箱入りキメラ   作:生きる

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⑤独白/仲間となるには

一般に言われる物心というものが芽生えた時から、わたしの世界は平行線だった。

その場から動くことのできない父と、わたしを囲む硬い岩肌の壁と床と、わたし。

それ以外は見たことがない。

わたしの世界にはそれだけだった。

 

父から聞く話はどれも面白くて退屈したことはない。

勇者の話、父の姉たちの話、いろんな魔物についてや世界のこと。

それと同時に寂しかった。

わたしにとっての全世界はきっとちっぽけな場所。

わたしのすべては、誰の何にも満たない。

 

きっとそれも長く続かない。

それは勘。

でも父はいつか消えてしまうのだと本能で感じでいた。

その時までにわたしは何者になれるだろうか。

何を残し何を世界に刻めるだろうか。

 

200年の時を経て、その日は突然に訪れた。

わたしの世界が、広がる。

 

うごきだした。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

〈リムル視点〉

 

ゴブリンたちと合流し、俺とルヴェルはゴブリンの村へ招待された。

見るからに小汚い…が、ルヴェルは相も変わらずものすごく感動していた。

ふらふらと別のところに向かおうとするルヴェルを方向転換させながら案内された一番マシに見える建物?に向かう。

 

「お待たせ致しました。お客人。」

 

「ああ、いやいや。それ程待っていません。お気遣いなく!」

「それほどまってません!おかまいなく!」

 

俺の言葉をオウム返ししているが、実際本人は家の中をじろじろ見ていたから待たされたつもりもないだろう。

 

「大したもてなしも出来ませんで、申し訳ない。私は、この村の村長をさせて頂いております。」

 

そういって出されたお茶っぽいものを啜る(覆いかぶさる)と、ルヴェルが俺の方をじっと見た後お茶に向かって思い切り頭を打ち付けた。

なにしてんだアイツ!?

 

びしょびしょになった顔を上げて何が間違ってたんだ、と言いたげなルヴェルがこちらを見てくる。

いや、全てだが。

零れてしまったお茶を代わりに回収してやる。

毒ではないがクソまずい可能性もあるし、これ以上失態を重ねさせるのは避けたい。

 

「失礼ですが、そちらの方は?」

 

「こいつはルヴェルです。

訳あって預かってる友人の子で、だいぶ世間知らずなんだがよろしくしてやってほしいです!」

 

「うん。

わたし、ルヴェル。人間!」

 

淡泊な返事でも、ちゃんと自己紹介できて偉いな!

人間のフリをすることも忘れてない!

100点!150点満点中だけど。

ちなみにルヴェルは混成者のスキルで認識阻害を使って人間に完全に化けているそうだ。

 

「で、自分をわざわざ村まで招待したという事は、何か用事があったのですか?」

 

「実は、最近、魔物の動きが活発になっているのはご存知でしょう?」

 

道すがら聞いたが…

おいこらルヴェル!どうでもよさそうな顔しない!

 

「我らが神が、この地の平穏を守護して下さっていたのですが、ひと月程前にお姿をお隠しになられたのです…

その為、近隣の魔物が、この地にちょっかいをかけ始めまして…

我々も黙ってはいられないので、応戦したのですが、戦力的に厳しく…」

 

神って、ヴェルドラさんの事か? 時期的には合う…な。

ルヴェルに聞こうと思ったが、特に知らないだろうな。

 

「話はわかりました。しかし、自分スライムと人間ですので、期待されているような働きは出来ないと思うのですが?」

 

「ははは、ご謙遜を! ただのスライムに、そこまでの妖気は出せませんよ!

何故そのようなお姿をされているのか、当方には想像も出来ませんが、いずれ、名のある魔物なのでしょう?」

 

妖気…だと?

何だそれ? そんなの出した覚えはないけど…

『魔力感知』の視点を切り替えて、自分を観察してみた。

何やら禍々しいオーラの様なモノが漂うように、俺の身体を覆っていた。

 

とっさにルヴェルの方を見る。

ほどんどオーラのないルヴェルが薄ら笑いでこちらを見ている。

わかっているなら教えろよ!!

 

これは恥ずかしい。

こうなったら、自棄だ。

 

「ふふふ。流石は村長、わかるか?」

 

「勿論でございますとも! そのお姿でさえ、漂う風格までは隠せておりませぬ!」

 

「そうか、分かってしまったか。お前達はなかなか見所があるようだな!」

 

「おお・・・。我々を試されていたのですね! 助かります。その妖気に怯える者も多かったもので・・・。」

 

妖気を隠す事に成功し、俺の見た目は普通のスライムになっている。

しかし、普通のスライムと人間で歩いていたとしたら、かえって魔物の襲撃を受けたりルヴェルがなにかしらやらかしたりしていたかもしれない。

結果オーライという事でいいのではないか。

 

「そうだな。俺の妖気を見ても怯えずに話しかけて来るとは、見所があるぞ!」

 

何の見所だよ…と、自分に突っ込みたいが、ぐっと我慢する。

ルヴェルもあきれている気がする。

 

 

〈ルヴェル視点〉

ほとんどわたし抜きで会話が進んでいるが、心地が良い。

人の会話を聞くのも初めてだから内容がどうであれ、とても楽しいのである。

二人が言葉を交わしながら表情をコロコロ変える様は面白い。

 

なんかいろいろあったみたいだがリムルがゴブリンたちを守るということに決まったらしい。

わたしほとんどなにも言ってないし、いいよとも言ってないのに。

いいけどね。

わたしこの場に必要かな。

リムルはわたしのそばから離れられないから仕方ないんだろうけどさ。

 

もしわたしが人間として生きてもこの魔物たちは仲間としてくれるだろうか。

もし”バケモノ”だったら受け入れてくれるだろうか。

 

目をぱちぱちさせて左手を見る。

蛇を見たとき感じた違和感。

さっき姿を変えたときに気づいた。たしかに左手に蛇みたいな鱗がついてた。

他に何が変わったのかはわからないけど、とにかく浸食されていく恐怖がまとわりつく。

 

この姿ならきっと問題は起きないから。

リムルといればあの姿にならなくていいから。

 

大丈夫だよ。

わたしはわたしになるから。




構成とかない
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