GOD SPEED LYCORIS   作:フォイオ

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ハッカーと赤い残像

 

 やっと原作でいう2話が始まった。2話の概要は確かトップハッカーウォールナットがDAやアラン機関から命を狙われ国外逃亡のためにリコリコに依頼をしたはず……

 

クロックアップの世界で過ごしていると体感で何千倍もの時間を経験しているため、俺の記憶はけっこうあやふやだ。間違ってなければいいんだが。

 

そう考えているうちにリスの着ぐるみを着た人物が車を走らせ後部座席に錦木 千束や井ノ上 たきなを乗せている。この後、車のシステムがロボ太にハッキングされて制御不能になりあやうく海に落ちるところになったはず。

 

とりあえず、俺はカブトエクステンダーに乗り込み彼女たちの先回りをした。そして、彼女たちが乗っている暴走した車が海に突っ込む間、石を積み上げたり、海に潜りサバを手掴みで取ったりと暇を潰していた。

 

そうしているうちに一行が乗った車が突っ込んできた。俺はできるだけ内部に衝撃が行かないように車のフロントを正面から片手で受け止める。そして、停止した車を見て俺は次なる場所にカブトエクステンダーを走らせる。

 

 

「うわわわ!落ちるー!って、車がいきなり止まった?!」

 

「どういことですか?!」

 

「僕に聞かれてもわからない!」

 

「とりあえず、早く車から降りるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 確か錦木 千束が武装した男たちから逃げるために逃亡先に選んだ場所は廃スーパーだったはず。しかし、原作では潰れたスーパーとしか分からないため、俺はカブトエクステンダーでいくつかピックアップした場所で彼女たちを待っていた。どちらに来るか、当たりはどれか予想するのも暇つぶしになる。俺は気長に待つことにした。

 

クロックアップの世界がこんなにも孤独でつまらないものだとは当初思いもしなかった。全てが静止した世界でただ独り取り残された孤独は誰にも分からないだろう。

 

偶にクロックアップが解除されても数秒で元の世界に戻ることになるし、カブトゼクターはこの数千年外れた記憶がない。俺は自分の姿すらもう思い出せない。

 

何もかもが退屈な世界で唯一の息抜きはワームとの戦いとリコリコの原作だけだ。ちなみにリコリスに俺の存在がバレているのには理由がある。

 

それは以前、旧電波塔の事件でまだ力を完全にモノに出来てなかった時、試し運転でマスクドフォームでリコリスの目の前で戦っていたのが理由だ。

 

その他にもリコリスの暗殺任務を妨害しターゲットを気絶させた時にクロックアップが解けた事で姿を見られたこともある。

 

だから、割とカブトに対してDAやリコリスは懐疑的になっている。以前、カブト捕獲計画なんて資料もDAにあったし案外俺も人気者のようだ。

 

おっと、錦木 千束一行がようやく来た。廃スーパーに隠れて外の様子を伺っている。

 

すると何人かの男たちが廃スーパーに侵入してやがて、銃撃戦が始まった。俺は錦木 千束たちにとって致命傷になりそうなものだけをカブトクナイガンで切り裂き、男たちを次々にデコピンで気絶させていく。

 

 

「また突然!?一体何が起きてるんですか?!」

 

「くっ?!いいからウォールナットを追うよ!たきな!」

 

 

先に逃げ出していたウォールナットを追うため走り出す錦木 千束と井ノ上 たきな。しかし、ドアを開いた瞬間、銃弾の雨が彼女たちに降り注ぐ。急いで物陰に隠れるたきなとは裏腹に真正面から銃弾を見て避ける錦木 千束。

 

常人ならあり得ないような光景だが、錦木 千束は卓越した洞察力と常人離れした視覚によって相手の射線と射撃タイミングを見抜き、至近距離から放たれた銃弾すら回避する「天才」。やがて全ての銃弾を見切った彼女は次々に非殺傷弾を武装した男に当てて気絶させた。

 

俺は見ててヒヤヒヤしながらもこれが原作主人公かと感嘆としていた。

 

 

「ん?誰かに見られてるような?」

 

「誰もいませんよ!それよりもウォールナットを追いましょう!」

 

 

やばい、油断してたらバレるな。俺はその場を離れてウォールナットがいる場所まで先回りをする。

 

ウォールナットが階段を登り、ドアを開けて外に出た瞬間に集中砲火が始まった。俺はカブトクナイガンを構えて銃弾を全て切り裂き、銃弾の向きから敵の位置を予測し武装した男たちの意識を刈り取る。

 

そして、再びウォールナットの所に戻り男たちから奪った拳銃で何発かウォールナットに打ち込む。そして、拳銃はその場で粉砕する。

 

 

「ウォールナットが!?」

 

「っ?!」

 

 

ウォールナットから血が噴き出て倒れる。錦木 千束や井ノ上 たきなから悲痛な声が出る。だが、これはフェイクだ。簡単に言えば死んだふり作戦。本物のウォールナットは井ノ上 たきなが持っているアタッシュケースに入っている。それを知らずに錦木 千束と井ノ上 たきなは任務に挑んでいたのだ。無理もない。

 

 

 『CLOCK OVER!』

 

「そこにいるのは誰ですか!?」

 

「あ、貴方は?!カブト?!」

 

 

最悪なタイミングでクロックアップが解除された。どうすればいいのだろう。俺はとりあえず、天に向けて人差し指を立てる。

 

 

「俺は天の道を征き、総てを司る男……よく見ろ、そいつは死んでない」

 

「え?」

 

「本当です、千束!?これは血糊です!」

 

「おばあちゃんが言っていた。敵を欺くにはまずは味方からだってな」

 

「つまり、私たちも最初から騙されていっていうことなの?」

 

「フッ」

 

 『CLOCK UP!』

 

「ちょ、待って!」

 

 

俺は再びクロックアップの世界に入った。スローモーションになった世界で錦木 千束と井ノ上 たきなが呆然と立ち尽くしている。

 

 

「あの声。もしかして、おにいちゃん……なの?」

 

「え?それはどういうことですか?」

 

 

……おにいちゃんか。そう呼ばれるのも久しいな。

 

俺は微かな迷いを振り切るように残った敵を殲滅しカブトエクステンダーを走らせる。決して後ろを振り返らないように。

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