雄英体育祭終了後校内はしばらく騒がしかった。
「あのサポート科やばかったな」
「発目の装備すげぇ」
「蜘蛛メカ気持ち悪いけど便利そう」
普段は裏方扱いされるサポート科へ、珍しく視線が集まっている。
「……改善点多い」
一方灰斗は実習棟へ籠もっていた。体育祭で使用した蜘蛛型運搬マシンの問題が山ほど見つかった。
熱耐性不足
関節摩耗
障害物回避遅延
群体時の接触事故
机の上には改修メモが積み上がっている。
「つまり!!賢くすればいいんですね!!」
横で発目が目を輝かせる。
「学習型制御!!群体連携!!ロマンですよ!!」
「でも処理重い」
個性《複製》の量産前提。だからこそ構造は簡略化し続けていた。
「なら役割分担です!!」
「役割?」
「頭脳機と作業機を分けます!!一機だけ高性能にして、他は追従!!」
「……なるほど」
発目がニヤリと笑う。
「全部賢くするから重いんですよ!!群体なら共有すればいいんです!!」
完全に開発者同士の会話だった。
数日後の実習棟夕方。二人はまだ残っていた。机の上には新型蜘蛛ユニット。以前より大型だ。センサー増設、複数機同期端子。
「同期確認」
ピッ。
ウィン。
蜘蛛達の目が赤く光る。一機が動くと他機も少し遅れて同じ動作を共有。障害物を置くと先頭機が回避し後続機がルート共有。
カサカサカサ……
滑らかに移動していった。発目が机を叩く。
「いいですねぇ!!群体知能!!ロマンあります!!」
「便利」
「もっとテンション上げてください!!」
その時パワーローダーが入ってきた。
「……まだ残ってたのか」
二人が振り向く。発目は元気に手を振った。
「先生!!新型ベイビーです!!」
「また増やしてんのか……」
パワーローダーがモール達を見る。蜘蛛達は素材を運び、工具を整理し、勝手に巡回している。普通に便利だった。
「名前は《モール》です!!」
発目が誇らしげに言う。
「モグラ?」
「掘るし運ぶし群れるんで」
パワーローダーは少し黙り、一機を持ち上げた。軽い。かなり軽量化されている。
「……複製前提だな」
「壊れても補充できるんで」
自然な発想だった。だがパワーローダーの目が少し細くなる。
「分倍河原。現場にお前はいないぞ」
「……?」
パワーローダーはモールを机へ戻す。
「お前は複製できる。壊れても増やせる」
「だが、使う側は違う」
「ヒーローは現場で、一個の装備を頼りに動く」
「壊れたら終わる場面もある」
「“壊れたら次出せばいい”は、お前が後ろにいる前提だ」
パワーローダーはモールの脚を見る。
「軽量化も量産も悪くねぇ」
「……はい」
「だが、使う人間が安心できる設計を忘れるな」
怒鳴ってはいない。でもかなり重かった。
「……現場に、俺はいない」
初めてそこをちゃんと考えた顔だった。パワーローダーは頷く。
「サポート科は、“作って終わり”じゃねぇ」
そのまま踵を返す。去り際
「あと発目」
「はい!!」
「爆発減らせ」
「努力はしてます!!」
「努力止まりなんだよなぁ……」
ため息と共に去っていった。モール達だけが、カサカサ動いている。発目が横を見る。
「……直します?」
「……うん」
小さく頷いた。そして新しい設計図を書く。
《モール耐久改修案》
そのタイトルは今までより少しだけ、“使う側”を意識したものになっていた。