箱入りキメラ   作:生きる

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拙い絵ですが設定画的なのつくってみました

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②気づいた時には

生まれてから今日までで200年、なんだって。

 

無垢な少女はいーち、に、と指折り数える。

 

否、少女と言ったが正確には彼女に性別はない。

あったとしても、どこで判断すれば良いのだろうか。

現在の姿形が少女に見えるから、少女と呼ばれるに過ぎない。

 

200年目のお祝いで、わたしはヒポクテ草などを摘みに少し離れた所へ向かうことが許された。

 

父様には心配されてしまっているがもう立派に育った1人の……何なのだろうか。

 

 

わたしが何者なのかは父様にもよくわかっていないそうだ。

わたしは今は"ニンゲン"という生き物の姿に似せているらしい。

 

5本の指に枝分かれした腕を眺める。

今のわたしに似た生き物はどのような生物なのだろうか。

会えたら、何を話せばいいのかな、何をすればいいのかな。

 

もし人間に出会っても、本来の姿は見せないようにと言い聞かされた。

わたしは珍しいらしいから。

自分の身を自分で守れるようになるまでは人として生きるのが安全だと言っていた。

 

そんなわけで父のそばから基本的に離れることなく生きてきたわけだが、今日は特別な日だからと1人で探索している。

 

 

これは白、これは緑、と初めて見る色を答え合わせする。

父ヴェルドラから聞いた情報と重ね合わせて観察する。

 

物理学的なパラドクスとしてしばしば議論が展開されるような話題に出てくる問題と似ている。

ルヴェルにとって記憶は質量を持っていた。

 

特定の物質についての全ての情報を持った状態で実物を見て、果たして新たな発見を得ることはできるのだろうか。

少なくともルヴェルは1回の探索でたくさんの発見をした。

 

初めて見るものといのはいつでも輝いて見える。

 

これを見せたら父様が喜ぶかもしれない。

これはなんという物なのだろう、後で父に聞いてみなくては。

 

 

 

夢中になって探検をしていると、突然父の気配が消失した。

何が起きたのか。

集めていた物が腕から滑り落ちる。

 

キリキリと心臓、己の核が傷むように痛かった。

 

すぐに父のいた場所へ走る。

あまり走るという経験もないためつっかえながら、転ぶことも厭わず、走った。

 

どこから来たっけ。どこで曲がったっけ。

じわりと目元に水滴が滲むのを感じる。

 

 

 

 

もぬけの殻、という言葉がよく似合う風景だった。

さっきまで父のいた場所には何もない。

 

「と、父様、父様!!どこにいる??」

 

声を張り上げるのは初めてだった。

今まで必要なかったからである。

 

ぽろぽろと涙がこぼれても慰める人がいない。

父はいつも……

 

 

誰かがわたしの肩を叩いてるようだった。

 

顔をそちらに向けると、不思議な物体。

父から教わった魔物についての知識から一致する者を探す。

ああ、これはきっと

 

「スラ…イム…?」

 

「ああ、ルヴェルさん、であってるか?」

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………………

一方その頃

 

 

 

 

俺がヴェルドラを捕食しようとした

 

(その前にリムルよ、少しお願いがあるのだ。)

 

(お願い?)

 

首を傾げるような仕草をしてみる。

 

(我には我が娘…娘のような存在がおる。

今は洞窟の中で探索しているのだが、もうしばらくしたら戻ってくるだろう。

娘はまだ未熟で、幼く危なっかしい。

そこでお願いなのだが、我が娘を我の代わりに見守ってやってほしい)

 

(それはもちろんいいんだが…

だったらその娘さんが戻ってくるまで待たなくていいのか?)

 

(もちろん最後に一目見たいのは山々だが、別れで娘に寂しい思いをさせてやりたくないのだ。

それに…)

 

(それに?)

 

(もし一目でもルヴェルを見てしまったら我、泣いてしまいそうで…)

 

うわ…と思いつつそんなに大事な存在なのだな、とも思う。

 

(それにな我が100年もすれば消失してしまうということをルヴェルはまだ知らぬ。

要らぬ心配をさせたくないからな。)

 

うわあ!急に真面目になるな!

 

(わかった。

このリムルが友達として、その願い引き受けた!)

 

身体を変形させにっこり笑ってサムズアップしてみせる。

 

 

 

それからヴェルドラから娘さんについて説明された。

ヴェルドラが親バカなせいで絶対脚色されているだろうなというところもあったが、とにかく重要な任務なのだなと確信した。

 

それにしても複数の生き物が融合したような見た目、か。

所謂キメラに近いのか?

いや、キメラはどちらかと言うとライオンとか蛇だっけ?

 

少なくとも突然変異的に生まれた存在で、もしその存在が世間に公になってしまえば追われる身になってしまうのは必至だろうな。

 

(てか、ヴェルドラが消えて俺だけいたらそれってもう俺がヴェルドラを消した犯人確定じゃね?

仇とか言って殺されたりしないか?)

 

(それについては問題ないぞ!

ルヴェルは人の悪意を知らぬから、疑うということもしないだろうよ。)

 

(それはそれで大丈夫か??)

 

 

 

ヴェルドラを捕食して少しひと息しながら考える。

にしても、エルフの特徴も持つのか…ぐへへ

おっといかんいかん友達から託された子供に欲情するほど俺も落ちぶれてはいない。

断じて。決して。

 

一連の流れからしばらくしてそれらしき人が現れた。

ああ、たしかにこの世に生きる者とは信じられないほど美しいな。

それと同時に、放っておいたら消えてしまいそうな脆さと人智を超えたような神々しさを兼ね備えている。

 

あと、服とは到底呼べないような服を着ている。

ほぼ裸じゃねえか!

年頃の女の子だろうに…

ヴェルドラはこれはOKの範囲なのか…?

いや、話を聞いた限り仕方がないのだろうけど…

 

そんなこんなで観察していると女の子は泣き出してしまった。

当たり前だ。

今まで当然のようにそばにいた存在が消えてしまう悲しみというのは心のある生き物共通の感情だ。

 

先程までの神々しさとは打って変わって少女としての幼さを感じる。

 

 

意を決して少女の、ルヴェルの肩を叩いてみる。

 

怯えていると言うより困惑、そして不思議そうに呟く

 

「スラ…イム…?」

 

「ああ、ルヴェルさん、であってるか?」

 

 

これが少女とスライムの出会いだった。




ルヴェル
種族 混成獣(キメラ)
称号 暴風竜の加護
エクストラスキル 魔力感知、魔力操作

ユニークスキル 混成者(マザリアウモノ)

混成者…ヴェルドラによる名付けの時に獲得したスキル
このスキルによって赤子の時のルヴェルは窮地を脱することができた

耐性 痛覚無効(転んだ時に獲得)、熱変動耐性

固有スキル 万能変化
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