GOD SPEED LYCORIS   作:フォイオ

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こっちも同時進行で書き直しです


囚われた仮面ライダー

 

とあるビルの一室、壁を隔てた先で1人の少女が膝をつき後ろに手を組んで後頭部に銃を突きつけられていた。

 

 

「構わず撃って!」

 

「テメェら、よくもこんなに殺しやがって!」

 

 

銃を突きつけていた男は何かに激昂して怒鳴っていたが全てがスローモーションに見える世界で俺は欠伸をしながら見つめていた。ビルの床には大量の血痕と死体が散乱している。

 

このビルでは銃の取引が行われており、それを阻止しに来たリコリスによって何人かの男が殺害されたのである。

 

やがて、紺の制服を着たリコリスの少女が置いてあった機銃に向かって走り出す。

 

その光景もやはりスローモーションで退屈な時間だったが俺は超加速した世界の中でそれを凝視した。

 

何故なら、人質に取られた少女ごと機銃を使用し掃射を始めたのである。弾はゆっくりと人質諸共男たちを貫くように向かっていき、俺はそれに嘘だろと思いながらカブトクナイガンを取り出し全ての銃弾を切り裂く。

 

そして、カブトクナイガンをガンモードに切り替えて機銃に向けて発射。機銃を使用している少女に誤射しないよう正確に撃ち込む。

 

そして、縛られていた人質の少女を抱っこしてリコリスたちのそばにそっと置く。銃取引の犯人たちは全てデコピンで一人一人気絶させていく。

 

この間、0.1秒。

 

 『CLOCK OVER!』

 

 

おお、今日はベルトの調子がいい。いつもならクロックアップした世界で誰に知られることもなく孤独な世界に取り残されていた俺だがクロックアップの解除は実に何十年ぶりだ。俺はスローモーションが解除された世界でこっそりと少女たちを見守る。

 

「おま、エリカ?!」

 

「どうしてここに?!」

 

「え?私さっきまで人質になってたのに?!どうして?!」

 

「え?きゃああああああ?!」

 

「「「「かはっ?!」」」」

 

 

赤い制服を着た少女と紺の制服を着た少女の間に突如現れた人質の少女が驚きの声を上げ、機銃を掃射していた少女は突然機銃が破壊されたことにより衝撃で壁にぶつかり意識を失う。掃射された弾丸は全て切り裂かれて地面に落ち、武装した男たちはその場で地面に倒れ込む。

 

 

「いきなり、何が起きて……」

 

 『カブトだ』

 

「し、司令?!カブトが現れたんですか?!」

 

 『でなければこの事象の説明がつかない。すぐに周囲を探しなさい』

 

 

俺は通信で状況の確認を取り合っているリコリスたちを横目に再びクロックアップの世界に入り、超高速の世界に戻った。

 

これで原作通りに行くことはないだろう。そう思い、俺はその場から超スピードで離れる。そして、東京スカイツリーの天辺で太陽を見上げる。

 

これは俺 天道 ソウジがリコリス・リコイルの世界に転生し仮面ライダーカブトの力をもらった影響でクロックアップの世界に取り込まれた話だ。

 

事の経緯は約10年前に遡る。旧電波塔事件が起きたあのウンメイノー♪の日。

 

変身後、クロックアップしテロリストたちを制圧していく中で俺の姿を捉えた錦木 千束の弾丸が俺のベルトのクロックアップシステムに当たり、クロックアップシステムが故障した。

 

そのせいで俺はクロックアップの世界に囚われることになり気が狂いそうなほどの時間を過ごしていた。何もかもがスローモーションになって見える 聞こえる世界で俺はただ一人孤独な人生を強いられていた。

 

まさか、超人的な動体視力を持つ錦木 千束がクロックアップを視認できるとは思っていなかった。あちらからすれば突然赤い影が高速で動きまくってるように見えただろう。錦木 千束から見れば恐怖だっただろう。撃たれたのもしょうがないと思う。

 

今の俺の現状はディケイドの世界のリ・イマジネーションのカブトのような状態。普段はクロックアップの世界に囚われ、時に先ほどのようにリコリスや困っている人を助け日々なんとか孤独に耐えながら暮らしている。

 

幸いクロックアップの世界ではお腹も減らないし排泄も必要ない。歳をとることもないし俺だけ時間が止まっている。

 

また、偶にクロックアップが解除されて数秒だけ通常の時間に戻れることもある。

 

しかし、頑なにカブトゼクターはベルトから離れようとせず変身を解除できた試しはない。

 

この世界で唯一独りであることには変わりないが……まぁ、結果的に一番好きなライダーになれたのはいいことだろう。そう思わなければやっていけない。

 

 

「シャアアア!!」

 

「グルルルルゥウウウ!」

 

「キシャアアア!」

 

 

でも、この世界で唯一俺は一人ではないと感じられる時がある。それは目の前にいる奴らがいるおかげだ。

 

ワーム。人類の天敵。

 

人間を殺害し人間に擬態することで社会に溶け込む怪人たち。この世界には渋谷隕石のようにワームが乗った隕石が落ちたわけでもないのにワームが存在している。

 

そして、奴らはクロックアップした世界で人知れず人類を脅かしてるのだ。

 

 

「来い」

 

「キシャアアア!」

 

 

1匹目のワームの大ぶりの薙ぎをコンパクトな動き、最低限の動作で見切りカブトクナイガンで切り裂く。

 

 

「グルルル?!」

 

 

2匹目はすぐさま戦力差を理解して逃げようとするも、俺が頭を掴み上げ、連続で膝を打ち込みノックダウンさせハイキックで爆殺する。

 

 

「シャアアアアア!!!」

 

 『1.2.3』

 

「ライダー……キック」

 

 『RIDER KICK!』

 

 

俺がわざと隙を見せ、背後から強襲をかけてきたワームにライダーキックを左足を軸に回転させタキオン粒子を纏った蹴りを炸裂させる。

 

俺は全てのワームを倒しきり、人差し指を天高く掲げる。やはり、仮面ライダーカブトといえばこのポーズだろう。子供の頃流行って俺はしきりにこのポーズを取っていた。

 

ワームと戦っている時は自分がこの世界に1人ではないことが感じられていい。だが、それも終われば空虚なものだ。

 

しばらくは原作が始まったこの世界を楽しむことにしよう。時間だけは無駄にある。俺は早速侵入し慣れたDAの楠司令の司令室に向かいことの顛末を見ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「長いな」

 

 

俺はあれから何十年の時を過ごしようやく井ノ上 たきなの顛末を知ることができた。

 

結果的に銃取引の現場を抑えることに成功したもののたきなのスタンドプレーにより場を混乱させたあげく本人は気絶したことにより、リコリコに左遷が決まったらしい。

 

俺は喫茶リコリコに向かい、扉をゆっくりと開けて中に入る。そこには無表情で店長ミカと話すたきながいた。スローモーションで何を言ってるか判別するのに時間はかかったが、どうやら錦木 千束を探しているらしい。

 

本人としてもすぐに結果を上げて本部に戻りたいことだろう。しかし、原作を知っている俺からすればそれは無理だろうと思う。

 

のんびり立ち尽くしているとやがて錦木 千束が現れた。彼女はまくし立てるようにたきなに質問を繰り返し笑顔を見せる。

 

俺はその笑顔を見ながら複雑な気持ちになる。俺がクロックアップの世界に囚われることになった元凶。永遠の孤独。終わらない地獄を招いた女。

 

自然と手がカブトクナイガンを触ってしまう。いけない。怒りに囚われては俺もテロリストやワームと同じだ。俺は喫茶リコリコから出ることにした。

 

 

「あれ?今何かいたような?」

 

「どうした?千束?」

 

「どうしたんですか?」

 

「うーん、気のせいか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 そこからさらに長い月日が流れようやく原作でいう第一話が終わった。ここまで来るのに100年は経ったと思う。それほどまでにクロックアップシステムは超高速の世界に行けるのだ。

 

暇すぎてワームも100匹以上は倒したしやることがなくてずっと太陽を見上げて、海外にカブトエクステンダーで旅行しに行ったりしたよ。

 

さぁ、次からはようやく第二話が始まるだろう。ここから物語は加速する。俺の時間はすでに加速が極まっているが……退屈はしないだろう。

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