サポート科、分倍河原灰斗   作:うめけ

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経験を複製

 

夕方雄英高校サポート科実習棟。

 

カサカサ……

 

修理を終えたモール達が静かに巡回している。工具運搬、部品整理、素材分類と以前より動きが自然だった。灰斗は作業机に座ってモールの破損ログを確認している。

 

《衝撃吸収:成功》

《損傷率:48%》

《搭乗者保護:優先完了》

 

画面を見ながら少し考える。

 

「……もっと軽くできる」

 

まだ削れる、まだ効率化できる。その思考が出た瞬間ふと

 

“現場にお前はいない”

 

パワーローダーの言葉が頭をよぎる。

 

「悩んでますねぇ」

 

後ろから発目の声 。今日も残っていた。

 

「まだいたんだ」

「分倍河原さんがいるので!!」

 

発目は壊れたモールを見る。

 

「でも、いい感じでしたよ」

「……」

 

カサッ

 

一機のモールが、工具箱を運んできて灰斗の前で停止した。

 

ピッ。待機

 

「懐いてますねぇ」

「機械です」

「でも学習してますよね?」

 

そこだった。モールは最近、灰斗の行動優先順位を学習し始めていた。必要工具、移動ルート、作業補助。

自動で最適化している。便利だ。

 

モールを見る。

 

「……複製できるんだよな」

「はい?」

「こいつら」

「まあ、ベースが複製前提ですし」

「……学習した状態ごと、増やせる」

 

発目が止まる。

 

「……あっ」

 

気付いた。一機が学んだ経験、それを複製で丸ごと増やせる。つまり“一機育てれば全機共有できる”。

 

「やばいですねぇ!!」

「便利」

「いや普通に革命ですよ!?」

 

でもそれはつまり、“経験を複製する”という事でもある。

 

その時モールの一機が、修理用工具を間違えて持ってくる。

 

「違う」

 

ピタッ。

 

モール停止。数秒後別工具へ交換、再搬送。

 

「……今、修正しました?」

「優先学習更新」

「賢くなってきてません!?」

「便利」

 

感想が毎回同じ。だが灰斗は少しだけ違和感を覚えていた。便利なのにどこか引っ掛かる。もしこれをもっと進めたら、もっと複雑な学習をさせたら、どこまで“コピー”になるのか。

 

「考えすぎです!!」

「……そう?」

「機械は機械です!!便利ならまず使いましょう!!」

 

発目らしい答えだった。

 

ボコッ

 

灰斗がモールを複製すると新しい個体が出現。新型モールは周囲を一瞬見回し。

 

カサカサ……

 

迷わず充電機へ向かった。最適行動。学習共有。

 

周囲の一年達が少しざわつく。

 

「……今の最初から分かってたぞ?」

「怖ぇなあれ……」

 

灰斗は静かに新型モールを見る。複製されたのは形だけじゃない。

 

経験、判断、動き、全部だ。

 

まるで生きてるような……それを複製した……。

 

「……便利だな」

 

その声は、少しだけ考え込むような響きだった。

 

 

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