ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 遥か彼方の静寂の夢   作:長夜月

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 これはあったらいいなの世界線です。独自の解釈やスキルなど様々です、それでも良い方はどうぞご愛読下さい。
 本編とは違ってあんまりベル虐はそんなに…多分ありません。
 本作はダンまちの本編とソードオラトリアが合わさった物です、2つの軸にベルがどう関わるのかをお楽しみください。


序章 静寂の誓い
第一話 静寂の願い


「あぁ、メーテリアよ、今行く」

 

 その刹那、灰髪の女性に一つの心残りがあった。

 

(あの子は…今はどうしているだろうか…?泣いているのだろうか。好きな食べ物は?好きな英雄譚は?あの子はどんな子なのだろうか…?)

 

―――いかんな、魔が…差してしまった。

 誰かに頼もう、あの子の健やかなる成長を願って…。

 だが、そんな事を誰に頼めば良い、私にはそんな奴は…。一人、目の前の妖精王族(ハイエルフ)の方を向き直る。

 

「なぁ戦友(リヴェリア)よ、私の最後の願いを聞いてくれないか?」

 

 目の前の魔女、災禍の怪物と謳われた女 アルフィアは弱々しく目の前のハイエルフに言った。思わず神獣の触手(デルピュネ)と戦っていたリヴェリアは手を止めアルフィアの方を向いた。

 

「私の最後の心残り、あの子の所に行ってきてほしい。場所は…私の貸金庫に入っている、お前にしか頼めない冒険者依頼(クエスト)なんだ」

 

 アルフィアのそんな懇願にリヴェリアは目を見張りながら頷いた。それは同情か、憐憫かは定かではなかった。

 

「お前が私に、一体何の依頼だ?」

 

「私の妹の忘れ形見を…甥っ子の事を頼みたい」

 

「それは?!…お前が行けば良いじゃないか!!」

 

「それは出来ない、私はここで…お前たちに討たれ、時代の英雄達の礎にならなければならない」

 

「なぜ…、私なんだ!」

 

 アルフィアは下ではなく天上を、空を見上げながら言った。

 

「お前しかいない、これはハイエルフのお前にしか頼めないことなんだ」

 

 ハイエルフとしての誇りと教養を持ち、尚且つ秘密を護ってくれるリヴェリアしか居ないとアルフィアは心のなかで思っていた。

 

「頼む、あの子には母親が、その代わりとなれる奴が必要なんだ」

 

 リヴェリアは目の前の大罪人、アルフィアのただならぬ覚悟を肌で感じ取る。そんな覚悟を見せられれば断るというのはハイエルフの誇りを汚す、そんな気がした。

 

「分かった…、そのお前の遺言(クエスト)、受けよう」

 

「あぁ、ありがとう。あの子は…歳は七歳ぐらいか、そこの剣姫と同じくらいの歳だ、出来れば…その娘を連れて行ってくれればあの子も喜ぶ。私の事は言わないでくれ…」

 

「お前…、いや分かった。だがなぜお前はそこまであの子に入れ込む。お前が愛していたのはメーテリア()だろ?」

 

 あの処女雪の様な綺麗な白髪が…メーテリアにしか見えなかった。だからだろうな。だけど私はあの時、木陰でうずくまるあの子に手を差し伸べられなかった。使命を…英雄たちを、世界を優先してしまった。そんな私にあの子に会う資格など…無い(・・)

 

「あの子は、私の愛した妹の子だからだ、あの子の事だけはどうしても心から離れなかった」

 

 アルフィアは遠くを見るように言った、それを見ていたリヴェリアは大人しくアルフィアの言葉を聞いていた。

 

「これを…、ノームの貸金庫の鍵だ。いつか…、お前が時期を見計らって渡してくれ。あの子の住んでいる村の事も書いている、あの子への手紙が二通ある、それを届けてくれ」

 

「分かった…、了解した」

 

 リヴェリアはそっと目を閉じた。その時、リヴェリアの隣に居た緋色の少女 アリーゼが言った。

 

「あなたは…、あの子に何を思うの?」

 

 アルフィアは言った、愛していると。その一言にリヴェリアはアリーゼはリューは輝夜はライラは目を見張った。あれ程の風格を誇った最強の女が最後に口にしたのは、どこまでも傲慢な一言ではなく、子の健やかな成長を見守る一人の親としてだった。

 

「あの子いつか至るぞ、神時代の最強の派閥(我々)をも凌ぐ(いにしえ)英雄達(バケモノ達)に」

 

 アルフィアは言った、リヴェリア達に、そして奥にいた冥府の男神と正義の女神に。

 

「さらばだオラリオ、さらばだ…正義の眷属たちよ」

 

 ―――あの子の鳴らす鐘の音は、自然と雑音だとは思えなかった、あの子の鐘はいずれ世界を救うぞ。―――

 

 

        ※※※※※※※※※※

 

 なぜ私はあのアルフィア()の遺言を聞いたのか、なぜかは定かではない。ただあの化物が最後に見せたのがあんな悲しそうな顔だったのなら、私はハイエルフとして、あいつの戦友として、最後のクエストをこなさないわけにはいかなかった。

 

 大抗争(イヴィリス・アグリアス)が一段落し、リヴェリアはアルフィアの最後のクエストをこなしにフィンの元へと向かっていた。

 

「すまないフィン、少しオラリオを離れる」

 

「そうか、分かったよ。理由は…聞かないほうがいいのかな?」

 

「あぁ、聞かないでくれると助かる」 

 

「わかったよ、行ってくるといい。十分に羽根を伸ばして来たまえ」

 

「リヴェリアがいない間はウチがアイズたんの柔肌を蹂躙したるからな!」

 

「安心しろ、アイズも連れて行く。私が居ぬ間に何をしでかすか分からんからな」

 

 そんなリヴェリアの一言にロキの心はバッキバキに砕けていた。そんな主神を他所にフィンはリヴェリアとアイズを見送った。

 

      ※※※※※※※※※※※※※※

 

「アイズ、ここはそこに代入してだな――」

 

 オラリオを離れたリヴェリアとアイズはフィンの手配した馬車に乗りアルフィアの残したメッセージカードを頼りに戦友の忘れ形見に会いに行った。その道中でリヴェリアはこの時間も無駄にはしまいとアイズに勉強を教えていた。

 

「リヴェリア、私たちはどこに向かってるの?」

 

「なぁに、そんなに遠くはない。すぐに行って話をするだけだ、その間に何かあっても困るのでな、お前を連れて来たっと言うわけだ」

 

 アイズはムゥ〜っと言う顔をしながらリヴェリアを見つめた、リヴェリアにしてみれば監視の目が無くなったアイズがどんな無茶をするか心配で連れてきたというのも理由の半分にあった。

 

「そんなことよりも勉強だ!アイズ!せめてこのくらいの事は出来てもらわなければダンジョンなど当分は許可できぬぞ」

 

「そ…そんな…」

 

 アイズはリヴェリアの厳しい叱咤に顔をすくめていた。アイズにしてみれば一刻も早くダンジョンに潜り強くならなければならないのを邪魔されて、あまつさえこんな辺境の田舎へ赴いているのだ、アイズが駄々を捏ねるのも無理はない。

 

「そろそろか…。ご老人、ここで構わない。降ろしてくれ」

 

 そうリヴェリアが言うとご老人は手綱を振るって馬車を止めた。ヒョイッとアイズは馬車から降り、リヴェリアもゆっくりと馬車から降りた。

 

「ここだと書いてあったんだが…

 

「どうしたんだい?外からの冒険者さんかい?」

 

 リヴェリアは辺りを探るように見ていると一人の農民が話しかけてきた。

 

「あぁ、白髪に深紅(ルベライト)の瞳の少年を探しているのだが…知らないか?」

 

「白髪にルベライト…ベル坊のことか!それなら村の東に一軒家がある。恐らくそこに、居なければ北の一本杉に居るだろうよ!」

 

 農民はリヴェリアに気前よく少年の居場所を教えてくれた。リヴェリアとアイズはそれに従い歩みを進めた。

 

「ここだと聞いたが、北の方に居るのか」

 

 立派な木造建築の平屋、だがそこには人の気配は一切なかった。Lv.6のリヴェリアが居ないというのだから間違えない。リヴェリア達は北の方へ新たに歩みを進めようとした…

 

「ベル〜、どこじゃあ〜!」

 

 一人の声が、我々の目的の少年の名前を叫んでいた。リヴェリア達はその声の主の方へと走った。

 

「ベルの奴、どこに行きおった」

 

「ご老人、ベルと言う少年に心当たり…が…ってお前は?!

 

「リヴェリア、知り合いの人?」

 

 そのご老人の風貌は白髪の好々爺といった所、だがその顔は何度も見た、あの最強の派閥、アルフィアの所属していたヘラファミリアと双璧をなすゼウスファミリアの主神 ゼウスで間違えなかった。

 

「な…なぜお前がここにいる?!神ゼウス」

 

 リヴェリアの発言にアイズはキョトンとした顔をしていた。

 

「んな?!お前は【九魔姫(ナインヘル)】、なぜ貴様がここにおるんじゃ?!」

 

「それはこっちのセリフだ!お前こそ何をしている」

 

 

 そんなこんなで神 ゼウスと共にベルと言う少年を探しに行った。北の一本杉を、村の中心の噴水にも、どこにもその少年の姿はなかった。

 

「まさかベルの奴、儂に黙って森に行ったんじゃ…」

 

「森とは?それはどの方角だ?」

 

 リヴェリアの中でも一つの最悪な結末が頭をよぎる、それはモンスターに殺され、死体を荒らされた、何度も見てきたあの悲惨な姿が。

 

「分からん、じゃがもうあそこしかない」

 

「分かった。アイズ、お前はここにいろ」

 

 最悪の未来。そんな物、見せられない。今のアイズには到底見せることなどできなかった。…がアイズは駆け出していった。

 

「こっち、そこから声がする」

 

 アイズは一目散に走り出した。何かに導かれるように、糸を手繰り寄せるように走って行った。

 

「待てアイズ?!……ってもう行ってしまったか」

 

「仕方ない、儂らも追うぞ!あと九魔姫(ナインヘル)よ、一様儂はこの村では農家のゼノンで通っとる、そこんとこはよろしくな!」

 

「今はそんな事を気にしている場合ではない!」

 

 本当にこの好々爺は…、そんな事を考えながらもリヴェリアとゼノンもといゼウスは森の中へと急いだ。

 

       ※※※※※※※※※※※※

 

 怖い怖い怖い…、死ぬ。そう思ったのは生まれて初めてだった。何も見えない、目の前のすべてが暗く闇のようだった。自分と目の前の怪物…猛牛のモンスターが自分を今にも食い殺そうとしていた。

 

「ごめんなさい…お祖父ちゃん」

 

 目を閉じた、ゆっくりと。自分の無力さを呪うように、自分の不運さを呪う様に…。

 

―ごめんなさい、お母さん―

 

 心の中で顔も知らない人に謝罪した。自分の為に命を投げうってでも産んでくれた母親に、何も返せてない、何も成し得てない、そんな後悔を重ねながらゆっくりと瞳を閉じた。

 

「―――――――――――あぁ、これが  『死』か」

 

 

 

 

 

 

      ゆっくりと……………

 

 

 

 

 

 

 

      ゆっくりと…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ゆっくりと………

 

 

 

 

 

 

      ゆっくり……と?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつになってもその最後は来なかった。僕は恐る恐るその瞳を開いた。

 そこには…、金髪金眼の少女が居た。僕より少し大きい、それでもあの猛牛のモンスターよりかは遥かに小さい、なのにそんな小柄な身体で自分よりも大きい躯体を一刀両断した。

 

 凄い、そう思った、まさしく英雄の様に。自分を助けてくれた少女に対して憧れにも似た感情を抱く。

 

「大丈夫?」

 

 一言、そう発せられた。

 猛牛の血を浴びながらベルは慌てて立ち上がり少女の方を向きながら御礼を言った。

 

「あ…ありがとう御座います!き…君はだれ?」

 

「私の名前は――――――

 

        ※※※※※※※※※※※

 

「よかったよ、アイズのお手柄だったな」

 

 リヴェリアはアイズの頭を撫でながら言った。アイズがあと一歩遅ければ間に合わなかっただろう、だからこそリヴェリアは珍しくアイズの独断を褒めた。

 

「あの子が無事で…良かった」

 

 魔法まで行使し、速度を上げてまで助けた子は兎の様な子だった。自分とは違いどこまでも白い、優しい雰囲気を纏った少年を見ながらアイズは言った。

 

「兎さん見たい!」

 

「んえ?!」

 

 アイズは顔を近づけて言った、その距離は二人の頭一つ分にも満たなかった。ベルは素っ頓狂な声を上げた、猛牛の血で赤く染まった顔を更に赤く染めながら身動ぎした。

 

「こらアイズ!その子が驚いているだろ!」

 

「ご…ごめんなさい」

 

 リヴェリアの叱責にアイズは縮こまる様に言った。その声に何故かベルをも恐怖させた。

 

「ゼノン殿、少し話がある。時間はあるな」

 

「あぁ、話の内容は大体分かっている」

 

 リヴェリアとお祖父ちゃんはお互いに視線を合わせる。その視線は何かを確かめるように、その後お祖父ちゃんは少し顔を曇らせながらもすぐに前を向き、ベルに言った。

 

「ベルよ、風呂でその血を落としてこい。儂はこのハイエルフと話がある」

 

「う…うん、分かった」

 

 ベルは木造の扉を開けて風呂場に赴こうとした。

 

「私も…私も入っていい?」

 

 

「え?」

 

 目の前の白兎が真っ赤な赤兎へと変化した。その様子を見たリヴェリアは『そうだな、入ってこい』と言い、ゼウスは『羨ましいのぉ〜』などとのたまいリヴェリアの魔法でウィン・フィンブルベトル(氷漬けの刑)に処されることとなる。

 

       ※※※※※※※※※※※※

 

「ベル、どうしたの?」

 

「い…いや?!何もないよ」

 

 何もないわけがない、ベルは僅かな理性を持ってなんとか目を逸らすがアイズはこれと言って気にした様子もない。お互いに浴場の中で生まれた姿を晒すがベルの身体は細く女の子の様な体付き。アイズは細身ではあるがベルとは違い筋肉がしっかりと付いていた。

 

「う…ううん、僕はあっち向いてるから先に身体洗ってて良いよ」

 

「だめ!ベルは血塗れなんだから…先に洗わないと」

 

 アイズのその一言にベルは驚愕しながら目を瞑った。男としてここで彼女の方を向いてはならないと理性が告げていた。

 

「じゃあ、私が洗ってあげる」

 

「ふぇ?」

 

 アイズの提案にベルは素っ頓狂な声を上げた、だがすぐさまベルはその提案を拒否するがそこはアイズ、持ち前のステイタスを持って目の前の白兎をハントしてしまった。

 浴場から聞こえる悲鳴にリビングに居たリヴェリアとゼウスはアチャーと言った顔をしていた。

 

      ※※※※※※※※※※※※

 

――――――っと言ったところだな」

 

 リヴェリアはオラリオで起こった大抗争の内容、そしてそこで暴食のザルドと静寂のアルフィアが討たれたこと、そしてアルフィアにベルの事を託されたことを聞く。

 

「そうか、あの二人はそんな最期を…」

 

「恨んでいるか?最強の派閥を(お前達を)オラリオから追い出した事を、二人を討った事を」

 

 リヴェリアは聞いた、本来ならその問いはお門違いだが、それでも聞かなければならなかった。二人の死を…私たちを恨んでいるのかもしれない…それを考えれば聞かずには居られなかった。

 

「侮るなよリヴェリア」

 

 だが返ってきたのは叱咤の声。その声は聞いたものを震えさせるほどの…先程の好々爺の雰囲気は全く消え去り、そこには一人の大神が居た。神威を解放せずともこの風貌、これが最強の派閥 ゼウスファミリアの主神 ゼウス。その気配にリヴェリアは固唾を飲んだ。

 

「お前達を恨む気持ちなど毛頭ない、逆に安心した。あの二人の死は世界の平和に繋がるのであれば二人も本望じゃろ」

 

「恨んでないのか?我々はあなた方をオラリオから追放したのだそ?」

 

「今までのツケが返ってきただけだ。傍若無人な事をたくさんやってきたのだ、仕方あるまい」

 

「奴はどうなった?あの豪傑は討たれたのか?」

 

「あぁ、少し前に儂のところに来て別れを告げに来た。あやつは『ナイト・オブ・ナイト』に討たれた、神の恩恵(ファルナ)の反応が消えた、これは間違えないだろうな」

 

「そうか、分かった」

 

 最強の派閥、ゼウスファミリアの団長 英傑(マキシム)もまた時代の英雄の礎となる為、討たれた。その事実にリヴェリアは驚愕の表情を隠しきれていなかった。

 

「あやつ…最後に何か言っておったな…、なんじゃったか」

 

―――主よ、私もあいつらの…アルフィアとザルドの言っていた事がわかったよ、あの子の鳴らす鐘はいつか世界を救う、その為に今から俺らは討たれる。時代の英雄達の礎となる為に―――

 

 ゼウスはマキシムとの最後の会話を思い出す。ベルを…白髪の少年を見ながらあやつは言った、あの子が時代の英雄となると。

 

「あの女も、アルフィアも言っていた。私には分からなかった、あの女の言葉が…」

 

「んなもん、儂にも分からん。じゃがはっきり言えるのは、あの子はあやつらが命を賭してまで生み出した英雄だと言うことだ」

 

 あの少年に…リヴェリアはそんな事を考えていた。あまりにも大きすぎる期待、そしてリヴェリアは気づいていた、あの子は冒険者には向かないと。何かあれば頬を赤らめ、涙を浮かべ、その心持ちは冒険者には不向きだった。憎しみを糧に前を歩けるような子でないことはリヴェリアも一目見て理解した。

 

「じゃからかもな、英雄に復讐心は合わん、だからこそなのかもな」

 

「そうか…、そういうものなのか」

 

 ゼウスとリヴェリアは互いに思いを伝えた。あの子…ベルは本当に英雄になりうるのか。

 

「あとだ、アルフィアの遺した遺産の貸金庫の鍵と手紙だ、これはあなたに渡したほうが良いか?」

 

「これはあやつがベルとメーテリアに遺した物、そしてリヴェリアよ、お前に託された物だ、それを儂が預かるのは道理に合わん」

 

「そうか、では私が、時期を見計らってあの子に渡すとしよう」

 

「額はどんなもんじゃった?五億ヴァリスぐらいか?」

 

「四十億とグリモワが数十冊、そして深層のレアドロップアイテムが何十個も、あとは第一級魔法石が数個だ」

 

 それを聞いたゼウスは思わずひっくり返った、言っていたリヴェリア自身もこの額には驚愕し、その愛情に思わず頭が痛くなった。

 

「あやつ…、そんなに貯め込んでおったのか、そこまで愛しておきながら、それでも会いにこんとはな」

 

「資格が…なにと言っていた」

 

「親が子を愛するのに理由などいるものか、馬鹿者」

 

 ゼウスとリヴェリアはアルフィアの事を思い返し、その愛の深さを思い知る、それでも会いに来なかったアルフィアの大罪人としての…絶対悪としの覚悟を。

 

「儂はあやつらがベルを見に来たのを知っていた、と言っても遠目からそれを見ているザルド(大男)と黒髪の男神、そしてこちらに走り出して、そして何かを思い出すように立ち止まったアルフィアの姿を…、あの時儂がこちらから声をかけていれば…こうはならんかったろうな」

 

 あの日の後悔を、ゼウスは噛み締めるように言った。

 その時、突然浴場の扉が開きアイズが出てきた。だがそこにベルの姿はなく、アイズが困惑した表情を見せていた。

 

「リヴェリア…、あの子が溺れちゃった」

 

 ゼウスとリヴェリアは慌ててベルを湯船から引っ張り出してその身体を冷やした。アイズは困惑した顔でベルの周りをウロウロしていた。

 

      ※※※※※※※※※※※※※

 

「僕は…、何を」

 

 まだ身体が熱い。そんな朦朧とした意識の中、ベルの意識は徐々に覚醒していく。ベルが目を開くとそのには天上ともっと手前には翡翠色の瞳が…リヴェリアさんが居た。その瞬間ベルは理解した、これは膝枕(・・)であると。

 

「う…うわぁぁぁぁぁあ」

 

 脱兎の如く、今日一番の反応速度でベルは飛び起きた、その頬を赤く染め上げながらリヴェリアの方を見て言った。

 

「僕は…何で……///」

 

 ベルは咄嗟にリヴェリアに聞いた。何で僕は膝枕をされているのかを、リヴェリアは手招きをして再度ベルの頭を膝の上に置いた。

 

「安心しろ、悪いようにはしない」

 

「え…でも…」

 

 リヴェリアは優しくベルの髪を撫でた。その時ベルは思った、これがお母さんの…母の温かさなのかなと。ベルは目を閉じリヴェリアに頭を委ねた、リヴェリアも満更ではないといった顔つきでベルの頭を撫でた。

 

(この子が…本当に、でも確かに優しい。この子は人を温かくする何かを持っている)

 

 リヴェリアは心の中でさっきの…ゼウスとの会話を思い出す、この子は数多の英雄達が望んだ英雄であると、あまりにも重すぎる重責をこの子は知らぬ間に背負わされていることに。

 

「兎さん見たい」

 

 アイスがリヴェリアの上で目を閉じるベルの髪を撫でた。

 

 それは白兎のようだった。どこまでも白くて柔らかくて、それからとても温かい。

 

「ア…アイズちゃん?!」

 

 ベルはまたしても脱兎のように逃げる。その様子にアイズはムスゥっとした顔でベルを睨見つける。

 

「はは…、二人とも仲良くするんだぞ」

 

「ベル、お前羨まし過ぎないか」

 

「お祖父ちゃん?!何言ってんの?」

 

 その家には沢山の笑顔が生まれていた。優しく、そして温かい空気が流れ続けていた。

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