。これが若さか……。

 

少し納得できない思いも確かにあるが、どうあれアイツらも分かってくれたらしい。

教師千冬は生徒を正しく導けたことに一人納得すると、満足した表情で部屋を出た。

 

 

 

こうして、下手をすればIS学園全体を巻き込む危険があった恐るべき地雷、一組の少年少女を悩ませた『性』という名の黒き霧は、学園が誇る偉大なる教師織斑千冬によって取り除かれた。

 

しかしいくら天下のIS学園とて、そこに通うのは思春期の多敏な少年少女。この先もきっと『性』のことで悩み苦しむこともあるだろう。

でも大丈夫。だってIS学園にはぼくらの織斑千冬がいるのだから。未経験であることを恥と思うこともなく、むしろ誇りを持って純潔であることを誇れる人が!だからきっと大丈夫。苦しい時、悩んだ時は彼女の背中を見て安心……じゃない、納得すればいい。

 

僕には・私には若さがあると。

輝ける未来が待ち受けているはずなのだと。

(禁則×事項)歳とは違うのだと。

そう胸に想いを抱いて……。

 

ジーク千冬!

ビバ妙齢処女!

人生って、人間って素晴らしい。童貞&処女に幸あれ!ハレルヤ!

 

 

 

そういうわけでIS学園は千冬様(放送禁止)歳のおかげで今日も平和です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか。そんなことがあったのか」

『ああ。今日は悪かったな取り乱して。でもな弾、俺やっと目が覚めたよ』

「そうか」

『ああ。今ならちゃんと祝福出来る。遅ればせながら、弾初体験おめでとう』

「いや、あの、そういう風に言われると……」

『俺もいつかその背を追えるように頑張っていくよ。でも急ぐつもりはないんだ。俺は俺のペースでやっていくつもりだよ。既に経験者の弾からは情けなく思えるかもだけど、俺は、いや俺たちはそう決めたんだ』

「そ、そうか。……俺たち?……まぁいいか。ところで一夏。実は俺も黙っていたことが……」

『あ、そうそう。そういや楯無さんも弾に一言よろしく伝えてくれと言ってたっけ』

「え……?」

『やっぱ楯無さんも、親友がそんな大切なことを自分に話してくれなかったのは少しショックだったみたいだ。でも楯無さんの方も改めて虚さんと話し合って、直接お祝いの言葉を述べるって言ってたから』

「た、楯無さんって。お前、まさか彼女に言ったんじゃ……」

『良かったな弾。虚さんと上手くやっていくにはやっぱ親友の楯無さんの了承が重大だからな。今夜二人で話し合うって言ってたけど、今の楯無さんならきっと受け入れてくれるさ!』

「いや、ちょ、おまっ……待て!待ってくれ……!その話し合いとやらを止めてくれ一夏!頼む!」

『待てって言われても遅いって。今ちょうど話し合ってる頃だし』

「Noぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

『ん?何だよ変なヤツ……。じゃあな弾、とにかくおめでとうな!』

「違う!違うんだ一夏!俺はまだ……!」

 

プツン。

電話が切れた。スマホを握り締めた弾の顔から血の気が引いていく。

 

弾は震えながら視線を傍らのパソコンに移した。そこには今の今まで見ていたサイトが表示されている。

 

『恋人たちにとって特別な日、それはクリスマス。一通りのデートを楽しんだ後、俺らはどちらともなく無言になった。言葉は要らない、頷きあってとあるお城に似た建物に向かう。妖しい薄赤色の灯る室内で俺たちは向かい合った。彼女は震えていた。俺はそんな彼女の初心な様子に小さく微笑むと、緊張を和らげるように優しくキスをする。そしてそのままそっとブラウスのシャツに手を掛け……』

 

「うわぁぁぁぁぁ!」」

弾の絶望の叫びが五反田家に鳴り響く。

 

『童貞が初体験を妄想するスレ33』

パソコンに表示される童貞丸出しの妄想文を前に、DANはただ己の見栄を嘆くしかなかった……。

 

 

 

童貞の掟ラスト 童貞は友人にさも経験したかのように嘘をつく 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




如何でしたでしょうか。
万が一にも全ての掟が当てはまった貴方は骨の髄まで童貞です。それを誇りましょう。

童貞は決して罪じゃない……罪じゃないんや!





……ラストの掟、男なら七割の方(適当)は経験したことあると思うのですが、どうでしょうか?
書いてて私の消し去りたい記憶が蘇った。よくもドヤ顔であんな嘘っぱちをダチに話していたもんだ……。

アンインストール。
アンインストール!



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