GOD SPEED LYCORIS   作:フォイオ

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漆黒の太陽と気まぐれな風

 

「はははは、それでカブトに負けてしまったと?」

 

「申し訳ございません、根岸さん」

 

「そんなことはいいんですよぉ。それよりカブトはどうだったんですか?やっぱり強かったでしょ?」

 

『これがネイティブか。会うのは初めてだが得体が知れないな』

 

 

楠の目の前の男はおどけた調子で聞き返す。彼は根岸。ネイティブのリーダーでマスクドライダーシステムをDAに提供している人物だ。

 

 

「カブトは我々の同胞を数多く殺している。早急にDAに対処してもらわなければこれ以上対ワーム用の武装の提供は出来ませんねぇ」

 

「次はDAの中でも特に優秀な人材をあてがうつもりです。必ずや期待に応えてみせるでしょう」

 

「期待してますよ〜。楠さん」

 

根岸はポケットから拳大の包み紙を取り出すと紙を広げ中の饅頭を美味そうに貪る。そして、司令室の席にふんぞり返る。力関係はあくまでネイティブ側が圧倒的に上である。楠は内心イラつきながらも無言で根岸に頭を下げる。

 

 

「んん、楠さん携帯なってますよぉ?」

 

「失礼します。こちら楠、何のようだ?」

 

 『カブトが出現しました。場所は……』

 

「おっほ、噂をすれば何とやらですねぇ。早速DAのお手並み拝見ってところですかね」

 

 

どこまでも上から目線の発言に楠は携帯を握り潰す勢いでギリギリと力を込める。

 

 

「さぁ、見せてもらいますよ。マスクドライダーシステム 第二号と第四号 適合者。錦木 千束と井ノ上たきなさんの力をね」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッ!ハァア!」

 

「グルルルル?!」

 

「キシャアアア!!」

 

 

俺はクロックアップの世界で2匹のスパイダーワームを相手取り、人知れず孤独な戦いを続けていた。

 

 

「「キシャアアア!!」」

 

「チッ」

 

 

スパイダーワームが同時に口元から糸を高速で射出する。俺は糸をカブトクナイガンで切り裂く。その隙に奴らは逃走を始めた。急ぎカブトエクステンダーに乗り込み、バイクのパネルを操作しキャストオフさせる。

 

 

「キャストオフ」

 

 『CAST OFF!』

 

 

キャストオフされたことにより左右に分離した前輪の間から伸びる突進棒エクスアンカーがその姿を現す。これがカブトエクステンダーのキャストオフ状態 エクスモードだ。

 

 

「フン」

 

「「キシャアアア?!」」

 

 

スパイダーワームは糸を伸ばしビルからビルへと飛び移る。俺は奴らを追従し、ビルの壁面を高速で走行する。そして、奴らを射程圏内に捉えた俺はエクスアンカーを上から下に打ちつけるように振り下ろしスパイダーワームをはたき落とす。

 

 

「キシャアアア!!」

 

「さぁ、これで鬼ごっこは終わりだ」

 

 

俺はバイクを降りて地面に倒れ伏す奴らにゆっくりと近づきながらカブトゼクターのフルスロットを押す。

 

 『1.2.3』

 

「ライダー……キッ?!ッ!」

 

 

俺がカブトゼクターのホーンを倒す瞬前、何者かが俺の背後から猛烈な勢いで飛び出てワームに走り出す。

 

 

「「ハァアアアアア!」」

 

 『RIDER KICK!』『RIDER SHOOTING!』

 

「「キシャアアア!!!」」

 

 

2匹のワームの爆発と共に俺の視界に映ったのは2人のライダー。1人はヒヒイロノカネ製の黒い胸部装甲と露出した赤い回路部が特徴的なライダー。2人目は青い装甲に銃型のゼクターを手に持っていた。

 

 

「千束、相手はあのファーストのフキさんに快勝した奴です。決して油断はしないように」

 

 

仮面ライダードレイクが冷静に隣のライダーに話しかける。

 

 

「うん、わかってる。今回ばかりは私も本気で行くよ、たきな」

 

 

仮面ライダーダークカブト=千束がドレイク=たきなに返答する。その声は何かを決心した者の声色だった。

 

 

「ほう、意外な組み合わせだな」

 

「風は気まぐれですからね」

 

 

たきなが油断なくこちらを見据え、ドレイクゼクターを構える。まさか、ドレイクゼクターの適合者になるとはな。

 

 

「たきな。こっちはいつでも行けるよ?」

 

「はい。援護は任せてください」

 

 

千束=ダークカブトがとんとんと軽くジャンプする。そして、ファイティングポーズを取ると俺目掛けて走り出してきた。

 

 

「面白い。かかってこい」

 

「千束!」

 

「りょうかい!」

 

「フッ!」

 

 

ドレイクの呼びかけでダークカブトが一瞬前のめりになるとその頭上をドレイクゼクターの射撃が迫る。俺は射撃を左に向かって転がるように避ける。

 

 

「逃がさないよ!」

 

「ハァ!」

 

 

避けた先にはダークカブトが待ち構えており、カブトクナイガンを振るう。俺も合わせるようにカブトクナイガンを振るい互いの武器が激突し火花を散らす。そして、鍔迫り合いになりながら近距離でカブトクナイガンの応酬が始まった。

 

 

「ハァアアア!」

 

「フン!ハァア!」

 

 

カブトクナイガンが何度もぶつかり合い、隙を見て互いを斬り合う。フェイントを混ぜ織りなす攻撃にダークカブトは完全に俺の動きを読み切りかわしていく。俺はさらにその上を読み、胸部を切り付けるも負けじと相手に斬り返された。

 

 

「「くっ?!」」

 

「千束?!」

 

 

カブトクナイガンを操る技量は同じレベル。まさか、俺に並び立つほどとは。これが錦木 千束。さすがは俺の……

 

 

「伏せてください!」

 

「くっ、ぐぁあああ!」

 

 

ダークカブトが地に伏せた瞬間にドレイクの射撃が俺を襲う。たまらず後ろに後退し前腕を前にガードする。厄介なコンビだ。お互いの連携プレーが異常なまでに上手い。2人で揃ってこそ真価を発揮するタイプだ。これがちたさきコンビか。

 

 

 『『『CLOCK OVER!』』』

 

「くっ、クロックアップの反動が!」

 

「けっこうキツイね、コレ?!」

 

 

クロックアップが両者解除された途端、ダークカブトとドレイクは膝をつく。クロックアップは強力だが負担もでかい。俺は常時クロックアップの世界にいるおかげで負担は感じない。このわずかな差が勝敗を決した。

 

 

「ライダー……キック」

 

 『ONE TWO THREE RIDER KICK!』

 

「ハァアア!」

 

「「きゃあああああ!」」

 

 

俺はクロックアップの反動で動けなくなった2人に向けてライダーキックを飛び蹴りで放つ。原作カブトの加賀美のように跳び回し蹴りのような形で2人を巻き込み変身を解除させた。

 

 

「ここまでとは……」

 

「ぐぅううううう……」

 

 

地面に倒れる2人を見て俺はバイクに向かって歩き出す。予想はしていたことだが遂にこの2人がネイティブ側に取り込まれるとは。思ったよりも早かったな。

 

 

「まって、おにい……ちゃん!」

 

「千束?」

 

 

俺はその言葉でまたしても足を止めてしまった。

 

 

「お兄ちゃんなんでしょ?私だよ千束だよ?忘れちゃったの?」

 

「俺は……」

 

 

俺がどう答えようか迷っていると突然カブトゼクターが動き出しベルトから外れ彼方へと飛び去っていった。変身が……解除される。

 

 

「やっぱり!」

 

「あれがカブトの正体?」

 

「俺は天の道を征き、総てを司る男。天道 ソウジ」

 

 

俺は頭の中で混乱しながらも必死に表情を取り繕い天に向けて指を指す。あの事故の一件から外れなかったカブトゼクターがなぜ今になって外れた?どういうことだ?

 

 

「お兄ちゃん!」

 

「千束!待ってください!」

 

 

ぷるぷると震える手や足に必死に力を込めて立ち上がり、千束は俺目掛けて走り背中に抱きついてくる。俺の姿はあの時と同じ、高校の制服のままだ。年齢だってクロックアップの世界で過ごしていた影響で一切老けてない。久しぶりに、本当に久しぶりに太陽の下、

 

俺は本当の自分の姿で立っていた。

 

 

「大きくなったな、千束」

 

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」

 

 

千束は俺をさらに強く抱きしめて嗚咽する。俺は振り返り千束を抱きしめ返し頭を撫でる。ずっと陰で見守っていた。俺の大切な妹だ。

 

 

「お兄ちゃん、今までどこ行ってたの?!千束は!千束は!?」

 

「待たせて悪かった。だが、果報は寝て待てとおばあちゃんも言っていただろう?」

 

「確かにそうだけど、遅いよ!ずっと10年以上も待ってたんだよ!」

 

 

千束と俺のやり取りに呆気に取られているたきなを横目に俺は妹の涙を拭う。千束は俺のその手を包み込むように手に取り頬に当てる。俺の手を大切に愛おしそうに握りしめ頬を緩める。

 

「千束、俺には時間がない。手短に言うぞ」

 

「え?どういうこと?」

 

 

千束が疑問の表情を顔に浮かべる。俺は簡潔に内容を話した。

 

 

「ネイティブは敵だ。始まりは俺たちを襲ったあの事故だ」

 

「ま、待って?ネイティブが私たちの敵?あの事故が始まりって意味わかんないよ!」

 

「すまない。俺に言えるのはこれだけだ。あとは頼んだぞ」

 

「待って、お兄ちゃん!」

 

 

俺は千束の手を払いバイクに乗り込む。すると、体が思考が加速していく感覚に落ちてゆく。

 

 

 『CLOCK UP!』

 

 

全てがスローモーションになった世界で再び俺は独りになった。そして、飛来してきたカブトゼクターを手に取りベルトに装填しカブトになる。

 

 

「お兄ちゃぁああああああんっ!!!」

 

 

クロックアップした世界でもその悲痛な声は俺の心を引き裂くように響いた。今言えることは全て言った。後は千束があの事故の本当の原因とネイティブの目的に気づくことができればまた再び俺たちの運命は交わる。

 

その時まで……俺はお前のことをずっと見守っているからな。

 

そして、俺はカブトエクステンダーを走らせその場から離れる。またな、千束。俺の妹よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても興味深いですねぇ。まさか、カブトの正体があの電波塔の英雄の兄だったなんて」

 

 

ネイティブのリーダーである根岸はダークカブトとドレイク、カブトの交戦動画を観ていた。根岸は心底嬉しそうに嗤う。

 

 

「次の計画でカブトを地獄に叩き落としてあげましょう。全ては我々ネイティブが天に立つために!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、任務失敗でもゼクターは剥奪されなくてよかったですね。千束」

 

「ふふふ、お兄ちゃんお兄ちゃん」

 

「千束、聞いてます?」

 

「き、聞いてるよー。お兄ちゃんがすっごくかっこよかったもんねー」

 

「いや、そういうことじゃなくて……ていうか、カブトの正体が千束のお兄さんだなんて。しかも、姿形も当時の写真のまま。本当はワームが擬態してるんじゃないんですか?」

 

「失礼な!この千束さんがお兄ちゃんを見間違えるわけないでしょ!お兄ちゃんは相変わらずお兄ちゃんだったよ」

 

「はぁ、先が思いやられます……」

 

「ふんふーん、おにいっちゃん!おにいっちゃん!」

 

 

千束はパジャマ姿で布団でばたばた足をせわしなく動かしてニヤニヤとしていた。それを隣でたきなは頭が痛くなりながらもなんだかんだ安心していた。

 

 

「敵はネイティブ。始まりはあの事故かぁ。どういうことなんだろうね、たきな?」

 

「ネイティブは宇宙生命体ながら我々人類に数多の技術を提供してくれた恩人でもあります。その彼らが敵だなんて到底思えないのですが……」

 

「でも、お兄ちゃんの言うことに間違いはない。私にはわかるよ。だって、あの天の道を征き、全てを司るお兄ちゃんの妹なんだから!」

 

「もういいです……わかりましたよ。まずは、ネイティブと事故の両面から探ってみましょう」

 

「じゃあ、早速クルミに連絡しなきゃね!」

 

「クルミさんはもう寝てますよ」

 

「あっ、そうだった」

 

「はやる気持ちも分かりますが慎重に行きますよ?」

 

「はーい」

 

 

千束とたきなは天道 ソウジの思惑通りにネイティブと事故を調査することに決めた。

 

ネイティブとは一体何者なのか。千束とソウジを襲った事故の本当の原因は何なのか。謎は深まるばかりだった。

 

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